要望書・見解等

2021年度


標題 精神保健福祉士法施行規則の一部を改正する省令案に対する意見
日付 2021年7月21日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先 厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室
 
 改正案によると精神保健福祉士試験の受験手数料の現行からの引き上げ率は、一般受験者で37.1%、同時受験者で37.9%、科目免除者で33.7%であるのに対して、社会福祉士試験については、一般受験者で25.5%、同時受験者で20.5%、科目免除者で24.7%の引き上げ率にとどまっている。受験者の立場に立つと、引き上げ率において社会福祉士試験との間で格差が生じていることに十分な納得が得られないのではないだろうか。

 精神保健福祉士試験の受験者数は、2017年の第19回試験までは7千人超で推移していたものの、2018年以降漸減し、2021年の第23回試験では6,165人であった。社会福祉士試験との同時受験を考えている学生等の中では、今回の受験手数料の引き上げにより、精神保健福祉士試験の受験を断念する者が出て受験者数の減少に拍車をかけることになることを危惧するところである。

 受験手数料については、国家試験ごとに受験者数と試験会場等の経費を勘案して設定されており、コロナ禍という不測の事態への対応として引き上げざるを得ないことは一定理解できる。しかしながら、今後も不測の事態が生じた場合には、精神保健福祉士に限らず国家試験に対する特例対応として、国庫による事務経費増大分の補填の措置をとるなど、受験者の不利益とならないよう配慮が必要であると考える。

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標題 2022(令和4)年度診療報酬改定に関する要望について
日付 2021年7月21日
発翰番号 JAMHSW発第21-169号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  厚生労働省 保険局 医療課長 井内 努 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、精神保健医療福祉における新たな政策理念として検討されてきた「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」について、今般報告書が纏められたところです。本協会としましては、従来の「入院中心医療から地域生活支援へ」の政策方針の下で推進されてきた精神障害者の地域生活への移行及び地域生活の定着のさらなる強化促進に加えて、今般の報告書にも明記された精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構成要素における人材として、圏域内における精神科医療機関内外に渡るネットワーク構築に精神保健福祉士が果たすべき役割があると強く認識しているところです。

 さらには、当該ネットワークが、いわゆる「7040」「8050」問題やヤングケアラー、新興感染症等の感染など現代社会に生じている課題から発生するメンタルヘルス及び生活課題を抱える人々の発見や対応にもつながることから、果たすべき役割を認識しております。

 つきましては、2022年度の診療報酬改定に向けて以下のとおり要望いたしますので、ご高配のほど何卒よろしくお願いいたします。

 
 
1.通院・在宅精神療法(I002)において、精神科を標榜する保健医療機関の外来診療部門に精神保健福祉士を1名以上配置した場合の体制に係る加算を新設してください。(10点)

<具体的要望内容>
 精神科を標榜する保健医療機関の外来診療部門に精神保健福祉士を1名以上配置し、入院中の患者以外の患者及びその家族に対して、必要に応じて保健所、市町村、障害福祉サービス事業所、介護保険事業所等と連携し、療養生活環境を整備するための支援体制がとられている場合において、通院・在宅精神療法の所定点数に加算できるようにしてください。

<理由>
 通院・在宅精神療法は、精神疾患を有する患者に対して、精神科を担当する医師が一定の治療計画のもとに危機介入、対人関係の改善、社会適応能力の向上を図るための指示、助言等の働きかけを継続的に行う治療方法とされています。そうした治療と併行して、精神保健福祉士が患者の抱える生活課題等に関する相談に応じ、必要な制度や資源に関する情報提供及び利活用支援、関係機関との連絡調整といった生活環境の調整を行うことで、より通院・在宅精神療法の効果も発揮されると考えます。外来診療部門に精神保健福祉士を配置することで、患者や家族が必要時に適宜生活課題等の専門的相談支援を受けられる体制を取ることは、社会的に孤立している精神疾患患者及び家族に社会参加や交流の機会を提供することにもつながると考えます。
 また、精神障害者の職場定着や就労支援の強化に向けて実施されている「精神科医療機関とハローワークの連携モデル事業」においても外来診療部門の精神保健福祉士がその役割を担うことが可能となることで、一層の強化が見込めます。

<有効性>
 患者の支援ニーズを的確に把握し医療機関と関係機関との連携を強化していくことで、患者を中心とした支援ネットワークを形成することが可能となります。また、患者の生活上の課題等が病状に大きく影響することから、例えば年金等の申請及び手帳の取得援助、地域社会資源の情報提供や見学、体験支援など、精神保健福祉士がその解決を支援することにより、患者の安定した地域生活の維持・継続に資することとなります。これらの取組みにより、診療を担当する医師の負担軽減、新規入院の予防及び退院後1年未満再入院率の低減による入院医療費抑制への効果が期待できます。

参考資料① 精神保健福祉士の外来診療部門への配置に係る参考資料[PDF:629KB
参考資料② 外来部門に配置される精神保健福祉士の有効性に関する事例[PDF:249KB
参考資料③ 【結果概要】外来患者等に対する精神保健福祉士の相談援助業務等に係るアンケート調査[PDF:649KB


