要望書・見解等

2017年度


標題 「精神医療アドボケーター制度(仮称)」の創設に関する意見書
日付 2018年3月2日
発翰
番号
JAPSW発第17-363号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 部長 宮嵜雅則 様

 平素より本協会の事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、入院中の精神障害者の意思決定支援については、障害者総合福祉推進事業において平成26年度「入院中の意思決定及び意思の表明に関するモデル事業」及び平成27年度「入院に係る精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するモデル事業」が実施され、公益社団法人日本精神科病院協会によって「入院に係る精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するアドボケーターガイドライン」が作成されています。

 本協会としても、入院に係る精神障害者の意思決定支援やアドボケーター制度およびその養成のあり方には大きな関心を寄せているところです。しかし、本来的には「アドボケーター」が有する機能や役割は多岐に渡り、それは精神医療の中だけに限定されるものではないことは自明であると認識しています。アドボケーターとは、広義の意味では自分の意見や権利を上手く主張することのできない患者や障害者の代わりに、それを代弁する者のことであり、日本語での名称は、代弁者、擁護者、権利擁護者、権利擁護推進員、医療決断サポーターなどと呼ばれることもあります。患者や障害者、高齢者、様々な被害者などに寄り添い、彼らの意見を聞きながら、彼らが納得いくように、周囲のスタッフや家族、行政機関などの「社会」に気持ちや思いを伝えていく役割があります。例えば、成年後見人等もその役割を担うための一制度でありますが、精神医療の現場では、特にそのようなアドボケーター(以下「精神医療アドボケーター」という。)の存在が必要不可欠であり、それをいつでも誰もが利用することができる仕組み、つまりは「精神医療アドボケーター制度」の創出が早急に必要であると考えています。

 つきましては、平成30年度予算案において示されている「意思決定支援等を行う者に対する研修の実施」に関しましては、研修に係るカリキュラムやテキストの作成等に本協会として参画を希望しますとともに、研修の実施にあたっては下記の点にご留意いただきたく、ご配慮のほどよろしくお願い申しあげます。

 
  1.精神医療アドボケーターの定義等について
  • 精神医療アドボケーターの定義は、「精神医療を受けるすべての個人が、主体的に望む暮らしについて意思表出して行動できるよう側面的に支援するとともに、本人の立場で気持ちや状況を理解し必要に応じて代弁し、権利行使を支援する者」とするべきです。
  • 精神医療アドボケーターには、入院中の精神障害者に対してあらゆる意味での権利侵害がおきていないかをチェックする役割を課し、権利侵害が疑われる場合には都道府県知事等に申告することができる機能を持たせる必要があります。
  • 入院している医療機関と同一法人の職員が精神医療アドボケーターの任に就くことを禁止するべきです。
 精神医療アドボケーターは、精神医療の中での権利擁護を果たす機能を有すべきことから、入院医療機関や同一法人の職員がその任に就くことを禁ずることを明記すべきです。精神医療アドボケーターには、医療を受けるか否かも含めて生活の主体者である本人の自己決定を前提にする姿勢が必要であり、その上で、精神障害者の身に権利侵害を生じていることが疑われる場合には、如何なる利害にも左右されることなく、速やかに都道府県知事等に申告する機能が付与されていなければならないと考えます。しかしながら、この場合の申告が真に本人のために適切なものとなるために、精神医療アドボケーターは精神医療および精神保健福祉と関連法制度等に熟知している必要があり、申告する際にはシニアアドバイザー(精神科医療に精通する有識者)との連名を原則とするなどの規定が必要となります。

  2.精神医療アドボケーターに対する医療機関側の姿勢について
  • アドボケートを担う以上は、精神医療アドボケーターと入院先医療機関の間には患者の権利等をめぐって何らかの葛藤が生じ得る可能性があります。医療機関側には、本人の精神医療に対するあらゆる感情や精神医療アドボケーターの意見を丁寧に受け止め、理解する姿勢が求められ、本人や精神医療アドボケーターを好意的に受け入れて協働していく必要があります。
  3.アドボケーター養成研修について
  • 精神医療アドボケーターの養成研修は最低でも2日間以上の日程で行い、受講対象者の積極的な研修内容の習得に繋がるよう、講義、ロールプレイ、事例検討、グループディスカッション等に十分な時間を確保する必要があります。具体的な研修内容としては、(1)「精神医療の歴史」に関する講義、(2)精神医療アドボケーターの役割と機能に関する説明の説明、(3)精神障害者とのかかわり方や留意点等に関する、精神科医や弁護士、精神保健福祉士やピアサポーター等の関係職種によるパネルディスカッションやシンポジウム、(4)精神医療アドボケーターの役割や活動についての課題や疑問点等を確認するための参加者によるロールプレイや事例検討、を最低限カリキュラムに盛り込むべきです。また、各講義の講師要件を明示すべきです。
 日本や世界における精神医療の歴史、精神保健福祉法や精神保健福祉政策の変遷、国策としての精神障害者への長年にわたる隔離収容主義と現に精神科病院で起きてきた数々の不祥事や人権侵害の事実等々、精神医療アドボケーターを担う専門職は、この歴史的反省の上に立つ視点を醸成することが重要であり、その基盤があって初めて精神医療の利用者のアドボケート機能が果たせるといえます。また、精神医療アドボケーターは本人・入院医療機関・家族などの意見を踏まえて、現在の状況を総合的に判断し、適切に本人の権利を擁護していく資質が求められます。 

  4.精神医療アドボケーター制度の希望、申し込みについて
  • 精神医療アドボケーターを利用する際の申し込みについては、入院または入院治療への導入が予想される精神障害者本人からの電話あるいは郵送以外に、通院・入院医療機関の精神保健福祉士を始めとした医療機関のスタッフが代行できること。また、医療機関、行政、地域援助事業者等に、精神医療アドボケーター制度について本人が利用しやすいよう積極的に周知することを義務付ける必要があります。
 申請者を障害者本人のみにしてしまうと、制度利用のハードルが上がってしまう恐れがあるばかりか、自分では申請できない、あるいはそうしたことが可能な治療環境が整備されていない医療機関も少なからず存在している現状が推測できます。したがって、申請は入院医療機関の担当精神保健福祉士を始めとする医療機関のあらゆるスタッフが十分な配慮のもとに代行する必要があります。また、医療機関、行政、地域援助事業者等は、精神医療アドボケーター制度について本人が利用しやすいよう積極的に周知するとともに、時間をかけて丁寧に説明することが求められます。

  5.医療機関の受入れについて
  • 制度の実施主体は本人と精神医療アドボケーターにあることを前提にし、実施方法については本人・精神医療アドボケーター・医療機関側の三者で協議して決定する必要があります。
 制度の実施主体は本人と精神医療アドボケーターにあることを前提にし、医療機関は可能な限り本人の意向に沿えるよう配慮しなければなりません。したがって、実施方法については入院医療機関が一方的に指示をするのではなく、本人・アドボケーター・医療機関側の三者が対等な立場で十分な協議を重ねて決定していく必要があります。
  • 精神医療アドボケーターとの面会制限は、権利侵害の上塗りであると認識し、病状が重いことを理由にして本人と精神医療アドボケーターとの面会をさせないということがあってはなりません。病状が重いなどの理由で精神医療アドボケーターとの面会に支障を来すと判断される場合であっても、面会を確実に遂行できることを目標に、精神医療アドボケーターと医療機関が協議の上で実施方法を検討し、場合によっては病院スタッフが同席するなど精神医療アドボケーターの安全確保に最大限の配慮をするなどの調整を行う必要があると考えます。

  6.精神医療アドボケーター誓約書について
  • 利用を希望する精神障害者と精神医療アドボケーターの間では契約書が交わされる必要があります。
 精神医療アドボケーター制度の実施主体は本人と精神医療アドボケーターであり、制度を活用する際には両者の間での「契約」が重要であり、ここでは標準化された様式に基づき契約書が交わされている必要があります。 

  7.アドボケーター活動報告書について
  • 医療機関への報告は、本人の同意があった場合のみとする必要があります。また、必要に応じて権利侵害に係る都道府県知事等への申告ができるようにするべきです。
 通院や入院先の医療機関に相談内容を報告することを義務化すると、それを本人が意識して本音を言えないばかりか、本人にとって秘密にして欲しい事項を報告することに対して精神医療アドボケーターに倫理的葛藤が生じてしまいます。精神医療アドボケーター自身が専門職としての記録を残すことは必要な業務とし、医療機関への報告については義務とはせず、本人の同意を前提とした上で、本人の治療上に必要と判断される場合のみとするべきです。一方、本人への報告については義務付けることが必要であり、面接内容を本人自身が書面で読み返すことができるように配慮することは精神医療アドボケーターの機能として欠かすことはできません。 

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標題 精神保健福祉法改正に係る本協会の対応について
日付 2018年2月15日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 常任理事会
提出先 構成員の皆さまへ

 本協会は、去る2016年11月28日に、常任理事会から構成員に向けたメッセージ「相模原障害者施設殺傷事件に関する見解等表明に係るこの間の経緯について」をウェブサイト上で発信しました。また、同様の内容を機関誌「精神保健福祉」108号の「協会の動き」の中で掲載しています。これは、相模原障害者施設殺傷事件(以下「事件」という。)に端を発し、措置入院制度を中心とする精神保健福祉法改正案作成に係る国の動きに対する本協会の意見表明や要望書提出の経過、意図等(第4弾まで)を構成員の皆さまにお示しする内容となっています。

 本協会は、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進める専門職能団体として、これまでに合計10回の意見表明等(「参考」参照)を行ってきました。これら見解等の表明にあたっては、構成員の皆さまからの意見集約とともに、理事会や委員会、プロジェクト等を始め、支部長会議やブロック会議等を通して関係各所からの情報収集に取り組み、協会として総力を挙げて各々の文書を作成してきました。

 この間複数の構成員からは、改正法案へ反対の立場を表明しないことへの懸念が示されておりました。そこで、今回は「措置入院ガイドライン」の完成および昨年廃案となった改正法案が通常国会で再審議される現状に鑑み、これまでの、そしてこれからの本協会のスタンスや考え、改正法案への意見をあらためて構成員の皆さまに下記の通りにお示し、情報共有することといたしました。
 
  1.本協会の見解表明に到る経緯と内容について

 本協会は、2016年7月26日以降、政府および厚生労働省の事件への対応、事件を受けて改正されようとしていた措置入院制度や精神保健福祉法に対して、広く国民や構成員へ見解を示してきました。時宜にかなった見解を速やかに表明すべく、国や影響力のある関係団体の動きには即応し、その都度上述した方法を用いて関係者の意見集約に努めてきました。その中で、偏狭な報道に対して真実に基づく正確かつ慎重な情報発信を要望し、精神科医療が社会防衛装置としては機能し得ないことを論じ、精神科医療や措置入院制度および新たに導入されようとしていた措置入院者への退院後の継続的な支援が、事件の再発防止策と受け取られかねない政策へは一貫して反対の立場を明言してきました。また、ノーマライゼーションやインクルーシブな社会の実現に向けた取り組みの推進、一定の教育を受けた福祉人材の確保、差別思想や優生思想に対峙できる共生思想の構築の必要性を訴えてきています。また、「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」(以下「事件検証・検討チーム」という。)における関係団体ヒアリングでは田村綾子副会長が、「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」(以下「検討会」という。)には構成メンバーとして柏木一惠会長が、さらには、2017年4月13日に行われた第193回国会参議院厚生労働委員会では参考人として田村副会長が出席して、いずれも本協会を代表して前述したような内容を訴えています。その後も、本協会は誰もが等しく尊重され、自分の意思に基づく生活を主体的に選択できる社会の実現に向けて尽力する覚悟があることを言明しています。つまりは、今回の事件を端緒とする改正法案提出までの一連の流れに対しては一定の危機感を有し、事件の報告書や改正法案の一部の内容については反対の立場を表明してきました。しかし、本協会のスタンスは、いかなる場合においても単なる批判や根拠なき反論を展開することに終始せず、あらゆる情報の収集と現状の分析に努め、精神障害者の利益と福祉を最優先に考えた「代替案」を述べることを何よりも大切にしてきています。本協会は今後もこのスタンスを変えるつもりはありません。

