要望書・見解等

2014年度

標題 スクールソーシャルワーカーの配置について
日付 2015年3月16日
発翰
番号
日社福士2014-624、JAPSW発第14-345号
発信者 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉克英
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 文部科学省初等中等教育局児童生徒課 課長 内藤敏也 様

 貴職におかれましては、日々学校教育にご尽力されていることに敬意を表します。
 さて、本会は平成26年9月24日に「子どもの貧困対策を総合的に推進するための要望」を文部科学大臣及び内閣府特命担当大臣に提出し、スクールソーシャルワーカーの常勤配置など子どもの支援体制整備の推進とスクールソーシャルワーカーの担い手として社会福祉士及び精神保健福祉士を原則とすることを要望いたしました。
 この度、2015年度予算案が発表されスクールソーシャルワーカーの配置拡充が示されましたが、改めて下記の事項について要望いたします。

 
 
1 スクールソーシャルワーカーの常勤配置に向けた対策を推進してください
 スクールソーシャルワーカーは、児童生徒やその家族と信頼関係を築き、関係機関との調整や地域の社会資源の活用や開発、ネットワーク構築などソーシャルワークが行えることが必要です。週に1~2回の勤務では実現が困難ですが、常勤職であれば児童生徒に継続的な対応が可能となり、結果的により適切な支援が行えます。また、常勤採用であれば社会福祉士や精神保健福祉士が業として選択することができるとともに、スクールソーシャルワークの専門性の向上にも好影響を与えるものと考えられます。
 一部の自治体では教育委員会にスクールソーシャルワーカーを職員として常勤配置するケースも見られるようになりました。スクールソーシャルワーカーの雇用時の勤務形態については自治体の裁量の範囲と推察しますが、まずは常勤配置による効果を明らかにすることが必要と考えます。スクールソーシャルワーカーが常勤配置され将来的に正規職員として勤務できるよう、スクールソーシャルワーカーを常勤とする配置拡充の早期予算化を要望します。

2 スクールソーシャルワーカーのスーパーバイザーには専門職の必置や職能団体の活用を推進してください
 平成27年度予算では47名のスーパーバイザー配置が予算化されていますが、スーパーバイザーはスクールソーシャルワーカーがその職責と機能を遂行できるよう指導することが必要であり、高い専門性が求められます。従って、スーパーバイザーには、スクールソーシャルワーカーの実務経験を有する社会福祉士ないしは精神保健福祉士もしくはスクールソーシャルワークを専門とする学識者の必置を推奨いただけますようお願いします。
 また、日本社会福祉士会はスクールソーシャルワーカーへの研修会を行っているとともに、多くの都道府県社会福祉士会が子どもの支援に関する委員会を組織しており、団体としてのバックアップが可能となっています。スーパーバイザー機能を職能団体が担う場合も予算活用できるような柔軟な運用を要望します。

3 ソーシャルワークが機能していく体制整備を推進してください
 学校でソーシャルワークが機能するためには、上述したスクールソーシャルワーカーの常勤配置や適切なスーパーバイザーの存在が重要であるとともに、教員のソーシャルワークに関する理解が欠かせません。教員がソーシャルワークを理解すれば、スクールソーシャルワーカーとの連携や協働が円滑となり児童生徒やその家族への支援がより早く、より適切に行えます。また専門性への理解も進むと考えます。そこで、現職の教員には研修等の受講努力義務を、教員を目指す者には教職課程の必須科目に位置づけ学べるようにするなど、すべての教員がソーシャルワークを学ぶ機会が得られるようになることを要望します。
   以上
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標題 繰り返される精神保健福祉士による金銭横領事件に関する見解
日付 2015年3月8日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 2012年に当時本協会の構成員であり、過去には本協会の理事の職にあった精神保健福祉士による障害者グループホームにおける利用者徴収金の私的流用、および当該精神保健福祉士が所属する都道府県精神保健福祉士協会費の私的流用が発覚した。

 本協会は事実関係調査を行ったうえで、2013年6月14日の公益社団法人としての第1回定時総会において当該精神保健福祉士の除名処分と厚生労働大臣に対する精神保健福祉士登録取消しの意見具申を提案したが、構成員諸氏もご承知のとおり否決されることとなった。

 本協会は、任意団体当時も含め過去に幾度かの構成員(会員)による金銭横領事件を経験し、そのたびに見解を公表し、構成員に注意を呼びかけてきた。また、同様の事件が起こる背景の普遍化と教訓化を試みるとともに、2006年には、このような問題を個人の職業倫理に訴えるだけでなく再発防止システムを整備する必要性からも、権利擁護委員会において「日常的金銭・貴重品管理に関するガイドライン」を作成し再発防止に努めてきた。しかしながら、再び金銭横領事件が起こった。クライエントの社会的復権・権利擁護と福祉のための専門的・社会的活動を行う精神保健福祉士の犯罪行為ゆえに、その影響と関係者に与えた衝撃は計り知れず、極めて遺憾だと言わざるを得ない。

 精神科医療や障害福祉の現場では、生活支援の名の下に金銭管理や代理行為が行われている事例がいまだに散見される。クライエントの経済的なことは精神保健福祉士に一任しているという病院もあるだろう。地域の障害福祉サービス等事業所では、余裕のない人員配置から十分なチェック体制のないまま一職員による運用を許容せざるを得ない事例もあるだろう。クライエント不在のまま行われる不透明な金銭管理やチェック体制の不備、スーパービジョンや同僚等との相互批判・相互検証の場の欠如等が事件の温床となっていくのではないだろうか。