2.通院・在宅精神療法(I002)のうち、通院精神療法の療養生活環境整備指導加算の算定対象を「『B015』精神科退院時共同指導料の『1』精神科退院時共同指導料1を算定した患者」に限定せず、「療養生活環境の整備のため重点的な支援を要する患者」としてください。

<具体的要望内容>
 算定対象を「平成28~30年度厚生労働行政調査推進補助金障害者対策総合研究事業において「多職種連携による包括的支援マネジメントに関する研究」の研究班が作成した、「包括的支援マネジメント実践ガイド」における「包括的支援マネジメント導入基準」を1つ以上満たした療養生活環境の整備のため重点的な支援を要する患者」としてください。

<理由>
 2020年度改定において新設された療養生活環境整備指導加算は、精神科外来における多職種による相談指導(包括的支援マネジメント)を評価するもので画期的な改定内容でした。しかしながら、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会において実施された「令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」の結果によると、療養生活環境整備指導加算の「届出している」が 8.3%と低位にとどまっており、同加算の届出をしていない理由として、満たすことが難しい要件として最も多かったものは「精神科退院時共同指導料1を算定した患者であること」(54.3%)でした。
 「包括的支援マネジメント導入基準」には「6か月間継続して社会的役割(就労・就学・通所、家事労働を中心的に担う)を遂行することに重大な問題がある」「自分一人で地域生活に必要な課題(栄養・衛生・金銭・安全・人間関係・書類等の管理・移動等)を遂行することに重大な問題がある(家族が過剰に負担している場合を含む)」といった項目も含まれており、これらに該当する患者に対して、多職種・多機関による定期的なカンファレンスの開催と支援計画に基づいた療養生活環境の整備のための指導を行うことで、特に他者との交流に乏しく社会的に孤立している精神疾患患者に社会参加の機会を提供することにもつながると考えます。

<有効性>
 患者の支援ニーズを的確に把握し医療機関と関係機関との連携を強化していくことで、患者を中心とした支援ネットワークを形成することが可能となります。また、患者の生活上の課題等が病状に大きく影響することから、精神保健福祉士等がその解決を支援することにより、患者の安定した地域生活の維持・継続に資することとなります。これらの取組みにより、診療を担当する医師の負担軽減、新規入院の予防及び退院後1年未満再入院率の低減による入院医療費抑制への効果が期待できます。


3.「精神科訪問療養生活環境整備支援料」(仮称)を新設してください。(550点/1回)

<具体的要望内容>
 精神保健福祉士等が患家等に訪問し患者又はその家族等に対して、療養生活環境を整備するための支援を行った場合の「精神科訪問療養生活環境整備支援料」(仮称)を新設してください。算定可能機関は、精神科を標榜する医療機関及び精神科訪問看護療養費の基準を満たす訪問看護ステーションとし、週3回を限度に算定可能とします。
 対象は、入退院を頻回に繰り返す、家族によるサポートが難しい、障害福祉サービス等の社会サービスにつながっていない等、治療中断となるハイリスク患者に限定することが適当と考えます。また、療養生活環境の整備を目的とするため、患家への訪問に限らず、就労支援事業所等の日中活動の場への同行、他科を含む医療機関への連携目的による受診同行等を行った場合も算定することが可能とする必要があります。

<理由>
 精神科の通院・在宅等患者は、安定した地域生活を維持するために、生活上の課題等が病状に大きく影響することを防ぐ必要性が高い者が多く存在します。そのための相談及び制度活用、日中活動の場の確保や利用及び利用機関等と医療機関との連携など、生活課題と医療的ケアの関連についてのニーズを生活の場において把握し支援に結び付けるといった療養生活環境整備は、精神保健福祉士の専門性を生かした訪問支援が有効と考えます。
 さらに、「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」のとりまとめ報告(2021年5月17日)によれば、厚生労働省・文部科学省として今後取り組むべき施策について「ヤングケアラーは、家庭内のデリケートな問題であること、本人や家族に自覚がないといった理由から、支援が必要であっても表面化しにくい構造となっている。支援を行うにあたっては、まずは、福祉、介護、医療、教育等といった様々な分野が連携し、アウトリーチにより、潜在化しがちなヤングケアラーを早期に発見することが重要である。」とされています。精神保健福祉士等が患家等に訪問することで、ヤングケアラーはじめ、あらゆるケアラーの存在やニーズを顕在化させ、専門的援助や必要な社会資源につなぐことが可能になります。

<有効性>
 これらの取組みにより、家族又は同居者から虐待を受けている又はその疑いがあるような状況、家族が接し方に悩んで困難を抱えている状況、生活困窮状況、経済活動に困難を抱えている状況、頻回な入退院及び通院中断のリスク、福祉・介護サービスへのアクセス困難又は利用中断、近隣との交流課題など、さまざまな生活困難課題と病状への影響などに対して、患者及び家族、関係機関支援者への適切な支援を提供可能となります。
 結果として、多様な困難状況による生活破綻と派生する社会的費用支出の抑制、病状悪化及び再入院防止に資すると考えます。


4.精神科退院後生活環境調整会議実施加算Ⅰ(仮称)を新設してください。(300点/1回)

