<2008/01/09>
報告:井澤 嘉之(国際委員)
さる2007年10月20日、21日、全社協・灘尾ホール(東京都千代田区)において、「国際ソーシャルワークセミナー」が行われました。
このセミナーは、2部構成となっていました。セミナー1は、社会福祉実践(ソーシャルワーク)の担い手の役割が非常に重要となっている現状において、その先駆的な取り組みを行っているイギリスおよび自助・互助(家族支援)やボランティアによる福祉実践を理念とするシンガポールから専門家を招聘して、実践を学びつつ日本の今後について意見交換を行うことを目的とされました。また、2006年から国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)の新会長となったデイビット・ジョーンズ氏をお招きすることにも大きな意義がありました。
セミナー2は、とくにソーシャルワーク教育に焦点をあてて、国内外の教育と実践に関する理解を深め、また今後のソーシャルワーク教育のあり方と方向性を示唆することを目的とされました。
本協会は後援団体として参画しました。2日間の日程はとても中身の濃い盛りだくさんの内容であったため、詳細を紹介することができませんが、その一部を紹介したいと思います。
国際ソーシャルワークセミナー(10月20日) 社会福祉実践を学ぶ〜福祉の担い手に求められる機能と役割〜 |
<第一部> 講演1「わが国のソーシャルワークの現状と課題」 講師:大橋謙策氏(日本社会事業大学学長) 講演2「アジアにおけるソーシャルワークの現状と課題」 講師:ジョン・アン氏(IFSW理事(アジア太平洋選出/シンガポール)) 講演3「国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)50年の活動成果と今後の展望」 講師:デイビッド・ジョーンズ氏(IFSW会長(イギリス)) <第二部> シンポジウム「多様なニーズに応える専門職の機能と役割」 講演者 デイビッド・ジョーンズ氏(IFSW会長) ジョン・アン氏(IFSW理事(アジア太平洋選出)) ソーシャルワーク学識経験者 村尾 俊明氏(社団法人日本社会福祉士会会長) 笹岡 眞弓氏(社団法人日本医療社会事業協会会長) 竹中 秀彦 (社団法人日本精神保健福祉士会会長) |
国際ソーシャルワークセミナー2(10月21日) ソーシャルワーク教育における国際的動向とわが国の課題 |
<第一部> 記念講演1「イギリスのソーシャルケアの動向とソーシャルワーク教育の現状」 講師:ジャッキー・パウエル氏(イギリス・サザンプトン大学教授) 記念講演2「イギリスのケアスタンダード法とCCWの役割 ―ケアサービスの評価のあり方とシステムについてー」 講師:リアン・ヒューズ・ウイリアム氏 (ウエールズ・ケア協議会 チーフ・エグゼクテイブ) 記念講演3「日本とイギリスのソーシャルワーク比較」 講師:炭屋 茂氏(前環境庁事務次官、元厚生労働省社会・援護局長) <第二部> シンポジウム「ソーシャルワーク教育とソーシャルワーク実践との関わり」 「ソーシャルワーク教育のグローバルスタンダードとソーシャルワーク教育」 デイビット・ジョーンズ氏(IFSW会長) 「韓国における社会福祉士の養成課程と社会福祉制度・実践」 金 聖二氏 (韓国梨花女子大学教授/韓国ソーシャルワーカー協会会長) 「日本における社会福祉士の現状及び課題とソーシャルワーク教育」 白澤 政和氏 (社団法人日本社会福祉士養成校協会会長、大阪市立大学大学院教授) 「日本とイギリスのソーシャルワーク教育及びソーシャルワーク実践の比較」 矢島 真希氏 (ロンドン行政区のソーシャルワーカー サザンプトン大学修士課程修了/ 元(社)日本社会福祉士会事務局員) |
20日のセミナーは、「社会福祉実践を学ぶ〜福祉の担い手に求められる機能と役割〜」というテーマでした。国際ソーシャルワーカー連盟(International Federation of Social Workers (IFSW) )会長のデイビッド・ジョーンズ氏の講演があり、IFSWの歴史の紹介と現在の世界的な流れを聞くことができました。
この講演と、大橋氏の「わが国のソーシャルワーク教育の現状と課題」やジョン・アン氏の「アジアにおけるソーシャルワークの現状と課題」の講演を聞くことによって、アジア、日本という地域のソーシャルワークの現状をより理解しやすくなる構成になっていたと思います。
シンポジウムでも、「イングランドのソーシャルワークとソーシャルケア」について、近年の変化を興味深く聞くことができました。
21日は、「ソーシャルワーク教育における国際的動向とわが国の課題」がテーマでした。イギリスのソーシャルケアの動向や、ケアスタンダード法とウエールズ・ケア協議会の役割という講演があったので、地方分権化が進むイギリスの現状についても知ることができました。
また、矢島氏の報告では、ご自身の体験から日本とイギリスのソーシャルワーク教育の違いについて話されましたが、特に私が印象的だったのは、実習が200日で、実習指導者と一対一で長期にわたり指導を受けるということや、実習審査には実習指導者のみではなく、自分の担当するクライエントも含まれるという点で日本との制度の違いを感じました。
そして、炭谷氏の講演では、ソーシャルファーム(社会的企業)についても触れられたため、昨年本協会が主催したジェームズ・マンデイバーグ氏の講演(国際福祉セミナー)でのソーシャルファームの役割に関する話が思い起こされ、興味深いものでした。この2日間のセミナーは一つの講演を聞くことにより、次の講演がより広がりをもって聞くことができるように構成されていると感じました。
セミナー1のデイビッド・ジョーンズ講師(右2人目)、ジョン・ アン講師(左)、竹中会長(左3人目)、後援団体関係者 |
最後に、デイビッド・ジョーンズ氏の講演の中で、2008年4月15日は「WORLD SOCIAL WORK DAY(世界ソーシャルワーク・デー)」である、との紹介がありました。「世界全体で行事をしてください、祝賀行事でも良いですから」と話されていました。皆さんの地域でも記念行事を!とのことでした。
今回のセミナーに参加して、いろいろな刺激を受けることができたのは、これからの私の貴重な財産になると思いました。また「ソーシャルワークは世界を住みやすくする」という言葉もありましたが、これからも自分の活動している地域の中からグローバルにソーシャルワークを考えていく必要性を感じた2日間でした。