災害支援ガイドラインVer.2


本ガイドライン改訂にあたって

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 災害支援体制整備委員長 廣江 仁 

 公益社団法人日本精神保健福祉士協会(以下本協会)が組織的に災害支援活動を行った阪神・淡路大震災(1995 年1 月)の後も、国内各地で地震、風水害、交通災害等が起きている。そして、被災された方々は、長期にわたって身体的・精神的ダメージを受け、不自由な生活を余儀なくされた。本協会は、それら各地で起きた災害において支援活動を行った都道府県協会等から委員を推薦いただき、2008 年に災害支援体制整備委員会(以下当委員会)の前身となる災害支援検討委員会を設置し、災害支援ガイドラインの作成に着手した。初版の災害支援ガイドライン(以下ガイドライン)は2010 年3 月に完成し、都道府県支部に20 部ずつ配布し、本協会WEB サイトでも閲覧可能にした。そして、全国の支部に災害支援体制の整備を、構成員には災害支援についての知識普及と災害への備えを呼び掛ける研修を開始した矢先に起きたのが東日本大震災(2011 年3 月)である。残念ながら、当時各都道府県支部においてガイドラインが浸透しておらず、決して機能したとは言えない。ただし、本協会においては、組織的な支援活動を初動からガイドラインに沿って段階的に行うことができた。当改訂版発行直前に発生した熊本地震(2016 年4 月)でも、ガイドラインに沿った対応を行っている。

 当委員会は、東日本大震災後、全国各ブロックで災害支援研修を実施し、改めて全支部に災害対策計画の策定と災害対策委員の配置を促進し、並行してガイドラインの改訂作業に取り組んできた。改訂にあたっては、想定を超える広域にわたる被害を与えた東日本大震災での支援活動を踏まえ、初版ガイドラインで要検討事項としてまとめられていた課題について検討し、構成なども一部見直し作業を行った。そして、東日本大震災において本協会派遣の支援活動に参加した構成員に支援内容等についてのアンケートをとり、本協会の支援活動を受け入れた自治体の現場担当者からは聞き取りを行い、それらの結果をできる限り改訂作業に反映させた。

 初版と同様、本ガイドラインでは、災害の定義を「被災地域内の努力だけでは解決不可能なほど、地域の包括的な社会維持機能が障害された状態(太田保之「災害精神医学の現状」『精神医学』38 巻4 号1996)と位置づけ、そうした災害を念頭に、全国組織および都道府県支部が平常時に行うべき内容と、災害時に時系列に沿って実施すべき内容についてまとめた。特に災害時における本協会の役割については、東日本大震災での支援活動を踏まえ、取り組む活動の実施主体を明確にし、支部との連携や「支援者支援」をより強く意識した内容に大きく改訂を行った。その他、東日本大震災における本協会の支援活動を掲載し、知っておいてほしい知識をコラムや用語説明にまとめた。

 本ガイドラインは、災害時に初めて手に取るのではなく、平常時にこそ目を通し、できる限りの備えを行っていただくこと、そして災害が起きた時には、全国組織および被災した都道府県支部として冷静沈着に支援活動を行うことに主眼を置いている。まったく、真っ白な状態で被災するのと、ある程度知識をもち、備えを行っている状態で被災するのでは、その後のストーリーが大きく変わってくる。自らが、家族が、そして精神保健福祉士としてかかわっている方々が、いつ起こるかわからない災害によって、ある日突然「被災者」になるのである。その時、被災による影響をできるだけ少なくするために、すべての精神保健福祉士が平常時から災害のことを考えておかなければならない。自然災害は、全国いつどこで起こるかわからない。大きな災害が来ないことを祈りたいが、大きな災害をいくつも経験している我が国だからこそ、災害に対する必要な備えも行うことができるのである。そして、今後起きる災害においては、被災による影響を最小限にとどめるための活動を構成員、本協会、都道府県支部ともども実践できるよう、本ガイドラインを積極的に活用していただきたい。


一括ダウンロード用データ(B5判・94頁/PDF/20.6MB)


災害支援ガイドラインVer.2
もくじ

本ガイドライン改訂にあたって
日本精神保健福祉士協会災害支援ガイドラインの概要
日本精神保健福祉士協会災害支援ガイドライン
  1.平常時における本協会の役割
  2.平常時における各支部の役割
  3.災害時における本協会の役割
  4.災害時における各支部の役割
災害支援活動のあり方【活動例】について
所属機関および時間的経過により変化する精神保健福祉士の活動内容例一覧
災害時における支援活動例
  市町村・保健所
  精神保健福祉センター
  医療機関
  日中活動系事業所
  居住系事業所
  相談支援事業所
東日本大震災に対する日本精神保健福祉士協会の取り組み
平常時に心がけておくこと
用語説明

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 災害支援体制整備委員会名簿(※委員長)

氏名 所属支部 所属機関
大澤 晶人 北海道支部 市立札幌病院
氏家 靖浩 宮城県支部 仙台白百合女子大学
松田 聡一郎 福島県支部 ふくしま心のケアセンター
鈴木 一由 新潟県支部 医療法人立川メディカルセンター 茨内地域生活支援センター
鴻巣 泰治 福島県支部 ふくしま心のケアセンター
島津屋賢子 東京都支部 NPO法人東京都自閉症協会
河元 寛泰 石川県支部 ピアサポートはくさん
大原 弘之 和歌山県支部 和歌山県湯浅保健所
廣江 仁※ 鳥取県支部 社会福祉法人養和会あんず・あぷりこ
河野 剛 大分県支部 大分県済生会日田病院

(2016年6月30日現在)


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