<具体的要望内容>
 精神病棟に入院中の患者のうち、入院後7日以内の退院後支援のニーズに関するアセスメントの実施により、医療的ケアの必要性とは別に退院困難な要因を有する患者を対象として、関係機関も含めた多職種による「精神科退院後生活環境調整会議」を実施し、入院日から起算して1年以内に退院した場合に、入院中2回に限り「精神科退院後生活環境調整会議実施加算Ⅰ」(仮称)を算定できるようにしてください。
 この場合において、「精神科退院後生活環境調整会議」には精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則に定める医療保護入院者退院支援委員会及び「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」(平成30年3月27日、障発0327第16号)に基づく退院後支援計画作成のための会議を含めることとしてください。

<理由>
 医療的ケアの必要性とは別に退院困難な要因を有する患者の退院及び地域移行支援においては、福祉サービスの利用や居住資源確保、家族関係調整など、関係機関を含めた多職種による退院後生活環境調整が欠かせません。現状において、そのような会議等の開催実施の必要性は高く、実際に実施されているものの、医療機関に対する評価がないことから、会議が有効に活用されないことが懸念されます。

<有効性>
 精神科退院後生活環境調整会議の実施が促進されることにより、地域定着における定着阻害要因が減少し、さまざまなリスク回避が可能となると考えられます。病状悪化や再入院防止につながることで医療費抑制にも資すると考えます。
<参考>
 本協会が実施した精神保健福祉士の業務実態等に関する調査(調査日2017年12月6日8:00~12月7日7:59)の集計結果によると、主な勤務先が医療機関である精神保健福祉士(n=1,804名)の業務ごとの実施者割合のうち、「会議」の実施者割合は87.5%と高く、平均実施時間は73.4分であり、そのうち1時間以上の時間を費やしている割合は42.6%であった。「会議」の内訳では、ケア会議(退院支援委員会や所属機関の内外を問わず、当事者や家族の支援の方向性等に関する会議を含む)の平均実施時間は16.2分であった。


5.精神科退院後生活環境調整会議実施加算Ⅱ(仮称)を新設してください。(300点/1回)

<具体的要望内容>
 任意入院の患者に対し、入院後1年経過時及び以後2年ごとに入院(継続)の意思確認をする際に、精神保健福祉士が行政を含む関係機関と精神科退院後生活環境調整会議を実施し、実施後1年以内に退院した際に加算できるようにしてください。

<理由>
 1年以上長期在院患者のうち4割はIADL支援及び居住資源や家族関係調整等の困難の解消ができれば退院可能と言われています。また任意入院の形態であっても漫然とした入院継続の防止と退院への意欲喚起の観点から、入院後1年経過時及び以後2年ごとに入院(継続)同意を書面で確認する仕組み※が設けられていますが、形式的な運用となっている可能性が高いと認識しています。本手続きを形式的な運用に留めず、機会を生かし、患者本人及び支援者がともに、入院長期化の意識と退院意欲の喚起や醸成につながるよう、本取組みを精神保健福祉士が行うことが有効と考えます。特に対象患者は、施設基準に精神保健福祉士の配置が設けられてない精神病棟入院基本料病棟に入院していることも多く、ソーシャルワークを担う者と出会えていないことが想定されます。既にある仕組みを有効活用できるようにすることが肝要と考えます。

<有効性>
 長期入院患者の多くが精神保健福祉手帳を持たない、地域の支援者の存在を知らないなど、権利遂行や情報アクセスができていない状況が改善されることで、当該患者の退院意欲の喚起につながることや、満足度が向上すると考えられます。


※「精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出等について」(平成12年3月30日、障精第22号)


6.精神科救急入院料(A311)及び精神科急性期治療病棟入院料(A311-2)の精神保健福祉士の配置基準を見直してください。

<具体的要望内容>
 以下のように施設基準等の見直しを行ってください。精神科救急入院料施設基準における精神保健福祉士の配置を患者20名に対し1名とすること、及び精神科急性期治療病棟入院料施設基準における精神保健福祉士の配置を患者30名に1名としてください。
<理由>
 両病棟への入院患者の多くは、急性期症状の一定回復後に、退院及び地域生活定着に必要となる多様な生活困難課題の調整を行う期間が必要となります。入院前における地域生活や関係機関の状況の把握、家族関係調整や必要な制度活用や福祉サービス導入、居住資源調整など、時間と労力が欠かせません。適切な支援を行わないまま退院を迎えると、地域定着におけるハイリスクとなります。
 既に多くの精神科救急入院料病棟では基準以上の加配を行っている現状があり、要望するケースロードの妥当性を示す証左と考えます。
<有効性>
 現行評価を変えるものではありません。

参考資料④ 精神科救急病棟に勤務する精神保健福祉士と医療機関に勤務する精神保健福祉士全体との業務比較[PDF:546KB


7.入院集団精神療法(I005)及び通院集団精神療法(I006)の算定要件を見直してください。

<具体的要望内容>
 入院集団精神療法及び通院集団精神療法の算定要件のうち、「精神科を担当する医師及び1人以上の精神保健福祉士又は公認心理師等により構成される2人以上の者が行った場合に限り算定する。」を「精神科医又は精神科医の指示を受けた精神保健福祉士若しくは公認心理師等で構成される2人以上の者が行った場合に限り算定する。」に変更してください。

