開催のごあいさつ
公益社団法人日本精神保健福祉士協会会長 柏木 一恵
第53回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第16回日本精神保健福祉士学会学術集会(大阪大会)を開催するにあたり、一言ご挨拶申しあげます。
本年は、精神保健福祉医療の現場で働くソーシャルワーカーの国家資格を定めた精神保健福祉士法の制定からちょうど20年になります。この節目の年に38年ぶりに私の地元である大阪で大会が開催されることに深い感慨を覚えています。私が会長に就任してから、熊本、石川、埼玉、福島、山口と襷はつながれ、それぞれの地で感動的な出会いや素晴らしい交わりがあり、明日につながる元気をもらいました。大阪大会もこれまで以上に、参加される皆さまと共に感動と勇気と覚悟を共有できることを念じています。
今現代社会は貧困の拡大と連鎖、労働環境の悪化、自然災害の頻発など様々な課題を抱えています。人口減少や高齢化は地方の町や村を弱体化させ、高齢者、障害者、児童等をめぐる人権侵害の問題も一層深刻化しています。このような社会的課題に立ち向かっていくために精神保健福祉士は何をすべきなのでしょうか。一方で精神障害者の地域移行は相変わらず牛の歩みのまま、そのうえに相模原事件がいみじくも露呈した、精神科病院がいまだ社会防衛装置を期待されていたという現実に、精神保健福祉士はどう対峙していくのでしょうか。精神保健福祉士への役割期待は広がる一方ではありますが、誰のための何のための役割なのか、何をすべきか、あるいはすべきでないかを吟味・検証しなければ、真の意味で精神障害者の社会的復権と福祉の向上に寄与できているとは言えないのではないでしょうか。
今回の大阪大会は「ソーシャルワークを可視化する」というずいぶんチャレンジングなテーマを選択しています。ここでの可視化という意味は「専門職として自らの実践の根拠を可視化する」「ソーシャルワーカーここにありと力強く社会に向けて発信する」という2つの意味が込められていると愚考します。精神保健福祉士がソーシャルワークを必要とする人々の前に、もっといえば社会に対して可視化されなければ支援の前段にさえ立つことはできません。しかしそのソーシャルワークの中身を明確に表現し、何を目的とし、どのようなスキルを有し、その専門性を根拠に何が可能かということを分かりやすく明示するという内向けの作業なしに、外への発信だけを意識しても空疎なだけでしょう。この2つの可視化の試みはどちらが欠けてもソーシャルワークは本来の目的を達することはできないのではないでしょうか。可視化に耐え得るだけの実践をしているのかという厳しい問いも投げられそうで、丁々発止のやり取りが飛び交うような熱くて面白い大会になることを期待しています。
江戸時代、この大阪の地には浪花八百矢橋と言われるほど、多くの橋が架けられました。その多くが町人の財力によって造られたそうです。会場のある肥後橋も橋の名前が地名の由来となっています。商都、水都と呼ばれる古くて新しく、猥雑な活気と洗練の文化が融合する不思議のまち、大阪の地で、皆さまと共に学び、交わりの時を持つことを楽しみにしております。
歓迎のごあいさつ
全国大会・学術集会長 平 則男
はじめに、度重なる自然災害により被災された多くの皆さまへお見舞い申しあげますと共に一日も早い地域の復興と生活再建が叶いますことを、心よりお祈り申しあげます。
第53回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第16回日本精神保健福祉士学会学術集会(大阪大会)を開催するにあたり歓迎のご挨拶申しあげます。人心から寛容なこころが失われかけ、社会にとって負担となるものを軽視する風潮が広がりつつあります。2018(平成30)年を目前にして保健・医療・福祉・介護の一体的改革が構想されており、制度の整合性への矛盾やソーシャルワークへの影響が懸念されます。社会は少子高齢化を背景として拡大する貧困、社会の不平等、そこから派生する人権の問題など、ソーシャルワーカーが向き合うべき課題は年々増長するばかりです。他方で私たちの専門性は資格の原点から社会のニーズとともに多様化し、ソーシャルワークの専門的領域は広がりをみせ、ソーシャルワーカーへの期待と必要性は高まりつつあります。こうした社会のニーズとは相反し、ソーシャルワークの専門性や機能性が充分に浸透していない現実があります。その疑問に応えるために、本大会のテーマを「ソーシャルワークを可視化する~未来への存在意義を求めて~」としました。私たちは社会のニーズに応えるためにソーシャルワークの専門性や有効性を積重ねていくことが大切であると考えています。ソーシャルワーク実践を可視化し、精神保健福祉士(以下、PSW)の専門性を深化させることで社会に資するソーシャルワークの実現が社会貢献へつながることを基調としました。大会では多くの参加者とともに智恵をしぼり、日々の実践を振り返る有意義な機会となることを願っています。
また本大会から2日間の日程となり、プログラムや会場の各所に「ソーシャルワーカー見える化」グッズを展示するなど工夫を凝らしました。
初日の午前のプレ企画では、社会保障・PSWの思考・相談支援システム・人権擁護の4テーマに注目しました。午後のプログラムによる基調講演では「ソーシャルワークの実践の可視化を考える~精神保健福祉士としての可視化の試みを中心に~」ついて講演いただきます。記念講演では、各専門職の視点から「ソーシャルワーク実践力を可視化する」について議論を交わします。夕方の懇親会では参加者の皆さまに大阪のおもてなし(笑)を満喫していただきます。2日目の特別企画では各専門団体を代表するシンポジストを一堂に会し、これからの精神保健医療の在り方をふまえ将来を展望します。分科会では全国のソーシャルワーク日常実践を集積し相互交流を図ります。また大阪独自企画としてサブ会場中之島バンクスで「diversityfes@BANKS」を開催し、市民公開講座では「市民のメンタルヘルス」についてシンポジストが意見を発信します。その他のイベントには、障害者との「トークイベント」、「ライブ&映画上映」をお楽しみいただきます。
大阪は大阪城をはじめ歴史的な観光スポットや、にぎわいのある食文化や笑いと親しみの文化、人情あふれる大阪の風情を体感いただけます。私たちは大阪大会に総力を傾け、皆さまをお迎えしたいと考えております。全国から多くの皆さまのご来場を心よりお待ちしております。