別紙1
「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(平成12年3月31日厚生省令第80号/最終改正 平成20年9月30日厚生労働省令第149号)の一部改正
<対象項目>
第2章 人員に関する基準 第2条 人員に関する基準
対象項目 | 現行基準 | 改正要望案 |
1−1 | 保健師、助産師、看護師又は准看護師(以下この条において「看護職員」という。)指定訪問看護ステーションの看護職員の勤務延時間数を当該指定訪問看護ステーションにおいて常勤の看護職員が勤務すべき時間数で除して得た数が2.5以上となる員数 | |
1−2 | 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数 | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士又は精神保健福祉士(精神障害者を対象とした訪問看護を実施する場合に限る) 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数 |
1)現在訪問看護ステーションは、介護保険に基づく場合と、健康保険に基づく場合に行われています。そのうち健康保険に基づく場合その対象者は「疾病又は負傷により継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその程度につき厚生労働省令で定める基準に適合したと認める者)」となっており、その中に「精神障害者」も含めています。
また、訪問看護の内容として、在宅において介護に重点をおいた看護サービスの具体例として、(1)病状観察、(2)清拭・洗髪、(3)褥瘡の処置、(4)体位交換、(5)カテーテル等の管理、(6)リハビリテーション、(7)食事排泄の解除、(8)ターミナルケア、(9)家族の介護指導等と合わせて、精神科看護を含めています。
現行の訪問看護ステーションの人員基準に「理学療法士又は作業療法士又は言語聴覚士」も認めているのは、上記の具体例のうち、リハビリテーション等に対応できるようにしたものと考えられます。精神障害者の在宅療養においても、自立した日常生活を営むことができるよう、その療養生活を支援し、心身の機能の維持回復を図るためには、看護師等と協働して精神保健福祉士の「相談援助」等(参考1参照)の必要な訓練が極めて有効であると考えます。
2)社会保険診療報酬では、すでに「精神科訪問看護・指導料」の対象職員として、精神保健福祉士が認められている。援助内容としては「看護及び社会復帰指導等」となっている(参考2参照)。診療報酬と同様の趣旨で訪問看護ステーションにおいても精神保健福祉士の参画が認められることが妥当と考えられます。
1)厚生労働省が精神保健福祉対策本部で検討し、試行的実践をしている、いわゆるACT(Assertive Community Treatment )のシステムにおける効果に実証されているように、主治医と密接な連携の下に活動する医療系多職種チームとしての訪問看護ステーションを活用することは、極めて有効であると考えられます。更にはそのスタッフ構成の中に精神保健福祉士も加えられることにより、看護師や作業療法士等との職種連携により在宅生活を重層的に支援していくことが可能になると考えられます。その効果は多職種が同一機関内に存在することによるチームアプローチが可能となること、その際のケアマネジメント機能を精神保健福祉士が担えることにあります。
2)添付資料別紙2の精神科訪問看護・指導に係る調査結果からも、精神保健福祉士が関与しているケースは金銭管理や住環境整備といった支援が、看護師が訪問する場合よりも多くの時間を割いていることが明らかになっています。
3)退院後の地域生活においては、今般施行された障害者自立支援法による地域生活支援策を有効に活用するためにも、また地域における在宅生活を安定維持するためにも移行やリンケージ等の機能役割とともに、多機関に多様なサービスが効率よく適切に提供されるためのアセスメント、プランニング、モニタリング等の機能を持つケアマネジメントが重要になります。現在、精神障害者の地域生活支援の要となるケアマネージャーの多くは市町村および地域活動支援センターに配置されていますが、医療的支援重視型の支援チームが必要な対象者には訪問看護ステーションがケアマネジメント機能を持つ精神保健福祉士を充当して体制整備されることが望ましいと考えます。
この法律において「精神保健福祉士」とは、4の(1)の登録を受け、精神保健福祉士の名称を用いて、精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うこと(以下「相談援助」という。)を業とする者をいう。