<理由>
 令和2年社会医療診療行為別統計によると2020年6月審査分の入院集団精神療法は2,728件と前年同月比で約3割減、通院集団精神療法は666件と前年同月比で約7割減と新型コロナウイルス感染症対策の影響が推測されますが、いずれにしても低調に推移しています。その要因の一つには、実施職種として1人以上の精神科医が必須となっていることが考えられます。精神科医については近年の精神障害者数の増加傾向に鑑みて、通常の個別診療とは別に集団精神療法を実施する時間を確保することは極めて困難な状況にあります。このため、依存症集団療法に関する算定要件に準じて、精神科医以外の職種による実施を可能とすることが適当です。

<有効性>
 入院集団精神療法及び通院集団精神療法に取り組む医療機関が増えることによって、入院の長期化抑止や地域生活の安定的な継続に寄与することが期待できます。また、医師の働き方改革の取組みに照らして、精神科医の負担軽減にもつながります。


8.精神保健福祉士情報提供料(仮称)を新設してください

<具体的要望内容>
 医師からの診療情報とは別に、介護保険サービス、障害福祉サービス、行政、学校等関係機関との連携を図るために、医療機関や訪問看護ステーションに所属する精神保健福祉士が、当該患者の居住地を管轄する市町村または指定居宅介護支援事業者、指定介護予防支援事業者、指定特定相談支援事業者、指定障害児相談支援事業者等に対して、診療状況を示す文書を添えて、当該患者に係る保健福祉サ-ビスに必要な情報を提供した場合に、患者1人につき月1回に限り算定することができるようにしてください。

<理由>
 今般、実態調査結果も公表され、対策の検討や各地で相談窓口が設置されるなど大きな話題となっているヤングケアラーについては、精神疾患を抱えている方がケアの対象となっている場合があります。また「7040・8050」問題においても長くひきこもりや社会的活動から遠ざかっている理由に精神疾患が潜在化していたり、高齢の親が精神疾患を罹患していたりする場合があります。このように疾病より生活上の課題が前面に現れている場合に、精神保健福祉士による情報提供が課題のアセスメントや支援の連携及び協働の開始に有効であると考えます。

<有効性>
 保険医療機関の精神保健福祉士がすでに把握している家族状況、経済状況、教育や就労状況、生活状況等を市町村や介護・福祉事業所は求めています。精神保健福祉士がそれらの情報を書面で提供することが連携に有効に機能します。また「ヤングケアラーがケアをする家族に対しては、すでに医療、介護、福祉 等の機関における医療ソーシャルワーカー等や介護支援専門員、相談支援専門員等の専門職の関わりがある場合も一定数あると考えられる。」(5月17日付報告)とされており、医療機関がヤングケアラーを発見した場合、適切な支援につなぐために有効と考えます。
  以上
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標題 精神科病院における入院患者集団虐待事件に関する声明~第2報~
日付 2021年7月18日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
 
 本年5月20日、兵庫県神戸市の神出病院において、男性看護師による入院患者への暴力が疑われる事件報道がありました。既に看護師と患者・家族間の和解が成立しているとのことですが、当該病院において再びこのような事件が起きたことを重く受け止めています。昨年3月に発覚した同病院における虐待事件を受け、本協会は、事件の糾弾とともに、この問題がどこの精神科病院でも起こり得る構造的な問題をはらむものとして「精神障害者の権利擁護の実効に向けて全力で取り組む」ことを表明しました。

 本協会は「精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進めることにより、国民の精神保健福祉の増進に寄与すること」を目的に掲げ、精神障害者の「権利擁護」を精神保健福祉士の重要な業務と定めています。権利侵害を生じかねない環境の改善に向けた取り組みは私たちの役割であり、当該病院にも複数の精神保健福祉士が勤務している実態に鑑みれば、このことは決して他人事ではなく、自身の実践上の問題として考えていかなければなりません。

 昨年の事件発覚以降、当該病院では看護職員等の倫理向上に関する研修会の開催、虐待防止委員会の設置などをもって再発防止へ向けての取り組みがなされているようですが、今後は一連の事件の背景にある精神医療の構造的問題や制度施策の課題等の理解も含めて、再発防止に向けて私たち自身がなすべきことを全構成員とともに考え、また構成員に限らずすべての精神保健福祉士の更なる資質や倫理の向上に努めていく必要があると考えます。併せて、所管行政に対して神出病院の全入院患者を対象とした退院等の意向調査の早期実施など責任ある対応を求めていくとともに、本協会として一人ひとりの患者の意向に基づいた退院支援等に協力していく所存です。

 8月には本件を踏まえて精神保健福祉士の役割を再考する勉強会を予定しています。また、精神保健医療福祉の関連団体にも連携を呼びかけ、このような人間の尊厳を踏みにじる行為や患者の重大な権利侵害の根絶に向けて、鋭意努力を続けていくことを改めて表明いたします。

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標題 福岡地裁「生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求訴訟」判決に対する声明
日付 2021年5月24日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先 構成員の皆さま
 
 2021年5月12日、福岡地方裁判所(以下、「福岡地裁」という。)は、生活保護基準引き下げ処分取消等請求事件において、原告側の請求を棄却する不当判決を言い渡しました。本訴訟は福岡県内の生活保護利用者ら84名(提訴時は118名)が、国や福岡県及び各自治体などに対して、生存権を保障した憲法25条などに反するものとして、生活保護費の引き下げ取り消しを求めた裁判でした。