  2.措置入院ガイドラインへの意見と作成に係る本協会の参画状況

 措置入院制度を中心とする精神保健福祉法の見直しについては、本協会は前述した通りに様々な意見や要望を発信してきています。本協会は当初から、事件を受けて措置入院制度や精神保健福祉法を改正しようとする一連の国の動きには疑義を唱えてきました。事件と精神保健福祉法の改正を直接的に結びつけることで、あの事件があたかも精神障害者が起こした犯行であるとの誤解を国民に与えてしまうことを危惧したためです。そもそも2013年に成立、2014年に施行された改正精神保健福祉法は、成立時の段階において3年後の見直し規定を設けており、今回の事件のあるなしにかかわらず2016年1月から検討会において議論が進められておりました。加えて、以前から指摘されていた措置入院運用にかかる都道府県格差や権利擁護機能の脆弱性など、法改正の必要性は本協会としても強く認識しており、その改正に向けた議論には始めから積極的に参画していくつもりでした。

 今回の動きの中で「措置入院の関するガイドライン」を【厚生労働科学研究費補助金事業:障害者政策総合研究事業「精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究」『措置入院者の地域包括支援のあり方』(藤井千代研究代表)】で作成するという流れに到った経緯を受け、本協会は事件の再発防止を改正案の目的とする表現には疑義を唱え続けながらも(結果的には国会審議中に改正法案の概要資料の目的から再発防止の文言は削除)、このような議論の場に自らが参画し、よりよい制度設計に総力を挙げて尽力することとしました。直接的にガイドライン案の作成に携わる5つのサブグループには本協会の役員等が研究協力者として参画しております。
各研究協力者は常任理事会や理事会、委員会に随時、研究班の動きを報告して情報を共有し、また常任理事会等の意見を委員が研究班に持ち帰って発言するという作業を繰り返してきました。結果として、改訂に改訂を重ねて完成したガイドラインには本協会の意見が相当程度反映されており、改正案にただ反論するだけではなく、反対すべきは反対しつつも建設的かつ協力的な姿勢を貫いた本協会の努力が奏功した結果となりました。

 厚生労働省では、本研究事業の成果物の完成を受けて、自治体が中心となって退院後の医療等の支援を行うことが必要であると認められる者を対象とした現行の精神保健福祉法に基づく退院後支援のガイドラインと、措置入院の運用に関するガイドラインを年度内に通知することを検討されています。
これらのガイドラインの発出後は、実際の現場における活用や運用の状況に注視し、すべての精神保健福祉士にとって有益な情報を発信していく所存です。

  3.精神保健福祉法改正案へのスタンスと提言

 精神保健福祉法改正の動向については、本協会は今後も高い関心を持って注視し続け、これまで同様ことあるごとに方々からの情報収集、構成員間での意見集約に尽力し、時宜にかなった見解を発信していきます。また、措置入院制度のみならず、積み残してきた課題である医療保護入院の入院手続きの見直しや精神障害者の意思決定支援、非自発的入院のあり方を追求すべく継続的な検討の場を求めていきます。その中には当然ながら本協会も積極的に参画していく必要があり、構成員の皆さまの意見に基づく提言を発信していく考えです。さらには、精神科医療の現場で実務に携わる退院後生活環境相談員の専門性、およびその機能や役割の拡充と質の向上とともに、措置入院制度についてはあらゆる治療や支援に本人の意思が尊重される制度設計を求めていきます。そして、法改正を見据えた措置入院に係る診療報酬の改定については、協会としてその内容を精査し、現場にどのような影響をもたらすかについての吟味と検証を行い、一早く構成員の皆さまに意見や対応策を発信していきます。

 最後に、すべての精神障害者への支援が地域包括ケアシステムの中で一体的に行われるよう、精神保健福祉法の「福祉」の定義を再構築し、国際連合の「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」や「障害者の権利に関する条約」に適った法制度の創設と運用を求め続けるとともに、本協会は関係諸団体と連携して活動を展開していきます。

  <参考>精神保健福祉法改正案に係る本協会からの意見表明等(2016年7月~2017年6月)
  [PDF版はこちら(226KB)]  
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標題 公認心理師現任者講習会テキストにおける精神保健福祉士に関する記述について(申し入れ)
日付 2018年1月29日
発翰
番号
JAPSW発第17-325号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 一般財団法人日本心理研修センター 理事長 村瀬嘉代子 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、貴センター監修にて株式会社金剛出版から発行された「公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版]」(以下「テキスト」という。)を拝見したところ、精神保健福祉士に関して不適切と思われる記述がございました。保健医療、福祉、教育等の分野において多職種連携が欠かせない状況にある中、公認心理師資格の取得を目指す現任者講習会受講者に対して、他の専門職に関する誤った知識を与えることを強く危惧いたします。
 つきましては、下記の点の修正を求めますので、ご配意のほどよろしくお願い申しあげます。また、対応(公認心理師現任者講習会での対応等を含む)の内容につきまして、文書にてご返答くださいますよう、併せてお願い申しあげます。

○多職種連携に関する図における精神保健福祉士の位置付けの修正を求めます。
 テキストの12ページには、公認心理師が連携する職種の代表例として、生物心理社会モデルを用いた図1および図2が掲載されております。その中で、「生物(bio)」に係る代表職種として医師や看護師等とともに精神保健福祉士が例示されています。
 しかしながら、精神保健福祉士は精神保健福祉領域におけるソーシャルワーカーの国家資格であり、生物心理社会モデルにあっては社会福祉士等と同様に社会(social)に位置付けられるべき専門職です。

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標題 障害福祉サービス等報酬改定に関する要望書
日付 2017年12月20日
発翰
番号
JAPSW発第17-288号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 部長 宮嵜 雅則 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、本年12月8日に障害福祉サービス等報酬改定検討チームが「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性について」を取りまとめられました。
 本協会は、本年5月25日に「改正障害者総合支援法の施行に向けた要望書」(JAPSW発第17-70号)を提出したところですが、今般報酬改定の基本的な方向性が示されたことから、改めて以下の通り要望いたしますので、ご高配のほどよろしくお願いいたします。
 本協会といたしましても、精神障害者の社会的復権を目指し、地域生活における相談支援を実践するソーシャルワーク専門職の立場から、今回の報酬改定により障害福祉サービスがより充実されることで、精神障害者もあたり前に暮らせる地域共生社会を実現するために努力していく所存です。

1.精神障害者の地域移行の推進に資する報酬改定について
(1)自立訓練(生活訓練)について
 機能訓練と同様に、生活訓練における利用者の障害特性等に応じた計画的な訓練を評価するため、新たな加算を創設してください。
障害者特性に応じた支援においては、現行の1時間では足りていません。例えば、公共交通機関の利用方法の訓練や、行政機関などでの手続きの支援などは、時間を超過してサービス提供を行っています。このため加算の新設にあたっては、1時間以上の支援を行うことも視野にいれてご検討ください。

(2)共同生活援助について
 精神科病院に長期に入院している精神障害者ほど、地域での手厚い支援が必要になります。1年以上入院していた精神障害者の地域移行を進めるために、グループホーム入居後の支援については、支援の内容を評価していただきながら、新たな加算の創設に期待しています。
 また、重度の障害者の支援を可能とする新たな類型の創設に関しても大きく期待しているところです。ただし、新たな類型の対象に現行の障害支援区分を勘案とすると、精神障害者は長期入院していた場合でも低くなる傾向にあるため、精神障害者については「障害支援区分3以上」の設定をお考えください。精神障害者の重度の判定は、病状ではなく生活のしづらさを評価の基準としてください。
 併せて、精神障害者の地域移行支援を受け入れる重度対応型のグループホームの設置は喫緊の課題であり、設置する法人・団体については、施設整備費を優先的に補助するよう、都道府県に働きかけてください。

(3)地域相談支援について
 「機能強化型地域移行支援サービス費」(仮称)の新設について強く賛同いたします。
「専門職の配置」「施設・病院等との日常的な連携」に関しては、本協会でもモデル事業として推進してきました。地域移行支援に係る病院と指定一般事業所の連携研修会を開催してきた実績があります。指定一般事業所の相談支援専門員には、このような一定の研修を修了することを条件としてください。
 本協会といたしましても、地域移行の専門職として精神保健福祉士に働きかけていきたいと考えております。
 また、地域定着支援における緊急時支援費の算定対象の拡充については、電話やメールが頻回になることも多く、深夜・早朝時間帯などの電話対応を新たに評価することを歓迎いたします。

(4)計画相談支援について
 モニタリング頻度については、現状として市町村による偏りがあります。実際に、月に複数回ご本人と面接をしなければならない場合もあり、月に1回の支援では頻度的に信頼関係を醸成していくことが難しい場合もあります。そのため、継続サービス利用支援等によるモニタリング結果についての評価基準を、市町村に対して示してください。

(5)自立生活援助について
 自立生活援助は、アパート等での1人暮らしをしている精神障害者については有効なサービスと考えます。また自立生活援助の体制を整えることで、長期入院をしている精神障害者が地域で生活していくための効果的なサービスになると考えます。
 自立生活援助の職員は、グループホーム、自立訓練施設、相談事業所等の職員が兼務で動ける配置基準を要望します。あわせて精神保健福祉士がアセスメントする場合や、関係機関との連絡調整をする場合などは、支援内容を評価し、一定の加算の設定を希望します。また、適切な受療行為のためのコミュニケーション支援を行う観点から医療機関等への同行支援についての評価を要望します。

2.就労支援について
(1)就労継続支援A型及びB型における「就労移行支援体制加算」について
 利用者に多様な選択肢を示すために、就労継続支援事業所の一般就労へのモチベーションは重要であり、就労移行支援体制加算の増額が必要です。「福祉事業所から一般就労へ」の流れを作る本丸は最も事業所数の多い就労継続支援B型です。工賃向上のみに重点をおいた報酬体系になると、従来から課題であった就労能力の高い利用者の囲い込みにもつながります。就労移行支援事業への利用変更(多機能型同事業所内を除く)について評価することも効果があると思われます。

(2)就労系・訓練系サービスにおける医療観察法対象者受入れ加算の創設について
 医療観察法対象者に対する就労系・訓練系サービスの受け入れが進まない現状に照らして、加算を創設することに賛成します。配置する精神保健福祉士は、管理者、サービス管理責任者、生活支援員等との兼務を認めてください。

(3)就労継続支援A型について
 基本的な方向性には、「平均労働時間に応じた基本報酬の設定」が示されていますが、就労継続支援事業の本質は「支援」にあります。労働条件の向上のみを「活動実績」として評価してしまうと、事業の本質からそれていくこととなります。福祉的な支援の質を評価せず、労働条件の整備に重点をおくと、A型の存在意義が不明確になります。
 精神障害のある利用者は、他障害の方と比べ、週数日や短時間からの利用を希望されることが多く、フルタイムで勤務開始しても、早期に欠勤や早退する者も少なくありません。「平均労働時間に応じた基本報酬の設定」となると、精神障害者を利用対象としない事業所が増える可能性があります。基本報酬では、A型で行う福祉的支援の質が評価されるべきであって、労働条件の向上についての評価は、これまで通り加減算ですべきと考えます。
 「賃金向上のための指導員を配置した場合の加算の創設」については、労務管理や業務内容に関する取り組みを別枠として評価することは理解できます。
また、施設外就労における70%の制限をなくすという議論がされていると認識しておりますが、A型、B型に共通して、施設外就労は一般就労を目的としたものでなければならないとされています。社会参加の観点からは、一定程度恒常的な施設外就労を認めることについて検討してください。
 A型に関しては、解雇問題が起きた本質について検証し、制度本来のあり様について議論を継続していただきたいと考えます。