012 精神科訪問看護・指導料(・)
(精神科訪問看護・指導料について)
(1) 精神科訪問看護・指導料()は、精神科を標榜している保険医療機関において精神科を担当している医師の指示を受けた当該保険医療機関の保健師、看護師、作業療法士又は精神保健福祉士(以下「保健師等」という。)が、精神障害者である入院中以外の患者又はその家族等の了解を得て患家を訪問し、個別に患者又は家族等に対して看護及び社会復帰指導等を行った場合に算定する。
(2) 精神科訪問看護・指導料()は、精神科を標榜している保険医療機関において、精神科を担当する医師の指示を受けた保健師等が、グループホーム又は医師若しくは看護師の配置を義務付けられていない精神障害者施設の了解の下にこれらの施設を訪問して、当該施設に入所し、かつ、当該保険医療機関で診療を行っている複数の患者又はその介護を担当する者等に対して同時に看護又は社会復帰指導を行った場合に算定する。
本協会が2009年4月に実施した外来通院中の精神障害者等に対する精神保健福祉士の業務実態調査(別紙4参照)によると、2009年3月の1か月間に医療機関の精神保健福祉士が外来患者、家族及び関係機関等に対応した件数は平均299件でしたが、このうち精神科継続外来支援・指導料の療養生活環境整備支援加算を算定している割合はわずか3.8%(11.3件、月間452点)に過ぎませんでした。
本加算は、先の2008年度診療報酬改定において新設され、精神障害者の地域生活の維持や社会復帰に向けた支援として、患者又はその家族等の患者の看護や相談に当たる者に対して行う医師の支援と併せて、保健師、看護師、作業療法士又は精神保健福祉士が、療養生活環境を整備するための支援を評価したものであり、極めて意義深いものではありますが、現状では他の精神科専門療法との同日算定が認められていないこともあり、算定件数がごく少数に限られている結果となっています。
現在の精神保健医療福祉の最大の課題は、地域生活移行、地域生活定着にあると認識していますが、特に外来患者の地域生活定着を具体化していくためには、医療機関と地域の関係諸機関等の連携による患者本人を取り巻くさまざまな環境調整と直接的な支援が欠かせません。
また、こうした支援が医師による通院・在宅精神療法と併せて算定することが可能となることで、外来部門に専従の精神保健福祉士等を配置する精神科医療機関が増え、結果として相対的に医療機関における外来患者への対応比率が高まることから、「精神科療養生活環境調整支援料」の新設を求めるものです。
1)外来通院中の精神障害者を取り巻く家族・関係施設・機関・地域社会などとの環境調整業務により、地域生活の破綻及び再発・再入院の防止が促進されます。
2)医療機関への受診以外に地域社会との接触機会をもたない精神障害者と、障害者自立支援法に基づく障害福祉サービス等を本人の希望に沿いながら結び付けていくことで、より豊かな地域生活を送ることが可能となります。
002−2 精神科継続外来支援・指導料
(精神科継続外来支援・指導料について)
(1) 精神科継続外来支援・指導料とは、入院中の患者以外の患者であって、統合失調症、躁うつ病、神経症、中毒性精神障害(アルコール依存症等をいう。)、心因反応、児童・思春期精神疾患、人格障害又は精神症状を伴う脳器質性障害等のものに対して、精神科を標榜する保険医療機関の精神科を担当する医師が、精神障害者の地域生活の維持や社会復帰に向けた支援のため、患者又はその家族等の患者の看護や相談に当たる者に対して、病状、服薬状況及び副作用の有無等の確認を主とした支援を継続して行う場合を評価したものである。
(2) 「注2」に規定する加算は、「注1」に規定する医師による支援と併せて、精神科を担当する医師の指示の下、保健師、看護師、作業療法士又は精神保健福祉士(以下「保健師等」という。)が、患者又はその家族等の患者の看護や相談に当たる者に対して、療養生活環境を整備するための支援を行った場合を評価したものである。
(3) 他の精神科専門療法と同一日に行う精神科継続外来支援・指導に係る費用は、他の精神科専門療法の所定点数に含まれるものとする。
1月につき1000点
精神科を標榜する医療機関が、通院による医療を提供している自殺のハイリスク患者に対して、重点的な自殺予防ケアを行う必要を認め、計画的な自殺予防ケアが行われた場合に、自殺ハイリスク患者として認定した日から起算して12月を超えない期間において1月に1回を限度として所定点数を算定する。