 本協会としては、二度とこのようなことが起こらないよう都道府県精神保健福祉士協会等と連携し研修会や広報活動等を通じて精神保健福祉士としての価値と倫理の浸透を図るとともに、チェックシステム等の再発防止のための様々な工夫を情報収集し共有化する作業に取り組みたいと考えている。

 構成員諸氏におかれては、所属機関における金銭管理体制を再点検するとともに、本協会の倫理綱領を意識化した実践をこころがけ、スーパービジョンやコンサルテーション、同僚等との相互点検の場を確保することを強く要請するものである。

  以上 
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標題 大阪市のプリペイドカードによる生活保護費支給モデル事業に関する見解
日付 2015年3月4日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 大阪市は2014年12月26日、生活保護費の一部をプリペイドカードで支給するモデル事業を2015年4月から全国で初めて実施すると発表した。このモデル事業にはギャンブルや過度な飲酒等に生活費を費消してしまう人を支援する目的があると大阪市は説明しているが、依存症対策のあり方としても、生活保護制度の運用のあり方としても、多くの問題をはらんでいる。
 本協会は、精神障害者支援に関する専門的・社会的活動の展開を担う専門職団体の立場から、安易なモデル事業導入の撤回を求めるとともに、小手先の管理的手法ではなく、本格的な依存症対策に取り組むことを大阪市、各地方自治体、国に要請するため、本見解を公表するものである。

1.プリペイドカードは依存症対策とはならない
 ギャンブル、アルコール、薬物などへの依存症は、現代の精神保健における重要な課題の一つである。依存症の結果として生活が破綻し、生活保護を受けざるを得なくなる人もいるし、生活保護費の多くを、パチンコをはじめとするギャンブルや飲酒などに費やしてしまい、最低生活の維持が困難な状況に陥る人がいるのは事実である。そうした人たちは本人の自覚の有無にかかわらず、依存症に陥っていると考えられる。
 生活保護受給中の依存症者への対策として、プリペイドカードが使えない業種を定め、保護費の使途を福祉事務所が電子情報で把握して指導すればよいかというと、それほど単純ではない。
 「わかっていても、やめられない」のが依存症という疾患である。依存症の人たちは自分が依存症であることをなかなか認めないが、しっかりと寄り添い、治療施設、回復支援施設、自助グループなどにつなぐことが必要である。「このままではいけない」という本人の決意を導くこと、そして同じ苦しみを持つ仲間や専門職の支えがなければ、回復は難しい。
 金銭管理は補助的な手段にすぎず、管理すれば依存症対策になるという誤解が広がるとすれば大きな問題である。肝心なのは、人間関係の構築と根気強い援助である。

2.本格的な依存症対策こそが求められる
 現実には、依存症の治療・援助にあたる医療機関、回復支援施設は非常に少ない。自助グループも大半は自主財源だけで運営している。
 行政としていま最も必要なのは、依存症対策にあたる医療機関・回復施設の整備充実である。あわせて自助グループの育成、依存症に関する啓発・広報の強化、そしてパチンコ店利用のあり方を中心にギャンブル依存症の予防対策を打ち出すことが求められる。
 生活保護との関連では、福祉事務所のケースワーカーに教育研修を行い、依存症など精神保健の知識を深めることも必要である。ギャンブルや酒をやめると本人が宣言しても、失敗して手を出してしまうことはある。そういうときに「審判的態度」で接しても、叱責して否定することは逆効果になりかねない。失敗した時に相談に乗り、改めて決意を固めてもらい、ギャンブルや酒を断ち続けることを称える肯定的アプローチが望ましい。そうした力量を持つケースワーカーは現在、どの程度いるだろうか。
 根本的には、負担過多となっているケースワーカーを増員するとともに、福祉専門職の採用を拡大し、とりわけソーシャルワーカーの国家資格である精神保健福祉士・社会福祉士の採用を大幅に増やすべきである。

3.生活保護の不当な管理強化につながる
 生活保護法第31条は、生活扶助について金銭給付を原則とし、現物給付は例外的な場合しか認めておらず、プリペイドカードによる給付は、これに違反するおそれがある。
 また、プリペイドカードの電子情報によって、福祉事務所が生活費の使途を逐一把握することは、プライバシーの侵害である。
 そもそも、生活費の使い方は自分で自由に決めるのが、尊厳ある生活である。自分の生活を自分でコントロールすることが、本来の意味での自立であり、使途の監視は自立支援にふさわしくない。
 さらに、VISA加盟店でしか使えないカードは、小さな店や安売り店では使えないなど、生活上の不便・不利益も生じる。
 大阪市は、希望者に限定してモデル事業を実施するとしているが、福祉事務所のケースワーカーと生活保護利用者の間には、力関係に差があり、ケースワーカーの勧めを断ると何らかの不利益を受けるのではないかとおそれて、拒めない利用者も多い。そういう実情を踏まえると、プリペイドカード方式はいずれ実質的な強制になるおそれがある。モデル事業開始から1年ほど後に行うという本格実施の際は、カード給付の金額も3万円より拡大する可能性が高い。
 このモデル事業は、生活保護利用者の支援というより、依存症対策を名目に管理の強化を意図した事業と考えざるを得ない。これは一種の劣等処遇であり、生活保護に関するスティグマ(恥の意識)を強めて、必要な人が生活保護をいっそう利用しにくくなることを強く危惧する。
  以上 
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標題 障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理に係る意見
日付 2015年2月4日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ(第5回)

