第59回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第23回日本精神保健福祉士学会学術集会

封筒をひらく

―「どんな色にも染まらない」のか、「どんな色も染めてしまう」のか―

皆様のお手元に開催案内が届いたかと思います。
御覧いただけましたでしょうか。
それともその前に、封筒の色に驚かれたでしょうか。

今回、この封筒を作成した者として、その意図を簡単に述べます。
あくまでも作成者としての個人的見解であり、運営委員全員の総意ではありませんので、
ご承知おきくだされば幸いです。

封筒のイメージ

まず封筒を作成するに際して、コンセプトを3点定めました。

1.チラシやホームページ、ポロシャツ、ジャンパーなど、
これまで作成した物と一体感のある意匠とすること。

2.大会テーマを「ひらく」とし、「あたらしい時代の~」としたからには、
これまでの既成概念に捉われない意匠とすること。

3.これまでにない意匠であり、人の印象に強く残ること。

これらのコンセプトに基づいて作成した封筒が、今みなさんのお手元に届いています。
いかがでしょうか。黒い封筒ということで、嫌悪感や違和感を覚えた方もおられたのかもしれません。
現に、運営委員の間でも意見は様々でした。
「高級感がある」「目立つ」という意見がある一方で、
「縁起が悪い」「おめでたいイメージがない」「喪をイメージする」という意見もありました。

双方とも理解できる意見です。
デザイン的に喪をイメージしたつもりはありませんが、なぜ賛否両論が巻き起こったのでしょう。
黒という色に対する否定的な感情は、果たして本能的に感じるものなのか。
それとも、文化の中から植え付けられたものなのか。
私は、ここに既成概念の本質があるのではないか、と感じました。

「黒は死を連想させる」、「不吉である」、「縁起が悪い」と言われます。
さて、これは誰かが決めたことなのでしょうか。
黒の持つイメージについて、調べてみたところ、
国や地域によって変わる、ということがわかりました。
「死」「不幸」というイメージを持つ国が多いようですが、
「支配的」「権力的」というイメージや
「高級」「成熟」「洗練」というイメージを持つ国もあるとのことでした。
ちなみに、死や不幸などを連想させる色としては、
「黒」のほかに「白(病気や貧弱さをイメージさせるらしい)」や
「赤(血の色だから)」という国があったり、
「青」に否定的な感情を持つ国もありました。
日本において、歌舞伎では悪人の隈取は青色で描かれますし、
「気持ちがブルーだ」というような言い方をすることもあります。
祝いの席では紅白幕を、弔事には黒白幕を張ります。
しかし、実は黒白幕は最も高貴な色なので慶事にも使用することがあります。
青白幕は地鎮祭など神聖な場面で使用されますが、一方で弔事にも使われます。
また、時代劇などにおいて、
貴族が弔事でもないのに宮中で黒い束帯を着用している場面を
見たことがある方もおられるかもしれません。
 なお、人間が最も認識しやすい色は「赤」なんだそうです。
諸説あるようですが、「赤」を見ると人間は交感神経が作用され
アドレナリンが分泌されると言われています。
人種、文化に関わらずそのようなことが起こるのであれば、
赤色は本能に作用する色なのかもしれません。

 さて、色について述べてみましたが、いかがでしょうか。
もちろん、「社会通念上…」であるとか「一般的には…」とか
「多くの人が…」という意見を軽視するわけにはいきません。
ですが、「固定観念」や「既成概念」、
我々精神保健福祉士が目の敵のようにしている「スティグマ」、
「偏見」といったものに似ているような気がしませんでしたか。

兵庫大会のテーマは「ひらく-あたらしい時代の精神保健福祉-」です。
多様な価値観、多様な考え方、多様な文化、新旧の考えが入り乱れる令和の時代において、
私たちはどういった価値観を持つのか。それを感じ取っていただきたいと思っています。

そして、何よりも、封筒は広報物です。

広報の神髄は話題性です。
封筒は手に取って開封しようと思ってもらう必要があります。
たかが封筒、されど封筒。誰の目にも留まることなく、何の話題にもならないような、
ただの「お知らせ封筒」を高いお金を払って作成することに
どれほどの意味があるのだろうか、とも思いました。
賛否両論があって構わないと思っています。
むしろ、何の話題にもならないことの方が広報としては失敗です。

冒頭にも述べましたが、運営委員内でも賛否両論ありました。
他の案にすべきでは?という意見もありました。
しかしながら、目に留まって、人の印象に残るものにする、
ということで本案にしようということになりました。
この決断をした運営委員会渉外広報部の方々の気合いに応えたいと
部統括の私としては思っています。
ぜひ、議論をしましょう。賛否両論、話をしましょう。
兵庫大会でお待ちしています。

運営委員会 渉外広報部
統括 松田一生