(1) 自殺ハイリスク患者通院医学管理料は、別に厚生労働大臣が定める施設基準(常勤の精神保健指定医を1名以上、専任の精神保健福祉士又は臨床心理技術者を1名以上配置していること)に適合しているものとして届け出た保険医療機関に通院している患者であって、当該管理料の要件を満たすものについて算定する。
(2) 自殺ハイリスク患者通院医学管理料は、自殺予防ケアを実施するために自殺ハイリスク患者及びその家族等に対し、適切な自殺予防・支援のための予防支援計画に基づく総合的な自殺予防支援を定期的な面接や経過確認等により継続して実施した場合、12月を超えない期間において1月に1回を限度として算定する。
(3) 自殺ハイリスク患者とは、統合失調症、躁うつ病、神経症、中毒性精神障害(アルコール依存症等をいう。)、心因反応、児童・思春期精神疾患、人格障害又は精神症状を伴う脳器質性障害等(以下この節において「精神疾患」という。)を有する患者であって次に掲げるものをいう。
ア 過去1年間に自殺企図があったもの
イ 自殺企図及び自傷又はそれが疑われる行為により救命救急入院を経て当該入院医療を提供した医療機関の紹介により診察を行ったもの
ウ 頻回の自傷行為や社会的要因を含む自殺に関する危険因子があって精神保健指定医が自殺ハイリスク患者であると認めたもの
(4) 精神科専門療法については、別に算定できるものとする。
1回につき200点
自殺ハイリスク患者通院医学管理料の算定期間中に、多重債務や失業問題、離婚や家庭内暴力など、社会的要因の解決に関する支援が必須である患者の支援が計画され、関係機関への紹介や相談などを患者および家族等に行い、加えて関係機関とのケア会議や支援会議などを実施して専任の精神保健福祉士又は臨床心理技術者が参加した場合に、1回に限り加算できるものとする。
入院中1回に限り500点
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た保険医療機関に入院している患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料を含む。)又は第3節の特定入院料のうち、自殺ハイリスク患者ケア加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、重点的な自殺予防ケアを行う必要を認め、計画的な自殺予防対策が行われた場合に、入院中1回に限り、所定点数に加算する。
(1) 自殺ハイリスク患者ケア加算は、別に厚生労働大臣が定める施設基準(常勤の精神保健指定医を1名以上、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理技術者をそれぞれ1名以上配置していること)に適合しているものとして届け出た保険医療機関に入院している患者であって、当該加算の要件を満たすものについて算定する。
(2) 自殺ハイリスク患者ケア加算は、自殺予防ケアを実施するために自殺ハイリスク患者及びその家族等に対し、適切な自殺予防・支援のための予防支援計画に基づく総合的な自殺対策を継続して実施した場合、当該入院期間中1回に限り算定する。
(3) 自殺ハイリスク患者とは、統合失調症、躁うつ病、神経症、中毒性精神障害(アルコール依存症等をいう。)、心因反応、児童・思春期精神疾患、人格障害又は精神症状を伴う脳器質性障害等(以下この節において「精神疾患」という。)を有する患者であって次に掲げるものをいう。
ア 過去1年間に自殺企図があったもの
イ 自殺企図及び自傷又はそれが疑われる行為により救命救急入院を経て当該入院医療を提供した医療機関の紹介により診察を行ったもの
ウ 頻回の自傷行為や社会的要因を含む自殺に関する危険因子があって精神保健指定医が自殺ハイリスク患者であると認めたもの
わが国では、1998年以降連続して自殺者数が毎年3万人を超える状況が続いており、極めて大きな社会問題として諸々の対策が講じられているところです。自殺対策大綱では、当面の重点施策として「適切な精神科医療を受けられるようにする」ために、「精神科医をサポートする人材の養成など精神科医療体制の充実」、「うつ病の受診率の向上」、「うつ病以外の精神疾患等によるハイリスク者対策の推進」等の施策及び、「自殺ミス医者尾再度の自殺を防ぐ」ために、「救急医療施設における精神科医による診療体制等の充実」、「家族等の身近な人の見守りに対する支援」が掲げられています(参考1参照)。
このうち「うつ病の受診率の向上」については、2008年度診療報酬改定により診療情報提供料(1)の精神科医療連携加算が新設されたものの、「精神科医をサポートする人材の養成など精神科医療体制の充実」と「うつ病以外の精神疾患等によるハイリスク者対策の推進」については、診療報酬での取扱いがなされておりません。
