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公益社団法人日本精神保健福祉士協会 災害支援ガイドラインVer.2.1(2024年11月)
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 発行
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 分災害支援体制整備・復興支援委員会 編集
災害支援ガイドラインVer.2.1
災害支援ガイドラインの微細な改訂にあたって
この度、災害支援ガイドライン(以下:ガイドライン)のVer.2からVer.2.1への微細な改訂にあたり、改訂作業は「当時の貴重な記録はそのまま残す」こととして進め、加筆修正は最小限に留めた。そのことを念頭に置きVer.2の巻頭言の大部分を引用し、そこに加筆させていただいた。趣旨をご賢察いただき、本質的な部分に着目して読み込んでくだされば幸いである。
公益社団法人日本精神保健福祉士協会(以下:本協会)が組織的に災害支援活動を行った阪神淡路大震災(1995年1月)の後も、国内各地で地震、風水害、交通災害等が起きている。そして、被災された方々は長期にわたって身体的・精神的ダメージを受け、不自由な生活を余儀なくされた。今もなお、長引く避難生活、広域避難の課題もある。本協会は、それら各地で起きた災害において支援活動を行った都道府県協会等から委員を推薦いただき2008年に災害支援体制整備委員会の前身となる災害支援検討委員会を設置し、ガイドラインの作成に着手した。初版のガイドラインは2010年3月に完成し、都道府県支部に20部ずつ配布し、本協会WEBサイトでも閲覧可能にした。そして、全国の支部に災害支援体制の整備を、構成員には災害支援についての知識普及と災害への備えを呼び掛ける研修を開始した矢先に起きたのが東日本大震災(2011年3月)である。残念ながら、各都道府県支部においてガイドラインが浸透しておらず、決して機能したとは言えなかった。ただし、本協会においては、組織的な支援活動を初動からガイドラインに沿って段階的に行うことができた。ガイドラインVer.2発行直前に発生した熊本地震(2016年4月)でも、ガイドラインに沿った対応を行っている。
当時の委員会は、東日本大震災後、全国各ブロックで災害支援研修を実施し、改めて全支部に災害対策計画の策定と災害対策委員の配置を促進し、並行してガイドラインのVer.2への改訂作業に取り組んだ。Ver.2への改訂にあたっては、想定を超え広域にわたる被害を与えた東日本大震災での支援活動を踏まえ、初版ガイドラインで要検討事項としてまとめられていた課題について検討し、構成なども一部見直しされた。そして、東日本大震災において本協会派遣の支援活動に参加した構成員に支援内容等についてのアンケートをとり、本協会の支援活動を受け入れた自治体の現場担当者からは聴き取りを行い、それらの結果が改訂作業に反映されている。
初版、Ver.2に続き、本ガイドラインでは、災害の定義を「被災地域内の努力では解決不可能なほど、地域の包括的な社会維持機能が障害された状態(太田保之)「災害精神医学の現状」『精神医学』38巻4号1996」と位置づけ、そうした災害を念頭に、全国組織及び都道府県支部が平常時に行うべき内容と、災害時に時系列に沿って実施すべき内容がまとめられている。特に災害時における本協会の役割については、東日本大震災での支援活動を踏まえ、取り組む活動の実施主体を明確にし、支部との連携や「支援者支援」をより強く意識した内容への改訂を行ったVer.2を踏襲している。その他、掲載された東日本大震災における本協会の活動内容や、コラム・用語説明への加筆修正も意図して最小限に留めた。
2016年以前に比べ、被災地支援に入るボランティアや支援団体等は増え、DPATやDWATで活躍する精神保健福祉士も増えその活躍は評価されてきた(参照:厚生労働省 令和2年度障害者総合福祉推進事業「精神保健福祉士の災害時における役割の明確化と支援体制に関する調査研究」報告書)。一方で、近年では感染症対策を意識せざるを得ない状況にもなる等、災害時の支援の在り方は変化している。しかし、災害時の支援活動及び平常時の備えの本質は変わらないものであり、このガイドラインが網羅している。読み込んでくださっている方はお気付きのことと思うが、本ガイドラインはとても精度の高いものであり、この度の微細な改訂で多くの加筆修正を要さなかったことがその証左でもある。災害が続き、その支援経験が増えることは決して手放しで喜べるものではないが、積み上げた復興知は次の災害や減災に活かすことができる。改めて、自支部の災害対策計画と連動させ、平常時にこそ本ガイドラインを読み込み、備えに活かしていただきたいと切に願う。
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 災害支援体制整備・復興支援委員長 河合 宏