要望書・見解等

2010年度


標  題 東北地方太平洋沖地震に係る障害者等への支援について(申し入れ)
日  付 2011年3月18日
発翰番号 JAPSW 発第10-3090号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中 秀彦
提 出 先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 木倉敬之

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 この度の東北地方太平洋沖地震に関連して、被災地の障害のある方々等への支援に関する諸対策に不眠不休でご尽力をいただいておりますことに、衷心より敬意を表します。
 本協会といたしましても、精神障害者の社会復帰と地域生活支援を担う専門職として、被災された方々への専門的支援に最大限の協力をさせていただきたいと考えております。
 つきましては、下記のような支援につき全国の精神保健福祉士の派遣調整が可能ですので、私どもの専門的知識や技術をご活用くださいますようお願い申しあげます。
 なお、本協会では2010年3月に「社団法人日本精神保健福祉士協会災害支援ガイドライン」を作成し、同ガイドラインに基づく災害支援体制の整備に努めるとともに、精神保健福祉士を対象とした災害支援に関する研修会を開催しているところです。

1.医療機能等が麻痺している精神科病院等の入院患者の転院に対する同行支援。

2.被災地において自治体の障害保健福祉部署、精神科医療機関、障害福祉サービス事業所等に従事している精神保健福祉士等の支援者に対する支援(交代要員の派遣)。

3.避難所等におけるメンタルヘルスケアチームへの参加。

4.避難所や仮設住宅で生活する精神障害者等の生活支援及び環境調整。

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標  題 児童養護施設等の配置基準に関する要望書
日  付 2011年2月25日
発 信 者 社団法人日本社会福祉士会 会長 山村  睦
社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中 秀彦
社団法人日本医療社会事業協会 会長 笹岡 眞弓
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 鈴木 五郎
社団法人日本社会福祉士養成校協会 会長 白澤 政和
社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 谷中 輝雄
社団法人日本社会福祉教育学校連盟 会長 高橋 重宏
提 出 先 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 家庭福祉課長 高橋 俊之

 今般、新たに設置された「児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会」(以下、「検討委員会」)(厚生労働省サイトへリンク)において、児童養護施設等のあり方についてご審議いただいていますことに感謝申し上げます。この件に関して、現場から見た子どもの生活支援の視点から、ぜひ実現したい事項として、下記の事項を要望いたします。

1.児童養護施設等の最低基準の見直しを確実に推進すること

 児童養護施設等は子どもが生活する場です。施設であってもより家庭的な環境をつくることが必要なことは言うまでもありません。そこで、第2回検討委員会で示された当面の見直し案の最低基準の改正を速やかに施行するとともに、児童養護施設等の現場の声を重視して本来必要な最低基準に向けた予算化の早期実現を要望します。

2.児童養護施設等の職員として社会福祉士及び精神保健福祉士を必置とすること

(1)児童指導員の資格要件に社会福祉士及び精神保健福祉士を位置づけること
 入所している子どもの多くは、虐待を受けていたり心身に障害を持っています(児童養護施設に入所している子どもの被虐待体験は50%以上、障害等のある児童は23%)。そのため職員にはケアワークだけではなく、子どもの自立を支援するために子どものアセスメントや生活環境の調整などを行うソーシャルワークが必要です。そこで資格要件の一つに社会福祉士及び精神保健福祉士を加えることを要望します。

(2)家庭支援専門相談員の資格要件に社会福祉士及び精神保健福祉士を位置づけること
 第2回検討委員会の見直し案で示された家庭支援専門相談員を最低基準で義務設置化において要件を明確にすることを要望します。家庭支援専門相談員の役割は早期の家庭復帰や里親委託の支援を専門に担当する職員と位置づけられていることから、その機能を十分に発揮するためには家族のアセスメントや地域連携といったソーシャルワークが必要です。そこで、資格要件を「社会福祉士や精神保健福祉士などのソーシャルワーカー」とすることを要望します。

以上

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標  題 障害者基本法の改正に係る緊急のお願い
日  付 2011年2月18日
発翰番号 JAPSW 発第10-290号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 民主党政策調査会障がい者政策プロジェクトチーム関係議員(衆・参)

 日頃より、障害保健医療福祉施策の発展充実に対するご尽力に心から敬意を表します。

 さて、本年2月14日の障がい者社制度改革推進会議において、事務局から提示された障害者基本法改正案の概要には、同会議による「障害者制度改革の推進のための第二次意見書」(2010年12月22日)に盛り込まれていた精神障害者に係る項目がまったく反映されておりません。

 本協会は、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進めることを基本方針として、各種事業に取り組んでいる立場から、第二次意見書の趣旨に全面的な賛意を示すものです。

 よって、下記の点について要望いたします。


1.障害者基本法の改正案に、精神障害者の地域移行の促進と医療における適正手続きの確保に関する項目を盛り込んでください。



[参考]障害者制度改革の推進のための第二次意見書(抜粋、2010年12月22日、障がい者制度改革推進会議)

T 障害者基本法の改正について

3 基本的施策関係 

6)精神障害者に係る地域移行の促進と医療における適正手続きの確保

 (基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○精神障害者の社会的入院を解消し、強制的措置を可能な限り無くすため、精神病床数の削減その他地域移行に関する措置を計画的に推進し、家族に特別に加重された責任を負わせることなく、地域社会において必要な支援を受けながら自立した生活を送れるよう通院及び在宅医療のための体制整備を含め必要な施策を講じること。
○障害者に対する非自発的な入院その他の本人の意思に基づかない隔離拘束を伴う例外的な医療の提供に際しては、基本的人権の尊重の観点に基づき、当該医療を受ける障害者に対して、障害のない人との平等を基礎とした実効性のある適正手続を保障する制度を整備すること。
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標  題 今後の障害者の相談支援のあり方に関する見解
日  付 2011年2月10日
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会

はじめに

 現在、障がい者制度改革推進会議の下に総合福祉部会が置かれ、政府の障害者自立支援法の廃止方針に基づき、新たな障害者総合福祉法(仮称)の制定のための骨格提言に向けた精力的な議論が展開されている。
 我が国の障害者福祉制度については、1990年代後半から社会福祉基礎構造改革の方向性に連動して障害者ケアマネジメントの導入が検討され、身体・知的・精神の各障害別ケアガイドラインが策定された。その後、2000年の社会福祉法改正を経て、2002年にはそれまでの障害別のケアガイドラインを活用しつつも、障害種別に関わりなく、総合的で調整のとれたサービスを一体的に提供するためとして、厚生労働省は障害者ケアガイドラインを策定した。この障害者ケアガイドラインに基づき、各地で開催する障害者ケアマネジメント従事者研修会、障害者ケアマネジメントの浸透が図られた。
 一方、2003年には身体障害児・者および知的障害児・者を対象とした支援費制度がスタートした。支援費制度は、障害者が必要なニーズを具体的に示し、そのニーズの妥当性を市町村が認定することを基本とした点で画期的な制度であったが、財源確保や精神障害者が制度の対象外となっていたことなどの問題から、2006年には3障害を対象とした障害者自立支援法に移行することとなった。障害者ケアマネジメントを展開する根拠に関しては、制度的位置づけや財源が確保されないままの状態が現在まで続いている。
 今般の議員提案による障害者自立支援法改正により、相談支援体制が強化されることは評価に値する。しかしながら、障害程度区分を基本とした障害福祉サービス等の支給決定の仕組みは変わらず、相談支援や支給決定のあり方は総合福祉部会の議論に委ねられている。
 総合福祉部会においては、新法策定にあたり、議論・検討が必要な課題について、課題別作業チームに分かれての検討が進められている。本協会は精神障害者の地域生活支援と権利擁護を担うソーシャルワーカーの職能団体であることから、特に「選択と決定・相談支援プロセス」作業チームの検討に強い関心を向けているところである。
 本協会は、障害者の相談支援は本来ソーシャルワーク機能を基本に置いて、ソーシャルワーカーが担うべきとする立場から、今後の相談支援のあり方に関して総合福祉部会で示されている論点に沿って、以下に見解を示すものである。

1.自己決定支援・相談支援のあり方について

  • 相談支援は、障害者が地域で自らが望む生活を送ることを実現するために、「相談」を通じて障害者本人のニーズを確認し、自立生活の実現に必要な支援サービスを組み立てるために機能しなければならない。なおかつ、本人の意思を最大限尊重し、必要な場合は相談支援を担当する者が代弁するといった権利擁護の機能を併せ持つ必要がある。
  • 相談支援は障害者本人のニーズ中心のケアマネジメントを基本とした制度上の位置づけが必要である。
  • 相談支援は、本人の自己決定の尊重、あるいは自己決定支援を一義として展開することが大原則であり、当然ながら相談支援を担当する者には一定の質が担保されなければならない。その質の担保のためには、相談支援を担う専門職は、我が国におけるソーシャルワーカーの国家資格である精神保健福祉士および社会福祉士を基本とする必要がある。
  • 特に、精神保健福祉士は今般の資格制度改正により、2012年度から自立支援給付の対象となる地域相談支援事業(地域移行支援、地域定着支援)の利用に関する相談に応じることが精神保健福祉士の定義に位置づけられた。精神障害者の地域生活支援を担う役割が明確にされたことからも、相談支援を通じて精神障害者の地域移行及び地域定着を着実なものとしていかなければならない。
  • また、精神保健福祉士は、精神障害者の支援に限らず、精神保健上の課題を持つ身体障害者や精神科を受診している知的障害者、発達障害者、高次脳機能障害者等の相談支援においても積極的にその役割を果たす必要がある。
  • なお、相談支援専門職は単に国家資格を有するだけでなく、相談支援の実務経験を有し、必要な研修を履修した者をもって充てることが必要であるとともに、現行の現任研修の目的に則り質の担保に資するため、履修期間等の見直しを図るべきである。
2.障害程度区分の機能と問題点
  • 現行では、障害程度区分認定調査を基礎とした支給決定の仕組みに関して、特に知的障害者および精神障害者の障害程度が反映されにくいことから、障害者自立支援法の施行前から多くの批判があった。
  • 認定調査項目は、介護保険の要介護認定調査項目に手段的日常生活動作(IADL)に係る項目および行動障害に関する項目、精神面等に関する項目が加えられているものの、これらの調査項目や調査員による特記事項および医師の意見書を勘案しても、障害者本人の真のニーズを反映した支援量および支援内容の支給決定にはつながっていないのが現状である。
  • 精神疾患がある場合は、医師の意見書に精神症状・能力障害二軸評価と生活障害評価が加えられており、障害程度区分判定の勘案要素とされているが、これらの評価は医療モデルによる評価に限定されてしまい、環境との相互作用による障害の現出といった社会モデルによる評価が反映されにくいものとなっている。