(4)就労継続支援B型について
 基本はあくまでも利用者の支援であって、その稼働能力に関わらず、社会参加ができることの価値を消してしまわないためにも、現行制度を維持し、「平均工賃に応じた報酬の設定」については、加算で行うべきと考えます。その上で、平均工賃算出除外対象を「重度の利用者」ではなく、「重度および短時間の利用者」としてください。
 B型アセスメントの必要性について、この度の報酬改定内容を鑑み、検討し直してください。現状では、利用者自身の思いは無視した「一般就労できないことの証明」であり、「行きたいB型に行くための免罪符」をとるための通過儀礼になっています。現場に余計な負担をかけているだけで必要性が感じられません。

(5)就労移行支援について
 標準利用期間が設定されていることが、利用者の心理的圧力となって利用の抑制につながりかねず、低減性を導入したうえで利用期間が2年を超えた場合も利用継続ができるようにしてください。
 また、就労定着支援の新設と定着支援体制加算の廃止が同時では、準備が間に合いません。段階的実施とともに、人員増加に対応できるだけの報酬設定が必要と考えます。  
実績とする一般就労の範囲について、週20時間以上の労働時間に基づく雇用契約であるといった縛りによって、短時間労働を希望する利用者に同じような支援をしても算定されません。また本人のニーズに反して無理に週20時間以上の労働を事業所が求めることも起こりかねません。短時間労働でも就労実績を認め、6か月以内に20時間以上となれば定着実績と認めるようにしてください。
 福祉専門職ではない作業療法士を、福祉専門職員配置等加算の対象とすることに違和感を覚えます。その役割や業務内容を明確にし、「作業療法士配置等加算」を創設すべきと考えます。

3.その他(今後のお願い)
(1)ピアサポートについて
 今回示された基本的な方向性においては、ピアサポーターに関する評価が含まれていませんでしたが、今後の制度施策の設計では、相談支援事業所やサービス提供事業所などへのピアサポーターの配置などについてご検討ください。
 ピアサポーターの支援の有効性については、精神障害者が安心して地域生活を営む上では必要な人材だと確信しています。しかしながら、ピアサポーターの養成研修を受けてもその後の活躍の場がないことが課題です。
 本協会といたしましても、ピアサポートの活躍が促進されるよう研究や研修等に努めていきます。

(2)宿泊型自立訓練について
 宿泊型自立訓練(生活訓練)に関しては、日中支援加算の要件を緩和し、通所先がない方に対しての支援も今後はご検討ください。例えば、通所先の休所日における同行支援、通所先を退所した方の別の事業所への見学等が必要な方の支援などを現状でも行っているところです。
 2年の標準利用期間内でアパートなど地域生活に移行できた場合に、地域移行達成加算(仮称)をつけてください。就労移行支援の加算と同様の考え方となります。

以上

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標題 生活保護基準額の引き下げに反対する緊急声明
日付 2017年12月19日
発信者 日本ソーシャルワーカー連盟
  特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本 民夫
  公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島 善久
  公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂由美子
  公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟  会長 白澤政和

 私たちソーシャルワーカーは、社会福祉分野において、子ども、障害者、患者、高齢者などが抱える多岐にわたる生活課題の解決に向けた支援を行う専門職として、社会保障制度の根幹をなす生活保護制度の堅持を求めるとともに、生活保護基準額の引き下げに反対します。
 本年は5年に1度実施される全国消費者データを用いて生活扶助基準の検証を行う年に当たり、社会保障審議会生活保護基準部会において、生活扶助基準に関する検証、有子世帯の扶助・加算に関する検証等の結果が示されました。報道によりますと、来年度より生活扶助基準本体や母子加算が引き下げとなり、大都市部を中心に高齢者世帯や子どものいる世帯の生活保護費が最大5%減となる見通しとのことです。

 基準引き下げの算定方式を全国消費実態調査に基づいた年収階級第1・十分位との比較する検証手法については課題があることは報告書にも示されています。基準引き下げの算定方式を年収階級第1・十分位との比較検証によるものとすることは、2013年度の生活保護基準部会報告書に鑑みても妥当性を著しく欠くものであり、かつ、生活保護の捕捉率の低い状況下で低所得層と比較することは引き下げの明確な根拠になり得ません。また、それまで比較検証の指標とされてきた消費者物価指数を、2013年度から厚生労働省が独自の「生活扶助相当CPI」に突然変更したことも合理的な説明が不十分と考えます。

 私たちソーシャルワーカーは、日々の業務の中で、生活保護を受給している高齢者や子どものいる世帯に出会います。冠婚葬祭の付き合いもままならぬなか、生活費を切り詰めて生活する人々が存在しています。地域の中で孤立する場合もあり、生活水準の差が人と人との交流を妨げている状況もあります。生活困窮している単身高齢者の増加や貧困の連鎖を生んでいる家庭環境や養育能力の課題は深刻で、課題解決に向けてソーシャルワーカーは支援しています。
 生活保護基準の引き下げは、国民健康保険料や介護保険料の減免、高額療養費の限度額、介護料の高額サービス費、最低賃金等々にも影響するものであり、生活保護受給者や生活困窮者の生活をさらに厳しくしていくものであり、健康で文化的な最低限度の生活を脅かすものであり、貧困のスパイラルから抜け出すことを困難にするものです。

 すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活が営めるよう、社会保障制度の根幹をなす生活保護制度の堅持を求めるとともに、生活保護基準額の引き下げに断固反対します。

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標題 生活保護基準の引き下げの見直しについて(要望)
日付 2017年12月15日
発翰
番号
JAPSW発第17-286号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働大臣 加藤勝信 様

 平素より、我が国の精神保健医療福祉に関する諸制度施策の発展充実にご尽力をいただいておりますことに敬意を表します。また、本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、貴省においては、来年度から生活保護基準の引き下げが検討されているところですが、本協会としましては、社会福祉学に学問的基盤を置く専門職団体として、生存権保障の根幹を揺るがすような生活保護基準の引き下げには「断固反対」の立場をとらせていただきます。
 つきましては、小職声明「生活保護基準の切り下げ方針に関する反対声明」(別紙)を踏まえた生活保護基準の引き下げの見直しについて、強く要望いたします。


(別紙)

生活保護基準の切り下げ方針に関する反対声明


 厚生労働省は、第35回社会保障審議会生活保護基準部会(2017年12月8日)において、前回の段階的引き下げに引き続き、来年度から生活扶助基準本体や母子加算を大幅に切り下げる方針を示しましたが、多数の無年金障害者問題が依然未解決であり、所得保障を生活保護に大きく依存している精神障害者にとっては、決して看過できることではありません。これに強い懸念を示し、精神障害者の社会的復権・権利擁護と精神保健福祉の向上のための活動を行う専門職団体の立場から、以下の理由を付して断固反対します。


1.現在、生活保護法の改正に向けて、生活保護受給者の健康に関する取り組みとして、生活習慣病の発症予防・重症化予防を更に推進するため、健康管理支援を行う事業の創設が検討されています。しかしながら、精神障害者においては生活習慣病等の合併率が高いことが知られており、生活保護基準の切り下げは、食費の切りつめ等の不適切な食習慣を助長し逆に健康寿命に大きな影響を及ぼすことになります。
 また、健康を損なうことは結果として医療扶助費の増大を招き、いま検討している医療扶助費の適正化とも矛盾します。

2.子どものいる世帯の生活扶助費削減は、政府が進める子どもの貧困対策推進に逆行するものであり、貧困の連鎖を断ち切る方針にも反することになります。

3.高齢世帯の生活扶助費削減は、高齢者が活動を制約し、社会との交流機会を抑制せざるを得なくなることから社会的孤立をまねくことになり、政府が進める地域共生社会の実現に逆行するものです。

4.基準引下げの算定方式を年収階級第1十分位との比較検証によるものとすることは、2013年の生活保護基準部会報告書に鑑みても妥当性を著しく欠くものでありかつ、これまで比較検証の指標とされてきた消費者物価指数を厚生労働省が独自の「生活扶助相当CPI」に突然変更したことも合理的な説明が不十分と考えます。

5.年収階級第1十分位の世帯には、現行の生活保護基準以下の世帯が多く含まれていると考えられ、まずは国際的にも低いといわれている公的扶助の捕捉率を高めていく取り組みが必要です。

 上記の懸念が払拭されないまま、性急な基準の切り下げを行うことは貧困をさらに深刻化させ、ひいては憲法第25条の生存権に対する違憲性を高めるものと考えます。
 今回の生活保護基準部会報告書においても、検証方法には一定の限界があることを認め、検証結果を機械的に当てはめることのないよう、強く求めているところであり、誰もが納得できる「新たな基準の検証方法」の確立までは、現行の基準を維持することを強く要請します。

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標題 障害福祉サービス等報酬改定に関する意見
日付 2017年11月15日
発翰
番号
JAPSW発第17-257号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 自由民主党政務調査会 障害児者問題調査会長 衛藤晟一 様

 2018年度の障害福祉サービス等報酬改定に関して、精神障害のある人々の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を行う立場から、下記の通り、意見を申しあげます。

1.指定障害福祉サービスに関すること
1)自立訓練(生活訓練)
○訪問による生活訓練サービス費の報酬単価の上乗せを検討してください。
○生活訓練サービス費(Ⅱ)において、所要時間2時間以上の場合の報酬を新設してください。
【理由】通所サービスの利用に馴染めない精神障害者にとって、訪問による自立訓練は、社会参加を促す一助となっており、適正に評価してください。また、2時間以上の場合の報酬の新設は、2時間未満では実施が難しい訓練の場合に必要と考えます。

2)就労支援
○就労継続支援A型サービス費については、労務管理について評価し、「初期労務管理加算(仮称)」を新設してください。
【理由】就労継続支援A型はB型と違い労務管理業務に大きな労力を必要とします。例えば「初期労務管理加算(仮称)」を新設して、雇用時の労務管理関連の業務を適正に評価することが必要と考えます。

○就労移行支援において2年間の標準利用期間を超えた場合でも、報酬単価を就労支援継続B型と同程度にして継続利用を可能にしてください。
【理由】病状の悪化等により就職活動ができなくなる場合など、精神障害者の病状の波にも対応できる制度設計が必要と考えます。

○就労移行支援については、基本報酬の見直しも含め、より質の高い支援を行う体制を整備した事業所を評価するしくみに変えてください。
【理由】就労移行は本来の事業目的であり、支援の質を担保する加算を評価していただきたいと思います。フルタイム雇用につなげた人数を評価したり施設外支援の活用が多い事業所を評価したりするしくみを検討してください。

3)共同生活援助
○重度対応型グループホームの設置を促進するためには、仕事量を適正に評価してください。また、重度の基準を現行の障害支援区分3以上として設定してください。
【理由】精神障害者の地域移行支援を進めるためには、重度対応型グループホームの利用は欠かせません。精神障害者の場合は、支援の必要量に比べて障害支援区分が低く出る傾向は続いており区分4以上になる方が少ないため、緩和措置が必要です。

○重度の精神障害者の対象者は、病状ではなく、生活のしづらさで判断してください。
【理由】重度の精神障害者とは、入院治療は必要ないとの判断があるものの、コミュニケーションを取る際に本人の特徴理解が必要な人、一定の幻覚妄想が残存し行動障害を伴う(妄想に左右されるなど病状による生活のしづらさがある)人と考えます。

2.指定相談支援に関すること
1)地域相談支援(地域移行支援)
○地域移行支援の利用を促進するため、地域移行支援に関する一定の研修を修了した精神保健福祉士を配置した事業所に、特定の加算をつけてください。
【理由】長期入院患者の退院促進のために、地域移行支援の一層の促進が必要であり、一定の研修を修了した精神保健福祉士を配置して地域移行支援に取り組んだ指定一般相談支援事業所に対して、特定の加算を設ける必要があると考えます。

