「改正精神保健福祉法施行後の退院促進措置の有効な実施に関する運用ガイド等の作成」事業報告書

厚生労働省 令和5年度障害者総合福祉推進事業

2024/4/11掲載


はじめに

 令和4(2022)年12月に「精神保健福祉法」が改正されました。令和5(2023)年4月からはその一部が、令和6(2024)年4月からは全面的に施行されます。今般の改正は、精神保健福祉法が障害者基本法の基本的な理念にのっとり、精神障害者の権利擁護を図るものであることを明確にするとともに、地域生活の支援の強化等により精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制を整備するためのものです。

 主な改正点としては、医療保護入院の入院期間に最長6か月(入院から6か月までの間は3か月)の上限が設けられました。ただし、精神保健指定医による診察の結果、医療保護入院の継続が必要と判断された場合、医療保護入院者退院支援委員会を開催し、家族等の同意(市町村長同意も含む)を得た場合には入院期間が更新されることになります。また、精神科病院の従事者からの患者への虐待やその疑いを発見した場合には、都道府県等へ届出や通報することが義務化されます。さらには、所定の研修を修了した入院者訪問支援員が患者の希望に応じて病院を訪問し、丁寧に話を聞いて必要な情報を提供する制度として「入院者訪問支援事業」が創設されます。そして、さらなる地域生活への移行を推進していくために、退院後生活環境相談員が措置入院の場合でも必ず選任されることになり、措置入院・医療保護入院のどちらの場合においても地域援助事業者の紹介については現行の努力義務規定から義務規定に変わります。

 これらは法の第一条の「目的」のなかに、「権利擁護」及び「障害者基本法」の文言が加わったことからも分かるように、患者の権利擁護の充実と地域の関係機関との連携強化が期待される内容となっており、それを現場の最前線で実践していく職種が退院後生活環境相談員となります。

 公益社団法人日本精神保健福祉士協会は、その退院後生活環境相談員の新たな役割や期待の大きさに鑑み、令和5年度障害者福祉総合福祉推進事業を活用して「退院後生活環境相談員のための退院促進措置運用ガイドライン」を作成しました。本ガイドは、改正以前から先駆的な取り組みをしている5つの精神科病院に勤務する精神保健福祉士(退院後生活環境相談員)へのヒアリング調査や、暫定版ガイドを使用して開催された2回のモデル研修での受講者アンケート等で得られた意見等を参考にして、本改正のポイントを分かり易く掲載し、また、退院後生活環境相談員が有すべき権利擁護の視点等の解説を盛り込んでいます。本ガイドを適宜活用することで、退院後生活環境相談員の一人ひとりが現場でより良く機能していくことを切に願います。

 本事業は、多様な見地からの提言と事業全体を総括する役割を果たした「検討会(関連他団体の代表者らにより構成)」及びガイドの作成やモデル研修の実施を担った事業担当者による「作業部会(日本精神保健福祉士協会)」を中心に実務を進めて参りました。多忙な本務がありながら1年間尽力いただきました委員各位、厚生労働省の担当者の方々、そして本事業にご協力いただいたすべての皆様に心より感謝申しあげます。

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 副会長 尾形多佳士


■報告書

実績報告書一括ダウンロード(31.1MB/PDF形式)

■個別成果物(上記の報告書に含まれる内容です)

1.退院後生活環境相談員のための退院促進措置運用ガイドライン(31.1MB/PDF形式)

令和6(2024)年4月施行の改正精神保健福祉法における、措置入院者及び医療保護入院者の退院促進に関する措置の変更点を踏まえた、退院後生活環境相談員のための運用ガイドラインです。 退院後生活環境相談員となられる全ての方が、ぜひご活用ください。

■編集可能データ提供
P.103-104 退院後生活環境相談員の紹介文書例(医療保護入院者、措置入院者)(50.2 KB/Word形式)

2.『退院後生活環境相談員のための退院促進措置運用ガイドライン』に基づいたモデル研修プログラム(10.9 MB/PDF形式)

1の運用ガイドを用いての、退院後生活環境相談員に対するモデル研修プログラムです。広くご活用ください。

<報告書目次>


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