青森県は1年の半分近くが冬です。一時的には2メートルを超えることもある積雪量は、通年で8〜12メートルに達します。人々の暮らしは雪との闘いの日々です。朝5時に起きて3時間、昼も夜も合わせると一日の5〜6時間は雪掻きをしています。一人ただ黙々と雪を片付けます。毎日毎日来る日も来る日も・・・自然と口は重くなり、黙々と動くだけと言う青森の人、東北の人の特徴が形造られて行きます。それでも短い夏にはエネルギーを爆発させるねぶた祭りも有ります。大騒ぎし大酒を喰らいます。雪と祭りとで終わってしまう一年、そんな閉塞感を感じる民の暮らしなのです。
東日本大震災から約1年半。復旧・復興の端緒についたばかりの被災地にも、何かしらの閉塞感を感じてしまいます。支援に参画しようと様々な人々が訪れ様々な活動をしています。テレビは様々な切り口で報道し、多くの著名人が被災地へ東北へと押し寄せています。一見華やいでいるようにも映ります。でもそれでいいのでしょうか?
幸いにも地元にて頑張れる場のある人たち、地元を離れるものの新たな仕事と第二の故郷を得る人たち、そのかたわら、仕事も失い二度と再び故郷へは戻れない人たち。1年半という歳月は、復興へと前進するプラスの力を湧き出させる一方で、そうした力を削り取り混沌へと引き込むマイナスの力もまた次第に大きくさせているように感じます。
仮設住宅の目の前に出来たパチンコ店に通う被災者は、今、何を思うのでしょうか?歓楽街・国分町では、どんなことが起きているのでしょうか?人は弱いものです。誰かに何かに縋りつきたいと思う人もまた沢山います。溢れています。そうした情景は、降り続く雪を黙々と片付けている青森の人たちの姿と重なって見えてくるのです。
果たして、復興は必ず成ると信じれるでしょうか?被災地毎にその事情は異なります。想いがいつ叶うかの期限も解りません。「ひょっとしたらこのまま何も変わらないかもしれない」と思う時さえもあります。でも、青森の人たちは、黙々と歩み続けます。これまでいつも春は必ずやって来たし、これからも来るのだと信じているからです。東北に暮す人たちは、歩き続けます。いつ叶うとも知れない道でも「いつかきっと」を信じて毎日、黙々と復興を信じて生きていきます。
被災の有り様を、復旧・復興の現状を、正しく受け止めなければなりません。そして、それらの悉くを我が国に生きる全ての人たちに正しく共有してもらわねばなりません。風化させてはいけません。見せかけの支援や、楽しいだけのアトラクション・イベントよりも、人々の想いに寄り添う現地のニーズに即した施策が求められています。
皆が正しく知ることがひとつの力となり、いつまでも雪掻きを続けられるエネルギーとなります。全国のPSWの皆さん!東北の中を自分の足で歩いて、自分の感性で東北を感じてください。一人のPSWとして・・・まだ何十年続くかわからない東北の復興の為に。
社団法人日本精神保健福祉士協会 青森県支部長 石田 康正