2)地域相談支援(地域定着支援)
○地域定着支援の活用を促進するために、夜間帯のかけつけ支援、触法等の障害者に対する対応支援、電話やメールが頻回な方へ支援を加算の対象にしてください。
【理由】現行で緊急時支援費が設定されていますが、夜間の緊急時支援においては、少ないマンパワーで支援を行っている現状にあるため、さらなる加算が必要です。
また、医療観察法の対象者等に対して宿泊型自立訓練、共同生活援助と同様に地域生活移行個別支援特別加算が必要です。さらに、精神障害の特性から、電話やメール相談の回数が頻回になることもあるため、頻回対応の際の集中支援加算を新設することが適切です。

3)計画相談支援
○現行で特別地域加算はありますが、移動距離に応じた加算を新たに検討してください。
【理由】山間部や過疎化が進んでいる地域においては、交通の利便性が悪く、訪問に長時間を要する場合がありますので、移動距離に応じた報酬の設定も必要と考えます。

○月に4回以上の対面支援をした場合の「集中支援加算」を新設してください。
【理由】精神障害者の場合、毎月のモニタリングとしている場合であっても、その方の状況から月に複数回面接することもあります。このため、対面による支援を月4回以上実施した場合は、集中支援加算の算定できるようにすることが必要です。

○ピアサポーターの活躍の場を広げていくために、ピアサポーターを配置した事業所に対する一定の加算を要望します。加算の対象となるピアサポーターは、一定の養成研修の修了を必須とし、その養成研修は専門職も一緒に受講することを要望します。
【理由】ピアサポーターの活躍や実践は全国各地で行われていますが、その養成のための研修カリキュラム、活動の場及び報酬に係る補助等は都道府県ごとに異なり、「精神障害者地域移行支援・地域定着支援事業」に限ってみても全国一律の基準はなく、位置づけが不明瞭です。このような現状の中では、ピアサポーターの雇用は難しく、ピアサポーターによる支援を必要としている人に安定したサービスを提供することができません。地域移行等に携わるピアサポーターの資格要件に、一定の研修受講を明記することで、地域移行支援チームの一員として、他の専門職と対等に活躍することが期待できると考えます。また、2018年度から始まる、自立生活援助、就労定着支援などへのピアの活躍の場が広がることも期待されます。

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標題 「再犯防止推進計画(案)」に係る意見
日付 2017年11月10日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 <イーガブ経由>法務省大臣官房秘書課
 
「第2 就労・住居の確保等のための取組(推進法第12条、第14条、第15条、第16条、第21条関係)」(P8~P15)について

1.「一般企業及び就労系の障害福祉サービス事業所側に、矯正施設を出所して間のない者の特性に応じた配慮などの普及啓発を行っていく」こととされたい。
 現状、重度の障害を持つ受刑者以外の就労支援の仕組みは全く無い。障害を持つ受刑者に対しては法務省矯正局作成パンフレット「障害者の就労のしくみ」で対象者に対して情報提供のみ可能である。この情報提供も全矯正施設で平準化されているとは言い難い。福祉的就労の仕組みが一般社会では確立しているにも関わらず、障害認定を受けている受刑者がこれを利用するためには以下の点を改善しなければ不可能である。
 記述されている障害者求人を活用した一般企業への就職や就労継続支援A型、同B型については障害者認定が前提条件である。しかし受刑期間中の新規の障害認定手続きだけでなく、精神障害者手帳の更新手続きも特別調整を除けばほとんど行われていない現状である。また障害者として公共職業安定所への求職登録は住所地管轄の公共職業安定所でないと受付不可となっており、障害者求人の紹介を受刑期間中に受けることすら不可能となっている。帰住後でしか出来ない方策を記述することは外部の障害者支援機関だけに依存することになり、外部機関の責任と負担が増えるだけでは無いと危惧する。

2.住居確保に協力いただく事業所が対象者の個人情報を提供する場合の個人情報保護の取り扱いを整理し、入所中に受刑者が市営住宅の申し込みが可能な仕組みを作られたい。
 刑務所出所時に帰住先が未定であるという状況は、受刑中の生活態度が悪いことや贖罪意識が希薄であることが原因であると思料される。しかし、反社会勢力に属している者や犯罪性が深化し意図してこのような態度を示す者は別として、精神障害者や知的障碍者の場合、精神疾患や知的能力の制約が原因で受刑生活自体が破綻し、そのため生活環境調整が整うことなく満期を迎えていると思料される。このような精神障害や知的能力の制約がある対象者に対しては情報提供のみで自助努力に期待しても、自身で社会資源を活用して自立を図ることは困難である。
 精神障害を持つ者や知的能力の制約があるものの帰住調整を一般調整で行うことは稀であるが、一般調整対象者として帰住調整を行っていくなど、満期出所者に対する支援情報の提供等の充実の必要性を強く感じる。
 
「第3 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための取組(推進法第17条、第21条関係)」(P16~P22)について

1.「日常的な動作全般にわたって介助やリハビリを必要とする受刑者」を拘禁することに意味があるのかという検討、日常的な介助が必要な者について「健康運動指導や福祉サービスに関する知識及び社会適応能力の習得を図るための指導」が必要かの検討、及び刑事訴訟法に定められる自由刑の裁量的執行停止を活用して民間施設で受け入れる等の方法についての検討をされたい。

2.厚生労働省は国民の健康福祉を目的として業務を行っていると理解しており、「再犯防止の観点から」という表現はなじまないと考える。この文は削除がよいと考える。

3.薬物事犯者がすべて「薬物依存症」ではないことなどから、本計画において「薬物依存」あるいは「薬物依存症」に対する定義をした方がよいと考える。

4.「厚生労働省は、親族等が…監護方法等について」について、医療保健福祉側の関係者は監護方法という視点には立っていないため、厚生労働省を主語とする場合、「かかわり方」など適切な表現に変えられたい。また、親族等もケアを受ける二―ズも高いことから、親族がケアを受けられる体制の充実も図ることが必要である。

5.各々の専門職における養成カリキュラムについて、依存症の理解と支援について入れるのはよいと考えるが、専門職の治療や支援は「再犯防止」を目的としたものではないことを踏まえた内容にすべきである。

6.「ダメ・ゼッタイ」の教育。薬物乱用後のケアや情報提供について記述されたい。

7.警察庁が刑事施設出所後の者の所在確認を行うことは、法的に問題ないのか。(大阪府は条例に定められているが…)どれくらいの期間、どのような方法で、何を根拠に所在確認を行うのかの検討は必要と考える。
 
「第5 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等のための取組(推進法第11条、第13条、第21条関係)」(P26~P30)について

1.犯罪被害者等は、精神的、身体的、経済的な問題を抱えることになる。しかしながら、それらの被害者の状況は、加害者には理解が及ばないで出所してしまうことが多いように思われる。徹底的な犯罪被害者の視点を取り入れた指導及び 支援等の実施をお願いしたい。また、再犯防止推進計画等の素案を練られた検討会構成員に、被害当事者や被害者支援の有識者がいないことが問題と考える。構成員の見直しから検討いただきたい。

2.発達上の課題、知的な課題を有していても、被害者の視点を取り入れた教育が適切に受けることができるように、早急に検討いただきたい(海外では、知的レベルに応じた贖罪教育がなされていると聞き及んでいる)。

3.ア)犯罪をした者に関わる職員等(矯正施設、保護観察所だけではなく、出口支援に関わる地域定着支援センター等の職員や、保護司、教誨師等)にも、犯罪被害者等の心情理解の研修が定期的に行っていただきたい。出所後、犯罪をした者は事件を「忘れたい」と思うが、犯罪被害者は「忘れられない」状況にある。支援者は、そのことを踏まえて指導支援にあたっていただきたい。そのためには、地域で支援する支援者自身も、犯罪被害者等の講話を聴く機会等が定期的に保障される必要があると考える。

イ)「心情等伝達制度」で被害者の気持ちを伝えても、その後、加害者にまた裏切られたと感じる被害者は多いのが実情である。被害者の想いが適切に処遇に反映される制度設計をお願いしたい。また、被害者が犯罪をした者の矯正施設や保護観察期間の処遇状況等を尋ねてきたときには、それらに適切に回答できる仕組みを考案いただきたい。被害者は出所後のお礼参り等を恐れ、毎日を過ごしている。加害者の個人情報が守られすぎることが、被害者を更に苦しめている。

ウ)犯罪被害者等を招聘して不特定の被害者の話を聞かせる贖罪指導だけではなく、その個人が犯した犯罪の被害者の存在と向き合える指導・支援の推進していただきたい。裁判で損害賠償を命じる判決が出ているが、その判決文も読んでいない加害者が多い状況を改善いただきたい。

[参考]損害賠償命令制度で賠償額が決定しても、実際に支払われたのは賠償命令額の2%に満たない。(「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」追跡調査結果/2015月5月28日読売新聞夕刊)

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  再犯防止推進計画(案)(法務省)
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標題 ロヒンギャ民族に対する重大な権利侵害に対する声明
日付 2017年11月9日
発信者 日本ソーシャルワーカー連盟
 
 私たち日本ソーシャルワーカー連盟は、ソーシャルワークの価値と倫理に則り、ロヒンギャ民族に対する重大な権利侵害に対して以下の声明を発する。

 ミャンマーでは、数十万から100万人程度と推定されているロヒンギャ民族に対する武装勢力による襲撃やキャンプ環境の劣悪さなどが起因して、国外脱出を図るロヒンギャ民族が後を絶たない。ユニセフは、「暴力から逃れるために、ミャンマーのラカイン州からバングラデシュに逃れてきたロヒンギャ難民は50万人以上」であるとし、そのうち6割が子どもであり、彼らが生命の危機にさらされていると警告する。

 日本政府も、河野外相が「現地の人権人道状況に深刻な懸念」を表明し、ミャンマーや難民を受け入れているバングラデシュの政府に対し、約400万ドルの支援を行う方針を提示した。このことは当然に評価するべきことである。

 他方で、このロヒンギャにかかる問題は、ミャンマーの憲法下において、国軍勢力が軍と警察を掌握していることなどによる国内の政治構造から端を発している背景があるものの、自国における改善の兆しが見られないばかりか、日本にもロヒンギャ民族の来日があるように、周辺諸国を巻き込んだ明らかな国際問題と化していることも事実である。

 この様な観点から、日本ソーシャルワーカー連盟は、本問題に対する国際社会における関与を日本政府が主導することを求めるとともに、東アジア及び広く国際社会に対して、この重大な権利侵害からロヒンギャ民族を守るための措置を講ずることを求める。

 また、国際ソーシャルワーカー連盟に加入する私たちは、国際社会との連帯をはかりこの問題に対する働きかけを続けていくことをここに表明する。


 日本ソーシャルワーカー連盟は、社会正義と人権尊重の価値に則り、人びとの権利擁護の実践を展開する4つのソーシャルワーカー団体(特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会、公益社団法人日本社会福祉士会、公益社団法人日本医療社会福祉協会、公益社団法人日本精神保健福祉士協会)によって構成された組織である。4団体が採択するソーシャルワーカーの倫理綱領においては、「社会に対する倫理責任」を以下のとおり明示している。
  1. (ソーシャル・インクルージョン)
    • ソーシャルワーカーは、人々をあらゆる差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などから守り、包含的な社会を目指すよう努める。
  2. (社会への働きかけ)
    • ソーシャルワーカーは、社会に見られる不正義の改善と利用者の問題解決のため、利用者や他の専門職等と連帯し、効果的な方法により社会に働きかける。
  3. (国際社会への働きかけ)
    • ソーシャルワーカーは、人権と社会正義に関する国際的問題を解決するため、全世界のソーシャルワーカーと連帯し、国際社会に働きかける。 