1.精神障害者に対する支援における現状と課題
1)改正精神保健福祉法の施行(2014年4月)により、一部とはいえ精神科病院における新たな社会的入院を生まないための仕組みが導入された。

2)一方、長期入院精神障害者の地域移行が精神保健医療福祉の大きな政策課題となっているが、地域移行の隘路として精神科病院の経営的構造の問題が改めて確認されたところ。

3)また、長期入院精神障害者の高齢化が進んでいるが、入所系介護保険サービスが地域移行先として十分に機能していないほか、特に低所得でなおかつ介護保険サービスの対象とならない長期入院精神障害者の居住サービスの貧困が大きな課題となっている。

4)高齢精神障害者に関しては、すでに入院が長期化した人の地域移行の問題のほか、高齢になってから精神疾患を発症し入院する人の長期化傾向の問題、これまで多くのサービスを利用しながら長年地域生活を送ってきた人が病院に戻ってきてしまう問題など、「高齢」ということで一括りにできない課題が存在している。

5)地域移行支援及び地域定着支援は2012年4月から個別給付化されたものの、2013年12月における延べ利用者数は地域移行支援が525人、地域定着支援が1,635人と、極めて低位にとどまっている(国保連データ)。

6)市町村によって障害支援区分に基づくサービス決定基準、介護保険サービスと障害福祉サービス等の併用の可否などに不均衡がみられるほか、障害保健福祉圏域障害福祉サービス等の供給量にも格差が生じており、必要なサービスが圏域にない地域も存在している。こうした資源の地域偏在は、精神障害者の地域での生活を困難にさせている大きな要因の一つである。

7)在宅の精神障害者の地域定着を推進していくために、医療と福祉・介護の連携による包括的な支援が求められる。

8)通所系の障害福祉サービスにおいては、一般に他の障害と比較して精神障害者の利用率(利用日数の割合)が低いため、事業所は多くの登録者を抱えることとなり、職員が個別支援計画や相談対応等の個別支援により労力を割かれる現状がある。

9)精神科医療が急性期や回復期の入院医療と外来・在宅医療に人と財源を大胆にシフトしていくことと、障害福祉サービス等で精神障害者を地域社会で支援していくための人材(専門職、ピアサポーター)の確保が欠かせない。

2.ワーキンググループにおける検討項目に関する本協会の意見
1)常時介護を要する障害者等に対する支援の在り方
○ 強度の行動障害を有さないものの、抑うつ状態、意欲低下等により常時介護を要する精神障害者が存在することから、対象者像を明確にし、その支援の在り方について検討すべきである。

2)障害者等の移動の支援の在り方
○ 現行法における移動の支援としては、居宅介護における通院等介助、同行援護、行動援護、そして地域支援事業における移動支援があるが、それぞれ対象者が異なるなど利用者にとって分かりにくく、市町村の支給決定基準に格差があるため、統合した体系に編成してすべて個別給付対象とすべきである。

3)障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方
○ 障害支援区分に基づく支給決定という現行のプロセスを見直して、相談支援専門員が障害者本人との「相談」の中から望む暮らしの実現のために、的確なアセスメントに基づいた、サービス利用計画案を作成し、自治体担当者との協議・調整により支給決定を行う仕組みに転換すべきである。
○ 災害時に支援が必要な障害者も多く、平時から地域での支援計画を持つとともに、障害者本人も自覚できるよう、サービス等利用計画の中に必ず災害時の対応を盛り込んでいく必要がある。
○ サービス利用計画の作成支援に当たる相談支援専門員の質・量双方の確保に向けた方策が不可欠である。また、相談支援専門員の質を担保するために、精神保健福祉士および社会福祉士を基礎資格として位置づけるべきである。

4)障害者の就労の支援の在り方
○ 就労移行支援の利用を経て、一般就労した障害者が様々な事情で退職あるいは休職した場合にも、再利用できることを明確にすべきである。

5)その他の障害福祉サービスの在り方
○ 基幹相談支援センターの設置基準を明確にし、市町村の枠を超え最低でも障害保健福祉圏域に1か所基幹相談支援センターを設置し、機能を担うに充分な質量共の人材を確保するとともに、被虐待障害者にも対応できる短期入所の併設など生活支援機能も持たせることが必要である。
○ 都道府県の協議会と市町村の協議会が有機的に連動して障害福祉計画等に反映される仕組みが必要である。

6)障害者の意思決定支援の在り方
○ 入院中の精神障害者の地域移行を促進するために、医療スタッフに加えて、地域支援に関わる人材やピアサポーターが、障害者本人の気持ちを傾聴しながら意思決定を促していく、人材の創設と確保が必要である。

7)障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方
○ 成年後見制度の利用促進を図るためには、意志決定支援を基本とした成年後見活動の浸透とともに、すべての人に意思決定能力があることを前提とした成年後見制度に組み立て直す必要がある。
○ 成年後見制度利用支援事業における後見報酬助成の市町村長申立以外の低所得者への適用、生活保護における後見扶助の創設が必要である。
○ 「変化しうる障害」という精神障害の特性に鑑み、法定後見の3類型(後見、保佐、補助)を定期的に見直す仕組みが必要である。