 福岡地裁は、生活保護基準の引き下げを決めた厚生労働大臣の判断は「裁量権の逸脱や乱用があるとはいえない」とし、憲法で保障される生存権の侵害は認められないと述べました。
 また、国が「生活扶助」の基準額引き下げの根拠として示した2013年8月から2015年4月における物価下落率の独自指標についても、「独自指標は理論的な根拠を欠くものとはいえず、著しく不適切とはいえない」とし、「一般国民との不均衡を是正するために行われ、相応の合理的な理由がある」としました。

 この判決は、本来客観的であるべき国の生活保護基準額改定作業のプロセスが専門的判断を無視したものであったことを黙認し、生活保護利用者の極めて厳しい生活実態から目を背けたものです。裁判所が、その責務である事実の探求を放棄し、名古屋地裁、札幌地裁同様に被告側の主張を全面的に認めたことは、到底容認できるものではなく強い憤りを感じます。

 同種の訴訟は、全国29か所の地方裁判所に起こされており、福岡地裁での判決は4件目、不当判決としては3件目(※)となりました。

 本協会は、この不当な判決に強く抗議するとともに、今後も各地での新生存権裁判の行方を注視し、「いのちのとりで裁判」のための支援協力を引き続き行ってまいります。さらに、全国各地で戦っている約1,000名の原告や弁護団、支援者を応援し、声を上げにくい生活保護利用者も含め、すべての人のいのちと心身の健康が守られる社会の実現に向けて今後も尽力していきます。


※1件目の名古屋地裁(2020年6月)では請求棄却、2件目の大阪地裁(2021年2月)では、減額処分の取り消しと独自指標の不整合を認めた「正当な判決」、3件目の札幌地裁(2021年3月)及び4件目となる福岡地裁では、生活保護基準引き下げは「合憲」との判断とともに原告側の請求が全面的に棄却される「不当判決」となった。

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標題 ヤングケアラーに対する支援の充実に向けて
日付 2021年5月24日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先 構成員の皆さま
 
 いま、ヤングケアラーと呼ばれる子ども・若者に対する支援課題がようやく衆目を集めています。
 家庭の中で、両親や祖父母、きょうだい等の介護や世話などをしている子ども・若者たちは「ヤングケアラー」と呼ばれ、直近の調査(1)では中学2年生のおよそ17人に1人、全日制の高校2年生のおよそ24人に1人が「世話をする家族がいる」と回答しています。
 そのような実態を受け、厚生労働省と文部科学省は、本年3月に合同で「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」を立ち上げ、5月17日には具体的な支援策を盛り込んだプロジェクトチームの報告(2)を取りまとめました。

 報告には、ヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげるため、今後取り組むべき施策として教育委員会の担当者だけでなく、医療機関のソーシャルワーカーやケアマネージャー、児童委員、そして子ども食堂のスタッフなど地域や民間機関・団体等も対象にした研修を行うこと、相談体制を強化するため、対面やSNSなどで相談に応じる事業や教育現場へのスクールソーシャルワーカー等の配置を支援することなどが盛り込まれています。

 精神保健福祉士は、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)の時代から「家族支援」を重視してきました。近年は、この支援を要する「家族」が子どもや若者に広がっていることを再認識し、子どもらしい暮らしができずに辛い思いを抱いているヤングケアラーの問題に取り組む必要があります。子ども・若者による介護や世話を必要とする親やきょうだいが、メンタルヘルス不調を抱えていることも少なくなく、また、ヤングケアラー自身も精神的な不調を訴え、私たちの目の前に現れることがあります。私たちが日々向き合っているクライエントの家庭には子どもや若者が存在し、彼らが家事や情緒的ケアを担うことで家庭として機能しているのではないかという視点を持つことが重要です。

 子ども・若者を苦しめる「貧困」「DV」「虐待」「メンタルヘルス不調」などは精神保健福祉士が介入する切り口になります。ヤングケアラーを生み出す背景にある生活のしづらさに対して、的確なアセスメントを行う必要があります。私たちすべての精神保健福祉士には、子どもが子どもらしく育つ環境を保証し、子ども・若者が安心して健やかに成長するうえでの権利を守ることが求められています。家族を、子どもを孤立させ追い詰めることなく生活を支えていくために、今一度、ご自身のアンテナの感度を上げ、また、必要な制度施策への要望に関するご意見等をお寄せいただければと思います。ヤングケアラーに対する支援の充実に向けて、皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。
  1. 「ヤングケアラーの実態に関する調査」令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
  2. ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告

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標題 新型コロナウイルス(COVID-19)感染防止に向けた緊急事態宣言を受けて~精神保健福祉士として子どもと家族をはじめ支援を要するすべての人を支えましょう~
日付 2021年5月2日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 理事会
提出先 構成員の皆さま
 
 新型コロナウイルス(COVID-19)感染の再拡大のなか、日々奮闘されているすべての皆さまに敬意を表します。

 ゴールデンウイークに入りましたが、新型コロナウイルス感染拡大の防止のために複数の都府県で緊急事態宣言が発出され、その他の地域でも自粛生活が求められています。

 子ども虐待やDVの増加、自殺者、特に若者や女性の自殺の増加が統計からも分かっており、今後この傾向はより強まることが危惧されています。

 様々な事情から子育て支援を必要とする家庭をはじめ、病気や障害などを抱えて暮らす方々にとって、公的な機関・施設の利用制限等もあり支援が行き届かない状況も現実化しています。

