課題別研修/ソーシャルワーク研修2018〜知識や技術を高めよう〜

2019年3月3日、上智大学 四ツ谷キャンパス(東京都)を会場に標記研修を開催しました。ここでは、修了者からの報告記事を掲載します。

テーマ1 真の「連携」「協働」体制を生み出すために〜精神保健福祉士に求められる“伝える”力〜

     
吉池講師による講義1・演習1 演習2の様子 代表者による修了証書授与

・ 「連携」〜”伝える”力〜

医療法人社団医誠会 湘陽かしわ台病院居宅支援事業所(神奈川県)/経験年数18年 白石 さとみ

 研修会場は上智大学四谷キャンパス6号館で、日本精神保健福祉士協会の開催とあって、北は北海道、南は鹿児島からの熱心な参加者で、グループディスカッションも大変盛り上がりました。講師の先生方、運営委員の皆様、大変お世話になり有難うございました。

 私は、精神保健福祉士養成校である日本福祉大学通信教育部を2018年3月17日に卒業して、早くも1年が過ぎました。2018年9月に現在所属する病院の地域医療連携室に入職し、2019年3月より居宅介護支援事業を立ちあげ、主任介護支援専門員として活動を開始しました。

 介護支援専門員として、病院や診療所の主治医を始め、ソーシャルワーカー、退院支援看護師、地域包括支援センター、介護保険のサービス事業者を始め民生委員やインフォーマサービスとの連携を図るだけでなく、介護保険以外の多くの機関や職種との連携を図る場面も多く、〜"伝える"力〜というタイトにとても魅力を感じ、研修の申込をしました。

 今回の受講により、介護支援専門員として他の専門職である精神保健福祉士として活躍されている方と交流することにより、所属機関の違いによる精神保健福祉士の専門性を理解することも目的としていましたので、グループディスカッションにより参加者の所属での役割、個性、技能、経験、ネットワークなどを伺う機会を設けて他のグループメンバーに”伝える”など、大変有意義でした。

 講師の吉沢毅志先生の講義資料の参考文献から、【連携】について、改めて調べてみました。

 山中京子「医療・保健・福祉領域における『連携』概念の検討と再構成」によると、「援助者が別の援助者と「連携」を取ってみようと思い立つには、その前提となる条件が必要である。それは以下のような場合であると考える。
 @援助者がクライエントのニーズを自分では充分把握できないと悩む場合
 A援助者はクライエントのニーズを充分把握しているが、自分の援助方法や力量がはたしてそのニーズを充分に実現できるかどうか疑問や不安を感じている場合
 B援助者が自分の援助方法や力量ではクライエントのニーズを実現する事ができないとはっきり自覚した場合、など
 上記いずれの場合でも、援助者が自分の援助方法、力量、知識、経験に疑問をいだくあるいはその限界を認識することが前提条件となる。」

と、記載されていました。これまで、連携は良いものとして単純に認識していましたが、吉沢毅志先生の講義から連携の有効性と弊害性についても学び、改めて考えさせられる良い機会となりました。

 今後、障がい福祉制度を利用されていた方々が高齢者になられ介護保険制度を利用されたり、家族に障がい福祉制度等に繋がっていない未利用の方も多く、多種多様な機関や専門職と連携を組む機会も多くなり、今回の研修で学んだ、精神障がい者本人(高齢者も同様)の自己実現に寄り添い、ともに歩む価値に根ざした〜”伝える”力〜を研鑽していきたいと思います。

テーマ2 ソーシャルワークアセスメントスキルを学ぶ〜クライエントの全人的理解をめざして〜

     
田中講師による講義1・演習1 演習2の様子 代表者による修了証書授与

・ こころに寄り添うということ

公益社団法人岐阜病院(岐阜県)/経験年数19年 河村 由紀

 人と関わる仕事、人の人生に携わる仕事、喜びに出会えた瞬間、貴重な経験をさせていただいている毎日。卒業して何年も経ちますが、きちんと原点に立ち返りその人をとらえる視点・アセスメントを学びなおしたいと自分を律する気持ちで研修に臨みました。

 研修では講義・仮説プログラムの実践という形で進められていました。当初、「アセスメントの難しさって何?」との質問に対してグループの中では「背景にあるものが表出化されるもの・そうでないものがある。表出化しないものを読み取るのが難しい。」「話をする中、本当かなと思うことがあり、情報を得ていくことの難しさを感じた。」等、「真実は何か?」を求めていたように思いました。その中で「言語化されていない思いの中にその人の真の思いや伝えきれない思いが、心の奥底に潜んでいる。そして本当にその人の思いを理解するにはこちらがとらえた解釈をご本人に投げかけ、一緒に確認し、理解していく。」この作業がとても大切で、「理解していく過程を通じて、ご本人が力をつけていくこと」を学びました。