8)精神障害者に対する支援の在り方
○ 常時介護を要しないものの、見守りや助言指導、緊急時の支援等が必要な精神障害者は多く、介護保険サービスにおける「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を参考としつつ、精神障害者の特性に合わせた医療と介護の連携による新たな包括的支援サービスを創設すべきである。
○ 地域移行支援及び地域定着支援を拡充していくために、相談支援専門員が特定相談支援に忙殺されないための方策(人員と財源の確保)が必要である。
○ 通所系サービスにおいては、一般に精神障害者の利用率(登録者数に対する1日当たりの利用者数割合)が低く、事業所はより多くの登録者を確保することで運営を維持しており、個別支援計画の作成や相談対応において労力を割いている。就労継続支援における重度支援体制加算の対象見直し等が必要である。
○ アウトリーチ支援である訪問型生活訓練を通所サービスである生活訓練と切り離し、訪問型支援事業として単独で設置できる規定に改めるべきである。

9)高齢者に対する支援の在り方
○ 障害者グループホームを利用しながら日中は通所系の介護保険サービスを利用できるなど、障害福祉サービスと介護保険サービスを柔軟に併用できることが必要である。また、サービス利用料の負担格差の是正も必要である。
○ 長期入院高齢精神障害者の地域移行を進めるために、身体合併症も含めた医療的ケアや見守り機能を強化したグループホームや居住の場の創設が必要である。
○ 要介護度に障害の重さが反映されず介護保険サービスの対象となりにくい高齢精神障害者には、養護老人ホームやサービス付き高齢者住宅も居住の場の選択肢となり得るが、相談支援専門員をはじめ精神保健福祉士等による職員に対するコンサルテーションや利用者への定期的な訪問が可能となる仕組みが必要である。

  [資料]「障害福祉サービス等事業所等(居宅介護・重度訪問介護、行動援護事業所を除く)の精神保健福祉士数(常勤と非常勤の合計数)の推移」及び「介護保険サービスにおける定期巡回・随時対応サービスの概要」(PDF:310KB
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標題 シリアにおける日本人拘束に対する声明
日付 2015年1月28日
発信者 国際ソーシャルワーカー連盟アジア・太平洋地域
公益社団法人日本社会福祉士会
公益社団法人日本医療社会福祉協会
公益社団法人日本精神保健福祉士協会
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会

 国際ソーシャルワーカー連盟アジア・太平洋地域は、シリアにおける日本人拘束に対して強い憤りを感じる。このような行為はいかなる理由があろうとも許されない。

 私たちソーシャルワーカーは、人権と社会正義の原理にもとづいて、生命の権利が人権の中で最も基礎的なものとの認識に立ち、当事件の即時解決とその背景にある紛争の平和的な解決を求める。

  [IFSWウェブサイト]IFSW Asia –Pacific Statement on the Japanese hostages in Syria
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標題 「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性」に関する見解
日付 2014年12月25日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠


 2014年7月14日、厚生労働省は「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」(以下、「検討会」という。)がとりまとめた「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性」を公表した。また、同年10月31日の社会保障審議会障害者部会において「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会取りまとめを踏まえた主な取組」(以下、「主な取組」という。)の説明があり、想定している施策等の一部が明らかになった。
本協会は、社会的入院を解消し精神障害者の社会的復権を促進する専門職団体の立場から、以下のとおり現時点における見解を述べるものである。

1.精神医療の今後のあり方と精神保健福祉士の役割
 検討会のとりまとめでもっとも注目すべきことは、入院医療に偏重した精神科医療の構造的な問題に関して、「将来的に」という前置きは付いているものの、初めて「病床の削減」が厚生労働省の公式文書に載ったことである。
 10年前の「精神保健福祉医療の改革ビジョン」では、精神保健医療福祉体系の再編の達成目標(平均残存率、退院率)が掲げられたものの、「この目標の達成により約7万床相当の病床数の減少が促される。」という表現にとどまった。また、先般の精神保健福祉法改正により新たに告示された「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針 」(以下、「指針」という。)においても、指針策定の検討会での攻防はあったものの、精神病床の機能分化と精神障害者の地域移行を進める結果として、「精神病床は減少する。」という表現にとどめられたことに比べ、病床削減を明文化したことの意義は大きい。
 検討会では、精神科病院の経営が長期入院精神障害者を確保することでようやく成り立たつという構造上の問題が確認された。すべての精神科病院が急性期・亜急性期の入院医療や外来・在宅医療への財政と人的資源の集約化を行える体制に転換し、新たな長期入院者を生み出す悪循環を止めなければならない。したがって国には、障害保健福祉部、医政局、保険局、老健局等といった省内部局による組織横断的なプロジェクトを組み、精神病床の適正化と病床削減の具体的なロードマップ(工程表)の早急な提示を求めたい。そこにおいて、精神療養病棟など長期入院者の病床の、「地域移行支援機能を強化する病床」への過渡的な移行と将来的な廃止をいつまでにどのように進めるのかも示されるべきである。
改正精神保健福祉法の施行と2014年度診療報酬改定により、早期退院の仕組みが作られ、今後長期入院精神障害者は自然減し、結果として病床は減少するであろう。一方、新たな長期入院(ニューロングステイ)は抑止されるものの、外来・在宅医療と地域生活支援の体制が貧困なままでは、短期間で再燃・再入院を繰り返す人が後を絶たず、次第にこれらの人びとの生活する力を奪っていくこととなる。
 長期入院者の地域移行に私たち精神保健福祉士はこれまで以上に真剣に関与しなければならない。併せて外来・在宅医療と地域生活支援を強化すべく私たちは実態を注視して発言し行動していく必要がある。