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標題 医療扶助の適正化に関する意見
日付 2017年10月10日
発翰
番号
JAPSW発第17-223号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局 保護課長 鈴木建一 様

 現在社会保障審議会生活困窮者支援及び生活保護部会において検討が進められている医療扶助の適正化について、社会的入院を解消し精神障害者の社会的復権を推し進める専門職団体の立場から、精神科の長期入院患者の実態把握と退院促進のために必要な施策の検討をお願いいたしたく、下記の通り、提案いたします。


1 被保護精神障害者の不必要な長期入院の解消に向けた施策の展開について
   医療扶助における最大の課題は精神障害者の長期入院にあると認識しています。精神・行動の障害が被保護入院者の3分の1を占め、その7割近くが1年以上の長期入院となっています。また、医療扶助費全体の8分の1が精神障害者の長期入院に費消されています(医療扶助実態調査から推計)。

 2005年度から「自立支援プログラム」として取り組みが始まった精神障害者等退院促進事業については、地域によっては一定の成果を上げていると思いますが、改めて全国的な取り組み実態と実績等を検証してください。そのうえで、次期の障害福祉計画や医療計画とも連動して、被保護長期入院精神障害者について地域移行の目標値を設定して全国的に推進すべきと考えます。

 精神障害者の長期入院の解消は、何よりも人権と尊厳の回復という観点から取り組まなければならない課題であり、その課題解決は結果として医療扶助の適正化にも資することとなります。

  2 長期入院患者の実態把握について
   精神障害者の地域移行を進めていくにあたり、まずは長期入院患者の実態把握がその入り口となります。医療扶助による長期入院患者の実態把握については、地区担当ケースワーカーが主治医等の意見を聞く等したうえで、入院の継続を要しないことが明らかになった者について、退院に向けた指導等を行うこととなっていますが、ケースワーカーの業務量や専門性等からも実態把握が十分に機能していない現状があると考えます。

 医療扶助審議会等での議論なども検証しつつ、福祉事務所に配置された生活保護精神障害者退院推進員との同行調査や病院の精神保健福祉士との連携等を進めていく必要があります。

  3 入院外の医療扶助について
   精神科の外来医療は、精神障害者の地域生活の維持に欠かせないものであり、主治医等との信頼関係があってこそ受診が継続できます。医療扶助の適正化という名の下に、間違っても生活保護受給者の意向を確認することなく、近医への転医の強要・指導やデイケア等への通所の制限はあってはなりません。
  4 居住支援システムの再構築について
   地域移行にあたり、また地域での生活の維持にあたり、必要な機能や支援システムを備えた居住の場は欠かせません。

 無料低額宿泊施設等に関しては、いわゆる「貧困ビジネス」の温床となっており、規制強化は必要であろうと考えます。一方で、居宅を失い、明日から住むところがないという状況において入居できる適切な支援が得られる場所は容易にはありません。利用しやすく、質が担保された居住の場が確保されるよう、住宅施策との連動による居住支援システムの再構築を図る必要があります。

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標題 就労継続支援A型事業所の事業閉鎖問題と適正運用について(要望)
日付 2017年9月25日
発翰
番号
JAPSW発第17-207号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 部長 宮嵜雅則 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、先般、岡山県倉敷市と香川県高松市で就労継続支援A型事業所を運営していた法人が事業所を閉鎖し、200人以上の障害者を解雇したことについて、主に当該法人の責任を追及する論調の報道が流されています。確かに、解雇そのものは運営法人が「経営の悪化のため」に事業を閉鎖する決定をしたことが直接の原因です。しかしながらその背景に今春の指定基準厳格化などの省令が大きく影響していることは明らかです。

 適正な運営ができなかった法人の責任はもちろん問わなければなりませんが、結果として解雇という不利益を受けたのは利用者である障害者本人であり、職業も支援も同時に失うという体験は、経済的、社会的、精神的に大きな傷となったことは想像に難くありません。

 就労継続支援A型事業所は、その運営上の課題が早くから問題視されていたにも関わらず有効な対策のないまま経過し、毎年大きく増加を続け、経営主体に占める営利法人の割合も5割を超える状況となっています(平成27年社会福祉施設等調査)。規制を緩和し、株式会社等にも参入を可能とし営利本位も許容した結果が今回の大量解雇問題につながっていることは明白です。それらは当該事業者の問題であると同時に、厚生労働省の行政不作為によるものと言わざるを得ません。社会福祉基礎構造改革により社会福祉サービスに市場原理や規制緩和が導入されたことをすべて否定するものではありませんが、事業の継続性とサービスの質を担保するための方策が脆弱であったという感は否めません。

 そもそも就労継続支援A型事業は、「通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第六条の十)」とされています。「通常の事業所に雇用されることが困難」とされている対象者が、最低賃金以上の労働を行うためには、相当な専門性と丁寧な支援スキルが必要となります。また労働法に則って労働者を雇用し、採算をとって経営することと、どちらも簡単にできるものではないはずのことを専ら「企業努力」に押し付けてきたのが現状の制度上の矛盾ではないかと思料します。

 今後も同様の事例が続くことは予想されます。経営困難で事業を閉鎖する事業者が、解雇される障害者の再雇用支援を適切に行えるとは考えにくく、行政の監督責任において、当該障害者の精神的サポートも含め、遅滞なく適切に行う必要があります。また、非営利性と公益性を原則とする本制度本来の目的と合致しない事業者は、厳正に指導し、さらにはそのような事業者が参入できない仕組みを講じるべきと考えます。

 しかし喫緊の課題として、これ以上解雇によって不利益を被る障害者が出ないよう、制度及び運用上の不備に関しては早急に改善していただきたく、下記のとおり要望いたします。



1.就労継続支援A型事業所の閉鎖に伴い解雇された障害者を対象とする就労相談及び生活相談の窓口を、事業者を指定した自治体の責任において設置するよう適切に指導してください。

2.就労継続支援A型事業の適正運営のための施策を早急に検討し、実施してください。

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標題 成年後見制度における審判書の記載事項にかかる要望書
日付 2017年7月11日
発翰
番号
JAPSW発第17-135号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 最高裁判所 事務総局 家庭局長 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、本協会は、精神障害者の権利擁護の重要性に鑑み、2009年から認定成年後見人ネットワーク「クローバー」(以下「クローバー」という。)を設置し、主に精神障害者に対する成年後見人等の養成及び受任者に対するサポートを行っており、現在、「クローバー」登録者は147人、受任件数は109件となっています。第三者が成年後見人等に就任し職務を行うにあたっては、様々な課題がありますが、特に「クローバー」の主たる対象者である精神障害者の支援には特有の困難さがあります。
 つきましては、本協会が「クローバー」の活動を進めていくにあたり、成年後見制度における審判書に成年後見人等の自宅住所が記載されることについて、下記の通り要望します。成年後見制度を利用する精神障害者に、精神保健福祉士としての経験を踏まえ特性に配慮した後見活動を進めていきたく、ご高配のほどよろしくお願いいたします。



<要望事項>
○「クローバー」登録者が選任された旨の審判書の記載において、住所地を自宅以外にも選択できる運用を行ってください。

  【理由】「クローバー」で受任する成年被後見人等の多くは精神障害者です。精神障害の特徴として、病状の悪化時における対応の困難さが挙げられます。そのため精神障害者の支援経験がある精神保健福祉士が成年後見人等を受任する意義があります。 

 しかし、事例によっては精神保健福祉士であっても対応可能な範囲を超える場合もあります。現に成年被後見人等が早朝・深夜に成年後見人等の自宅住所を訪ねてくるなどの事態が発生しており、成年後見人等の同居家族に対して強い不安を与えております。このような場合、審判書に記載された成年後見人等の自宅住所を訪ねることが多い状況です。

 弁護士や司法書士は個人事務所を持つ場合が多く、成年後見人等に就任した際も、自宅住所が審判書に記載されることは少ないと思われます。一方、「クローバー」登録者である精神保健福祉士の場合は、ほとんどが医療機関や社会福祉関係機関に雇用されて勤務する者であり、自宅住所が審判書に記載されています。

 成年後見制度利用促進基本計画にある「利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善」との趣旨から見ても、障害特性に適した成年後見人等の選任は必要です。しかし、自宅住所の記載はそれを阻害する要因となっており、「クローバー」では成年被後見人の自宅への度重なる訪問が原因で、成年後見人等が辞任にいたった事例があります。

 以上の理由から、「クローバー」登録者が成年後見人等に就任した際、成年後見制度の審判書に自宅住所以外の記載も選択できる運用を行っていただきたく要望いたします。

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標題 成年後見登記事項証明書の記載事項にかかる要望書
日付 2017年7月11日
発翰
番号
JAPSW発第17-134号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 法務省 民事局 局長 小川秀樹 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、本協会は、精神障害者の権利擁護の重要性に鑑み、2009年から認定成年後見人ネットワーク「クローバー」(以下「クローバー」という。)を設置し、主に精神障害者に対する成年後見人等の養成及び受任者に対するサポートを行っており、現在、「クローバー」登録者は147人、受任件数は109件となっています。第三者が成年後見人等に就任し職務を行うにあたっては、様々な課題がありますが、特に「クローバー」の主たる対象者である精神障害者の支援には特有の困難さがあります。
 つきましては、本協会が「クローバー」の活動を進めていくにあたり、成年後見登記事項証明書に成年後見人等の自宅住所が記載されることについて、下記の通り要望します。成年後見制度を利用する精神障害者に、精神保健福祉士としての経験を踏まえ特性に配慮した後見活動を進めていきたく、ご高配のほどよろしくお願いいたします。



<要望事項>
○「クローバー」登録者が成年後見人等に就任した際、成年後見登記事項証明書に記載される住所地を自宅以外にも選択できる運用を行ってください。

  【理由】「クローバー」で受任する成年被後見人等の多くは精神障害者です。精神障害の特徴として、病状の悪化時における対応の困難さが挙げられます。そのため精神障害者の支援経験がある精神保健福祉士が成年後見人等を受任する意義があります。

 しかし、事例によっては精神保健福祉士であっても対応可能な範囲を超える場合もあります。現に成年被後見人等が早朝・深夜に成年後見人等の自宅住所を訪ねてくるなどの事態が発生しており、成年後見人等の同居家族に対して強い不安を与えております。このような場合、成年後見登記事項証明書に記載された成年後見人等の自宅住所を訪ねることが多い状況です。

 弁護士や司法書士は個人事務所を持つ場合が多く、成年後見人等に就任した際も、自宅住所が成年後見登記事項証明書に記載されることは少ないと思われます。一方、「クローバー」登録者である精神保健福祉士の場合は、ほとんどが医療機関や社会福祉関係機関に雇用されて勤務する者であり、自宅住所が成年後見登記事項証明書に記載されています。

 成年後見制度利用促進基本計画にある「利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善」との趣旨から見ても、障害特性に適した成年後見人等の選任は必要です。しかし、自宅住所の記載はそれを阻害する要因となっており、「クローバー」では成年被後見人の自宅への度重なる訪問が原因で、成年後見人等が辞任にいたった事例があります。

 以上の理由から、「クローバー」登録者が成年後見人等に就任した際、成年後見登記事項証明書に自宅住所以外の記載も選択できる運用を行っていただきたく要望いたします。

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標題 措置入院者に係る退院後生活環境相談員の選任に関する要望書
日付 2017年6月27日
発翰
番号
JAPSW発第17-105号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部部長 堀江裕 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、第193回国会に上程された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案は継続審議となりましたが、改正案において措置入院者に対する病院管理者による退院後生活環境相談員の選任が義務づけられていることについて、本協会としても関心を寄せているところです。
 つきましては、措置入院者に係る退院後生活環境相談員に関して以下の通り要望いたしますので、ご配意のほどよろしくお願いいたします。