3.「選択と決定」(支給決定)プロセスとツールについて

  • 何らかの機能障害を特定するために医師の意見書は必要と考えるが、障害程度区分に基づく支給決定という現行のプロセスは廃止すべきである。新たにニーズ中心のケマネジメントのプロセスを取り入れ、相談支援専門職が障害者本人との「相談」の中から望む暮らしの実現のためのニーズをアセスメントし、本人の希望を最大限取り入れた支援計画案(サービス利用計画案)を作成し、自治体担当者との協議・調整により支給決定を行うプロセスに転換する必要がある。
  • 相談支援専門職はあくまでも障害者本人の立場に立つことを基本として、自治体やサービス提供事業所とは独立して相談支援活動を行えるようにしなければならない。
  • 支給決定のプロセスには、当然ながら支給決定期間を設定し、モニタリングによる再アセスメントと支援計画の見直しを位置付け、障害者のライフサイクルに応じた継続的な相談支援体制を確保する必要がある。
  • 地域における相談支援は日常生活圏域における地域相談支援センター(仮称)を基礎的相談支援機関として設置することが望ましい。併せて広域をカバーし単一の支援センターでは対応が不十分な障害者の具体的な相談支援を担当するとともに、スーパービジョン機能、総合的・包括的相談支援機能さらには各市町村間の相談支援の格差を是正する機能もつ中核的相談支援センター(仮称)を置く必要がある。
  • 支給決定のためのツールとしては、自治体による先行事例を参考としたパイロットスタディを実施して、事例収集・分析を行い、早急に「支給決定基準ガイドライン」(仮称)を開発すべきである。
4.その他
  • 現行では、相談支援事業の設置及び運営に係る費用の財源は地方交付税であり、自治体の一般財源から裁量的に充てられており、このことが相談支援体制の地域格差を生む要因となっている。このため、上記の中核的相談支援センター(仮称)の設置と併せて、相談支援に係る財源を確保し、市町村の責任性と格差の是正に向けた相談支援体制の整備を進めていく必要がある。
  • 新たな制度においては、個別給付化される相談支援の費用以外に、相談支援センターの基礎的運営に係る費用の財源は補助金として、国の負担を明確に示す必要がある。
  • 相談支援センターの補助額決定に当たっては、ソーシャルワーカーの配置に係る費用について、その算出根拠を国家公務員福祉職俸給表とすべきである。

以上

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標  題 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に関する見解
日  付 2011年1月16日
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会

はじめに
 2005年7月に心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下、「医療観察法」という)が施行され5年が経過した。医療観察法の附則には第4条として「政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律の規定の施行の状況について国会に報告するとともに、その状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その検討の結果に基づいて法制の整備その他の所要の措置を講ずるものとする。」と規定されている。この規定に基づき、先般2010年11月26日に国会報告が閣議決定された。その内容は現状の課題を明らかにするものは何も含まれておらず、極めて不十分なものである。現在、障害者権利条約の批准に向けた国内法の整備が検討されている中、医療観察法についても権利条約に照らした整合性の観点から法制度の見直しが検討されなければならない。

本協会のスタンス
 本協会は、医療観察法の制定及び施行までの過程において、折に触れ見解を表明するとともに関係各省に要望書を提出してきた(※)。また、法施行後、多くの精神保健福祉士が医療観察法に関与することとなった。直接的には、社会復帰調整官、精神保健参与員、指定入院医療機関や指定通院医療機関の精神保健福祉士、自治体の精神保健福祉士、そして法対象者の地域ケアを担う障害福祉サービス事業所等の精神保健福祉士としてのかかわりであり、間接的には厚生労働科学研究や人材養成研修の企画検討等への参画や本協会としての医療観察法地域処遇体制整備に係る調査研究事業の取組みなどである。
 2008・2009年度に取り組んだ各調査研究事業においては、以下のような課題抽出や提言を行った。


2008年度障害者保健福祉推進事業「心神喪失者等医療観察法制度における地域処遇のための関係機関連携に係る試行的実践事業 報告書」より
<調査研究において陪席可能なケア会議・CPA会議の参加と関係者へのヒアリングから確認された地域処遇の課題>(※CPA会議:指定入院医療機関における入院対象者のケア会議)
 1)地域処遇への移行に関する医療機関の地域偏在が及ぼす課題
 2)支援連携を可能とする豊かな社会資源の不足
 3)全額公費負担の通院医療費と自己負担となる通院交通費のもたらす課題
 4)地域連携を可能とする人的・経済的保障の不足
 5)地域処遇の終了後のケア継続に関する課題
<医療観察制度における地域処遇推進のための関係機関連携のあり方>
 1)精神保健医療福祉関係者への医療観察法制度の普及啓発
 2)重層的な支援体制の構築を
 3)ハード・ソフト両面の資源整備を
 4)地域処遇から地域精神保健福祉支援体制までの継続したケアマネージャーを

2009年度障害保健福祉推進事業「心神喪失者等医療観察法制度における地域処遇体制基盤構築に関する調査研究事業 報告書」より
<円滑な地域処遇の推進のために(提言)>項目のみ
 1)居住資源の整備課題への対応
 2)強制を伴う通院処遇における通院交通費の負担への対策
 3)生活保護制度の運用に関する対策
 4)継続的かつ医療的緊急対応可能な医療提供体制の整備に関するモデル圏域の設定
 5)司法領域・精神保健福祉領域のマンパワーの整備
 6)移行型バトンタッチではなく、ダブル・マネージャー・システムのような重なりあいや協働へ
 7)医療観察法の処遇のフローに相談支援事業所(市町村)の位置づけを明記する

 強制力をもつ処遇も含んでいる医療観察法にかかわることは、ソーシャルワークを本分とする我々にとって、今も多くのジレンマを伴うものであるが、我々のかかわりはあくまでも現行の法制度の運用において出会う対象者の生活支援の観点に立つものであり、法施行後の要望等や提言などは、その立場で行ってきたものである。

2002年7月には、第38回総会において法律案が社会防衛を目的とし「再犯の恐れ」を基準とした無期限の予防拘禁を可能とするものであることから、当時の政府案に反対の立場を表明している。その後法成立に際しては、制度に関与しながら、諸課題の改善・解決への取組みを求めていくことを表明してきた。文末にこれまでの見解及び要望等を時系列で示す。

法施行5年経過を迎え
 今回、法施行後5年を迎え、これまでの関与を踏まえて、本協会として現時点における医療観察法に関する評価を提示し、課題解決に向けた具体的な提言を行うことを企図したが、先ずは、改めて法そのものに関する全体的視点からの見解を以下に示すこととした。
 なお、医療観察法が現状として施行されている間は、当然ながら法制度に関与しつつ、法制度における矛盾や課題の把握やそれらの改善に向けた行動も、個々の対象者支援に関する実践や支援において行っていくという姿勢は貫徹するものである。

1)法制定の背景要因の変化に関する検証の必要性
 精神科病院がいわゆる触法精神障害者を措置入院として受け入れていることが病院の開放化の隘路となり、特別な制度のもとでの手厚い医療の提供が必要であるという説明が法制定前にあったことに対し、法施行後5年の現段階において、精神科医療がどのように変わったか細部にわたる検証は欠かせない。

2)精神医療や精神保健福祉全般の水準向上は為されたのか
 医療観察法の附則には、政府による「精神医療等の水準の向上」と「精神保健福祉全般の水準の向上」が謳われている。医療観察法の整備と精神保健医療福祉の向上を車の両輪と位置付けたものであるが、この間の取り組み実績は果たして車の両輪たり得たのであろうか。
 法の対象者の状況をみると、医療観察法の対象となる以前に一般精神医療を利用していた者が半数近くに及んでいる。このことは、現状の精神医療や精神保健福祉全般の水準が精神障害者の生活を十分に支えるまでに至っておらず、再発や悪化を防ぎきらず、結果として対象者にとっても対象行為の被害者にとっても不幸な結果を招くこととなっていることを如実に示すものである。
 2010年の診療報酬改定により、救急・急性期・身体合併症医療の重点的評価は行われたものの、依然として医療法上の精神病床の人員配置基準は変わらず、低い基準に抑えられている。また、精神障害者の障害福祉サービスや地域生活支援事業の利用は増えているが、病院からの地域移行を含めた地域における精神障害者の生活支援体制は量的にも質的にも心もとない状況であることに変わりない。

3)既に破たんを呈した手厚い医療提供体制
 一方、手厚い医療を謳っていた指定入院医療機関のたび重なる基準や規格の変更により、小規模病棟ではコメディカル職種の配置が少なくてもよく、なおかつ一般病棟の一部に医療観察病床を置くことができるとしたこと、指定病床以外の病床を「特定病床」として法対象者の受け入れを可能としたことは、精神保健福祉法上の入院医療と医療観察法による入院医療を切り離して「手厚さ」を提供するとした当初の制度設計がもはや破綻していることを意味している。

4)改めて、障害者権利条約に照らした精神保健医療福祉全体の抜本的変革の推進と実現を
 いま急ぐべきは、車の両輪の一方の車輪として位置付けられた精神保健医療福祉の貧困状況を改善し、大胆な改革へのスピードを上げていくことである。
 現在、障がい者制度改革推進会議において、障害者権利条約との整合性に照らした国内関連法の整備・制度改革が議論されている。そのなかで、医療分野における論点の一つとして、精神科医療における強制入院制度の見直しが掲げられており、医療観察法における入院も含めた検討が行われることになっている。このような動向も踏まえて、国はいま一度医療観察法のあり方を検証し、大胆な見直しを検討すべきである。

5)検証のための丁寧な実態報告を
 医療観察法を現時点で評価・検証するには、制度総体としてあまりにもその実態が明らかにされていない点が多い。我々の個別実践の積み重ねはあるものの、対象者の処遇を含めた全国の運用実態を明らかにすることなしには具体的な課題も抽出できない。見直しのあり方を検討するためには実態を明らかにすることが先ず必要である。

