<2013/12/03>
日程:2013年11月29日(金)17:00〜19:00 場所:厚生労働省 省議室(9階)
今回は、前段で「改正精神保健福祉法の施行事項について」、事務局から現段階での「医療保護入院における家族等の同意に関する運用の考え方」と「改正精神保健福祉法の施行事項」の提示があり議論がなされた。事務局からは今回の意見を踏まえて省令等の作成を行う予定であることが報告された。
後段は、各構成員から事前に寄せられた意見を踏まえた指針の叩き台について事務局から報告があり、主に追加・変更点をめぐって議論された。後半は今回指針案に追加された「病床転換」をめぐる議論に集中した。
今回の議論を踏まえ、座長から12月に予定していた第8回検討会は開催せず、座長と事務局により文言等調整を行い、指針のとりまとめとすることが提案され了承された。指針のとりまとめについては、12月開催の社会保障審議会障害者部会に提出した後、パブリックコメントを経て指針の告示を行うことの説明があった。
また事務局からは、「病床転換」の可否も含めた機能分化と地域移行の方策に関して、この検討会の下で来年早々にも議論を行うことが提案された。資料は厚生労働省の下記リンクから確認ください。
<厚生労働省サイト>
・第7回精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会資料
<田川> 医療保護入院者退院支援委員会(仮称)の参加者については、以前にも入院前の医療機関からも参加したいと伝えていた。入院前の医療機関は、「本人の希望等に応じ参加とする者」に含まれるのか?→[事務局]その通り →できれば例示してほしい。
<伊澤> 「退院後生活環境相談員となる者の資格」について。Aの「A看護職員(保健師を含む。)、作業療法士、社会福祉士であって精神障害者に関する業務に従事した経験を有する者」は、経験年数を明示すべき。退院支援委員会の参加者は必須と本人の希望に輪k手いるが、本人が希望しない場合をどう想定しているのか。本人の不参加は厳しく制限すべき。参加者が院内の関係者のみになってしまうと本来の趣旨に照らしてどうであるか。
<柏木> 施行事項に関する意見・要望を資料として配布いただいているので(ウェブ掲載なし)、読んでいただきたい。退院後生活環境相談員に関して、精神保健福祉士についても経験何年と研修受講を義務付けてほしい。
医療保護入院者退院支援委員会の参加者のうち「本人の希望等に応じ参加とする者」に医療保護入院者の家族等とあるが、この等には保佐人や後見人が含まれるか?
<平田> 推定入院期間について上限設定がされていない。目安を示すべき。日本における急性期治療では3カ月以内が目安。イギリスの強制入院は6カ月以内となっている。
退院支援委員会の対象で、「入院後1年以上経過している医療保護入院者であって、病院の管理者が委員会での審議が必要と認める者」としているが、すべて対象とするべき。
入院後最初の1年を超えた時点で精神医療審査会による面接審査を義務付けるべき。
[事務局] 退院後生活環境相談員の経験年数は運用状況を見てからと考えている。施行時の選任を想定して経験年数を明示していない(施行時において既に入院している医療保護入院者も選任するため)。
退院支援委員会への本人参加は原則と考えている。
退院支援委員会の参加者の「家族等」は、医療保護入院の同意を行う家族等と同じ範囲。後見人、保佐人も含まれる。
1年以上の医療保護入院者については、まずは定期病状報告を審査する精神医療審査会と退院支援委員会との役割分担と考えた。
<吉川> 退院後生活環境相談員の選任に当たって、本人の希望はどのように反映されるのか?→[事務局]具体的な詰めはこれから検討。
<岩上> 地域援助事業者について。「一般相談支援事業者及び特定相談支援事業者」となっているが、一般相談は地域移行・地域定着を行う事業者。特定相談はサービス利用計画を作成する事業者。サービス利用を前提としないときには病院に行きづらい。そのため市町村の関与が必要。地域相談は、退院の意思を表明した人しか使えない。迷っている人も使えるようにしてほしい。
<田邉> 「家族等の同意に関する運用の考え方」のうち11の「医療保護入院後における入院に反対する家族等への対応」の解釈が難しい。入院時の同意と入院継続中の同意の有効期間がどうなるのか?入院後は退院の権限が管理者限られていると読める。→[事務局]家族等の同意については、入院の一時点に必要な要件と考えている。→それは従来の解釈と違うと思うが?→[事務局]確認して後日伝える。