2.長期入院精神障害者本人に対する支援の具体的方策の方向性について
 具体的な方策の方向性は、「退院に向けた支援」、「地域生活の支援」、「関係行政機関の役割」に分けて網羅的に示されている。
 「退院に向けた支援」のうち特に「退院に向けた意欲の喚起」に関して、検討会ではむしろ「病院スタッフの意識改革」が重要であると結論づけた。2013年度に本協会の高齢精神障害者支援検討委員会が実施した高齢長期入院患者(認知症を除く)の実態調査では、65歳以上の長期入院者でもADL(日常生活動作)の自立度は高い人が多く、退院希望を表明する人も4割いることが明らかになった。特に入院期間が1年以上5年未満の高齢在院者の退院意欲は高く、適切な居住の場と支援があれば多くの人が退院可能である。精神保健福祉士も含めた病院スタッフの意識改革を進め、まずは退院意思のある高齢精神障害者の地域移行に早急に取り組まなければならない。そのことの前提として、病院管理者が退院支援にブレーキを掛けざるを得ない本末転倒の医療構造を、本来のあるべき姿に戻さなければならないことは1で述べた通りである。
 しかし、高齢精神障害者の地域移行の最大の隘路となるのは、自立度の高い低所得高齢者が利用できる居住サービスが極端に乏しいことである。要介護度が低ければ介護保険サービスの対象外となり、さらにサービス付き高齢者向け住宅も生活保護の住宅扶助特別基準額を上回る家賃設定のところが多い。障害者総合支援法によるグループホームの拡充と併せ、一般の高齢者住宅施策に長期入院精神障害者も想定することが求められる。
 一方で、相変わらず地域の受け入れ準備が整っていない現実もある。いまだに時として行政関係者も含む地域住民の反対により退院が阻まれることも事実である。また、地域の要として役割が期待される相談支援事業所も計画相談支援に振り回されて疲弊し、地域相談支援や基本相談支援が十分に行えない状況にあるという問題もある。地域住民の理解の促進、行政の積極的な関与、精神保健福祉士をはじめとする地域生活支援人材の増強の3点セットが、「地域に受け皿がない」ことを理由としないための必須条件となる。

3.病床転換型居住施設について
 検討会の後半の議論は、指針に「地域の受け皿づくりの在り方や病床を転換することの可否を含む具体的な方策の在り方について精神障害者の意向を踏まえつつ、様々な関係者で検討する。」と示され再開されたこともあり、長期入院精神障害者の地域移行が検討課題の中心であったはずが、病床転換の可否に集中してしまい、具体的な方策に関する議論の時間が不十分に終わったことは残念である。  病床転換型居住施設を巡っては、本協会内でも理事会をはじめとして支部長会議やブロック会議、研修会等多様な場を用いて繰り返し協議し、さまざまな意見を交わした結果、反対あるいは賛成という単純な態度表明は選択しなかった。私たちは、この10年間充分な数の長期入院者の居住の場を地域に確保することができなかった。また、モデルとなる先駆的な取組みはあったものの、それを全国に普遍的に波及させることもできなかった。そのような状況から提案されたのが病床転換型居住施設であると言える。
 かつて国が精神障害者退院支援施設構想を提示したときには、明確に反対の立場を取った本協会であるが、「入院医療中心から地域生活中心へ」のスローガンが掲げられた精神保健医療福祉の改革ビジョンの策定から10年が経過する中で、ほとんど変化することのなかった精神医療状況を直視しなければならない。10年が経つうちに長期入院者はさらに歳を重ね、このままでは病院で亡くなる人が増えていくだけである。長期入院精神障害者の「本人が希望する地域生活の実現」を大原則としつつも、病床転換型居住施設を作らざるを得ないとすれば、あくまでも地域生活への移行の可能性を追求する過渡的・限定的なものと位置づけて、地域生活により近い条件が担保されることが必須条件となる。少なくともこのままの精神病床数を維持することは、相対的には長期入院者の地域移行の可能性を奪うことになる。
 主な取組として示された長期入院精神障害者地域移行総合的推進体制検証事業には、病院敷地内グループホームの設置条件等を検討して試行的に実施することも含まれており、今後の動向を注視していく必要がある。

 社会的入院の解消と新たな社会的入院を生まないために国家資格化された精神保健福祉士は、どこにいても精神障害者の社会的復権の実現のために、さまざまな職種、そして本人と協働して、その責任を全うしなければならないことを、この見解の公表とともに再確認したい。