 演習の中ではこちらから検証した仮説を提示し、当事者役の人がその方の思いになり、返答し検証していく場面がありました。言葉掛け自体も相手の方の心をほぐす言葉をいれ、そこからご本人の気持ちを伺う場面がありました。間合いや表情を読み取る行為は、とても慎重で丁寧にされていたように感じました。すべての質問が終わり、受け手側である当事者役の方が発した言葉はとても重みのあるものでした。本当の気持ちはなかなか表面化できず、でもどこかでサポートがほしい。自分でもどうしたらいいのかわからないという気持ちの揺れや戸惑い・この状況をなんとか打破したい思いが垣間見えました。表面化されたものだけに着目するのではなく、「表面化されない・表面化できないもの」に目を向けていく、じっくりとその人の「これから」を一緒に考えていく、そんな歩みを分かち合えたらと感じました。「言葉にできない思いの中に心の奥底にある本当の思いが潜んでいる。」人との信頼関係の中で、一朝一夕にはいかないけど、関係を築きながら心の間口を少しずつ開いてもらえるような精神保健福祉士でいたいと思いました。

 また検証を終えて、最後のグループワークの中で出たのは「人と向き合う仕事はそれなりに労力を使うけれど、他の方の意見を得ながら一緒に共有していく時間やそこからつなげる新たな発想を共有化していく作業はとても大切だと感じた。」とか、「支援は一人で抱えるものではなく、チームで取り組む大切さも実感できた。」との意見もありました。

 精神保健福祉士として、「出会う人・一人一人の魅力を知ることができ、一緒にその人の人生に関わらせて頂ける事」に感謝し、責任をもってその人に向き合い、その人の発する言葉・思い・タイミングを大切にしていきたいと感じております。その人が望む生活を一緒に考えていきたい。そんな地道な取り組みを送っていきたい。こころ新たに思える研修でした。ありがとうございました。

テーマ3 精神保健福祉士の思考過程を可視化する

     
尾形講師による講義2 演習の様子 代表者による修了証書授与

・ 精神保健福祉士としての私の悩みと気づき

NPO法人じりつ(埼玉県)/経験年数1年 金子 ふたば

 私は、障害福祉サービス事業所の生活支援員として働き、もうすぐ2年が経ちますが、日々自信のなさが心にいっぱいです。業務で先輩の関わりを直接見たり、私の関わりについて振り返りをしてもらっている時、「先輩の頭の中はどうなっているのだろうか」「どうしたら先輩のようになれるのだろうか」知りたいと思い、この研修に参加することにしました。そして、さまざまな気づきを得ることが出来ました。

 ソーシャルワーカーになるために学んできたことは日々の業務に活かせているのだろうか、と感じることがありましたが、「演習2」で面接場面での「思考過程の可視化」をやってみると、ソーシャルワークの技法や視点を思っていた以上に、自分もやり取りの中で使っているのだと知ることが出来ました。

 グループワークでは、同じ班の皆さんが経験年数の多い方ばかりでしたが、「これでいいのだろうか」と悩んでおられることを知り、経験年数に関係なく、悩み続けていくものなのだと知りました。そして、経験年数や業務内容が違う人たちであっても「思考過程の可視化」は大切だと共有できたことが驚きでした。自分が経験を積み重ねていっても、「思考過程の可視化」が大切であるという気持ちを持ち続けたいと思いました。

 事業所のメンバーとの関わりで、「私はこれで大丈夫だろうか」と悩み、先輩や上司から指導を受けると「私ってなんてだめなんだ」と自分のことばかり振り返ることが多々あります。「講義3」で、「思考の可視化は考えを言葉にすること」と聞き、演習で思考過程を可視化してみる時に、自分の想いが言葉に出来なかったことが思い出されました。さらに、業務でも相談や報告をする際に、自分の想いが正しく伝えられないという実感がありました。日々感じていましたが、語彙を増やす必要性を改めて痛感しました。ただ、自分視点からの成長過程があることを知り、自分にも変われる可能性があることに少し安心し、意欲が高まりました。

 受講したいという希望はありましたが、研修の内容が経験年数の少ない私に理解できるだろうかと不安を抱いていました。しかし、研修後に元気をもらって帰ってきた自分がいました。気づきを振り返ると、まだまだ自分視点であることに気がつき、今後も悩みながらも実践を積み重ねて成長していきたいと思いました。


※ご報告いただいた方のご所属名と経験年数は、研修受講時の情報で掲載しています。