 特に、普段は課題が表面化しない家庭においても、長期化するステイホームの影響やリモートワークにより、家庭そのものが社会から孤立し、親子関係・夫婦関係悪化のリスクが高まります。これらの中には、精神保健福祉士が日常的に行っている生活支援があれば避けられる課題も少なくありません。皆さまにとっても感染防止策に努めるなかで制約があるかと思いますが、どうぞ今まで以上に人びとの生活を支え、特に子どもの安全を確保することに努めてください。

 本協会では連休中も「子どもと家族の相談窓口」を開設し、24時間メール相談の受け付けと、自殺防止対策として全国6拠点における「こころの健康相談統一ダイヤル」の夜間電話相談事業を行っています。

 構成員の皆さまに改めてお願いいたします。日常業務において、より一層「子ども虐待防止」「子育て支援」「家族支援」の視点を意識してソーシャルワークを展開してください。

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標題 子ども家庭福祉に従事する者の資格の在り方に関する意見
日付 2021年4月28日
発信者 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島善久
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会 会長 早坂由美子
提出先 社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会 座長 山縣文治 様
 
 平素より、子ども家庭福祉の充実に向け、ご尽力くださっていることに感謝申し上げます。

 さて、4月23日に開催された第27回社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会(以下、専門委員会)におきまして、厚生労働省子ども家庭局より、資料3-2(子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関する議論の叩き台)として、「基本的な考え方」が提示されましたが、後日、専門委員会においてソーシャルワークの職能団体としての意見陳述の機会を頂戴できると伺っております。

 このたび、別紙のとおり、「基本的な考え方」について論点ごとの意見をまとめましたので、次回以降のご議論の資料としてお取り扱いくださいますようお願い申し上げます。

別紙:「基本的な考え方のイメージ(多職種で問題解決をしていくために)」(PDF:425KB)

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標題 子ども家庭福祉に従事する者の資格の在り方に関する意見
日付 2021年4月21日
発信者 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島善久
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先 社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会 座長 山縣文治 様
 
 私たちは、従前より、新たな国家資格の創設には反対の立場をとって参りました。その考えは、『子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ』のとりまとめを拝見した今も変わるものではございません。ソーシャルワークの専門性は一つであり、また地域共生社会の実現に向けて既存の国家資格である社会福祉士・精神保健福祉士が今後一層の研鑽を重ねることで、この分野においてもソーシャルワーカーとして機能できると考えております。

 繰り返しを厭わずに申し上げますと、私たちの提案の主旨は、多職種等の連携によって、子どもとその家庭の支援を展開していくこと、その専門性の確立のためには、社会福祉士・精神保健福祉士の国家資格を基礎として専門分野の研鑽の仕組みを構築し、質の担保を「認定」するというものです。

 私たちは、子どもとその家庭の支援において、ソーシャルワークが欠かせず、であればこそソーシャルワーカー資格の細分化ではなく、ソーシャルワークのアイデンティティを強化しつつ、その基盤の上に、各分野の専門性を高めることが最善の方策であると信じております。これから開始される専門委員会におかれましては、職能団体や養成団体等のヒアリングに加え、パブリックコメントを実施して開かれたご議論を展開していただけますようお願い致します。

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標題 【要望】子ども家庭福祉に関する資格のあり方について
日付 2021年4月21日
発信者 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島善久
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先 厚生労働省子ども家庭局長 渡辺由美子 様
 
1.子ども家庭福祉に関する新たな国家資格の創設には反対いたします。

2.子ども虐待撲滅のための新たな資格は、社会福祉士と精神保健福祉士のうち高度な専門性を有する者に対する認定資格としてください。

3.社会的養育専門委員会での論点を、当初課題とされていた児童虐待の撲滅に焦点化してください。

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標題 横浜市における不適切な生活保護申請対応をめぐって
日付 2021年4月15日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 構成員
 
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 構成員の皆さまへ

 日頃より本協会の活動にご参加いただき、感謝申しあげます。

 コロナ禍によって、非正規労働者や外国人、アルバイト学生など、元々生活基盤が不安定であった人々ほど、困窮の度合いが増しています。特に女性は、今回大きな打撃を受けた飲食業やサービス業に非正規で従事している人も多く、皆さまも困窮の深刻化をお感じのことと思います。

 今般、生活保護申請に訪れた女性に対し、「ホームレスの場合は施設対応」などと明らかな虚偽の説明を繰り返し、まさに「水際作戦」で申請を妨害するという事案が、横浜市神奈川区役所で発生しました。市民の生存権の保障にかかわる完全な独占性を持つ組織が自らセーフティーネットの崩壊を招く行為であり、ようやくの思いで窓口につながった人の気持ちを萎えさせ、うつ病の発症や最悪の場合は自死にもつながりかねない重大な過失(又は故意による不作為)であるといえます。