退院支援委員会の対象については、1年以上の長期入院者も適用するようにしてほしい。
<香山> 相談員の資格について、研修は必要と思うが、相談員に必要な技術をどう想定しているのか?また、退院支援委員会の必須参加者については、その人の能力の見立てをする職員が必要である。その他とされると実際には参加しにくくなる。→[事務局]相談員の業務は、基本的に精神保健福祉士が退院に向けて行っている業務を想定している。
<良田> 相談員と家族が合わない場合の規定を盛り込んでほしい。
<田邉> 精神医療審査会の任務・役割については審査数も増えていく中で、都道府県が拡充しやすくなるような通知等を出して、国が後押しをしてほしい。
<長野> 第二の「三 居宅における医療サービスの在り方」にはアウトリーチと訪問看護は書かれているが、往診と訪問診療が抜けている。大切な機能なので追加してほしい。
<良田> 第四の「二 人権に配慮した精神医療の提供」について。代弁者に関する意見があったが今回制度化されなかった。代弁者制度の創設を一文入れてほしい。
<岩上> 代弁者制度を入れることに賛成。ただ代弁者というとイメージが広がりすぎるので、「本人の意思決定支援含めて」としていただきたい。
<伊澤> 第一の「一 基本的な方向性」の最後の「結果として、精神病床は減少する。」は改めてほしい。病床削減は重要な政策課題であり、隔離収容の幕引きを宣言すべき。また、今回追加された「病床転換を含む効果的な方策について精神障害者の意向を踏まえつつ、様々な関係者で検討する。」については、「病床転換を含む」となるとそれが前提として書かれている。あくまでも病床転換はきちんと議論が必要であり、前提とすべきではない。
<澤田> 「(全体的な方向性)」に、非自発的入院の回避を明確に入れてほしい。
<伊藤> 今後の国家的な方策をどう考えていくのかと考えると「「病床転換を含む効果的な方策について‥」は盛り込むべき。最終ゴールを目指して、次のステップをどうするか考えていくべき。
<河崎> これまでの議論を踏まえると伊藤構成員の意見に賛成。機能分化の効果的な方策をより具体的に示す意味でも、「財源の必要性」を入れるべき。
<千葉> 議論の蒸し返しはないのでは。今は新たな追加分の点検の段階。病床転換が何を指すのか明示されていない。転換型施設だけが前のめりに話されている。病床転換について検討する、議論をスタートすることが必要と前回一致している。
<田邉> 「適正な精神病床数に向けて」ということだろう。その中で、病床転換の定義もない中で、それが効果的な方策とも読み取れてしまう。この一文は修正が必要。
<千葉> 病床しか利用できないことが問題。「精神病床の転換」としたらよい。
<野沢> 病床転換というとどうもハレーションを起こしてしまう。経営上生き残るため、単なる看板の架け替えとイメージされてしまう。総合的な資源を地域に整備していくことが意味。定義を含めて検討をしていくべき。
<籠本> 前回、病床転換をテーマにした検討の場を設けてほしいとなったと思う。これまでどっちつかずで5年経つことに危惧を抱いている。指針も告示から5年目途の見直しの前段階で、モニタリングも必要と思う。
<河崎>モニタリングは重要だが、障害福祉計画等の数値目標に反映されることになる。病床転換の問題はこれまで議論しづらかった。定義を含めて議論することが必要。
<岩上>議論をしていく中で、国は信用されていないんだなと。ハードの話ではない。この議論をしていくと、地域医療を進める話になる。長期入院患者さんの意向調査はきちんとしてほしい。「良質かつ適正な精神障害者に対する医療の提供」を目指すのでなければ、これまでの改革ビジョンや今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会での検討は意味がないということになってしまう。
<近森> 一般医療を担う立場から。自分の病院も昔は病床を増やす方向であったが、回復期リハという考え方が出て変わってきた。この検討会で、在宅につなげるための医療の話が何もされていないことに違和感を覚える。退院後生活環境相談員とか退院支援委員会を遣っても、急性期にしっかりと(保険)点数をつけて傾斜をつけなければ絵に描いた餅になる。