おわりに
 本協会としては、見直した結果としての方向性が廃止なのか改正なのかという結論ありきではなく、今後批准しようとしている障害者権利条約に照らした法制度の見直しを図ることと、その検証及び検討のために運用の諸実態を明らかにすることを求めるものである。

以上

参考:本協会のこれまでの見解や要望等
※2001.9.17「重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇等に関する見解」「補足説明」
※2001.12.13「精神障害者の医療及び福祉の充実強化と触法心神喪失者等の諸具の改革に関する要望書」
※2002.7.13「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」に関する見解(日本精神保健福祉士協会第38回総会)
※2003.8.13「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」成立にあたっての見解 
※2004.11.26「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」に関する現段階での見解
※2006.1.24「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の運用に関する要望について 
※2008.9.5「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」における社会復帰調整官の増員について(お願い) 
※2009.2.19<パブリックコメントへの意見提出>心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に基づく指定医療機関等に関する省令の一部を改正する省令(案)及び心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に基づく指定医療機関等に関する省令附則第二条第三項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準の一部を改正する告示(案)に関する意見募集(案件番号495080398)について 

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標  題 障害者自立支援法をはじめとした障害者施策の関係法律に係る見直しについて(お願い)
日  付 2010年11月11日
発翰番号 JAPSW 発第10-212号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 自由民主党政務調査会障害者特別委員長 衛藤晟一

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 平素より、わが国の障害者支援に関する諸制度施策の発展充実にご尽力をいただいておりますことに、衷心より敬意を表します。
 本協会は、精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格である精神保健福祉士の職能団体であり、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進めることを基本方針としております。

 現在「障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会」において、障害者に係る総合的な福祉法制の制定に向けた検討が進められ、20133年8月までに障害者総合福祉法(仮称)の施行が予定されていることころです。

 しかしながら、新法制定までの間にも見直すべき課題は明確であり、障害者の地域生活を基礎とした施策に一歩でも近づける方策が求められます。

 つきましては、あらためて障害者自立支援法をはじめとした障害者施策の関係法律について、下記の見直しを図っていただきたく、お願いいたします。


1.福祉施策の対象となる障害者の範囲について、発達障害のある人および高次脳機能障害のある人まで広げてください。

2.地域社会における相談支援体制の充実強化を図ることは、喫緊の課題です。このため、地域相談支援(地域移行支援、地域定着支援)等の個別給付化、サービス利用計画作成費の対象見直し、基幹相談支援センターの設置、自立支援協議会の法定化等、所要の措置を取ってください。

3.精神保健福祉士法については、精神障害者の地域生活の支援を担うという役割の明確化、資格取得後の資質向上の責務の明確化を図り、精神障害者のみならず多様化・複雑化した国民の精神保健上の課題を解決していくことを盛り込んだ一部改正案も同時廃案となり、店晒しの状態となっています。精神障害者の自立支援に欠くことのできない専門職の資質向上のためにも法改正が必要です。

 なお、現政権下において地域主権改革に係る検討が進められている中、障害者施策が、ひも付き補助金の一括交付金化や義務付け・枠付けの見直しの対象として想定されていることについても、強い懸念を表明いたします。

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標  題 精神保健福祉士の養成課程における新カリキュラム施行に伴う精神保健福祉士実習指導者講習会の周知広報並びに受講勧奨等について(お願い)
日  付 2010年11月5日
発翰番号 JAPSW 発第10-210号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 谷中輝雄
提 出 先 社団法人日本社会福祉士会 会長 山村睦、社団法人日本医療社会事業協会 会長 笹岡 眞弓、特定非営利活動法人 日本ソーシャルワーカー協会 会長 鈴木五郎

 平素より本協会の活動に多大なご理解とご協力を賜り厚くお礼申しあげます。
 さて、国家資格創設から10年余を経て、精神保健福祉士を取り巻く環境の変化を背景に、平成19年12月、厚生労働省に設置された「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」において、平成22年3月29日に「精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて」がとりまとめられ、既に発令前のパブリック・コメント募集期間も終え、改正法令・通知の発令を待つのみになっております。

 今般の見直しにおいて、精神障害者に対する相談援助、地域移行支援、地域生活維持の支援や生活の質を高める支援など、求められている役割を果たすことのできる実践力の高い精神保健福祉士の養成が謳われ、特に実習指導の充実強化が図られることとなりました。

 具体的には、精神科医療機関における90時間以上の実習の必須化と医療機関以外の障害福祉サービス事業所等における実習の必要が求められることとなり、2領域で計210時間の実習となりました。さらに、実習指導者の要件として認定実習指導者研修受講が加わりました。

 お陰さまで、両協会が、厚生労働省の「精神保健福祉士養成担当職員研修事業実施要綱」に基づく補助金により、当該事業の実施することとなりました。初年度となる今年度、精神保健福祉士実習指導者講習会につきましては、年度末にかけて全国12か所で開催することとしており、当該講習会等が円滑に実施できるよう、両協会を挙げて取り組みの準備に努めております。

 つきましては、下記の点へのご理解とご高配をいただけますよう何卒よろしくお願い申しあげます。
1.貴会に加入されている精神保健福祉士の資格を有する3年以上の経験を有する会員にむけて、精神保健福祉士実習指導者講習会の周知広報並びに受講勧奨等をお願いいたします。

<同封資料>
・2010年度精神保健福祉士実習指導者講習会開催日程表
・新カリキュラムにおける実習の充実強化に伴うご高配のお願い
・社団法人日本精神保健福祉士協会リーフレット
・一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会リーフレット

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標  題 精神保健福祉士の養成課程における新カリキュラム施行に伴う実習指導実施協力および認定実習指導者講習受講に関するご高配のお願い
日  付 2010年11月
発翰番号 JAPSW 発第10-209号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦および支部長
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 谷中輝雄
提 出 先 (1)都道府県精神(科)病院協会 会長(一部、支部長宛あり)
(2)都道府県精神神経科診療所協会 会長(協会のない地区あり)
(3)都道府県 精神保健福祉主管部局
(4)都道府県を単位とした精神障害者の地域生活支援事業所等による連絡協議会等の団体

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 平素より、精神保健医療福祉の発展充実にご尽力を賜り、厚くお礼を申しあげます。

さて、この度精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直しが行われ、間もなく関係省令および告示等の改正が行われる予定です。新たなカリキュラムは、2012(平成24)年度から施行され、実践力の高い精神保健福祉士養成が図られることとなります。

 また、今般の改正により、現場実習の教育内容や実習指導者の基準についても以下のような見直しが行われます。
  1. 現場実習は、地域の障害福祉サービス事業を行う施設等と精神科病院等の医療機関の両方で行うこととし、実習時間も180時間から210時間に拡充する。
  2. 精神科病院等の医療機関における実習を必須として、90時間以上行うことを基本とする。
  3. 実習指導者は、精神保健福祉士の資格取得後、3年以上相談援助業務に従事した経験のある者であることに加えて、新たに厚生労働大臣が別に定める基準を満たす講習会の課程を修了した者であることを要件とする(2014年度まで経過措置あり)。
 お陰さまで、今年度は、厚生労働省の「精神保健福祉士養成担当職員研修事業実施要綱」に基づく補助金を得て、社団法人日本精神保健福祉士協会が実習指導者講習会(全国12か所)を、一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会が演習・実習担当教員講習会を、それぞれ実施することとなりました。現在、両協会とも講習会の円滑な実施に向けて準備に努めているところです。

 つきましては、下記の点に是非ともご配慮を賜りたく、何卒よろしくお願い申しあげます。

1.現場実習における実習指導者確保の観点から、各機関や各事業所等に従事する精神保健福祉士につきまして、今年度から開始される実習指導者講習会の受講につき特段のご配慮をお願いいたします。

2.各機関や各事業所等において、精神保健福祉士養成課程における現場実習をお引き受けいただけますよう特段のご配慮をお願いいたします。

<同封資料>
・2010年度精神保健福祉士実習指導者講習会開催日程表
・新カリキュラムにおける実習の充実強化に伴うご高配のお願い
・社団法人日本精神保健福祉士協会リーフレット
・一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会リーフレット
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標  題 スクールソーシャルワーカー活用事業に関する要望
日  付 2010年11月
発 信 者 社団法人日本社会福祉士会 会長 山村睦
社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
社団法人日本社会福祉士養成校協会 会長 白澤政和
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 谷中輝雄
提 出 先 都道府県教育委員会教育長

 貴職におかれましては、日々学校教育にご尽力されていることに敬意を表します。

 特に、学校、地域、家庭環境等をはじめ、子ども達をとりまく社会環境が複雑化、多様化する中で、児童生徒の問題行動等に関しましては、平成21年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果からも明らかなように、小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約6万1千件、いじめの認知件数は約7万3千件、高等学校における不登校の状況は約5万2千件となっており、教育現場における教職員の方々の負担はますます大きくなっていることは想像に難くありません。

 さて、このような状況の中で、文部科学省では児童生徒の問題行動等の背景には、児童生徒が置かれた様々な環境の問題が絡み合っていることから、@関係機関等と連携・調整するコーディネート、A児童生徒が置かれた環境の問題(家庭、友人関係等)に働きかけること等が求められているという観点から、平成20年度より小・中学校にスクールソーシャルワーカーを配置する「スクールソ−シャルワーカー活用事業」を実施しております。

 我が国ではソーシャルワーカーの国家資格として社会福祉士及び精神保健福祉士が位置づけられております。社会福祉士及び精神保健福祉士は、関係機関や関係者等との連携や調整を図りつつ、生活上の課題を抱える個人や家庭をはじめ、地域社会における様々な課題を解決するための専門的な知識と技術を有しており、医療・司法・教育など多様な分野で活躍しております。
 これらのことに鑑みても教育現場において生じている様々な問題の解決を図り、地域社会までも視野に入れて、個々の児童生徒が安全で安心できる教育環境を創出していくためには、スクールソーシャルワーカーとして社会福祉士及び精神保健福祉士を任用し、活用していくことが必要不可欠であるといっても過言ではないと考えております。