 さらに衝撃的なことに、この事案は経験のある常勤の福祉専門職による対応でした。これまで本協会は、生活保護をめぐる要望で福祉専門職の常勤配置を要求してきました。福祉事務所職員の約6割が福祉専門職であるという先進的な横浜市でこのような実態があることに驚きと怒りを禁じえません。またそれ以上に、常に社会的に弱い立場にある人々の側に立ち、権利擁護を旗幟とする福祉専門職が、命の危機さえ招く権利侵害に加担してしまったことを、私たちは重く受け止めなければなりません。

 このような事態の背景には、1)職員の倫理面・知識面・技術面の専門性の不足、2)組織的圧力によって不正な運用がまかり通る組織風土、3)コロナ禍においてより際立つケースワーカーの量的な不足、などがあると考えられます。

 福祉専門職として高度な専門性を有していても、組織が健全に機能していなければ、その圧力に屈し、権利侵害に手を染めてしまう、あるいは権利侵害を看過してしまうことは十分に起こりえます。それは時に権利が易々と制限されてしまう精神医療に接している精神保健福祉士が、もっとも身に染みて感じていることではないでしょうか。

 ソーシャルワーカーは権利侵害に最も敏感に反応し、差別や抑圧、不利益を被っている人々を支え擁護する立場にあります。人権感覚を研ぎ澄ませ、不正と感じられることに直面した時、その当事者に寄り添い、制度・法律及びソーシャルワークの原理に根拠を持って権利擁護が行えるよう、覚悟と理論武装が必要です。その上で、内外の関係者と連携し、制度や組織の改善を含めたソーシャルアクションを展開することも、ソーシャルワーカーとして必須の課題です。

 私たちには、精神保健福祉士法第41条の2(資質向上の責務)に定められているとおり、知識及び技術の向上に努める義務があります。
 構成員の皆さまには、今回の事案をわが事と受け止め、制度が正しく運用されているかどうか、自らの日常実践が社会的に弱い立場にある人々の側に立っているかどうか、権利擁護に基づいた支援が展開できているかどうかを、改めて問い直してください。
 そのためには、少なくとも以下が必要と考えられますことを申し添えます。
 ・生活保護をはじめ、社会保障・福祉の制度や法律の精通に努める。
 ・疑問があれば、法令、通知、書籍などを参照することを怠らない。
 ・職場や周囲の慣習や風土に流されず、ソーシャルワークの原理に基づく批判的な視点を常に持つ。
 ・専門職としての意見を所属組織や関係機関に適切な方法で伝える。
 ・制度や法律に不備があれば、改善策を考え、問題を提起する。
 ・一人で抱え込まず、同僚をはじめ他職場の仲間や協会等と連携し、支え合う。

 本協会としましても、以下のとおり尽力して参る所存です。
 ・これまで以上に、制度や法律に関する知識を提供する機会を増やす。
 ・制度や法律の運用等に関する構成員の疑問、悩み、困りごと等へのサポート体制について検討する。
 ・さまざまな制度の改革、職場改善のための研究、提言等の活動を強化する。

 なお、厚生労働大臣宛に提出した本事案に関する要望書を併せてご一読くださいますようお願申しあげます。

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標題 札幌地裁「新・人間裁判」の判決に対する声明
日付 2021年4月14日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
 
 2021年3月29日、国が生活保護費の支給額を引き下げたのは生存権を認めた憲法に違反するとして北海道の生活保護受給者らが処分の取り消しを求めた裁判において、札幌地方裁判所(以下「札幌地裁」という。)は原告の請求を棄却しました。この判決に対して、精神障害者をはじめとするすべての人の権利を擁護し、メンタルヘルス課題のある方々を対象とするソーシャルワーカーの職能団体である本協会としての見解を以下に表明します。

 札幌地裁は、基準の改定による引き下げは、「厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権がある」と指摘し、「国の財政事情を踏まえた自民党の政策の影響を受けたものであったとしても、直ちに裁量権の範囲の逸脱又は乱用があるとはいえない」として原告の請求を棄却しました。

 一方、大阪地方裁判所では2021年2月22日に、厚生労働大臣による生活保護基準改定を違法とし、同基準による減額処分の取り消しという画期的な判決が言い渡されており、厚生労働大臣が2013年から2015年にかけて生活保護基準を減額改定した判断には、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くとしていました。

 ところが札幌地裁では、「統計学上正当性を欠くとはいえないし、不合理であったと認められない」としており、客観的であるべき改定作業のプロセスが、行政の都合、政治的意見、社会風潮等によって歪められた事実は無視されています。このような、司法の責任を放棄したかに見える今回の不当判決は、131人の原告だけではなく、多くの生活保護受給者の思いや尊厳を踏みにじるばかりか、生活保護に対する誤った認識やスティグマを強めるものであり、生活保護制度を取り巻く現実を直視し全容を把握できているとは思えません。

 本協会は、今後も続く各地での裁判と世論に与える影響を危惧し、本判決に強く抗議するとともに、一連の裁判の動向を今後も注視し、全国各地で本裁判を戦っている約1,000人の原告や弁護団、支援者を応援していきます。また、社会正義の実現を追求するとともに、すべての人のいのちと健康が守られる社会の実現に向けて今後も尽力していきます。

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標題 横浜市における不適切な生活保護申請対応を受けた今後の生活保護行政の改善・再発防止に関する要望
日付 2021年4月13日
発翰番号 JAMHSW発第21-15号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  厚生労働大臣 田村憲久 様