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標題 生活保護住宅扶助基準の引き下げに反対する声明~住宅扶助基準の引き下げは精神障害者の地域移行・地域定着の大きな障壁となる~
日付 2014年12月1日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
 現在、厚生労働省社会保障審議会生活保護基準部会(以下、「基準部会」という。)において住宅扶助の特別基準額水準について検証が進められている。そのような中、財務省は10月27日に、財政制度等審議会財政制度分科会において「住宅扶助の特別基準額は、低所得世帯の家賃実態よりも高い水準に設定されているため、均衡が図られる水準までの引下げが必要ではないか。」とする資料を提出し、厚生労働省の動きをけん制している。
 第19回基準部会(2014年10月21日)の資料「作業部会による生活保護受給世帯の居住実態に関する調査の集計結果(速報暫定版)」によると、最低居住面積水準及び設備条件(1)を満たしている民間借家に入居している単身世帯は、都道府県(政令指定都市、中核市を除く)で平均31%(最低は東京都の17%)、政令指定都市で平均27%(最低は川崎市の15%)、中核市で平均34%(最低は鹿児島市の20%)であった。また、3割から4割の世帯が、新耐震基準が導入された昭和56年以前に建築された借家で生活していることが明らかとなった。さらに、第20回基準部会(2014年11月18日)の資料からは、賃貸物件(1R、1K、1DK)のうち、単身世帯の最低居住面積水準を満たす住宅であって、家賃額が住宅扶助特別基準(上限額)以下の物件の割合は4%から15%と極めて低いことが分かる。このように、生活保護受給世帯の多くが最低生活水準を満たさない劣悪な住環境に置かれているのが実態である。

 住宅扶助基準の引き下げは、ようやく本格的な取り組みが始まる長期入院精神障害者の地域移行を大きく阻む障壁となる。患者調査(2011年)によると精神及び行動の障害で入院をしている者のうち18%が医療扶助を受給している。生活保護受給中あるいは退院後に生活保護受給が必要となる長期入院者においても、外部からのサポートがあれば十分に単身生活を送れる人たちが存在しているにもかかわらず、新たな住居を探すときに、現状の基準においてもなお大変な苦労を強いられることを我々精神保健福祉士は熟知している。よって、住宅扶助基準の引き下げは地域生活の選択肢を大きく狭めることとなる。
 また、地域にて暮らしを営むおよそ5割の保護受給者が、住宅扶助の特別基準額に近い家賃の住宅で生活しており、基準額が下がることで、福祉事務所から転居指導を受けることとなり、いま以上に劣悪な環境での生活を強いられることとなる。このことは既に地域で暮らす生活保護受給中の精神障害者の地域定着にとっても由々しき事態となる。

 以上により、精神障害者の地域生活を推進する立場から、本協会は生活保護住宅扶助基準の引き下げに断固反対する。

 
 国土交通省が所管する住生活基本法に基づく住生活基本計画において、最低居住面積水準は、「世帯人数に応じて、健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準である。」とされ、その面積は住宅性能水準の基本的機能を満たすことを前提に、単身者において25㎡とされている。
 また、ここでいう設備条件とは、専用の台所、水洗トイレ、浴室、洗面所のいずれもあることである。
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標題 社会福祉法人の法人税非課税等の税制を堅持してください
日付 2014年10月24日
 
 全国の19,000余の社会福祉法人、並びに関係福祉組織は、今後、急増する福祉ニーズに対応し、地域のセーフティネットとして社会福祉法人が持てる力を最大限発揮していくために、現行の社会福祉法人の法人税非課税等の税制を堅持するよう、強く要望いたします。

1.社会福祉法人の法人税非課税は、堅持してください
 社会福祉法人は、その公共性・非営利性のもとに税制優遇の対象となっており、また、人口減少・超高齢化に伴い、社会福祉法人が地域において果たすべき役割はますます重要になっている。したがって、その取扱いは堅持すべきであり、介護を例とした実施事業の同一性のみに着眼した課税の議論は、逆に公平性を欠くこととなる。

(社会福祉法人の公共性)
・社会福祉法人は高い公共性が求められており、認可制による設立、所轄庁からの監督、評議員会の設置などの規制の下にある。
(社会福祉法人の非営利性)
・社会福祉法人は、設立寄附者の持ち分なし、収支差額の配分及び他事業への活用禁止、解散時の残余財産は国庫に帰属するなどの規制があり、その非営利性のもとに公に属する法人である。そのような性格から税制の優遇が成されているものである。
・社会福祉法人は低所得者、重度介護者や生活困窮者など重い課題のある利用者の受入れ・支援・権利擁護をはかり、また過疎地等での継続的・安定的な福祉サービスの提供等を行っている。

  2.軽減税率、みなし寄附金制度は、堅持してください
 公益目的としての財源供給を細くする軽減税率の見直し、みなし寄附金制度の見直しは、社会福祉事業や公益的な諸活動の取組拡大を阻害するものであり、現行制度は堅持すべきである。
(社会福祉事業、公益事業の収支均衡)
・とくに、社会福祉法人は、生活困窮、貧困、不安定就労、社会的孤立・引きこもり、虐待、精神疾患等による困窮等の制度の狭間にある喫緊の生活問題に、今後一層、果敢に取り組んでいく決意であり、そうした主体的、公益的な諸活動の財源を絶つような見直しは行うべきでない。
・また、社会福祉事業の継続的な事業運営、福祉ニーズの量的質的拡大に応えるための財源は収益事業に求めざるを得ず、今後、福祉サービスの拡大が必要不可欠とされる状況下、むしろ財源供給を確保するこうした取扱いは広げるべきである。


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標題 福祉人材としての精神保健福祉士の確保対策の検討について(お願い)
日付 2014年10月3日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局長 鈴木俊彦 様

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 日頃より、本協会事業に格別のご理解とご支援を賜わり、厚くお礼申しあげます。

