連載:新たな更新制度
第1回 新たな更新制度の目的と仕組み〜認定更新までの4つの工程〜
研修センター 精神保健福祉士の資質向上推進委員会 委員長 岡田 隆志
前号で、認定精神保健福祉士の新たな更新制度(以下、新制度)が2023年度から開始されることをお伝えしました。本号から新たな更新制度について連載を開始します。本号では、新制度の目的と仕組みをQ&A方式で説明します。なお、詳細な内容は現在検討中であるため、内容が一部変更となる場合がありますのでご了承ください。
Q1 認定精神保健福祉士とはどのような存在ですか?
A1 本協会が目指す精神保健福祉士像(※)としての資質を身につけ、実践力を高めるために研鑽を着実に積み上げ続けていることを本協会が認めた者を言います。
具体的には、次の3つの実践を行うことができるよう、研鑽をし続けている精神保健福祉士を、新制度後の認定精神保健福祉士として想定しています。※「ソーシャルワークを基盤とし、メンタルヘルス課題を含むあらゆる生活福祉課題を地域包括的に対応できる人材」
- 精神保健福祉士の倫理綱領に準じた倫理・価値、及び知識・技術を自らの実践の中で示し、様々な地域活動等にも積極的に参加するなどの社会的な役割を遂行できること
- 自分を含めた精神保健福祉士が、各職場において精神保健福祉士業務指針に基づいた業務を適切に行うことができるよう意識し、その役割を遂行できること
- 所属組織や地域において、精神保健福祉に関する実践者への人材育成、及びネットワーク作りの中心的な働きができること
Q2 なぜ、新制度に改正するのですか?
A2 現制度も、研鑽による質の担保を保証するために行われてきましたが、認定までの5年間に積み上げる研鑽の手段や内容に関する基準は設けられていませんでした。新制度では基準を示し、その5年間の研鑽(資質向上につながる実践や活動)を可視化する仕組みを導入します。
つまり、利用者や所属組織、地域社会に対し、「認定精神保健福祉士の取得者は、専門職として必要な資質を担保するための研鑽をし続けている」ことを協会として基準を示したことで保証できるようにするためです。
私たちは、利用者や所属組織、地域社会に対して専門職としてかかわり、必要な支援を行っています。専門職として様々な判断をする場合は、そのための根拠を示す必要があります。適切な支援を行うための根拠は、これまでの実践経験だけではなく、幅広い研鑽から積み上げられた知見等をもとに提示しなくてはなりません。だからこそ、私たちには、かかわりをもつ利用者等に、専門職としての資質を担保するための必要な研鑽を行っていることを説明する責任が求められます。
認定精神保健福祉士の取得・認定更新要件は、必要な研鑽をし続けることにあり、目の前の利用者に「専門職として、ご相談を受けさせていただきます」と自信をもって伝えることができるように、本協会として後押しできる制度にしたいと考えています。
Q3 具体的にどのような変更になるのですか?
A3 次の4つの工程を行うことを認定更新の要件とします。
【第1工程】5年間の研鑽積み上げ
あらゆる研鑽機会を「スーパービジョン」・「各種研修」・「自己学習」の3類型に大きく区分し、これらをまんべんなく活用することを要件とします。具体的には、3類型にはそれぞれ必要取得単位数や必須単位を設定する予定です(詳細は検討中)。また、研鑽の内容に偏りが生じていないか点検できるよう、「精神保健福祉士のキャリアラダー」の力量項目を目安に、どのような能力を養うために研鑽を行ったかを可視化できるような工夫を導入します。
【第2工程】更新研修の受講
5年に1度の受講は現制度と同様です。新制度では、時事的な精神保健医療福祉に関する知識を深める「制度政策論(仮)」や、後進育成に必要な知識や
手法を理解する「人材育成論(仮)」などをプログラムに導入することを検討しています。
【第3工程】受講後1年間の研鑽計画の作成
更新研修受講修了後、さくらセット(精神保健福祉士のキャリアラダーとワークシート)を用いて、自身の1年間の研鑽計画を作成します。
【第4工程】構成員マイページから認定申請
構成員マイページに上記の3工程すべてを申請することで、認定証が交付されます。
Q4 単位制の導入により認定のハードル(基準)はあがるのでしょうか?
A4 単位制の導入と聞くと、認定のハードル(基準)が高まった印象を抱くと思いますが、そのような趣旨ではありません。単位制は、これまで取り組んでいた5年間の研鑽機会を可視化するために導入する仕組みです。
ソーシャルワーク実践の向上に資する機会は、本協会が開催する研修のような体系化された研鑽だけではありません。職場内で行われる事例検討会や、実習指導、地域のボランティアなどの活動も対象に含まれます。あらゆる機会が専門職としての資質向上につながるという姿勢から、多様な取り組みや活動を研鑽機会に認めていくための仕組みであるとお考えください。
(研修センターだより「Start Line No.79」(2022年5月15日発行)より抜粋)