 社会福祉士及び精神保健福祉士の国家資格を有するスクールソーシャルワーカーは、児童生徒本人や家族への面接、家庭訪問、地域社会への働きかけ、関係機関や関係者等との連携や調整を図りながら、教育現場における問題解決を行ないます。また、教職員の方々に対しても、ソーシャルワーク(福祉に関する相談援助)の視点から様々な情報提供や相談に応じるなどのサポートに努め、教職員の方々の負担軽減に寄与することができます。

 つきましては、下記の点に関して、地域の実情を踏まえてその実現に向けて是非ともご努力くださいますよう、ご要望を申し上げます。
重点要望
・文部科学省の補助金を活用しながら「スクールソーシャルワーカー活用事業」の推進を図るための予算を講じてください。

・「スクールソーシャルワーカー活用事業」の人材任用においては、国家資格である社会福祉士や精神保健福祉士のソーシャルワーカーを活用してください。

・既に任用されている社会福祉士や精神保健福祉士の専門職としての安定した活動を確保するため、常勤化など勤務環境の改善を図ってください。
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標  題 障がい者総合福祉法(仮称)制定までの間における障害者自立支援法の見直しのあり方について(お願い)
日  付 2010年9月28
発翰番号 JAPSW 発第10-178号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 民主党 政策調査会 障がい者政策プロジェクトチーム

 日頃より、障害保健医療福祉施策の発展充実にご尽力を賜り、厚くお礼申しあげます。
 本協会は、精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格である“精神保健福祉士”を構成員とする専門職団体です。精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進めることを基本方針として、各種事業に取り組んでおります。
 近年は、精神保健福祉領域において、自閉症をはじめとする発達障害のある方々も支援対象として出会うことが少なくありません。確定診断を得ないまま、成人以降にさまざまな生活困難を抱える方々やご家族の相談支援にも携わるようになっております。
 本協会では、上記の立場と現場の実践課題なども踏まえ、日本発達障害ネットワーク(JDDネット)に加盟しております。
 つきましては、標記に関しまして、下記の点についてご高配を賜りたく、何卒よろしくお願い申しあげます。


1.相談支援体制の強化推進を図ってください

 先の国会で廃案となった障害者自立支援法改正案では、「社会保障審議会障害者部会」や「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」での検討結果を踏まえて、地域社会における相談支援体制の充実強化が図られておりました。「誰もが安心して自らが望む地域で暮らす」ことを推進していくことは、喫緊の課題であると認識しています。
 このため、新たな障害者制度を待つまでもなく、地域相談支援(地域移行支援、地域定着支援)等の個別給付化、サービス利用計画作成費の対象見直し、基幹相談支援センターの設置、自立支援協議会の法定化等、所要の措置を取るべきと考えます。

2.精神保健福祉士法の一部改正を実現してください

 精神保健福祉士については、精神障害者等(知的障害や発達障害などのある方々を含む)の地域生活の支援を担うという役割の明確化、資格取得後の資質向上の責務の明確化を図り、精神障害者のみならず多様化・複雑化した国民の精神保健上の課題を解決していくことが盛り込まれた精神保健福祉士法の一部改正案も同時廃案となり、店晒しの状態となっています。精神障害者等の自立支援に欠くことのできない専門職の資質向上のためにも法改正に向けた取り組みが必要です。

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標  題 介護保険制度の見直しに係る要望書
日  付 2010年9月22日
2010年9月29日
発翰番号 JAPSW 発第10-171号
JAPSW 発第10-184号
JAPSW 発第10-224号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 社会保障審議会介護保険部会 部会長 山崎泰彦
厚生労働省 老健局長 宮島俊彦
民主党政策調査会厚生労働部門部会 座長 石毛^子

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 平素より、わが国の高齢者の生活支援に関する諸制度施策の発展充実にご尽力をいただいておりますことに、衷心より敬意を表します。
 社会保障審議会介護保険部会におきましては、介護保険制度の次期改正に向けた検討スケジュールが示され、各論点に関する熱心な審議の途上にあることと存じます。今般の改正に向けた論点には、幾つもの重要な課題がある中、認知症高齢者をめぐる論点も大きな位置付けにあるとの認識を持っております。
 折しも、2009年9月に終了した「今後の精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」においても、精神保健医療体系の再構築に関して、認知症疾患患者の増加傾向にある現状認識から、今後の対応については課題として検討が残っておりました。現在、社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課が所管する「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」において、認知症と精神科医療が検討テーマとなっています。介護保険制度の見直しにおいても、医療と介護の横断的支援を要する体制が課題に挙がっており、今後増加が予測される若年性認知症者の対応など早期受診や早期支援体制の構築、および虐待防止等養護者への支援や虐待への適切な対応などが求められていきます。
 精神保健福祉士は、特に精神科医療機関をはじめとする精神医療保健福祉分野において、高齢精神障害者および近年増加している認知症患者、そして、認知症高齢者を抱える家族の支援にも携わってきており、認知症疾患医療センターにも配置されている専門職です。また、保健所をはじめ、市町村や相談支援事業所などの現場においても、高齢精神障害者や若年を含めた認知症の方および高次脳機能障害の方などの相談を担っています。
 このたびは、このような立場と視点から、次期介護保険制度の改正に向けて、下記の点につきまして、要望をさせていただきます。ぜひ、実現に向けてのご検討ご高配をお願いいたします。


≪要望事項≫
 地域包括支援センターについては、機能強化の観点から配置職種として精神保健福祉士を加えるとともに、新たに基幹型地域包括支援センターを創設する場合は精神保健福祉士を必置としてください。

≪理由≫

1.今後急増する認知症を含む高齢精神障害者等への対応には、精神保健医療福祉との連携支援が不可欠です。

 すでに地域包括支援センターにおいては、困難事例への対応として、認知症高齢者や同居家族で医療・福祉的支援が届いていない精神障害者および知的障害者の存在、同居家族のメンタルヘルス課題など、精神保健医療福祉に関連した課題が可視化されつつあります。
 高齢のうつ病患者の急増も深刻な問題であり、罹患者総数に占める60歳以上の割合は女性43.4%、男性31.4%という状況にあります(2008年患者調査)。また、介護保険サービスの対象となりうる若年の高次脳機能障害や若年性認知症の問題も見過ごせません。
 さらに、国の政策課題の一つとなっている精神障害者の地域移行のうち、高齢精神障害者については、介護保険サービスの活用が欠かせないこととなります。
 以上のように、今後増え続ける高齢精神障害者等が抱える課題への対応には、精神保健医療福祉との連携が不可欠となり、地域包括支援センターにおける総合相談支援や権利擁護等の機能強化が求められます。

2.マンパワーの充実強化には、精神保健福祉士の活用が有効です。

 上記のように、今後地域包括支援センターに求められる精神保健および障害福祉施策との連携による支援や認知症における様々な支援の強化にあたっては、精神保健福祉士の配置が有効に機能すると考えます。
 精神保健福祉士は、長く精神保健医療福祉分野のソーシャルワーカーとして、生活支援の立場や視点に専門性を持ち、医療チームの中にあっては他職種と連携しながら、時に判断能力の困難を抱える方の自己決定や権利擁護支援に携わり、実績と研鑽を積み重ねてきました。
 これまでに、精神保健福祉士としての支援経験や実績を評価されて地域包括支援センターに配置されている事例もありますが、配置職種としてはあくまでも社会福祉士として従事しているのが現状です。
 折しも、1997年に介護保険法が成立した同じ国会において、精神保健福祉士法も成立しております。このため、これまでは精神保健福祉士が介護保険制度に関与しうる専門職として社会的認知が得られておりませんでした。しかしながら資格制定後既に12年が経過し、現在は5万人弱の有資格者が誕生しており、これまでに培ってきた実績と専門性は高齢者施策にも十分に寄与することができると考えます。

3.精神保健福祉士は総合相談・支援事業における障害福祉分野等の一次相談機能に対応する人材です。

 障害者の相談支援に関しては、障害者自立支援法による相談支援事業をはじめ、市町村、保健福祉事務所、保健所、各種の障害福祉サービス事業所等において展開されていますが、地域によっては、高齢者の同居家族が有する障害に関する相談等が、地域包括支援センターに寄せられることも多くあります。また、先般公表された「地域包括ケア研究会」報告書でも提言されているように、地域包括支援センターが、地域内の包括的ケアの中核機関として位置づくために、分野や制度横断的な視点で連携を図りながら総合相談支援を展開することが重要になると考えられます。
 地域内の中核的な相談窓口には、住民が利用しやすいワンストップ機能を果たすことが求められておりますが、この観点からも専門職の追加配置が必要と考えます。その際には、精神保健医療福祉分野(メンタルヘルス課題対応分野)においてうつ病や認知症、アルコール依存症などの精神障害や知的障害の方々および家族等の支援に専門的に携わってきた精神保健福祉士の配置が必要であると考えます。

4.基幹型地域包括支援センターの設置と対応の充実強化が求められます。

 現在、地域包括支援センターは1,618の全保険者に設置され、ブランチ等も含め4,056ヶ所になりますが、7割近くが自治体等からの委託による運営となっています。
 今後、設置主体である保険者が方針を明示していくことが求められていますが、センター間の連携調整や、後方支援等、地域の実情に応じた対応を強化するために、基幹型もしくは基幹的機能を果たすセンターの設置が必要となります。その際には、基幹型センター等に総合相談や困難事例への後方支援等、専門的機能を果たすための人材配置が求められ、精神保健福祉士の配置を必須とする必要があります。

以上

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標  題 公職選挙法の見直しに関する要望
日  付 2010年8月27日
発翰番号 JAPSW 発第10-151号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 総務省 自治行政局長 久元喜造

 平素より精神障害者をはじめとした障害者施策の発展充実にご尽力を賜り、厚くお礼申しあげます。また、本協会並びに都道府県精神保健福祉士協会等の活動に多大なご理解ご協力をいただいておりますことも合わせてお礼申しあげます。
 さて、新しい成年後見制度の施行から既に11年目を迎えたところですが、本協会は、足掛け8年の準備・検討期間を経て、ようやく2009年度に認定成年後見人ネットワーク「クローバー」を発足させ、成年後見制度に係る事業に本格的に取り組んでいるところです。
 しかしながら、法施行10年を経てもなお、公職選挙法第11条には選挙権および被選挙権を有しない者として、成年被後見人が規定されていることが、成年後見制度の活用が進まない一つの隘路となっております。
 このことについて、精神障害者の権利擁護と社会的復権を担う専門職能団体として、以下の通り要望いたします。何卒ご高配を賜りたくお願い申しあげます。


