要望書・見解等

2025年度


標題 2026(令和8)年度診療報酬改定に関する要望について
日付 2025年5月29日
発翰番号  JAMHSW発第25-84号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  厚生労働省 保険局 医療課長 林 修一郎 様
 
 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、2024年4月に改正精神保健福祉法が全面施行となり、医療保護入院者をはじめとする退院促進措置の強化が図られているところです。また、新たな地域医療構想に精神医療が位置づけられる予定となっており、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(以下「にも包括」という。)の構築の推進と相まって、地域における精神医療提供体制の改革が進められていくものと認識しております。
 つきましては、2026年度の診療報酬改定に向けて以下のとおり要望いたしますので、ご高配のほど何卒よろしくお願いいたします。
 
  1.通院・在宅精神療法(I002)の療養生活継続支援加算に係る要望事項
(1)初期集中支援として初回の算定時から起算して3月以内に限り、1月につき3回を限度として算定できるようにしてください。

<理由>
 療養生活継続支援の導入初期(支援の開始から3か月程度)には、対象となる患者本人との面談や、関係機関との連絡調整、カンファレンスの実施等のために集中して取り組む場合が多く、時間や回数を要するため1月につき3回まで療養生活継続支援加算の算定が必要と考えます。
 なお、より多くの医療機関が療養生活継続支援に取り組めるように、本協会において当該支援に係る研修ツールの開発を予定しております。
※本要望事項の根拠として、実際の療養生活継続支援の事例を2025年7月末までに提出する予定です。

(2)持続性抗精神病注射薬剤の投与等により診療間隔が1月を超える患者で「包括的支援マネジメント導入基準」を1つ以上満たす者については、当該加算を月1回算定できることとしてください。
<理由>
 持続性抗精神病注射薬剤を投与されている患者では、診療間隔が1か月以上空く場合があります。また診療間隔が空いている患者について、次の診察を待たずに必要に応じて精神保健福祉士等が介入することで、医療中断を防いだり、孤独・孤立を予防できたりする場合があります。その様なケースへの面接、連携が必要なため算定できるようお願いいたします。
※本要望事項の根拠として、実際の支援事例(コメディカルによるかかわりはあるが医師の診察間隔が空くケースであって、医療中断しそうだったが、介入により中断が避けられた事例等)を2025年7月末までに提出する予定です。

  2.精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の推進に向けて、一定の要件を課したうえで、精神科医療機関の外来診療部門における精神保健福祉士の配置を評価する精神科地域連携体制充実加算を新設してください(通院精神療法の加算)。
[算定要件]
・療養生活継続支援加算に係る施設基準届出をしていること
・保険医療機関に所属する精神保健福祉士が所在する市区町村等の(自立支援)協議会や「にも包括」に資する協議の場に参画していること

<理由>
 「にも包括」の構築においては外来・在宅診療を担う精神科医療機関の役割が一定程度必要であり、医療機関と行政(保健所など)や地域援助事業者等との連携が十分に発揮されないと、患者に対する医療を含む包括的な支援が確保されているとは言いがたい状況にあります。現在、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部が開催する「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」では、外来等での多職種による支援を求める意見が出ているところです。このような機能の重要性を理解して支援を実践している医療機関が少なからずあり、精神保健福祉士を外来診療部門に配置している医療機関に対して診療報酬で評価する必要があると考えます。
 外来通院はしているものの、それ以外に外部との接触・交流機会がないなどの患者にとっては、地域内の関係機関との連携等に強みを持つ精神保健福祉士が外来診療部門にいることで、より自分らしい生活を叶えるための体制が構築され、福祉や介護など必要な支援につながりやすいというインセンティブがあります。多職種を雇用している精神科診療所医療機関においては連携が取りやすいという調査結果があり、また医師のタスクシフトにも貢献しています。

<参考文献>
 大阪の精神科診療所の有志 ワーキングチーム:診療所には精神保健福祉士を必要としている人がいます.2017年3月

 参考文献から読み取れる内容は、以下のとおりです。
 精神保健福祉士の行う支援は通院患者の日常生活での困りごと、医師には言えない病状のこと、どこともつながりがない患者の話を聞き、受け止め、一緒に考える等をしている。数値や形にみえる物ではないが、少しずつ信頼関係をはぐくみながら、本人の望む生活を聞き取り、それらに近づくために様々な社会資源を提案、選択、利用を繰り返してゆく。
 また、福祉や介護等につながりのある患者には、本人の意向に沿った連絡、相談を各機関と行い、点や線だけでなく面で支えられるように所謂連携を電話や対面等で行う。時に関係機関が集まり本人を中心としたケア会議を開催し、よりその人らしい生活を目指すために目的を一致し、より連携を深めやすくする。
 これらの支援に対し、患者からは話すことで安心できる、信頼できる、前向きになれた、経済面が改善された等の意見がある。
 関係機関や行政からは、窓口的な役割が明確で相談しやすい、連携がスムーズ、他のケースの話しも相談にのってくれてありがたい等の意見がある。
 このように業務内容は多岐に渡り個別支援、院内連携、多職種連携、他機関連携等回数や時間で推し量れないが、精神保健福祉士が外来部門にいる・いないでは、いる方が患者にも他機関にもこれから受診をする人にも、有効性が参考文献から理解できる。