1.措置入院者に係る退院後生活環境相談員は、原則として精神保健福祉士を選任することとしてください。

   2013年の法改正により医療保護入院者に係る病院管理者による退院後生活環境相談員の選任が義務づけられました。平成26年度障害者総合福祉推進事業「精神保健福祉法改正後の医療保護入院の実態に関する全国調査」(公益社団法人日本精神科病院協会実施)によると、選任された退院後生活環境相談員のうち精神保健福祉士は78.8%で、精神保健福祉士以外の職種も選任されている状況となっております。 

 一方、措置入院は行政処分であり医療保護入院制度との比較においてより強制性の高い入院制度であることからも、権利擁護機能を有する精神保健福祉士を退院後生活環境相談員として選任することを原則とすべきです。

 なお、都道府県病院等及び指定病院においては、作成が予定されている診療ガイドラインに基づき多職種による標準化された診療を行っていくことが求められることから、都道府県病院等及び指定病院の職員を対象とした措置入院制度に係る研修を実施する必要があると考えます。退院後生活環境相談員については、当該研修の受講を必須とすることとしてください。

  2.複数の措置入院者を受け持つ場合の退院後生活環境相談員の担当患者数は20人以内としてください。

   現行では、退院後生活環境相談員の配置の目安は、1人につき概ね50人以下の医療保護入院者を担当することとし、当該相談員が他の業務を兼務する場合はこの目安を参考に担当する医療保護入院者の人数を決めることとされています。先述の全国調査によると退院後生活環境相談員1人の受け持ち患者数(医療保護入院者数)は、平均で16.3人(下限値)~33.4人(上限値)でした。

 措置入院者については、新たに都道府県等による個別ケース検討会議の開催や退院後支援計画の作成、及び措置入院中の病院における退院後支援ニーズアセスメントの作成等が義務づけられることとなります。退院後生活環境相談員は病院内の多職種チームにあって措置入院者の退院支援を中心的に担うこととなります。その業務量の増加や、退院支援における専門的配慮が求められること等を考慮すると、配置の目安としては、複数の措置入院者を受け持つ退院後生活環境相談員については、医療保護入院者と合わせた担当数を20人以内とすることが望ましいと考えます。

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標題 2018年度診療報酬改定に関する要望について
日付 2017年6月27日
発翰
番号
JAPSW発第17-104号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 保険局 医療課長 迫井正深 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書では、新たな地域精神保健医療体制のあり方として、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」を目指すことを新たな理念として明確化し、精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるような方策を検討するべきであるとしています。
 本協会としましては、新たな理念の下、精神障害者の地域生活への移行および地域生活の定着のさらなる強化促進のためには、精神科医療機関内外に渡るネットワークの構築による多機関多職種連携の推進、およびその体制整備が極めて重要であり、それらに対する診療報酬上の適正な評価が必要であると認識しているところです。
 つきましては、以上の観点から、2018年度の診療報酬改定に向けて以下のとおり要望いたしますので、ご高配のほど何卒よろしくお願いいたします。


1.通院・在宅精神療法(I 002)において、精神科を標榜する保健医療機関の外来診療部門に精神保健福祉士を1名以上配置した場合の加算を新設してください。

  <具体的要望内容>
 精神科を標榜する保健医療機関の外来診療部門に精神保健福祉士を1名以上配置し、入院中の患者以外の患者及びその家族に対して、必要に応じて保健所、市町村、障害福祉サービス事業所、介護保険事業所等と連携し、療養生活環境を整備するための支援体制がとられている場合において、通院・在宅精神療法の所定点数に加算できるようにしてください。

<理由>
 通院・在宅精神療法は、精神疾患を有する患者に対して、精神科を担当する医師が一定の治療計画のもとに危機介入、対人関係の改善、社会適応能力の向上を図るための指示、助言等の働きかけを継続的に行う治療方法とされています。そうした治療と併行して、精神保健福祉士が患者の抱える生活課題等に関する相談に応じ、必要な制度や資源に関する情報提供及び利活用支援、関係機関との連絡調整といった生活環境の調整を行うことで、通院・在宅精神療法はより効果が発揮されると考えます。通常は精神保健福祉士による相談支援を必要としない患者についても、外来診療部門に精神保健福祉士を配置することで、必要時に適宜生活課題等の専門的相談支援を受けられる体制を取ることは、特に他者との交流に乏しく社会的に孤立している精神疾患患者に社会参加の機会を提供することにもつながると考えます。

<有効性>
 患者の支援ニーズを的確に把握し医療機関と関係機関との連携を強化していくことで、患者を中心とした支援ネットワークを形成することが可能となります。また、患者の生活上の課題等が病状に大きく影響することから、精神保健福祉士がその解決を支援することにより、患者の安定した地域生活の維持・継続に資することとなります。ひいては診療を担当する医師の負担軽減、入院の予防による医療費抑制への効果が期待できます。

  2.訪問看護ステーションにおいて、精神保健福祉士が単独で訪問した場合も精神科訪問看護基本療養費を算定できるようにしてください。

  <具体的要望内容>
 訪問看護ステーションにおいて、精神科訪問看護基本療養費を算定している患者の割合が7割を超えている場合には、所定の研修を修了している精神保健福祉士の単独訪問による精神科訪問看護基本療養費の算定を可能としてください。

<理由>
 医療機関からの精神科訪問看護については精神保健福祉士の単独訪問が認められている一方で、訪問看護ステーションの訪問では単独訪問が認められておらず、他機関の利用が困難な重篤事例に対する多職種チームとしての生活支援・福祉的対応に限界がある状況になっています。本協会が2016年度末に行った精神障害者に対する訪問実績がある訪問看護ステーションにおける全国調査においても、80.6%の事業者が精神保健福祉の配置の必要性を訴えています(別紙資料1参照)。特に同一事業所内での多職種チーム構成をする一員として福祉制度との連携・就労・ネットワーキングやコーディネート等での専門性と、困難事例への対応能力の向上への期待が回答されています。また、精神保健福祉士の配置が必要とする事業者のうち95.2%が「単独による訪問」の認可が妥当であると回答しています。
 なお、精神科訪問看護は精神障害に対する一定の専門性が求められることから、精神保健福祉士による単独訪問は、精神科訪問看護基本療養費の算定が一定割合以上である事業所に限定するとともに、当該の精神保健福祉士は所定の研修を修了していることを要件とすることが妥当であると考えます。

<有効性>
 福祉専門職である精神保健福祉士の配置により、訪問看護ステーションの精神科多職種チームとしての機能が強化されます。また、障害福祉サービス等の利用が困難な患者への対応能力が向上することにより、当該患者のQOLの向上に資することとなります。さらに、頻回訪問を要する患者の生活状況が改善されることで、訪問回数の抑制、(再)入院の抑制といった効果が期待できます。

  3.精神科地域包括診療料を新設してください。

  <具体的要望内容>
 精神科医療の必要性が高い患者に対して、多職種によるアセスメントに基づいた支援計画を作成し、必要な医療及び障害福祉・介護を提供するとともに、行政機関や学校、職場等の関係機関との調整といった包括的ケアマネジメントを行った場合に、精神科地域包括診療料(仮称)を1月に1回算定できるようにしてください。
なお、当該診療料に係る施設基準及び患者の要件は、厚生労働行政推進調査事業「精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究」の分担研究「精神障害者の地域移行における多職種連携によるケアマネジメントに関する研究」において2017年度に作成するガイドライン(案)を踏まえて検討してください(別紙資料2参照)。

<理由>
 地域生活を送るうえで生活課題に対して多職種でケアマネジメントの手法を用いて包括的に支援することは先行研究でも有効性が認められています。患者が抱える生活課題等は外来診療の中で見つかることが多く、医療資源だけで支えられている患者も多く存在しています。そのため、多職種でケアマネジメントの手法を用いて支援を行い、相談支援専門員や介護支援専門員に繋ぎ安定するまでの間、このような精神科地域包括診療料が必要と考えます。

<有効性>
 要望項目の1と同様に、患者の社会的孤立予防に有効に機能するとともに、再入院予防、関係機関との連携の強化による支援ネットワークの形成、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に資することとなります。

  4.精神保健福祉法に規定する退院後生活環境相談員の業務を診療報酬上評価してください。

  <具体的要望内容>
 医療保護入院による医療機関に入院した患者に対して、選任された退院後生活環境相談員による早期退院のための調整および支援を行った場合であって、当該患者が入院日から起算して1年未満に退院したときに、医療保護入院者退院支援加算(仮称)として退院時に1回に限り所定点数に加算できることとしてください。

<理由>
 2013年の精神保健福祉法改正により、医療保護入院者の退院による地域生活移行の促進措置として、退院後生活環境相談員の選任が病院管理者に義務づけられました。しかしながら、現在は診療報酬による評価はありません。精神保健福祉法の趣旨通り、退院後生活環境相談員を中心とした早期退院に対する支援により医療保護入院者が1年未満で退院した場合への評価をお願いします。

<有効性>
 法定の人員配置規定に対して診療報酬による経済的インテンシブが付くことで、医療保護入院者等の入院の長期化防止が有効に機能することとなります。

  5.精神病棟入院基本料(A 103)における精神保健福祉士配置加算の施設基準のうち、在宅移行率要件を緩和してください。

  <具体的要望内容>
 当該加算の施設基準として掲げられている当該病棟入院患者の1年以内在宅移行率を、現行の9割以上から8割以上に緩和してください。

<理由>
 平成26年度精神保健福祉資料によると、平成25年6月入院患者の状況として、1年以内に退院して家庭復帰等およびグループホーム・ケアホーム・社会復帰施設等に移行したものの割合(以下、「在宅移行率」という。)は全国平均で73.8%でした。一方、1年以内に転院・死亡したものの割合(退院率)は14.3%であり、この割合は今後も同様に推移することが予想されます。そして、残りの11.9%がいわゆるニューロングステイとして1年を超える入院を継続することを示しています(別紙資料3参照)。
 また、厚生労働科学研究費により組織された「重度かつ慢性」に関する研究班の実施した全国調査によると、1年以上の長期入院精神障害者(認知症を除く)のうち6割以上が「重度かつ慢性」基準案に該当していることが明らかになりました。逆に捉えると4割程度は在宅移行可能群であることを示しています。つまり、ニューロングステイとなる11.9%の入院患者のうち4割に該当する4.8%は在宅移行可能群であると捉えることができ、1年以内在宅移行率の現実的な目標値としては、73.8%に4.8%(期待値)を加えた79%あたりとすることが妥当であると考えます。なお、平成26年度精神保健福祉資料より都道府県・政令指定都市別の1年以内在宅移行率をみると、第3四分位数は77.6%となっています。
 以上のことから、精神科入院病棟入院料の精神保健福祉士配置加算における1年以内在宅移行率の基準は、8割以上とすることが適当であると考えます。

<有効性>
 「平成26 年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の結果について」(2015年10月23日)によると、2014年10月時点における精神保健福祉士配置加算の施設基準の届出は、精神療養病棟入院料では6.2%(289病院のうち18病院)、精神病棟入院基本料では3.5%(372病院のうち13病院)と極めて低位に止まっていますが、特に精神病棟入院基本料においては、精神保健福祉士配置加算の施設基準の届出をしていない最大の理由をみると、「在宅移行率の要件が満たせないため」が 53.1%で最も多くなっています。
 在宅移行率を実現可能な基準とすることで、精神科入院基本料算定病棟に専従の精神保健福祉士を配置する医療機関が増え、懸案となっている3か月超1年未満の入院患者に対する退院支援が手厚くなり、平均在院期間の短縮に資すると考えます。
 また、相対的な在院患者数の減少と相俟って、将来的な入院医療費の縮小に有効に機能するものと思料します。