1.公職選挙法に規定する選挙権および被選挙権を有しない者から成年被後見人を削除してください。

 被後見人に選挙権・被選挙権が認められていない(公職選挙法第11 条)ことについては、日本国憲法において保障されている国民の権利や障害者の権利条約との関連も含めて改正されるべきと考えます。
 被後見人は、主に重要な財産管理やその協議、施設・サービス等の利用契約について判断能力などが乏しいとされているに過ぎず、その状態が必然的に地域や国のあり方についての見解を持ち得ないことまで意味するとは限らないからです。
 また、仮に「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に在る者」であることをもって、選挙権および被選挙権を認めないとするならば、被後見人以外の同様の常況に在る者についても選挙権および被選挙権をはく奪すべきですが、個別に事理を弁識する能力について判断することは実務上困難であることをもって、被後見人のみを対象とすることは、成年後見制度の理念に反する行為といえます。
 なによりも、重要な基本的人権として保障されるべき選挙権および被選挙権については、実態としての行為能力や事理弁識能力と切り離して、何人も排除されるべきでないことは言うまでもありません。
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標  題 成年後見制度の見直しに関する要望
日  付 2010年8月26日
発翰番号 JAPSW 発第10-150号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 法務省 民事局長 原 優

 平素より精神障害者をはじめとした障害者施策の発展充実にご尽力を賜り、厚くお礼申しあげます。また、本協会並びに都道府県精神保健福祉士協会等の活動に多大なご理解ご協力をいただいておりますことも合わせてお礼申しあげます。
 さて、新しい成年後見制度の施行から既に11年目を迎えたところですが、本協会は、足掛け8年の準備・検討期間を経て、ようやく2009年度に認定成年後見人ネットワーク「クローバー」を発足させ、成年後見制度に係る事業に本格的に取り組んでいるところです。
 しかしながら、法施行10年を経てもなお、法制度自体の課題や実際の運用における多くの問題点は改善されていない現状にあることから、精神障害者の権利擁護と社会的復権を担う専門職能団体
として、以下の通り要望いたします。何卒ご高配を賜りたくお願い申しあげます。


1.成年後見制度における課題の解決を図ってください。

 成年後見制度には、以下のような課題があることから改善を要望いたします。

(1) 類型の廃止
 現行制度では、後見・保佐・補助の三類型に区分けした上で、代理権や同意・取消権等を付与していますが、類型そのものを見直して、個別案件ごとに具体的な項目について必要最低限の権限を成年後見人等に付与する仕組みとしてください。
 また、権限付与にあたっては、期限を設けて現状に即した対応ができるように配慮してください。特に精神障害者については、障害が変動し得るものであると理解することが現実的であり、見直しの機会がないと権利侵害につながることが十分考えらます。
 なお、類型の廃止が直ちに困難である場合は、審判の取消や類型変更が迅速に行われる仕組みを早急に整備してください。

(2) 申立支援の整備
 成年後見制度を必要とする人の制度活用が進んでいない現状があります。そのため、市町村長申立ての円滑化、申立て費用(鑑定料も含む)や経済的理由で後見報酬を負担できない場合の公的負担など、支援内容を充実させる必要があります。

(3) 申立案件への家庭裁判所調査官の関与
 申立後の調査には家庭裁判所調査官の関与を原則としてください。近年、鑑定書の提出が求められなかったり、家庭裁判所調査官の関与がなかったりすることが見受けられます。特に精神障害者については、医学的な判断と本人の社会的能力が必ずしも一致しているわけではありません。生活状況や判断能力について見極め、対象者の意向を確認する手続きを踏むことが肝要です。その際は、参与員として精神保健福祉士の意見も聴取する仕組みとしてください。

(4) 後見開始審判の本人に対する迅速な通知
 家事審判規則第26 条第2項には「後見開始の審判がされたときは、裁判所書記官は、遅滞なく、本人に対し、その旨を通知しなければならない。」と規定されています。審判が決定したときは、速やかな対象者本人への審判書の送付を徹底するとともに、審判書は本人が理解しやすい表記としてください。

(5) 後見監督制度の充実
 成年後見人等の一部には、搾取、自己決定の歪曲、必要な介入の放棄などが見られ、本制度が適正に運用されていない場合も見受けられます。後見監督制度があるものの、ほとんど活用されていない現状から、市民後見や親族後見、さらには専門職後見に対する後見監督制度や支援制度の充実を図ってください。

(6) 死亡後の対応
 被後見人等の死亡後の事務処理(遺体引き取り・埋葬・各種契約解除・支払い等)は、実態として後見人等に求められることが多いのですが、その権限や義務が無く、判断根拠や費用捻出も曖昧なままに後見人等の善意や判断に任されていることから、法的整備が必要です。

(7) 公的後見人制度の導入
暴力や多訴案件、長期化、その他困難ケースの対応については、公的責任において対応すべく公的後見人制度を創設してください。

(8) 成年後見制度の社会化
 成年後見制度の十分な普及が行われていない現状から、文部科学省等との協働による義務教育課程への組み入れなどを通して、広く国民に本制度を周知する工夫を図ってください。

(9) 苦情対応
 成年後見人等に対する苦情申立と改善勧告の仕組みを整備してください。特に第三者後見(専門職後見人)の後見事務において、身上監護が考慮されない案件が見受けられ、被後見人等に対する関係機関の支援が行き詰まることがあるため、独立した苦情申立機関の創設を検討してください。

(10) 身上監護をめぐる法体系の整理
 民法における成年後見制度においては、成年後見人等の特性(親族、法律専門職、福祉専門職など)によらず、身上監護を適切に行うよう規定すべきと考えます。しかしながら、実現性のある身上監護の担保に限界があるのであれば、身上監護を中心とした権利擁護に関する法整備が必要となります。また、財産の有無を問わず身上監護が保障される体制も整えるべきです。

(11) 事実行為をめぐる体制整備
 成年後見人等は法律行為を担うことになっていますが、実際は事実行為にも対応せざるを得ないことも多くあります。身上監護面からの状況把握は当然に必要ですが、日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)や生活支援に係るサービス利用調整などについては、後見人と関係機関が連携できる仕組みを整えてください。

2.医療同意における課題解決を図ってください。

 重篤な疾患や事故対応など、成年後見人等として現時点での生命や将来へのリスクに対して判断せざるを得ない事態が生じております。裁判所が迅速に判断する仕組みを導入するなどの具体的な対応策を早急に講じてください。

3.財産管理における被後見人の残存能力・潜在能力の活用を図ってください。

 被保佐人や被補助人は別として、被後見人には預貯金通帳の所持がほとんど認められていません。財産管理においては、被後見人自身が管理できる通帳(金額や取引方法・取引項目などの制限付き)を発行できる仕組み作りが必要と考えます。
 また、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」は被後見人においても行為能力として法律上認められており、公共料金の支払いや、生活用品の購入なども想定されていますが、それに伴う被後見人による金融機関等での金銭取引も認められるべきと考えます。

4.精神障害者をめぐる後見制度の現状を知ってください。

 精神障害者が生活していく上において、以下のような問題を抱える場合があります。その課題に向き合い、より良い生活を支援していくためにも、成年後見制度が円滑に機能することが求められています。
○ 財産管理、身上監護の両面で、家族による代理・代行が本人の自己決定を尊重しているか疑問な場合がある。
○ 家族が、保護者や緊急連絡先としての役割を盾とし、成年後見制度の利用を拒む場合がある。
○ 財産のない単身者(扱いを含む)が入院している場合には、判断能力の低下があっても成年後見制度が適切に活用されない傾向がある。
○ 施設や医療機関において、契約能力が不充分な状態が長期間持続している人たちの金銭管理をはじめとした代理行為が行われ、利益相反や専門職倫理に抵触する可能性を否定できないが、成年後見人等が選任されている人は少ない。
○ 施設退所後の地域生活で、住居の確保、金銭の管理などで課題を抱える場合に、成年後見制度のニーズがある。
○ 親の死亡により遺産を相続したが、財産の自己管理が困難かつ単身生活の経験もなく、身上配慮を要する場合がある。
○ 単身者など、成年後見人等が生活全般に関する相談や即時対応を行わざるを得ず、その職務を超える場合がある。

5.成年後見制度の活用促進と不正防止のための具体的な方策を検討してください。


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標  題 成年後見制度に関連する制度の見直しに関する要望
日  付 2010年8月26日
発翰番号 JAPSW 発第10-149号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 厚生労働省 社会・援護局長 清水美智夫

 平素より精神障害者をはじめとした障害者施策の発展充実にご尽力を賜り、厚くお礼申しあげます。また、本協会並びに都道府県精神保健福祉士協会等の活動に多大なご理解ご協力をいただいておりますことも合わせてお礼申しあげます。

 さて、新しい成年後見制度の施行から既に11年目を迎えたところですが、本協会は、足掛け8年の準備・検討期間を経て、ようやく2009年度に認定成年後見人ネットワーク「クローバー」を発足させ、成年後見制度に係る事業に本格的に取り組んでいるところです。しかしながら、法施行10年を経てもなお、法制度自体の課題や実際の運用における多くの問題点は改善されていない現状にあることから、精神障害者の権利擁護と社会的復権を担う専門職能団体として、以下の通り要望いたします。何卒ご高配を賜りたくお願い申しあげます。


1.成年後見制度利用支援事業の完全実施を図ってください。

 成年後見制度利用支援事業は、認知症高齢者から徐々に対象が拡大され、障害者自立支援法の地域生活支援事業にも位置づけられました。しかしながら、当該事業を実施している市町村は、全市町村約1800 か所のうち560 か所に留まっています(2008年4月現在、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部調べ)。
 このため、早急に成年後見制度利用支援事業を市町村における必須事業として位置付けて、どこで暮らしてもこの事業が活用される体制を整備してください。

2.生活保護制度に新たに後見扶助を創設してください。

 成年後見制度が被後見人等の身上監護を目的の一つとする以上、被保護者であっても本制度を円滑に利用できる体制を整備する必要があります。


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標  題 精神保健福祉士法関連法令の改正について
日  付 2010年8月10日
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課