 平素より精神保健福祉の向上にご尽力くださり、厚くお礼申しあげます。

 さて、貴省でもご認識のとおり、コロナ禍は、元々生活基盤が不安定であった人々にもっとも深刻な打撃を与え、その困窮の度合いは増すばかりとなっています。そのような現状下にあって今般明るみに出た横浜市神奈川区役所における「水際作戦」のごとき申請を抑制する事態はセーフティーネットの崩壊に直結するものであり、許されるべきことではありません。

 対応した職員が福祉専門職であったとの報道を、ソーシャルワーカーの専門職団体である本協会は大きな衝撃をもって受けとめ、改めてソーシャルワーカーの専門性を顧み、人権感覚を鍛える必要を感じております。しかし、福祉専門職であっても水際作戦のような不適切な行政対応を許容してしまう構造上の問題の改善が喫緊の課題であることは言うまでもありません。

 つきましては、今後の再発防止等の措置に関し、下記のとおり要望いたします。

 
 
1.原因の究明と適切な運用の確保について
 不適切な対応が生じてしまった背景として、職員の知識不足、誤った運用の組織内共有等、様々な可能性が考えられます。しかし未だ原因が精査されたとは言えず、他の自治体でも同様の状態にある可能性は否定できません。同時に、生活保護行政は均てん化されるべきであるにも関わらず、自治体間の運用差も解消されていません。
 また、生活や生命に直結する極めて重要な制度であるにも関わらず、権利侵害を予防する実効的な仕組みがありません。
【要望事項】
(1)徹底した原因究明と分析、そして再発防止策について早急に着手してください。
(2)速やかに各自治体に向けた実態調査を行って結果を公表し、必要な是正措置を講じてください。
(3)全国統一された、正しく分かりやすい「重要事項説明資料」を作成し、その使用を義務化してください。
(4)個別の面接は、来談者が拒んだ場合を除き行政側でも録音することを原則にしてください。情報を正確に把握し、面接対応の品質向上に役立てるためであり、職員の不当な言動を防ぐとともに、職員の身を守ることにもなります。そのためのICレコーダーの費用は、国が負担してください。
(5)面接には、他の部署や機関の福祉職を含む支援者が立ち会えることを明確にするとともに、支援者がいないときに本人が希望すれば福祉または法律の専門職を派遣する制度を作ってください。
(6)相談者、利用者、支援者などからの福祉行政に関する苦情の受付、行政との仲介、改善要望等を行う第三者機関を設置してください。

2.生活保護ケースワーカーの量と質の確保について
 一部自治体において特に深刻であることは周知のことですが、ケースワーカー数の不足によって現場は疲弊し、必要十分な教育を受けることができていません。
 また、個人の資質が向上しても、組織に属する者として、上司等からの不適切な圧力を感じると適切に行動できません。たとえば今般のような不適切対応が組織的に求められたとすれば、そのことに声を上げて是正につなげることは極めて困難です。
【要望事項】
(1)ケースワーカー現業員、査察指導員の人員配置基準を、現在のような標準数ではなく、法的拘束力を持つ基準に戻すとともに、会計年度職員をはじめ常態的な非正規職員の多用に歯止めをかけてください。
(2)ケースワーカー、査察指導員の人件費と事務費が、使途を限定しない地方交付税交付金の一部として自治体に交付される現状を改め、義務教育費国庫負担制度等と同様にその全額か、少なくとも保護費と同じく4分の3を国庫負担としてください。
(3)生活保護、児童福祉をはじめとする福祉分野については、中途採用を含み福祉職として職員を採用することを促進してください。
(4)着任前及び一定期間ごとに、制度や倫理を網羅した全国統一フォーマットによる研修の受講を義務化し、的確な知識と誇りを持って職務に取り組めるようにしてください。講師には、貧困問題等を専門とする外部人材、生活保護を利用する当事者等を活用してください。
(5)業務の特殊性を踏まえ、パワーハラスメント防止、ストレスチェック等の一般施策に加えて、制度的な身分保障と、職員が悩みを安心して話せる相談先の確保、外部からのヒアリング・組織診断など、職場風土の改善・向上に役立つ仕組みの導入を検討してください。その際には、専門職団体や福祉行政に関する第三者機関の利用もありうると考えます。
(6)地区担当のケースワーカーの経験・力量の差をカバーし、過重負担、孤立を防ぐため、1つの地区をできる限り男女のペアで受け持つ方式の当否を研究してください。このことは、利用者が異性のときに生じる問題や個別の相性が合わない場合の対処にもなります。

3.生活保護制度の周知・広報について
 世間一般にも生活保護への偏見、誤解等が根強く残っており、制度利用の妨げになっています。申請主義が原則となっていますが、このような状況では適切に申請に至る意思決定ができず、コロナ禍においては特に事態は深刻です。
【要望事項】
(1)当面、国の責任において制度周知、申請勧奨等の広報をテレビ、新聞、ネット等の広告を含めて、強力に進めてください。
(2)各自治体にも積極的な広報施策を求め、将来的には義務付けてください。
(3)生活保護の申請用紙を、相談窓口と福祉関係機関に備え付けるとともに、厚生労働省や各自治体のホームページからダウンロードできるようにしてください。
  以上
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