  資料1~3略

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標題 ギャンブル等依存症対策の法制化に関する意見
日付 2017年5月25日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
一般社団法人日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会 会長 岡崎直人
提出先 与党「ギャンブル等依存症対策の法制化に関するワーキングチーム」座長 中谷元 様 他

 現在、ギャンブル等依存症対策の法制化に向けて検討が進められていることと存じます。

 ギャンブル等依存症対策基本法(以下「本法」という。)の制定は、ギャンブル等依存症対策として我が国初めてのものとして意義深いものであります。一方で、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「IR推進法」という。)への批判対策としての意味合いを色濃く映し出している様相も垣間見えます。

 本法が実効性のある法律として機能するために、精神障害者の社会的復権と福祉の向上に取り組む専門職能団体として、下記の通り、意見を述べます。

1.ギャンブル等事業者及び消費者金融の広告規制を本法策定よりも優先すべきです。また、事業者へは自主的な取組みへの尊重ではなく、事業者であることの責任に基づく一定の費用負担も含めて、積極的に国が規制や予防等の実施を図るべきです。

2.アルコール健康障害対策と同じ枠組みで行われることに反対します。同じ依存症であってもアルコール依存症の治療施設、回復施設、援助者と比してそれぞれが圧倒的に不足している現状においては、治療・援助体制を作ることが喫緊の課題です。本法成立以前にギャンブル等依存症問題の調査・研究を踏まえたうえで治療・援助体制の構築を優先すべきです。

3.ギャンブル等依存症に関し専門的知識を有する者、ギャンブル等依存症を有し、又は有していた者及びその家族を代表する者、社会福祉専門職等によって構成する関係者会議を設けるべきです。本法に基づく基本計画や全国展開される対策が総合的、計画的、効果的かつ効率的に推進されるための合意形成には必要不可欠のことと考えます。

4.ギャンブル等依存症により、貧困やDV・虐待・離婚などの家庭内問題、自殺や犯罪など多くの社会生活上の問題が起こり得ます。都道府県における相談窓口等の拡充のためには、ギャンブル等依存症及び関連問題を支援する資質を備えた社会福祉専門職の配置が必要不可欠です。

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標題 障害福祉サービス等報酬改定に向けた要望書
日付 2017年5月25日
発翰
番号
JAPSW発第17-71号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 堀江裕 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、厚生労働省では「我が事・丸ごと」の地域共生社会の実現に向けて、改革の背景と方向性を示され、当面の改革工程に基づき検討課題に取り組まれていることと存じます。間もなく開始される2018年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討も、地域共生社会の実現を視野に入れて行われるものと承知しております。

 つきましては、この度の障害福祉サービス等報酬改定の検討に際して、本協会はソーシャルワーカーとして精神障害者の社会的復権を目指し、地域生活における相談支援を実践する専門職の立場から、下記の通り要望いたしますので、精神障害者もあたり前に暮らせる地域共生社会を実現するために、ご高配のほどよろしくお願いいたします。

1.指定障害福祉サービスに関すること
1)自立訓練(生活訓練)

○訪問による生活訓練サービス費の報酬単価の上乗せを検討してください。
○生活訓練サービス費(2)において、所要時間2時間以上の場合の報酬を新設してください。
【理由】通所サービスの利用に馴染めず、自宅に引きこもりがちになる精神障害者が多くいるため、訪問による自立訓練は、社会参加を促す一助となっています。きめ細やかな本支援に対して、適正に評価してください。また、2時間以上の場合の報酬の新設は、例えば、バスや電車の乗降等の訓練の実施が2時間未満では難しいことからも、訓練内容に照らして必要と考えます。

2)就労支援
○相談支援事業所においても、就労定着支援を実施できるようにしてください。その際の報酬は、地域移行支援サービス費に照らして、ひと月につき2,300点が適正と考えます。
【理由】現行では、就職し福祉サービスの利用が無くなると、就労定着をフォローできる関係機関が限られてしまいます。精神障害者が企業等に定着していくことは、本人にとっても、企業等にとっても重要な課題となります。相談支援事業所において就労定着支援を実施することは、大いなる見守りにつながると考えます。

○就労継続支援A型サービス費については、労務管理について評価し、「初期労務管理加算(仮称)」を新設してください。
【理由】就労継続支援A型はB型と違い労務管理業務に大きな労力を必要とします。特に利用初期においては、社会保険関連の書類の作成及び提出等B型にはない業務と経費が発生します。そのため、暫定支給決定によるアセスメントから個別支援計画作成までの基本的な関わりができていることを前提として、例えば「初期労務管理加算(仮称)」を新設して、雇用時の労務管理関連の業務を適正に評価することが必要と考えます。

○就労移行支援において2年間の標準利用期間を超えた場合でも、報酬単価を就労支援継続B型と同程度にして継続利用を可能にしてください。
【理由】一般就労を目指して2年間努力してきた利用者が、病状の悪化等により就労移行支援の利用開始から2年を経過する時期において就職活動ができなくなったものの、就労をあきらめられず、支援を受け続けたいという場合など、精神障害者の病状の波にも対応できる制度設計が必要と考えます。

○就労移行支援については、基本報酬の見直しも含め、より質の高い支援を行う体制を整備した事業所を評価するしくみに変えてください。
【理由】そもそも就労移行支援事業は、利用者に就労移行してもらうことが使命であり、基本報酬も他事業より高く設定されています。就労移行は本来の目的であり、就労移行にかかる加算を高く設定するのではなく、むしろ支援の質を担保する加算を評価していただきたいと思います。単に就労移行を評価するのでなく、フルタイム雇用につなげた人数を評価したり施設外支援の活用が多い事業所を評価したりするしくみを検討してください。

○就労定着支援体制加算を継続してください。
【理由】前回の改定で創設された就労定着支援体制加算は、6か月から36か月までの就労定着者に対する就労移行支援事業所による支援を評価するもので、きちんと支援したことが評価される大変意義のある改定でした。これによって、厚みのある支援を受けられた方は多かったと思います。そのため、就労定着支援に係るサービス費とは別に、就労移行支援事業において継続した支援を受けられるように、就労定着支援体制加算を継続してください。

3)共同生活援助
○重度対応型グループホームの設置を促進するためには、仕事量を適正に評価してください。また、重度の基準を現行の障害支援区分において3以上として設定してください。
【理由】「社会保障審議会障害者部会報告書」(2015年12月14日)においては、「障害者の地域移行の受け皿となるグループホームについて、重度障害者に対応することができる体制を備えた支援等を提供するサービスを位置付け、適切に評価を行うべきである」とされております。精神障害者の地域移行支援を進めるためには、重度対応型グループホームの利用は欠かせません。精神障害者の場合は、支援の必要量に比べて障害支援区分が低く出る傾向は続いており区分4以上になる方が少ないため、緩和措置が必要です。

○重度の精神障害者の対象者は、病状ではなく、生活のしづらさで判断してください。
【理由】重度の精神障害者とは、入院治療は必要ないとの判断があるものの、コミュニケーションを取る際に本人の特徴理解が必要な人、一定の幻覚妄想が残存し行動障害を伴う(妄想に左右されるなど病状による生活のしづらさがある)人と考えます。
 具体的には、以下のような生活のしづらさを持つ精神障害者を重度対応型グループホームの対象として想定する必要があります。
・長期入院による地域生活への不安がありこの不安や緊張から精神症状が揺れやすい特性がある人
・強いこだわりによる生活のしづらさがある人
・病状により判断に現実性が乏しく生活の力の見立てが支援者と大きく異なる人
・支援へのつながりにくさがある人
・これらにより地域生活の体験(チャレンジ)と生活技術や社会性の再獲得が必要な人
・暮らしの場において服薬・体調管理や金銭管理の頻回な支援や、不安による頻回な確認への十分な対応が必要な人
・身体合併症があり医療的ケアが必要な人

2.指定相談支援に関すること
1)地域相談支援(地域移行支援)について

○地域移行支援の利用を促進するため、地域移行支援に関する一定の研修を修了した精神保健福祉士を配置した事業所に、特定の加算をつけてください。
【理由】精神疾患により1年以上入院している患者は、約18.5万人いるとされていますが、地域移行支援の給付実績は500件前後で推移しているのが実情です。長期入院している患者の退院支援を促進するために、地域移行支援の一層の促進を期待します。そのために、地域移行支援に関する一定の研修を修了した精神保健福祉士を配置して地域移行支援に取り組んだ指定一般相談支援事業所に対して、特定の加算を設ける必要があると考えます。

2)地域相談支援(地域定着支援)
○地域定着支援の活用を促進するために、夜間帯のかけつけ支援、触法等の障害者に対する対応支援、電話やメールが頻回な方へ支援を加算の対象にしてください。
【理由】精神障害者が地域生活を安定して過ごすためには、見守り支援である地域定着支援の拡充が必要です。そのために緊急時支援費が設定されていますが、夜間の緊急時支援においては、少ないマンパワーで支援を行っている現状にあるため、さらなる加算が必要です。
 また、地域定着支援は医療観察法に基づく通院医療の利用者等も対象となりますが、宿泊型自立訓練・共同生活援助には地域生活移行個別支援特別加算があるように、医療観察法のケア会議に呼ばれる頻度や関係機関との連絡調整の多さ、本人や関係者の見守りをしていくために、地域定着支援にも同様の加算が必要です。
 さらに、精神障害の特性から、病状が不安定になっている場合や不安感が募っている場合は、一時的に電話やメール相談の回数が頻回になることもあるため、頻回に対応した際の集中支援加算を新設することが適切であると考えます。

3)計画相談支援
○現行で特別地域加算はありますが、移動距離に応じた加算を新たに検討してください。
【理由】山間部や過疎化が進んでいる地域においては、交通の利便性が悪く、訪問する際の移動距離が長く時間をたくさん必要とする場合が多くありますので、移動距離に応じた報酬の設定も必要と考えます。

○月に4回以上の対面支援をした場合の「集中支援加算」を新設してください。
【理由】モニタリングは、毎月や3か月、6か月などその方の状態に応じて頻度を調整し、その方との関係性を大切にしながら行っています。精神障害者の場合、毎月のモニタリングとしている場合であっても、その方の状況から月に複数回面接することもあります。このため、対面による支援を月4回以上実施した場合は、集中支援加算の算定できるようにすることが必要であると考えます。

○ピアサポーターが、自立生活援助、地域移行支援、就労定着支援など活躍する場を広げていくために、ピアサポーターを配置した事業所に対する一定の加算を要望します。加算の対象となるピアサポーターは、一定の養成研修の修了を必須とし、その養成研修は専門職も一緒に受講することを要望します。
【理由】ピアサポーターの活躍や実践は全国各地で行われていますが、その養成のための研修カリキュラム、活動の場及び報酬に係る補助等は都道府県ごとに異なり、「精神障害者地域移行支援・地域定着支援事業」に限ってみても全国一律の基準はなく、位置づけが不明瞭です。
 このような現状の中では、ピアサポーターの雇用は難しく、ピアサポーターによる支援を必要としている人に安定したサービスを提供することができません。地域移行等に携わるピアサポーターの資格要件に、一定の研修受講を明記することで、地域移行支援チームの一員として、他の専門職と対等に活躍することが期待できると考えます。
 また、2018年度から始まる、自立生活援助、就労定着支援などへのピアの活躍の場が広がることも期待されます。

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標題 改正障害者総合支援法の施行に向けた要望書
日付 2017年5月25日
発翰
番号
JAPSW発第17-70号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 堀江裕 様

  平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、厚生労働省では「我が事・丸ごと」の地域共生社会の実現に向けて、改革の背景と方向性を示され、当面の改革工程に基づき検討課題に取り組まれていることと存じます。現在2016年に改正となった障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「改正障害者総合支援法」という。)の施行に向けた準備も、地域共生社会の実現を視野に入れて行われるものと承知しております。