<伊澤> 病床転換の定義がない中ではイメージだけ先行してしまう。
<伊藤> 書きぶりは任せるが、「病床転換」は残してほしい。10年前から言われてきたが病床は現に減っていない。次のステップのオプションを議論すべき。
<中坂> 「病床転換を含む‥」の1文は違和感がある。
<伊豫> 基本的方向性のナカグロの2つは機能分化と地域生活支援のことを言っている。
<澤田> 病床転換はやはり看板の架け替えと物議を醸す。これが主な方策と思われてしまう。
<座長> 一歩進めるための議論の場を作っていくべき。病床転換は方策の一つ。表現はともかく地域における受け皿作りを検討していくとしたい。
<長野> 自分が平成8年から病床削減をやったときは、地域の資源を増やしていく必要があった。遅くなるほどやりにくくなる。病床転換に関する議論をタブー視するほど、結果として何も進まないことになってしまう。
<近森> 一般医療では、急性期、回復期リハ、在宅という流れができたが、どうしても帰れない人を療養病床が受けている。ただ、高知では介護療養型病床が減ってきている。患者の立場に立った方向性を考えて、病床転換を図っていくべき。
<千葉> このままでも10年経つと長期入院者は半減するだろう。放っておいても病床は減る。民間病院の入院者の要介護度をシュミレーションしたが、8万床は要介護認定の対象者で占められている。通常の介護保険サービスで受け入れてほしいが、それが難しければ転換型の介護施設をと提案したが、これも反対された。現在の障害サービスは身体・知的の何十年という蓄積をもとに出来ている。精神には合わない。中等度から重度の生活障害プラス精神障害者のある人にどんな施設がよいのか、どこであればいいのか。民間病院が障害福祉サービスに手を出すとほとんどが赤字の状態。病床転換型の施設を作った時には、地域援助事業者に運営を任せることがあってもいい。
[事務局(北島課長)]
○病床転換の議論が必要ということで意見は一致している。この検討会の下で議論するのがよいと考えている。
○指針の一文は、「病床転換の可否も含め」としたい。
○モニタリングについてはしっかりやっていきたい。法施行後3年を目途とした見直し規定もあり、その都度必要な検討体制を作っていきたい。
○財源問題も、指針の中に入れる。
<伊豫> 「機能分化は段階的に行い、‥」という表現に違和感がある。本来は「機能分化を目指した病床の機能転換」ではないか。
<良田> 議論をしていくことに賛成。地域においてどういう生活が行えるかについても議論しなければ長期入院患者はなくならない。地域で生活している者の高齢化についても考えてほしい。
<野沢> タブーを恐れずに議論するのは賛成。理想を追求していくためには、事業経営のあり方を考えていくべき。いまの30代の人たちは我々とは全く違う発想をもつ新しいタイプの人たち。この人たちの知恵を導入しながら考えるべき。
<香山> 具体的な患者像、各ステージの支援・リハのあり方を示したうえで、どういう形で生活を可能としていくのかを整理していくべき。
<田邉> 今後の気になる点。措置入院者には退院後生活環境相談員が付いていない。権利擁護する人がいない。検討が必要。医療保護入院に関するQ&Aも現実的に出していくべき。
<平田> 機能分化の原点の確認をしたい。昔は精神病床がブラックボックスだった。急性期には集中的に人手をかけること。回復期は多様性を重視すること。3カ月から1年未満のところの議論が十分でない。
2002年に世界精神医学会(WPA)が横浜であり、その中で精神保健従事者団体懇談会の企画による第4回精神保健フォーラムが開催された。私はシンポジウム「これからの精神保健福祉」に参加し、「精神保健福祉士の当面の課題-生活モデルの推進-」として、「社会的入院者にとって残された時間はそう多くない。これまで失った年月を思うと十分なお金をかけてその人らしい生活を送るための方策を考える必要がある」といった主旨の発言をした。あれから11年。間もなく干支が一回りする。この間に残された時間さえも無くされた人々が数多くいる。
病床がそこにある限り、その数を前提とした財源配分がなされ、それを維持することでしか経営が成り立たない仕組みの中では、在院者が減らないことは明らかなことだ。病床転換の話も病床削減を前提として議論しなければ、何も意味をなさないという繰り返しになってしまう(個人の感想です)。
(文責:常務理事 木太直人)