  標記の件について、下記のとおり本協会としての意見を述べますのでお取り計らいのほどよろしくお願い申しあげます。


1.精神保健福祉士法関連法令・通知の改正について(案)のV.改正概要における「養成施設の教育課程の充実等について」の「演習・実習の拡充等について」および「その他」の「実習施設の範囲の拡大」について

 「精神保健福祉士短期養成施設等及び精神保健福祉士一般養成施設等指定規則第五条第一号カの規定に基づき厚生労働大臣が別に定める施設(平成10年厚生省告示第10号)」の改正にあたっては、職域の拡大や求められる支援の多様化により精神保健福祉士の役割が拡がっている現状に鑑み、現行の施設に準ずる施設又は事業として、精神保健福祉士養成課程における実習指導者の資格要件を満たす者が従事しており、かつ精神障害者が支援の対象に含まれる以下の施設または事業も加えてください。

1)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に規定する社会復帰調整官を配置している保護観察所

2)児童福祉法に規定する児童相談所、母子自立支援施設及び児童家庭支援センター

3)生活保護法に規定する救護施設、更生施設

4)都道府県及び市町村の事業運営要綱等に基づき運営される障害者小規模作業所

5)市町村における障害福祉担当課

6)社会福祉法に規定する福祉に関する事務所及び市町村の区域を単位とする社会福祉協議会

7)障害者の雇用の促進等に関する法律に規定する広域障害者職業センター、地域障害者職業センター及び障害者就業・生活支援センター

8)職業安定法に規定する公共職業安定所

9)売春防止法に規定する婦人相談所及び婦人保護施設

10)介護保険法(平成九年法律第百二十三号)に規定する介護老人保健施設及び地域包括支援センター並びに居宅サービス事業のうち通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護又は特定施設入居者生活介護を行う事業、地域密着型サービス事業のうち認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護又は地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護を行う事業、居宅介護支援事業、介護予防サービス事業のうち介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所生活介護又は介護予防短期入所療養介護を行う事業、地域密着型介護予防サービス事業のうち介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護又は介護予防認知症対応型共同生活介護を行う事業並びに介護予防支援事業

11)老人福祉法に規定する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センター及び有料老人ホーム並びに老人デイサービス事業

12)更生保護事業法に規定する更生保護施設

13)発達障害者支援法に規定する発達障害者支援センター

14)文部科学省が主管する学校・家庭・地域の連携協力事業として位置づけられているスクールソーシャルワーカー活用事業を行う教育委員会等

15)企業等に対していわゆるEAP(従業員支援プログラム、Employees Assistance Program)を行う事業所等

16)刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に規定する刑事施設及び構造改革特別区域法施行令の規定により委託を受けて運営される社会復帰促進センター

2.改正概要の「その他」の「実務経験施設」の範囲の拡大について

 教育内容等の見直しについて(案)には、「実務経験施設の範囲について実習施設の範囲との整合性を図りつつ見直しをする、もしくは検討する」とあります。今回の新カリキュラム案において医療機関における90時間以上の実習の必須化を図ることに鑑み、医療機関以外の実務経験者においては、90時間以上の医療機関の実習を必須としてください。また、実務経験施設の範囲拡大に伴い、実務と認定できる業務内容の明示を求めます。

3.その他

1)実習については、時間数の拡充と医療機関と医療機関以外の両方の実習が必須とされることに鑑み、実習受け入れ機関の円滑な確保が重要となることから、本制度改正に関する周知と合わせ、特に行政機関等における実習受入れの協力要請に係る通知等が行き届くようにお願いいたします。

2)「精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて」(別添)(以下「別添資料」という)には、「今後の精神保健福祉士の役割」として、「医療機関等におけるチームの一員として、治療中の精神障害者に対する相談援助を行う役割」が示されていることに関連して、教育内容の見直しによる資質向上を前提として、精神保健福祉士が医療機関等においてチームの一員として配置される環境や条件に関する改善を図っていただきたく要望いたします。

3) 別添資料には、「今後の精神保健福祉士に必要とされる知識及び技術」として、「今後の精神保健福祉士の養成課程においては、精神障害者の人権を尊重し、利用者の立場に立って、これらの役割を適切に果たすことができるような知識及び技術が身に付けられるようにすることが求められており、‥‥」とあります。
 実践力の高い精神保健福祉士の養成に必要とされる知識及び技術の習得は、ソーシャルワーク実践における価値や理念の習得を前提としていることを明示してください。


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標  題 「障害者制度改革」に関する要望
日  付 2010年8月6日
発 信 者 社団法人日本社会福祉士会 会長 山村 睦、社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦 社団法人日本医療社会事業協会 会長 笹岡真弓、特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 鈴木五郎
提 出 先 内閣府大臣政務官 泉 健太

  我々ソーシャルワーカー職能団体は、永く障害者の相談に応じ支援する立場で、障害者の権利を護ってきました。そこで、今回、下記のとおり障害者の相談援助に関し要望いたしますのでご検討いただけますようお願い申し上げます。

<要望事項>

 障害者が在宅で生活を継続するためには虐待予防・成年後見などの権利擁護に関する相談などを1カ所で24時間継続的にできる「障害者の総合相談支援センター」(仮称)を身近な生活圏域に設置することが必要と考え、今後推進会議を改組し新たな委員会ができた場合は、委員会に加えていただき委員として要望したい。
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標  題 (社)日本医療社会事業協会ニュース(22−1号/2010年7月5日発行)掲載の「2010年度定期総会議事録」の一部訂正等について(依頼)
日  付 2010年7月26日
発翰番号 JAPSW発第10−125号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 社団法人日本医療社会事業協会 会長 笹岡眞弓

  盛夏の候、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。

 日頃より、本協会の事業および活動に深いご理解を賜り、厚くお礼申しあげます。

 さて、貴協会が発行されている「(社)日本医療社会事業協会ニュース」(以下「ニュース」という。)の22−1号(2010年7月5日発行)掲載の「2010年度定期総会議事録」(以下「議事録」という。)を拝読したところ、本協会に関連した発言が見受けられ、一部事実と異なる内容で掲載されておりました。

 貴協会には精神保健福祉士ならびに本協会構成員も入会しており、貴殿より定期総会の場において事実誤認による発言があったことや当該発言に基づく議事録がニュースに掲載されたことは極めて遺憾であります。

 つきましては、ニュースに掲載された議事録における貴殿の発言に関して、下記の掲載箇所における該当部分の訂正をお願いいたします。


【掲載箇所】ニュースの20ページ、右段28行目から36行目まで
<該当部分>
「それと精神保健福祉士協会のことについては、精神のほうの協会とは一度話し合いをした。この認定をつくるときにも話し合い、精神のほうとは一緒にやっていきたいと話しをしたが、今、精神保健福祉士は、むしろ医療機関であるよりは司法であったり、別のほうに拡大しているとのこと。自分たちは医療機関だけではなく、むしろ地域のほうに発展しているという回答を常務理事のほうからうけている。」

 この記載内容では、貴協会と本協会との間で話し合いが2度あったように読み取れます。

 しかしながら、本協会では、2009年10月31日に開催された貴協会の医療ソーシャルワーカー認定機構検討委員会による「精神保健福祉士の現状と今後の方向について」をテーマにした意見交換の場に招聘され、常務理事2名が参加させていただきましたが、その場以外に、貴協会と本協会との話し合い等の場がもたれた事実はありません。また、貴協会より本協会に対して、貴協会の創設される研修制度に関する正式な申し入れ等をいただいた事実もありません。

 また、先の意見交換の場では、貴協会が認定制度を創設するに際しては、医療ソーシャルワーカーの研修対象領域に精神科医療も含むという考え方が示され、その部分を本協会と一緒に実施する可能性について意見を求められました。その際、出席した常務理事からは、貴協会の研修対象領域に精神科医療を含めることには理解を示させていただいております。また、本協会が実施している研修制度については、精神保健福祉士が従事する場が医療機関のみならず、地域における生活支援機関など多岐にわたることから、精神科医療という領域のみでの認定(研修認定精神保健福祉士、認定成年後見人、認定スーパーバイザー)制度ではなく、対象領域を問わない基幹型の研修を中心とした研修体系にて実施していることをご説明しているところです。

 しかしながら、議事録における貴殿の発言内容となる議事録では、本協会では“医療領域よりむしろ他領域への展開を重視している”ように読めるものであり、本協会としては、そのような話をした事実はありません。また、意見交換の場のやりとりの内容に関して、本協会への事実確認もなく、定期総会で事実誤認による発言がなされたことは極めて遺憾であります。

 近日、貴協会の臨時総会が開催されると聞き及んでおりますので、貴殿の発言及び議事録の記載事項に関して、事実に基づき、是非とも訂正いただきたく、よろしくお願いいたします。
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標  題 「踊る大捜査線 THE MOVIE3」に登場する精神保健福祉士資格者に係る設定の誤りについて(指摘とお願い)
日  付 2010年7月23日
発翰番号 JAPSW発第10−123号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 株式会社フジテレビジョン 代表取締役社長 豊田 皓

  盛夏の候、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。

  御社におかれましては、日頃より国民のメンタルヘルスの向上にむけた事業・活動にご理解を賜り、厚くお礼申しあげます。

  本協会は、1964(昭和39)年11月に精神科ソーシャルワーカー(Psychiatric Social Worker:PSW)を会員として設立された「日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会」を前身として、PSWの国家資格として1997(平成9)年12月に精神保健福祉士法が成立したことを経て、2004(平成16)年6月に厚生労働省所管の社団法人として設立許可を受けた公益法人です。

  本協会では、「精神保健福祉士の資質の向上を図るとともに、精神保健福祉士に関する普及啓発等の事業を行い、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進めることにより、国民の精神保健福祉の増進に寄与すること」を目的として、国家資格者である精神保健福祉士を正会員として、各種の公益事業等に取り組んでおります。

  さて、本年7月3日より公開されている御社製作の「踊る大捜査線 THE MOVIE3」(以下「踊る大捜査線」という。)につきましては、本協会の構成員においても上映を心待ちにしていた者も少なくなく、公開早々に鑑賞している構成員もいるところです。

