独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」助成事業

報告

2008年度第3回生活保護と精神障害支援を受講して

2008年11月26日(水)、27日(木)、朱鷺メッセ(新潟県新潟市)にて、「第3回生活保護と精神障害者支援」を開催しました。ここでは、修了者の中から精神保健福祉士、行政機関職員の立場で、お二人からの報告記事を掲載します。

       
開講式の様子 演習 全体会 修了証書の授与

・ 「生活保護」を学んで

小千谷市障害者支援センターさつき工房  吉田 美貴子

 学生時代、公的扶助についての講義があり、私はその講義を受けていました。そして卒業してそのまま障がい者支援の仕事に就き、今7年目を迎えています。その間、生活保護を受給されている障がい者の方の支援に関わらせていただいたこともありますが、それほど何かを意識することなく、今まできてしまったような気がしています。経済的な保障をし、生活の安定をはかる上で必要なものと思っていましたが、そこに関わる生活保護ケースワーカーさんとの連携も上手にとれていなかったのが現状でした。そのような中、最近相談を受けた方がたまたま生活保護制度の利用をされている方でした。生活保護ケースワーカーの方がその方の生活に密着した支援をされているのを見て、「生活保護のことをもっと勉強したい。生活保護ケースワーカーさんとも上手に連携していきたい」と思うようになった時に、今回の研修の案内が届いたので、参加することにしました。

 思えば仕事に就いてから生活保護について改めて学んだのは今回の研修が初めてかもしれません。一日目の一番最初の高田哲先生の講義は、自分の中にあった『生活保護』というものを見つめ直す機会となりました。憲法第25条の条文、「権利としての生活保護制度」という言葉が、強く印象に残っています。人が人として生活する権利、すべての国民に与えられるべき権利であると、この国の憲法は保障してくれているのだということを改めて思いました。そして生活保護法の目的が、私が漠然と捉えていた「経済的な保障による生活の安定」にとどまらず、「自立の支援」という側面も持ち合わせているのだと知ることができました。現場で働く福祉事務所のケースワーカーさん達の話も非常に勉強になり、相談に来られる方達が様々なニーズを抱えてこられるというイメージが持てたり、PSWとどの部分を連携してやっていけるのか糸口を見つけられた気がします。

 「当事者の方は障がい者という顔も含め生活者として色々な顔を持っている。多様なニーズを抱えている。」というお話がありましたが、そういった面からもチームワークの必要性を感じでいます。今まで私は生活保護ケースワーカーさんの専門性についてよくわかっていませんでした。お互いの専門性について理解すること、それも連携していく上で大切になってくるのだと思いました。この研修で学んだことをこれからに生かしていきたいと思います。


・ 「精神障害者の自立支援」に思う

新潟県小千谷市社会福祉事務所 主査 佐瀬久志

 今回の研修は、病院PSW、精神保健関係者、生活保護ワーカーが集まる少し異色の会でした。研修内容は、精神障害により長期入院を余儀なくされている方々の「地域社会への復帰、退院の促進」を考えるということでした。

 講師陣は、名寄市立大の高田先生をはじめ、地域の中でご活躍されている方々であり、豊富な実践例が紹介され参考になりました。特に、高田先生は生活保護の元担当員ということで、私も同職であり親近感がもてました。

 研修のテーマである、「生活保護と精神障害者支援」に関しては、自立支援の観点と人権の尊重を考える上でとても大切なことだと各講義の中で学ぶことができました。また、現在でも知的障害者や精神障害者が人里はなれた施設や病院で暮らしている現状があることを知り心が痛みました。

 しかしながら、退院促進事業への取り組みについては、今回参加のそれぞれの職種において多少なりとも温度差があるような印象を受けました。私は生活保護の担当員ですが、在宅での精神障害者世帯ケースについては、近隣住民とのトラブルが発生することも多く対応に苦慮しています。退院後の安定した生活を考える上では、家族親類はもとより地域住民の理解と協力が必要不可欠なのですが、なかなか難しいのが現実のようです。

 研修の最後に、各グループに分かれての事例研究がありました。この場面では、それぞれの職種により意見交換ができ、また福祉職員の交流の場としても異議あるものでした。このような事例研究・意見交換の場が定期的に設定できれば、退院促進事業の前進に少しでも繋がるような気がしました。

 ある講師の方が、「長い負の歴史を塗り替えるときが今なのだ」とおっしゃっていましたが、この研修会を終えてまさにそのとおりだと感じました。いくら私たちが声高々に叫んでも何十年もの不幸な歴史から生まれた偏見や差別を変えていくことは、一朝一夕にはいかないことだとは思います。唯一、着実な事例の積み重ねが偏見や差別から障害者を解き放つ道なのだと感じました。

 最後に、今回の研修を企画、担当された役員の皆々様に感謝しつつ、拙い文章ではありますが筆をおきます。

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