第55回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第18回日本精神保健福祉士学会学術集会

ごあいさつ

<開催のごあいさつ>公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠

  令和元年、第55回日本精神保健福祉士協会全国大会・第18回日本精神保健福祉士学会学術集会(愛知大会)を開催するにあたり、ご参加いただく皆様に歓迎の意を込めてご挨拶申しあげます。

 愛知県においては、本協会の前身である日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会設立以来、3回目の大会開催となります。1980年に開催された第16回大会のテーマは「変わりゆく精神医療の中で-日常実践をとおして社会復帰を考える-」、第42回大会テーマは「かたろまい!つなごまい!夢~今、私たちの可能性をもとめて~」そして今回は「『原点回帰』かたろまい!つなごまい!未来へ!~ソーシャルワークの専門性の共有~」。昭和、平成そして令和、テーマは夫々の時代を映しながらも、そこに通底するのはソーシャルワークとは何か、精神保健福祉士の存在意義は何か、社会に求められるソーシャルワーカーの役割や目指すべきものは何か、という真摯な問いかけではないでしょうか?「原点回帰」というテーマは、連綿と引き継がれてきたソーシャルワーク魂の中身を再考することで、未来につなげていく試みではないかと思います。

 現在のわが国の精神医療状況は、未だ世界に比して、病床数の多さ、平均在院日数の長さを指摘されてはいますが、徐々に減少と短縮の傾向が続いています。しかし私たちがその中心的な使命としてきた社会的入院の解消、私たちがその価値とする権利擁護、それを可能にするシステムの構築、精神障害者が当たり前に地域で暮らすための地域保健福祉医療体制の充実、このどれもが十全に果たされたとは言えません。しかしながら入院中心から地域生活中心へという流れを停滞させることはできません。むしろ精神保健福祉士はその流れを止める柵を取り除き、流れを加速する役割を担わなければならないでしょう。

 一方で人口構造の変化、働き方の変化、家族構造の変化、地域のつながりの希薄化など、社会環境は大きく変動しており、その中から生み出された「8050問題」などの複雑で多様な問題に対して、精神保健福祉士の力量が試されようとしています。記憶に新しい凄惨な児童虐待死事件、障害者監禁事件など地域社会においてソーシャルワークが十分に機能していれば尊い命が奪われることはなかったかもしれません。多様なネットワークの構築や地域づくり、社会的に排除されやすい人の権利擁護など、地域を基盤にしたソーシャルワークの展開に力を注がずして、私たち精神保健福祉士の存在意義などありません。

 開催地の尾張名古屋は東西交通の要衝の地、令和天皇の即位式で注目を浴びた三種の神器の1つ、草薙神剣をご神体とする熱田神宮を中心に栄え、古くからの賑わいが今に息づく街です。この地で皆様とつながり、熱く語ることができますことを楽しみにしております。

<歓迎のごあいさつ>全国大会・学術集会長 

   平成の元号を終え、新しく令和時代を迎えました。日本という私たちの住む国のありようを振り返ることの多いこの頃です。平成は戦争がなかった時代、そして大災害を経験した時代でした。それらの傷跡を国民それぞれが心に秘めつつ、新たなグローバル化と人口減少による新しい社会のしくみ作りが必要とされています。多くの人々が未来に希望のもてる共に生きる社会になることを願います。

 さて、前年度、長崎大会のテーマ「メンタルヘルスソーシャルワーク実践の深化~パラダイムの再考~」を引き継ぎ、第55回全国大会・第18回学術集会を愛知県名古屋市にて開催することとなりました。全国大会・学術集会長としまして歓迎のご挨拶を申しあげます。

 現在、精神保健福祉分野では、従来の精神科医療及び精神保健福祉分野の地域移行・地域定着が法律に基づき、全領域の障害分野のソーシャルワーカーやスタッフがチームで支援することが増えました。また、待ったなしで来る、人口減少、少子高齢化社会、孤立社会から派生するうつ病、依存症、ひきこもり、自死、虐待、DVそして社会保障制度の弱体化の中で、国民生活の中に潜むメンタルヘルス課題が多く存在しています。また、教育、司法、産業各分野など社会全体で取り組まなければ問題が解決しないメンタルヘルス課題もあり、私たちの求められている実践領域は広がり、多分野にまたがる横断的な地域包括的活動が求められています。

 今、社会のこの大きな変化に応えられているのかという問題意識のもと私たち精神保健福祉士は、私たちの原点を確認し、専門性を共有し、そして未来に羽ばたくため、「『原点回帰』かたろまい!つなごまい!未来へ!~ソーシャルワークの専門性の共有~」というテーマで全国大会・学術集会を準備しています。時も、精神保健福祉士法施行(1999年)から20年を経過した節目です。今大会では私たちの実践を振り返り、精神保健福祉士の原点・魂は受け継がれているのか、新たなソーシャルワークの課題に向き合えているのか、次の時代を担う新しい仲間にその価値を伝える土壌を作れているのか等、講演、シンポジウムで参加者と共に考えたいと思います。

 1日目のプレ企画では選りすぐりのテーマを用意しています。夕方の懇親会では名古屋風おもてなしも用意しております。2日目の分科会は100題を超える演題発表が行われます。また、市民公開講座として従来の愛知ならではの実践である「あした天気になーれ」という当事者の声を前面に出した啓発事業を企画、また義足のプロダンサーと評しどのような状況におかれても自身を最大限に表現する活動を行ってこられた大前光市氏の講演及び舞踏を企画しています。

 最後に、私たち精神保健福祉士の未来への飛躍と、国民のメンタルヘルス課題に果敢に応え真に国民に必要とされ社会貢献できる精神保健福祉士の活動を願い、有意義な大会にしたいと考えています。全国の構成員の皆さんの参加をお待ちしています。