  しかしながら、鑑賞した複数の構成員より「『踊る大捜査線』の中で精神保健福祉士が登場するが、職務経験と年齢設定に間違いがある」旨の報告や、間違いを指摘するインターネット上の書き込みなどが見受けられました。

  そのため、鑑賞した構成員から詳細を確認するとともに、小職自身も鑑賞してまいりましたが、構成員からの報告等の通り、精神保健福祉士として登場する者が「精神保健福祉士として5年の職務経験のある23歳」として設定されていることが分かりました。

  本協会としましては、「踊る大捜査線」のような国民的映画に、精神保健福祉士を登場させていただいたことには敬意を表しているところです。また、フィクションであることは十分承知しておりますので、精神保健福祉士のストーリー上における取り扱いについて異を唱えるものではありません。

  ただし、精神保健福祉士法に照らして、誤った設定で描かれていることに関しては、「踊る大捜査線」が社会的影響力のある映画であることから、精神保健福祉士の資格制度の普及啓発を公益事業のひとつとして担う社団法人の責務として、下記の通り、設定の誤りを指摘させていただきます。

  つきましては、精神保健福祉士の資格制度の正しいご理解をお願いするとともに、設定の誤りについては訂正にご尽力いただきたく、よろしくお願い申しあげます。


1.精神保健福祉士として登場する者の職務経験と年齢設定の誤りについて

  精神保健福祉士の資格取得に係るルートは下図の通りとなっています。

  【精神保健福祉士資格取得ルート図】  [出典]財団法人社会福祉振興・試験センター

  精神保健福祉士法の規定に基づく上記ルートを経て、国家試験の受験資格を取得し、国家試験合格後には、指定登録機関である財団法人社会福祉振興・試験センター(以下「センター」という。)に登録が必要となり、登録後、初めて「精神保健福祉士」という名称を使用して業務に就くことができます。

  2010年6月末日現在、精神保健福祉士として47,715人が登録していますが、主として「4年制の保健福祉系大学」等で指定科目を履修し、国家試験に合格し、センターへの登録後、精神保健福祉士として仕事に就く者が多数となっているところです(精神保健福祉士法第7条第1号)。

  そのため、18歳の者が国家試験の受験資格を取得し、国家試験に合格、センターに登録し、精神保健福祉士として業務に就くことはできないことから、映画の中で設定されている「精神保健福祉士として5年の職務経験のある23歳」の者は存在しません。

  また、他の資格取得のルートを経て国家試験に合格し、精神保健福祉士として登録後に仕事に就く者においても同様です。


2.「精神保健福祉士」と「臨床心理士」の資格の混同について

  映画館で販売されているパンフレットを拝読しましたところ、映画では「精神保健福祉士」として登場する者について、本広克行監督の談として「臨床心理士にしてもらった」との記載がありました。

  それ故、映画では臨床心理士の業務と混同された内容で精神保健福祉士が描写されている場面が見受けられ、「精神保健福祉士」と「臨床心理士」の資格を混同されていると考えられます。


3.その他

  この間、他社からTVドラマ等において精神保健福祉士の登場や関連描写がある企画の際には、お問い合わせをいただき、ご担当者に資格制度や業務内容をご説明させていただいているところです。

  今後、御社の企画におきまして、精神保健福祉士が登場する製作物がございましたら、本協会では監修等の協力は惜しみませんので、是非ともご相談くださいますよう、何卒よろしくお願い申しあげます。


<同封資料>
 ・精神保健福祉士法
 ・社団法人日本精神保健福祉士協会定款
 ・社団法人日本精神保健福祉士協会役員名簿
 ・パンフレット
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標  題 成年後見制度に関する見解
日  付 2010年6月3日
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会


はじめに

 新しい成年後見制度の施行から既に11年目を迎える。この間、本協会は成年後見制度に関する事業への取り組みに対しては、慎重な態度を取ってきた。その理由の一つは、精神保健福祉士の立場から現成年後見制度が内包する課題について整理する必要があったためである。二つは、当該事業への取り組みに対する組織体制の構築に時間を要したためであり、三つは、精神保健福祉士による成年後見人・保佐人・補助人(以下、「成年後見人等」という。)としての活動とソーシャルワークとの関係についての整理が必要であったためである。
 本協会は、足掛け8年の準備・検討期間を経て、ようやく2009年に認定成年後見人ネットワーク「クローバー」を発足させ成年後見制度に係る事業に本格的に取り組むこととなった。しかしながら、法施行10年を経てもなお、法制度自体の課題や実際の運用における多くの問題点は改善されていない現状に鑑みて、精神障害者の権利擁護と社会的復権を担う専門職能団体の責として、本見解を内外に示すものである。本協会は、今後も成年後見制度に参画しながら、実態把握を踏まえた要望活動や制度改正のための提言を行っていく所存である。
 以下に、成年後見事業への取り組みを通じてあらためて認識するに至った課題も含め、各課題とその解決に向けた本協会としての現段階での見解を述べる。

1.成年後見制度と関連法制度における課題

(1)成年後見制度が抱える課題と改善のための方策

    (1) 申立支援の整備
 成年後見人等の一部には、搾取、自己決定の歪曲、必要な介入の放棄などが見られ、本制度が適正に運用されていない場合がある。また、必要な人への制度活用が進んでいない現状もある。そのため、市町村長申立ての円滑化、申立て費用の公的負担(鑑定料も含む)など、支援を充実させるべきである。
    (2) 後見監督制度の充実
 後見監督制度があるものの、ほとんど活用されていない現状から、市民後見や親族後見、さらには専門職後見に対する後見監督制度や支援制度の充実が図られるべきである。
    (3) 死亡後の対応
 被後見人等の死亡後の事務処理(遺体引き取り・埋葬・各種契約解除・支払い等)は、実態として後見人等に求められることが多いが、その権限や義務が無く、判断根拠や費用捻出も曖昧なままに後見人等の善意や判断に任されており、法的整備が必要である。
    (4) 公的後見人制度の導入
 暴力や多訴案件、長期化、その他困難ケースの対応については公的責任において対応すべきである。
    (5) 成年後見制度の社会化
 成年後見制度の十分な普及が行われていない現状から、教育課程への組み入れなどにより広く国民に本制度を周知する工夫が必要である。
    (6) 苦情対応
 専門職後見人の中にも、機動力に欠ける人、必要な行動をとらない人、財産管理のみで身上監護への配慮に欠ける人などが現に存在する。このため、地域における苦情受付体制の構築が必要である。
    (7) 身上監護をめぐる法体系の整理
 民法における成年後見制度においては、成年後見人等の特性(親族、法律専門職、福祉専門職など)によらず、身上監護を適切に行うよう規定すべきである。しかしながら、実現性のある身上監護の担保に限界があるのであれば、身上監護を中心とした権利擁護の法整備をすべきである。また、財産の有無を問わず身上監護が保障される体制も整えるべきであり、その際は公的身上監護人など専門機関設置の検討も必要となる。

(2)後見類型による参政権の喪失
 被後見人に選挙権・被選挙権が認められていない(公職選挙法第11条)ことについては、日本国憲法において保障されている国民の権利や障害者の権利条約との関連も含めて改正されるべきである。
 被後見人は、主に重要な財産管理やその協議、施設・サービス等の利用契約について判断能力などが乏しいとされているに過ぎず、その状態が必然的に地域や国のあり方についての見解を持ち得ないことまで意味するとは限らないからである。
 このほか、多くの制度において被後見人等を欠格条項の対象としていることは、一律に社会参加の機会を制限することとなっており、見逃すことができない大きな課題である。

(3)成年後見制度利用支援事業の完全実施
 成年後見制度利用支援事業を実施している市町村は、全市町村約1800か所のうち560か所に留まっている(2008年4月現在、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部調べ)。当該事業は、認知症高齢者から徐々に対象が拡大され、障害者自立支援法の地域生活支援事業にも位置づけられたが、依然として通知によるものであり、法令化が必要である。また、被生活保護者に対する後見扶助の創設も検討すべきである。

2.医療同意の課題

(1)精神保健福祉法下の医療保護入院への同意について
 精神保健福祉士が成年後見活動を担う際には、特に精神保健福祉法に規定する医療保護入院制度において、以下の課題がある。
  • (1) 医療保護入院では、後見人および保佐人が保護者として同意することが求められる。このことは、自己決定の尊重から一変して本人保護の目的で、強制力をもって行動制限の権限を行使する立場となるため、その後の後見活動に支障をきたす懸念がある。保護者制度を含めた医療保護入院制度のあり方についても今後検討されなければならない。
  • (2) 施設入所は本人同意を前提としている一方で、精神科病院への医療保護入院は本人同意を要しない。これも医療保護入院制度の課題だが、後見制度の理念である、ア)自己決定の尊重、イ)残存能力の活用、ウ)ノーマライゼーションの観点からも矛盾する。ただし、成年後見人等はソーシャルワークそのものを行う役割ではないことも、成年後見人等が自覚し整理して理解することが必要である。
  • (3) 受診援助や関係機関との連携による危機介入において、当事者との関係性の構築や精神障害の知識、ネットワークの活用など、精神保健福祉士が持つノウハウが役立つ場面は多いが、受診につながらないケースも多い。受診への働きかけは行えるが、保護者として「治療を受けさせること」が成年後見人および保佐人の義務と位置づけられることは実態と乖離している。また、受診援助自体は、事実行為であり本来の後見事務ではないと考えられるが、その責任だけが成年後見人等に課せられることも課題である。
  • (4) 医療中断などで被後見人等が事故や事件の加害者となり、民事訴訟を起こされた場合、成年後見人等の責任を問われる可能性がある。一定の要件に基づく免責の仕組みも求められる。

(2)医療同意の課題
 重篤な疾患や事故対応など、成年後見人等として現時点での生命や将来へのリスクに対して判断せざるを得ない事態が生じており、裁判所が迅速に判断する仕組みを導入するなどの具体的な対応策が求められる。

3.財産管理における残存能力・潜在能力の活用

 被保佐人や被補助人は別として、被後見人には預貯金通帳の所持がほとんど認められていない。財産管理においては、被後見人自身が管理できる通帳(金額や取引方法・取引項目などの制限付き)を発行できる仕組み作りが必要である。
 また、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」は被後見人においても行為能力として法律上認められており、公共料金の支払いや、生活用品の購入なども想定されているが、それに伴う被後見人による金融機関等での金銭取引も認められるべきである。