  3.精神科退院前訪問指導料(I011—2)の算定回数を一部緩和してください。
<具体的要望内容>
 現行では、当該入院中3回(入院期間が6月を超えると見込まれる患者にあっては、当該入院中6回)に限り算定することとされておりますが、「住環境の整備を含め地域生活への移行に向けて重点的な支援を要する患者」「療養生活継続支援加算の『導入基準』を複数項目満たす患者」「障害者総合支援法に規定する『地域移行支援』を利用できない患者」等に対象を限定して、当該入院中6回(入院期間が6月を超えると見込まれる患者にあっては、当該入院中12回)に限り算定できることとしてください。
<理由>
 長期入院者の退院阻害要因は「本人の意欲がない」「家族の受け入れ拒否」「社会資源の不足」等があげられます。長期入院等の患者に精神保健福祉士等が同行して施設見学に行ったり、単身者用のアパートをみたりすることが、本人の意欲喚起につながり必要となります。また、家族との同居が難しい場合には、単身アパート生活やグループホームの利用に向けて、精神保健福祉士等が一緒にアパートを探す、体験利用に同行する等があり、退院後の生活に必要な物品の購入、入居先の片付け等の環境整備のために、現行の規定回数以上の訪問指導を行う場合があります。また、患者の受け入れ態勢が整っていない家族との調整のために、何度も患家に通い、理解を求める場合もあります。
※本要望事項の根拠とすべく、当協会として調査を行う予定です。退院前訪問を規定回数以上行ったことがある事例を収集し、算定回数の制限を緩和する対象者像を明らかにして、提示します。

  4.精神科地域移行実施加算(A230-02)の対象を、現行の「精神病棟における入院期間が5年を超える患者」から「1年を超える患者」としてください。
<理由>
 別紙資料からは、在院期間が1年以上5年未満の患者数の2008年と2023年の比較において-11%であり、他の「5年以上10年未満」(-22.1%)、「10年以上20年未満」(-33.8%)、「20年以上」(-55.4%)より減少率が低く、この期間の退院に向けた重点的な取り組みが必要であると考えます。1年以上の長期入院者の退院促進に評価が結びつくことで、さらなる長期入院者の減少が進むと推察します。
※地域移行実施可算を算定している医療機関は2023年で369カ所
別紙「2008年度と2023年度の在院期間別患者数の比較と増減率」

  5.医療機関における「地域移行支援」を実施する一般相談支援事業所との連携を診療報酬において評価してください。
<具体的要望内容>
 包括的支援マネジメント導入基準に該当する項目を充てる等により、対象とする患者の状態像を明確にしたうえで、地域移行支援計画書の添付、ケア会議の議事録、療養生活継続支援加算の計画書作成等を要件として、医療機関が地域移行支援導入実施加算(仮称)を算定できることとしてください。
<理由>
 地域移行支援の体制整備は各市町村で行われてきているが、地域差があり、体制整備が進んでいる所とそうでない所の差があります。また、精神科病院の入院患者のうち社会的入院であることが推察される「在院期間1年以上の任意入院者」は78,781人(R6年度630調査)となっています。この中には要介護状態の高齢患者も含まれていると考えられ、高齢者施設等への移行も順次行われているところです。一方それ以外の年齢層では、支援があれば退院できる患者も数多くいると考えられます。
 現状では地域ごとの支援体制整備に差があることが、精神科病院個々の地域移行支援の導入に対する考え方に影響を与えている側面があると考えます。そのため、精神科病院に積極的に地域移行支援を利用してもらうために、一般相談支援事業所との連携を診療報酬上評価することで、地域体制整備は進み、受け入れ体制も整っていくと考えます。

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標題 公益社団法人日本精神保健福祉士協会設立60周年宣言 精神保健医療福祉の未来を拓く~新たな時代への誓い~
日付 2025年4月19日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会
 
 私たちは、『精神保健医療福祉の将来ビジョン』の達成に向けて、すべての精神保健福祉士とともに以下を実践することを、ここに宣言します。

1 精神障害者の「社会的復権」を実現し、すべての人の尊厳や人権が守られ「ごく当たり前の生活」を送ることができるよう、わが国の精神保健福祉の増進と精神医療の改革に寄与します

2 すべての精神保健医療福祉の現場における官民協働チームのなかにあって、「当事者主体」の視点を貫きます

3 精神保健福祉士の社会的認知度の向上に努めるとともに、その魅力や役割を広く発信し、資格取得支援や研鑽制度の充実、働きやすい環境の整備など、人材の確保に力を注ぎます

4 社会情勢や環境の変化が人びとにもたらすメンタルヘルス課題への適切な対応、及び、課題解決や伴走に必要な力を備えた精神保健福祉士を育成します

5 戦争や紛争、侵攻といった社会的危機に対して、戦後80年を迎えるわが国のソーシャルワーカーとして平和を希求し、持続可能な平和の実現に貢献します

6 一人ひとりの「想い」に寄り添い、誰もが自分らしく生きることのできる社会をともに創り、すべての人が「コノ邦ニ生キル幸セ」を実感できるような社会の実現を目指します

 私たちは、新たな時代への誓いを胸に、精神保健医療福祉の未来を切り拓いていきます

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