通院中の自殺ハイリスク患者に対しては、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の規定に基づき算定される「通院対象者通院医学管理料」(参考2参照)を参考に、自殺のリスクが高い1年間について、医師等による継続的かつ適切な医療の提供と、失業、倒産、多重債務、長時間労働等の社会的な要因を含む危険因子に対する精神保健福祉士等による適切な援助の提供を評価することが有効と考え、「自殺ハイリスク患者通院医学管理料」の新設を求めるものです。
また、入院中の自殺ハイリスク患者に対しても、多職種により作成する自殺予防・支援のための予防支援計画に基づく総合的な自殺対策を継続して実施することにより、当該患者の急性自殺傾向を防ぎ、入院の長期化も防ぐことが可能となることから、「自殺ハイリスク患者ケア加算」の新設を求めるものです。
第4 自殺を予防するための当面の重点施策
5.適切な精神科医療を受けられるようにする
うつ病等の自殺の危険性の高い人の早期発見に努め、確実に精神科医療につなぐ取組に併せて、これらの人々が適切な精神科医療を受けられるよう精神科医療体制を充実する。
(1) 精神科医をサポートする人材の養成など精神科医療体制の充実
各都道府県が定める保健、医療、福祉に関する計画等における精神保健福祉対策を踏まえ、地域の精神科医療機関を含めた保健・医療・福祉のネットワークの構築を促進する。
また、必要な研修等を実施し、精神科医をサポートできる心理職等の養成を図る。その上で、こうした心理職等のサポートを受けて精神科医が行う診療の普及状況を踏まえ、診療報酬での取扱いを含めた精神科医療体制の充実のための方策を検討する。
(2) うつ病の受診率の向上
「新健康フロンティア戦略」に基づき、うつ病についての正しい知識を普及し偏見をなくすための普及啓発を行う。
また、かかりつけの医師等がうつ病と診断した人を専門医につなげるための診療報酬上の評価を含む仕組みづくりについて検討する。
(3)〜(5) 略
(6) うつ病以外の精神疾患等によるハイリスク者対策の推進
うつ病以外の自殺の危険因子である統合失調症、アルコール依存症、薬物依存症等について、調査研究を推進するとともに、継続的に治療・援助を行うための体制の整備、自助活動に対する支援等を行う。
また、思春期・青年期において精神的問題を抱える者や自傷行為を繰り返す者について、救急医療機関、精神保健福祉センター、保健所、教育機関等を含めた連携体制の構築により適切な医療機関や相談機関を利用できるよう支援する等、精神疾患の早期発見、早期介入のための取組を推進する。
7.自殺未遂者の再度の自殺を防ぐ
自殺未遂者の再度の自殺を防ぐため、入院中および退院後の心理的ケア、自殺の原因となった社会的要因に対する取組を支援する。
(1) 救急医療施設における精神科医による診療体制の充実
精神科救急体制の充実を図るとともに、必要に応じ、救命救急センターにおいても精神科医による診療が可能となるよう救急医療体制の整備を図る。
また、自殺未遂者に対する的確な支援を行うため、自殺未遂者の治療と管理に関するガイドラインを作成する。
(2) 家族等の身近な人の見守りに対する支援
自殺の原因となる社会的要因に関する各種相談機関とのネットワークを構築することにより精神保健福祉センターや保健所の保健師等による自殺未遂者に対する相談体制を充実するとともに、退院後は、家族等の身近な人の見守りを支援するため、地域において精神科医療機関を含めた医療保健福祉のネットワークを構築するなど継続的なケアができる体制の整備を図る。
別表
第1章 基本診療料
第2節 通院料
通院医療については、継続的かつ適切な医療を提供するため、治療段階に応じた評価を行うとともに、関係機関等の連絡調整等を重視した評価を行った。
○通院対象者通院医学管理料(1月につき)
- 前期通院対象者通院医学管理料(法第42条第1項第2号又は第51条第1項第2号による決定の日(以下「通院決定日」という。)から数えて6月以内の期間(以下「通院前期」という。)) 8,250点
- 中期通院対象者通院医学管理料(通院決定日から数えて7月以上24月以内の期間(以下「通院中期」という。)) 7,250点
- 後期通院対象者通院医学管理料(通院決定日から数えて24月を超えた期間(以下「通院後期」という。)) 6,250点
- 急性増悪包括管理料 39,000点
※主な算定要件
- 常勤の精神保健指定医を1名以上配置
- 作業療法士、精神保健福祉士又は臨床心理技術者を2名以上配置
以上