 さて、本年6月に貴省に設置された「福祉人材確保対策検討会」は、「介護人材を含む福祉人材の確保対策の在り方について、多様な人材の参入促進、資質の向上及び環境の改善等の観点から、多角的に検討を行うもの」との趣旨で開催されているところであります。

 この間は「介護人材」に係る議題にて開催されておりましたが、第6回におきましては、社会福祉士や障害福祉分野の人材確保が議題として挙げられております。

 つきましては、当該検討会での議論に際しまして、社会福祉分野の国家資格者である精神保健福祉士を正会員とする公益法人の立場から、下記の通り要望いたしますので、ご検討くださいますよう、よろしくお願い申しあげます。

 

  1.福祉人材の確保対策の検討において、社会福祉分野の国家資格者である精神保健福祉士も対象としていただきたいこと。

2.障害福祉分野の人材確保において、精神障害者への支援には精神保健福祉士の確保が必要であること。
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標題 子どもの貧困対策を総合的に推進するための要望
日付 2014年9月24日
発信者 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉克英
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 1.文部科学大臣 下村博文 様
2.内閣府特命担当大臣 有村治子 様

○要望趣旨

 「子どもの貧困対策に関する大綱」が閣議決定され、いわゆる貧困の連鎖により子どもたちの未来が閉ざされることのないよう、子どもたちの成育環境を整備するとともに、教育を受ける機会均等を図るなど、子どもの貧困対策を総合的に推進するためには、現在の子どもの支援体制では不十分です。現行の支援体制の早急な改善を要望いたします。

  ○要望事項

1.子どもの支援体制整備について
 子どもの貧困対策は学校で行うことが効果的かつ効率的であることから、スクールソーシャルワーカーの常勤配置や窓口機能を学校に整備するなど、子どもの支援体制の整備を推進してください。


2.スクールソーシャルワーカーとなる人材について
 スクールソーシャルワーカーは福祉の専門的知識と相談援助技術を有することが必要なことから、国家資格である社会福祉士及び精神保健福祉士を原則とすることを明記してください。
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標題 ガザ地区における人権侵害について(声明)
日付 2014年8月14日
発信者 社会福祉専門職団体協議会(特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会、公益社団法人日本社会福祉士会、公益社団法人日本医療社会福祉士会、公益社団法人日本精神保健福祉士協会)

 日本国調整団体を通じて国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)に加盟する私たち日本のソーシャルワーカーは、ソーシャルワークの価値と倫理、および日本が過去数十年にわたって標榜してきた平和主義の理念に基づき、以下を声明します。

 ガザ地区の最近の戦況の中で、子どもや女性を含む一般の人々の生命が非常に多く失われていることに対して、強い憤りを感じる。このような行為は、どのような立場からも決して許されるものではない。私たちは、紛争当事者のいずれの側に立つものでもないが、ソーシャルワーカーとして心底から平和を希求し、自らの利益のみを求める戦闘は即時終結すべきであることを宣言する。

以上

  国際ソーシャルワーカー連盟ウェブサイト掲載
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標題 第50回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第13回日本精神保健福祉士学会学術集会アピール
日付 2014年6月21日
発信者 第50回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第13回日本精神保健福祉士学会学術集会 参加者一同

 私たちは、これまでの精神保健福祉士の足跡を検証しつつ、これからの10年の指標(メルクマール)を模索するため、記念すべき第50回全国大会・第13回学術集会に集いました。

 振り返れば、私たちは1982年6月26日の第18回総会において「日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会宣言」(所謂「札幌宣言」)を採択し、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的社会的活動を推進することを協会の基本方針に据えました。札幌宣言は、Y問題を巡る大きな混乱期から、協会が正常な組織体に回復したことを内外に示すものでもありました。

 その後協会は、倫理綱領や業務指針を定め、精神障害者福祉のあり方を追求する中で、悲願であった精神保健福祉士の国家資格を実現しました。21世紀に入ると、社団法人格を取得し、社会的にも責任ある専門職能団体として認知され、資質の向上のための生涯研修制度も整備し、現在の公益社団法人に至ります。

 この間、我が国は高度成長期の終焉、バブル経済の崩壊、低成長時代の長期化、少子高齢社会の到来を経験し、社会保障の持続可能性さえ危ぶまれる時代を迎えています。時代を反映しメンタルヘルスの課題を抱える人々が増え、今や精神疾患の生涯有病率は4人に1人というほどの国民的疾患となりました。それとともに精神保健福祉士が働く領域は、精神医療や障害福祉領域に止まらず、多様な広がりを見せています。

 精神保健医療福祉施策は、10年前に「入院医療中心」から「地域生活中心」へと転換が図られながらもその歩みは遅く、ようやく今、精神医療の改革と長期入院精神障害者の地域移行が政策課題の中心となりました。長期入院者本人の意向を受け止めた地域移行支援と、退院してよかったとご本人が思える暮らしの実現に向けて、私たち一人ひとりが生活者としての視点を持った専門的活動を進めなければなりません。

 40年以上前に、精神障害者の「ごく当たり前の生活」の獲得を目指す取り組みが始動したこの地、埼玉県さいたま市に参集した私たちは、誰も排除しない社会の実現を目標として、これからの10年、あらためてクライエントの立場に立ち、精神障害者をはじめ権利を奪われている人々の社会的復権のために、それぞれの専門的実践を深化させ、社会的活動を展開していくことを、希望をもってアピールいたします。