4.関係者の連携体制構築と維持

 成年後見人等が就任すると、それまで関わっていた関係機関が支援の手を緩めたり引いてしまったりすることが懸念される。また、日常的な金銭管理や、身上監護における契約の前段階・準備段階の手続き等までも成年後見人等に委ねられる懸念がある。
 後見実務は、チーム体制やネットワークと連携することで実質的に機能することから、成年後見人等が選任された後も、関係者には協力を得ることが重要である。ただし、成年後見人等は関係機関の都合に合わせるのではなく、あくまでも被後見人等の側に立ち、関係機関をも監視する視点を持ち続けることは当然である。

5.精神障害者をめぐる後見制度の現状

 精神障害者が生活していく上で以下のような問題を抱える場合がある。その課題に向き合い、より良い生活を支援していくためにも、障害を理解している精神保健福祉士が成年後見人等としての役割を果たしていくことが求められる。

  • 財産管理、身上監護の両面で、家族による代理・代行が本人の自己決定を尊重しているか疑問な場合がある。
  • 家族が、保護者や緊急連絡先としての役割を盾とし、成年後見制度の利用を拒む場合がある。
  • 財産のない単身者(扱いを含む)は、判断能力の低下があっても入院医療機関に埋没してしまう傾向がある。
  • 施設や医療機関において、契約能力が不充分な状態が長期間持続している人たちの金銭管理をはじめとした代理行為が行われ、利益相反や専門職倫理に抵触する可能性を否定できないが、成年後見人等が選任されている人は少ない。
  • 施設退所後の地域生活で、住居の確保、金銭の管理などで課題を抱える場合に、成年後見制度のニーズがある。
  • 親の死亡により遺産を相続したが、財産の自己管理が困難かつ単身生活の経験もなく、身上配慮を要する場合がある。
  • 単身者など、成年後見人等が生活全般に関する相談や即時対応を行わざるを得ず、その職務を超える場合がある。

6.認定成年後見人養成研修をとおして明らかになってきた課題

(1)成年後見制度および関連する社会制度の課題
すでに1および2で示した成年後見制度の問題点のほか、以下のような課題が明らかとなった。
  • 低所得者における後見報酬の保障
     成年後見制度利用支援事業を実施している自治体がまだ少ない現状においても専門職後見人としての受任依頼がある。判断能力の低下で身上監護だけを期待される低所得者の案件では、第三者後見人はまったくの奉仕活動になってしまう。低所得者の案件にも継続性をもって対応できる制度とするためにも、身上監護に関しても正当な報酬付与を求め、公的制度として保障すべきである。専門職後見人のボランティア精神に頼っている現状では、後見制度の安定した運用が難しい。

(2)認定成年後見人ネットワーク「クローバー」の運営における本協会の責任と課題

  • (1) 認定成年後見人が権利を侵害しないための倫理観の確立と適切な後見実務の遂行が求められる。
  • (2) 精神保健福祉士としての本来業務と成年後見活動の両立は、個人の環境と共に、精神保健福祉士を取り巻く状況の課題でもある。
  • (3) 本協会の構成員か否かに関係なく「精神保健福祉士」であることの社会的信用により、既に成年後見人等を受任している者がいる。その資質の格差や倫理観を伴った適正な実務遂行を支援(監視)することが専門職団体としての本協会の役割の一つである。
  • (4) 都道府県精神保健福祉士協会等に対する各家庭裁判所からの後見人候補者の推薦依頼が実際にあることから、本協会の取り組みの周知と都道府県単位での活動との連携が急務である。
  • (5) 本協会として、認定成年後見人の支援体制を強化・充実させていく必要がある。その活動の中から制度が内包する課題を内外に訴えていくことこそ、重要な社会的役割だといえる。
(3)個人の環境および心理的な課題
 一度成年後見人等を受任すると、生涯にわたるかかわりが求められ、終始拘束されることの心理的負担は重い。後見期間の長期化に伴う、成年後見人等への支援体制という点では今後検討が必要である。

以上

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標  題 全精社協補助金不正受給事件に関する見解
日  付 2010年5月15日
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 理事会

1.事件の概要
 2009年9月、全国精神障害者社会復帰施設協会(以下、全精社協)における補助金不正受給がマスコミの報道等で明らかになった。報道によると、本事件は運営する「ハートピアきつれ川」の資金繰りが悪化したため、全精社協が厚生労働省の補助事業である調査研究事業に対する補助金を、施設運営費として不正流用したというものである。

2.本協会理事会が見解を表明するに至った経緯
 この事件への対応として、本協会は以下の事実等に鑑みて、全精社協が補助金の不正受給に至った経緯や背景を調査し、理事会に報告するため、「全精社協補助金不正受給に係る調査特別委員会」(以下「調査特別委員会」という。)を設置した。

1)本協会が精神障害のある人々の支援団体として全精社協に監事を推薦している等の協力関係にあること。
2)本協会構成員が全精社協の会員施設や全精社協が運営する精神障害者支援施設「ハートピアきつれ川」に勤務していること。
3)全精社協の元幹部である本協会構成員が逮捕されたこと(その後起訴猶予)。

 理事会は、他団体が起こした事件とはいえ、全精社協が本協会と近接的な関係にあること、わが国の精神保健福祉に与えた影響が極めて大きいことから、ひとり全精社協のみの問題として捉えるのではなく、本協会の今後の運営のあり方等に教訓とすべき内容について見解として取りまとめることを確認した。

 調査特別委員会は、これまで全精社協の役員等を歴任してきた本協会構成員に対する聞き取り調査を中心に、この間精力的に調査に取り組み、2010年3月6日の2009年度第2回理事会において、最終報告書を提出した(最終報告要約参照PDF)。理事会は、この報告書を基に議論を重ね、この度の見解表明に至った。

3.事件の背景
 本事件の背景には、設立当初から全精社協の財政基盤が脆弱であったこと、組織決定の不透明さやチェックシステムの欠如、厚生労働省との関係において健全な距離を保持することができなかったことなどがあった。その結果として、根拠や経緯の曖昧なまま、「ハートピアきつれ川」の取得・運営という組織規模に見合わない事業展開への着手に至り、結果として補助金の不正流用を前提とした財政運営に陥ることとなった。

4.事件についての本協会としての見解
 精神障害者の社会復帰を担う施設の集合体としての全精社協執行部が、精神障害者の社会復帰を支援するために設けられた公金(補助金)を不正に流用するという形で、刑事事件を引き起こしたこと、その結果、国に対して精神障害者の福祉現場に従事する立場から要望・提言を行うという役割も有する組織体を自ら機能不全に追い込んだことは、わが国の精神保健福祉の発展を著しく阻害するものである。このことは、目的を同じくする本協会としては、極めて残念な出来事であった。

 加えて、精神保健福祉に関係する法人が起こした不祥事件として広く社会に報道され、そこに本協会構成員を含む精神保健福祉士が関与していたことは、本資格の信用失墜につながり、日々真摯に実践を積み上げている多くの精神保健福祉士にとって不利益となりかねない重大な問題であるといえる。

 また「ハートピアきつれ川」は多くの精神障害者が利用しており、運営主体の破綻は、その生活を脅かすものであり、結果として重大な人権侵害につながりかねない。

 さらに、調査特別委員会最終報告からは、厚生労働省と全精社協との間の適切な関係性の持ち方において大きな疑義を抱かざるを得ない。この点に関して、本協会は厚生労働省に対する事実照会を試みたが実現できなかったため、事実関係を踏まえた言及は避けざるを得ないことを付記しておく。

5.本協会が学ぶべき教訓
 本協会は、全精社協の「組織体制の立て直しのため」という求めに応じて、十分な検討がないまま本協会構成員を監事として推薦した。また、全精社協による不正事件報道がなされるかなり以前から、関連する情報が様々な形で伝達されていた。しかしながら、本協会として具体的な対策を講ずることができないままいたずらに時間が経過することとなった。結果として精神保健福祉にかかわる団体を一つ失う結果を招くに至ったことは、理事会として深く反省するとともに、ハートピアきつれ川で働き続ける職員および利用者はじめ関係者の皆様の期待にこたえられなかったことについては、お詫びしなければならない。

 そのうえで、今回の事件の背景にあった「組織運営のあり方」「国の行政機関との関係性のあり方」は、本協会においても他山の石として自戒的に整理していかなければならない重要な問題である。すなわち、本協会は本来の目的や使命に沿った事業展開という原点に立ち返った姿勢を改めて確認し、組織決定のプロセスにおける透明性と健全性の確保に努めるとともに、慎重かつ冷静な判断のもと、関係省庁との関係においては、健全なる緊張感を常に意識して臨まなければならない。また、適切な組織運営の確保のためには、今後ピアレビュー機能を協会組織に明確に位置付けることも必要であると認識している。

 いま、本協会の執行部を担う理事会には、我々が掲げた高邁な理念を実現していくために、肝胆相照らす議論を尽くし、情報を共有した団結と責任感伴う確固たる覚悟が求められている。

6.専門職および専門職能団体としての役割の再確認と今後の課題
 精神保健福祉士の使命は、支援を要する人に対する丁寧で誠実な支援であり、ときには覚悟をもって社会の矛盾とも戦っていくところである。しかし、また我々精神保健福祉士はその置かれている状況の中では容易にその使命を逸脱し、支援を要する人の権利を侵害しうる可能性をもつということを自覚しなければならない。

 全精社協が実質的に機能停止したとはいえ、いまもなお「ハートピアきつれ川」で働き続ける職員および利用者がいる。厚生労働省および「ハートピアきつれ川」を所管する栃木県とさくら市にあっては「ハートピアきつれ川」の維持・存続に向けた最大限の支援を強く望むものである。 そして、本協会もまた精神保健福祉にかかわる全国組織としての責務として、これらのことに関心を寄せ、具体的な手立てを講じていかねばならない。

 今回の事件を通して、改めてわが国の精神保健福祉施策の貧困さが露呈した。しかし、この現状の中でわたしたちは、国民より負託された精神保健福祉課題を見据え、時機を得た提言はもちろんのこと、ときには大きな流れに勇気をもって抗うこともいとわぬ専門職能団体としての姿勢を貫く協会であり続けねばならない。

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