連載:新たな更新制度
第2回 研鑽の可視化と認定移行の経過措置
研修センター 認定制度推進委員会 担当理事 島内 美月
前号では、新たな更新制度の目的と仕組みの概要について説明しました。本号では、そもそもの生涯研修制度の目的等から振り返り、新たな更新制度への移行にあたり、特にご不安と思われる点を中心にQ&A形式で説明します。現在検討中であるため、内容が一部変更となる場合があります。ご了承ください。
Q1 なぜ、精神保健福祉士は資質向上に取り組まなければならないのでしょうか?
A1 2008年度に創設した生涯研修制度の目的の通り、精神保健福祉士として資質向上に努めることは、利用者をはじめ国民全体への責任を果たすことでもあり、2010年度改正から精神保健福祉士法の中でも法文化されています。
そしてそれは専門職としての信頼を得るために必要な自助努力ともいえます。本協会ではその自助努力を支え、専門職としての信頼を高めるための責任を果たせるよう、一定の質を担保できるシステムとして本制度を創設し、職務に関する知識・技術ならびに倫理・資質の向上を図ることを目的として運用してきました。その柱のひとつが基幹研修です。
基幹研修
[基礎研修]入会時に配布する「構成員ハンドブック」を活用した自主学習。
[基幹研修T]入会3年度未満の受講を奨励(入会前でも次年度の入会を要件に受講可能)。
[基幹研修U]入会から3年度経過かつ基幹研修Tを修了し、概ね3年度以内の受講を推奨。
[基幹研修V]基幹研修Uを修了し、概ね3年度以内の受講を奨励。
→修了すると、「研修認定精神保健福祉士」となる。[更新研修]基幹研修Vを修了し、4〜5年後に受講(必須)。
→修了すると、「認定精神保健福祉士」となる。以降も4〜5年ごとに受講(必須)。
Q2 現行の(研修)認定精神保健福祉士の更新制度はどうなっていますか?
A2 現在は、5年ごとの更新研修を受講することで「認定」を更新できます。更新研修受講にあたっては、それまでの5年間にどのような実践や研鑽を積み上げてきたかを事前のレポート作成を通じて振り返ります。この研修は、自らのソーシャルワーク実践を価値、知識、技術に照らして検証し、精神保健福祉士としての専門性の点検する、日々の実践における課題を明確にする、各地域や都道府県協会・支部等での後進育成について考える、そのための機会を提供しています。そのうえで、専門職としてのアイデンティティを確立・維持させていくことを目的としています。
Q3 新たな更新制度になると、どうなるのでしょうか?
A3 新たな更新制度では、認定更新までの5年間の研鑽の積み上げに基準を設けて、それぞれの研鑽を「単位」化することで、研修受講やスーパービジョン、地域貢献活動など多分野に行った資質向上につながる実践や活動(自己学習)にバランスよく取り組めることを目指しています。これは、これまで曖昧になりがちだった自身の研鑽内容を可視化することで精神保健福祉士としての自分に何が不足し、何が必要なのかを具体的に考えられるようなることが狙いです。そうすることで、今の自分に必要な研鑽の計画を立て、更には自己教育力を高めることにつながるのではないかと考えています。つまり、単位取得が目的ではなく、自身が日々行っている研鑽を見つめ直し、生涯に渡って質を高めていくことが目的なのです。
Q4 必要な単位を取得して認定を更新できるか不安です。
A4 単位化では、研修受講だけに単位が偏ったり、社会的な活動(審査会等、地域貢献活動の参加等)だけに単位が偏ったりしないようバランスよく研鑽を積み上げることを基本としています。新たな更新制度ではそれらの研鑽の積み上げが更新要件となります。ただ、私たち精神保健福祉士自身もライフステージによって生活状況は変化します。研修を受講する時間が確保できない、社会的活動に取り組む余裕がないなど、置かれた状況によって様々な研鑽を阻む要因(個人や環境要因)が発生する場合があります。やむを得ず必要な単位を取得できなかった場合に、現行の認定まで失効してしまうのではないかと不安に思われる方もいるかもしれせん。
そこで、新たな更新制度は単位の取得が基準に満たない場合でも、更新研修を受講することで現行の認定が維持できる仕組みも残しています。
Q5 新たな認定精神保健福祉士にいつ移行できるでしょうか?
A5 2022年度までは現行の制度での更新研修となるため、2022年度に更新研修を受講された方は、現行の認定精神保健福祉士としての認定更新となります。
今回の改定のポイントは、
(1) 2023年度から新たなプログラムによる更新研修(新たな更新制度)となること
(2) 経過措置の5年(23〜27年度)の間は、自身の認定期限までに諸条件を満たすことでいつでも新たな認定精神保健福祉士を取得できること
(現行の認定とは別)の2点です。
経過措置の5年間は、新たな認定精神保健福祉士に移行しやすいよう工夫しています。5年で100単位必要なところ、1年間に20単位で取得できるなど、本来必要とする単位数が軽減されます。
下表をご参照いただき、自身の認定期限までに、新たな認定精神保健福祉士にいつ移行するかご検討を始めていただけると幸いです。
<経過措置(5年間)における新認定精神保健福祉士への移行イメージ図>
(研修センターだより「Start Line No.80」(2022年7月15日発行)より抜粋)