以上

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標題 認知症列車事故訴訟に対する見解
日付 2014年6月11日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠

 2007年12月7日、愛知県大府市で要介護4と認定された91歳の認知症の男性が列車にはねられ死亡した事故で、JR東海側が遺族に遅延損害の賠償を求めた2013年8月の1審判決及び2014年4月の2審判決について、本協会は、認知症の人や家族を支援する専門職団体の立場から、名古屋高裁の判決を不当として、以下のとおり見解を表明する。

 精神保健福祉士は、認知症の人自身が望む暮らしの実現に向けて、自己決定を保障し自分らしく生きる権利を擁護し、地域の中で支え合いながら暮らすための地域生活支援に取り組んできた。その実践において、適切なかかわりや支援があれば、認知症が進行しても混乱することなく地域で過ごせるといった事例は数多くある。介護サービスを利用しても24時間目を離さずケアを行うことには困難が伴うことは言うまでもない。だからと言って認知症の人の自由を奪うような拘束や施錠などは認知症の悪化はもとより、自宅や地域での生活の難しさを生み、過去に精神障害者が置かれていた歴史を繰り返すことにもつながりかねない。
 認知症の行方不明者数は約1万300人(2013年暫定値/警察庁調べ)となっており、今回の判決を契機に大きな社会問題として取り上げられている。監督義務や監督責任を問う判決内容は自宅での介護に限らず、グループホームや施設での生活支援のあり方にも大きく影響するものである。
 認知症の人々が住み慣れた地域で安心して暮らすことができるよう、様々な認知症施策がすすめられている中で今回の判決内容は、国の方向性に逆行し、認知症の正しい理解を妨げ、家族や介護者の意欲を減退させると言わざるを得ない。
 完全に事故を防ぐことは困難であるが、家族に監督義務を課すのではなく、考えるべきは、認知症の人に対する支援のあり方や公的な賠償制度の検討であろう。認知症の人の思いを汲み取りながら継続性のある生活支援に向けて、認知症の人、家族、地域住民、専門職がともに安心して暮らし続けることができる街づくりを考え、生活者としての認知症の人の権利を守り、認知症の人も周囲の人々も安心して生活できる社会をめざしていくことが重要である。
 本協会もそのために関係団体と協働し、今後の認知症ケアの充実や地域づくりに力を尽くしていくことを表明する。

以上

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標題 自主的避難等に係る損害賠償に関する要望書
日付 2014年4月17日
発翰
番号
JAPSW発第14-19号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
提出先 東京電力株式会社 福島原子力補償相談室 御中

 御社におかれましては、福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所の事故により避難生活等を余儀なくされている住民の方々への賠償に尽力されていることと存じます。
 2011年12月6日に原子力損害賠償紛争審査会(以下、「ADR」という)が示した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)」では、新たに自主避難等対象区域が設けられ、当該区域内に住居があった者も賠償の対象となり、事故発生から2011年12月末までの損害として、「対象者のうち子供及び妊婦については一人40万円」とされましたが、「要介護者」を含む「その他の自主的避難等対象者」については、一律に一人8万円が賠償されることとなりました。
 一方、2014年1月17日には、御社から要介護者等の精神的損害に対する増額賠償についてプレスリリースがなされたところです。これは、2012年2月14日にADRが示した統括基準(精神的損害の増額事由等について)の内容を踏まえたものと拝察いたします。
しかるに、要介護状態にあることおよび身体または精神の障害があることは、子供および妊婦と同様に、自主的避難生活への適応が困難な客観的事情と認められる事情に該当し、通常の避難者と比べてその精神的苦痛が大きいと認定できる者であることは明白です。
 よって、社会福祉分野において、主に精神障害者の生活課題の解決に向けた支援を行う専門職能団体として、以下の点について要望いたします。


自主避難等対象区域の要介護者等に対しても、事故発生から2011年12月末までの損害として、児童・妊産婦と同様の賠償を行ってください。

以上

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標題 避難生活等による精神的損害に係る賠償に関する要望書
日付 2014年4月9日
発翰
番号
JAPSW発第14-13号、日社福士2014-14
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉 克英
 
提出先 東京電力株式会社 福島原子力補償相談室 御中


 御社におかれましては、福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所の事故により避難生活等を余儀なくされている住民の方々への賠償に尽力されていることと存じます。
 2014年1月17日(金)には、御社から要介護者等の精神的損害に対する賠償の内容についてプレスリリースがなされたところですが、当該賠償金の支払い対象者については、要介護状態にある方や障害者手帳を所持している方のほか、同等の事情を持っていることを証明書類等により確認できる方の場合は、個別に対応することが示されています。
 しかしながら、対象となる方々には証明書類についての具体的な例示がないことで、ご自身や介護にあたられている方が賠償の対象となっていることを認識できないまま、請求に至らない場合が生じることを懸念いたします。
 そのため、社会福祉分野において、子ども、障害者、患者、高齢者などが抱える多岐にわたる生活課題の解決に向けた支援を行うソーシャルワーカーの国家資格者団体として、以下の点について要望いたします。


 要介護者等の精神的損害に対する賠償の対象である要介護状態等と同等の事情のある方については、障害年金や特別児童扶養手当等の受給者など漏れがないように該当者を明示のうえ、御社ウェブサイト等への掲載や自治体の相談機関等に情報提供するなど周知してください。

以上

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