 つきましては、2018年4月の改正障害者総合支援法の施行に向けて、本協会はソーシャルワーカーとして精神障害者の社会的復権を目指し、地域生活における相談支援を実践する専門職の立場から、下記の通り要望いたしますので、精神障害者もあたり前に暮らせる地域共生社会を実現するために、ご高配のほどよろしくお願いいたします。


1.就労支援に関すること

○利用者自己負担のない制度にしてください。
【理由】利用者の中には、一割の自己負担が発生するため、自ら利用日数を減らす方もおられます。自己負担のある就労系事業所の利用者は、働いているのに利用料を払うため、自己負担のない利用者と比べ、大きな不公平感を感じています。公平なサービス利用を受ける権利を考えると一律自己負担のない制度にすることを求めます。

○就労継続支援B型については、B型アセスメントを希望者のみの実施としてください。
【理由】働けるかどうかを事前にアセスメントされてからでなければ利用ができないしくみは、あたかも1722年に英国で実施されたワークハウス・テスト法を彷彿とさせます。一般企業では働けないという烙印を押されて初めて就労継続支援B型の利用を許されるというしくみは、屈辱的であり人権侵害にもあたると考えます。
 またサービス等利用計画と合わせ、このアセスメントの実施によって、B型利用希望者はその正式利用までに1~2か月を要します。その間にモチベーションの低下や生活リズムや病状の悪化などを起こす方もおられます。ようやく福祉的就労の入り口まできた方にとっては不必要に利用を待たされるものであり、この制度は廃止してください。

2.指定相談支援に関すること
1)地域相談支援(地域移行支援)
○精神科に長期入院している住民の現状の把握をするために、各地方自治体別で1年以上の入院患者数と、その内65歳以上の人数を明らかにし各地方自治体に公表してください。
【理由】各地方自治体は、長期入院患者の地域移行について、何が地域課題になっているのかが分かりにくい状況です。
 第5期市町村障害福祉計画の「入院中の精神障害者の地域生活への移行」について効果的な基盤整備量を設定するためにも、長期入院患者数を各地方自治体が把握して、目標数値に対する進行状況の確認と手立てができるようにしてください。また、各地方自治体が住民の長期入院患者数のうち高齢者の人数を把握することで、高齢分野との共通の課題として自立支援協議会や地域ケア会議での協議が可能になります。入院中ということで住民の支援を病院だけにお任せするのではなく、地方自治体として入院中の住民にアプローチする根拠としてください。

○都道府県に対しては、指定一般事業所の実態の把握、指導の強化を義務付けてください。
【理由】地域相談支援の給付数は、制度が開始された2012年度から4年経過した現在も、国が想定していた給付数の20%にも満たない低調な状況が続いています。指定一般相談支援事業所は都道府県が指定するが、実態として特に指導は行われておらず、自らの都道府県の各圏域において機能する指定一般相談支援事業所の設置数やその支援の中身の質といったことは把握し切れていないのが実情となっています。
 指定一般相談支援事業所も更新制にする、指定は受けたが人員等にて実際には依頼を断っているといった事業所に対して都道府県が指導する、または指定を取り消すといったことも検討が必要です。中身のある指定一般相談支援事業所が圏域にどれぐらいあるのかという実態を都道府県が把握したうえで質の向上に向けた技術的な支援や体制整備を考えていく必要があります。

○措置入院者及び医療保護入院者については、入院期間にかかわらず地域移行支援の対象者としてください。
【理由】地域移行支援は、精神科病院に入院している精神障害者である場合において、直近の入院期間が1年以上の入院者を中心に、1年未満の入院者であっても、例えば、措置入院や医療保護入院から退院する者で住居の確保などの支援を必要とするものや地域移行支援を行わなければ入院の長期化が見込まれる者については対象とすることができるとしています。
 入院中及び退院後に本人の望む生活を実現するためには入院中からの関わりが効果的であることから、措置入院者及び医療保護入院者については、入院期間にかかわらず地域移行支援の対象者としてください。

2)計画相談支援
○主任相談支援専門員は、精神保健福祉士の資格を有し、OJTやスーパーバイズをするスキルを有し、市町村の自立支援協議会への貢献する人材を求めます。そのような「主任相談支援専門員(仮称)」を配置した事業所に、配置加算を新設してください。
【理由】「相談支援の質の向上に向けた検討会における議論のとりまとめ」においても記載されているように、「主任相談支援専門員(仮称)」は、事業所や地域において指導的役割を担う者であって、相談支援の仕組みを支える中核的な人材と位置付けるべきです。そのためには、精神保健福祉士等の国家資格を有していることを条件としてください。また、期待される役割を十分に果たすために、その活動の責任エリアの提示、所属する自らの法人や機関ではなく、責任エリア全体の人材育成を担うこと、地域で機能するために名誉職ではないことを示すためにも実務経験を必須とし、更新制にするなどの基準の設置が必要だと考えます。

○市町村の責務である委託相談は、市町村の裁量に任されているのが現状ですが、相談支援の質の担保のためには、委託相談は重要です。全市町村で、委託相談支援事業所を設置する義務を明文化してください。
【理由】全国3,299の指定一般相談支援事業所のうち、市町村から委託を受けているのは1,407事業所と全体の43%に留まっている中(2015年4月時点)、移動の時間や距離、マンパワー不足を理由に相談支援を受けていない指定特定・指定一般相談支援事業所も多いのが実情です。長期入院患者への退院支援の意欲喚起や、福祉サービス利用につながっていない方などは、委託相談によって地域生活が過ごせるような仕組みが必要です。そのためには、全市町村で委託相談支援事業所を設置し、基本相談が具体的に行われるよう求めます。

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標題 生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況等調査に関する意見
日付 2017年5月16日
発翰
番号
JAPSW発第17-52号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働大臣 塩崎恭久 様

 2017年3月3日付の事務連絡「生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況の把握について(依頼)」に基づいて実施された「生活保護受給者のぱちんこ等の状況等調査」に関して、調査を実施することとなった経緯自体に甚だの疑義を覚えるとともに、本協会としての意見を下記の通り申しあげます。

1.調査実施が生活保護受給者への偏見の助長につながることを危惧します。

 生活保護法に基づいて支給される扶助費を含め被保護世帯の収入の使途は、基本的に当該世帯の自由とされています。

 今回の状況等調査における調査項目が、保護費の使途としてぱちんこ等に使われたことに対する指導件数やぱちんこ等で得た収入の未申告による不正受給といった項目に限定されていることは、あたかも保護受給者がギャンブルに保護費を浪費しているとの印象を社会に与えかねず、生活保護バッシングを助長する危険性があると考えます。また、事務連絡にもありますように現行法上は、娯楽とされているぱちんこ等の状況等を調査することは、保護費の使途に対する監視を強めることにつながると危惧します。

 したがって、今後調査結果を公表する場合には、特段の配慮が必要であると考えます。


2.調査の回答様式にあるギャンブル依存の疑いのあるケースの事例が不適切と考えます。

 特に事項1及び事項4の事例は、ケースワークの観点やギャンブル依存への対応として不適切と考えます。依存及び依存症に陥っている受給者に対して、就労指導や口頭指導(どのような口頭指導を行ったかについては言及がない)を行うことでは、依存及び依存症の回復や解決にはつながりません。こうした事例を例示することは、現場のケースワーカーの方々にギャンブル問題に関する不適切な指導を蔓延させることにもつながりかねません。

 本来、ケースワーカーの役割は、被保護者の生活状況を困難にしているギャンブル問題への初期介入として適切な医療につなぐことの助言指導や、日常生活の中での回復を確かなものとするための福祉的支援を行うことにあります。時宜に叶う介入のないままに、就労を急がせることや濫費の非を責めるような指導は、かえって依存症の悪化や重症化を招くことになります。現場のケースワーカーを対象とした依存症に関する研修等の実施こそが急務の課題であると考えます。

以上

 なお、本来はギャンブルであるぱちんこや競馬等を「娯楽」として広く普及させていることが、ギャンブル依存症を蔓延させる大きな要因となっていることは論を待たないところでありますが、一方において、薬物関連問題及び依存症の例に見るように、法的な規制強化のみでは根本的な問題解決とならないこととも併せて、この問題については、別の機会に改めて意見表明をする所存です。


[PDF版はこちら(104KB)]

(参考)各都道府県等生活保護担当係長宛事務連絡「生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況の把握について〈依頼〉」(厚生労働省社会・援護局保護課保護係長/平成29年3月9日付)
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標題 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」の審議経過に関する見解
日付 2017年4月17日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 本年2月28日に閣議決定され、現在、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)が国会で審議されています。この一連の経過に鑑み、現段階での本協会の見解を下記の通り表明します。

1.法改正の趣旨及び措置入院制度の見直しについて

 本協会は、かねてより、精神保健福祉法における措置入院制度の見直しについて、相模原市の障害者支援施設における事件と切り離して協議検討するよう要望してきました。この度、政府が審議過程において、改正法案概要の「改正の趣旨」から相模原事件の再発防止を法改正の目的であると誤解させるような表現を削除したことにつき、遅すぎた感は否めないものの本協会としては肯定的に受け止めています。報道過程を通じて形成される歪んだ社会的認知のままに、法改正に至った過去の過ちを繰り返さぬよう、国会審議中にあって食い止めた姿勢は評価したいと思います。

 また、クライエントの自己決定の尊重を専門職アイデンティティとして重視する本協会の意見が汲み入れられ、個別ケース検討会議における本人の参加が明記されたことも妥当な判断と考えます。

 なお、今回の法改正に関しては、2013年改正時における3年後の検討規定に基づき、厚生労働省に設置された「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において、1年間に渡って協議されていました。改正法案では、2013年改正以前に指摘されていた措置入院制度における保健所の機能強化をはじめとして、措置指定病院における医療と支援の質の向上、指定医制度の見直しが盛り込まれました。長年未着手であった強制入院制度としての措置入院制度の見直しは、本協会がこれまで要望してきたことでもあります。

 今後、政府はこれらの改正事項の運用における措置入院の実態把握と評価を行い、権利擁護機能の強化を含めさらなる改正を行うことが望まれます。


2.非自発的入院のあり方に関する継続的な検討について

 非自発的入院に対する権利擁護機能の体制が構築されていない現段階において、医療保護入院制度の存続や市町村長同意の要件緩和は、歴史的課題の積み残しとして改正法案が抱える重大な課題であると考えます。

 本協会は、これまでにも意思決定支援の仕組みや非自発的入院における行政責任の明確化を求めてきました。今回の法案ではこうした点に関する改正提案が為されなかったことから、改めて厚生労働省に検討会を設置し、3年以内の見直しに向けて協議を継続することが妥当であると考えます。その際、2016年度より実施されている精神医療審査会の機能強化の実態についても、その成果と妥当性を評価することが求められます。

 こうした見直しの必要性に関する認識が有名無実化しないよう、今国会における法案の採決にあたり、附帯決議を付すことが適当であると考えます。


3.精神保健福祉法の意義の再検討について

 精神障害のある人々の地域生活支援は、地域包括ケアシステムの中で一体的に行われることが望ましいと考えます。障害福祉に関する事項は既に障害者総合支援法に一元化されており、精神保健福祉法の「福祉」に関する再整理が必要です。

 政府が、相模原事件の再発防止を法改正の趣旨から削除したことは、精神病者監護法から精神衛生法の改正等々と連綿と続く、社会防衛策としてのこの法の成り立ちそのものを見直す覚悟の表れであると認識し、精神科医療をその他の医療から切り離して規定する現行の精神保健福祉法の抜本的見直しの端緒に立つことを示すものと考えます。

 非自発的入院制度の存置の是非についてさらなる検討を重ね、国際連合の「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」や「障害者の権利に関する条約」に適った入院制度の創設へと歩を止めることがないよう求めるとともに、本協会も諸活動を展開します。


[PDF版はこちら(182KB)]
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