復興支援本部情報

 東日本大震災復興支援本部員メッセージ
災害支援に精神保健福祉士はどう関わるのか

 海辺の風景を一変させたあの日から、2年が経とうとしています。大量のがれきは一頃までピラミッドのように積み上げられていましたが、少しずつ分別され、撤去されていきました。町々で被害を象徴していた巨大なオブジェも、また一つと取り除かれていきます。かつての町並みには建物の基礎部分だけが残されていましたが、今はそれすらなくなり、真新の雪に覆われた更地はその面影すら残していません。マスメディアは3月11日に向けた特集を組むべく、再びあちこちで取材を始めました。被災地の今の課題は何かと問われますが、とても一言でいい表すことはとても難しい。そんな今日この頃です。 

 あの震災以来、常に考え続けてきたテーマがあります。「被災地で精神保健福祉士は何が出来るのか?」そして「災害支援とはどうあるべきか?」です。処方箋が書ける訳でも、応急処置が出来る訳でもない。力仕事や炊き出しは大勢のボランティアの方々が担ってくれた。そんな中、災害支援に対する経験も持たず、たまたま被災地に存在した一人の精神保健福祉士は一体何をすべきだったのでしょう。職業人としてのアイデンティティを自らに問い続けた2年だったように思います。

 また同時に、災害時の支援のあり方についても深く考えさせられました。「被災者が求めることをします。」「no harm(害を与えない)」という災害支援時の基本原則に基づき、多くの支援者はとても謙虚な姿勢で私たちを助けてくれました。専門職によって持ち込まれる支援のノウハウや企画、知識は数々ありますが、この原則が下地にあってこそ、はじめてその効力は発揮し得るのだと痛感させられました。今後の災害支援においても、さらにこの姿勢は徹底されるべきであることを強調したいと思います。

 先日、駅構内の看板に見かけた「いざ東北」の文字。そんな想いを胸に駆け付けてくれた支援者の方々に、何ら恩返しも出来ぬまま2年が経とうとしています。上記テーマへの答えも未だ見つからぬままですが、自分なりに探し求め、何かしら教訓を残すことが、せめても皆さんへの恩返しになるのだと今は思うようにしています。あの日以来、様々なものへの怒りや悲しみを含む複雑な感情を抱え続けたままです。震災以降を本当の意味で振り返るにはもう少し時間が必要なのだと思います。
 地域の人たちと時間を重ねる中で、いつかその日が訪れることを待ちたいと思います。

社団法人日本精神保健福祉士協会 宮城県支部 渡部 裕一


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