独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」助成事業

報告

2008年度第2回生活保護と精神障害支援を受講して

2008年9月16日(火)、17日(水)、名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)にて、「第2回生活保護と精神障害者支援」を開催し、101人の皆さんが修了証書を受け取られました。ここでは、修了者の中から精神保健福祉士、行政機関職員の立場で、お二人からの報告記事を掲載します。

       
講義を聴く会場の様子 講義2「自立支援プログラムについて」を講義する竹中会長 14班に分かれて行ったグループワークの様子

・ 研修で得られたもの

愛知県立城山病院 塩川美登子

 今回、さまざまな立場の方の講義を受け、意見を伺い、普段仕事に没頭している時には得られないものを多く得ることができました。ここでは次の3点を挙げます。

 1点目に、生活保護受給者・精神障がい者が被援助者になり、私が援助者になる時、被援助者が自分を弱い立場であると感じる場面があることに気づきました。特に、長谷川俊雄先生や伊藤要先生の講義から被援助者側のそのような感じ方に気づきました。この感じ方は、少し視点を変えれば誰でも簡単に想像がつき、援助者であれば当然心得ておくことですが、私は認識不足でした。援助者が被援助者と一緒に解決困難な問題に取り組んでいるつもりでも、被援助者は実際、方針を出されたり思いを充分に聞いてもらえなかったりすると、自分が弱い立場だと感じる可能性があるわけです。私はこの研修を機に、より丁寧に被援助者の思いを把握しようと努めております。

 2点目に、立場の異なる参加者が、生活保護受給者・精神障がい者援助という同じ目標を持って努力していることを実感できました。特に、青木聖久先生の講義、講師への質問、グループワークとその後の発表、これらを通してそのように感じました。援助する相手は違っても、私と同様の悩みを抱えた援助者がいるのだから、限界を感じることなく創意工夫を重ねていきたいと思うことができました。また、私とは異なる問題を抱えた援助者がいることを知り、さまざまな方と協力して1人の方を援助する際、関係者方の立場や思いをより理解していきたいと思うことができました。それが、被援助者にとって最適な援助に繋がると考えます。私は研修翌日から、今まで以上に関係者の立場を想像するよう努めております。

 3点目に、私の立場を客観視することができました。元から生活保護や精神障害者支援について知識不足を痛感していましたが、今回の研修を通して、具体的に何を補っていく必要があるのかが明確化されました。それをもとに知識の補充をしてまいりたいと思います。


・ 連携で楽で効率よく!視点の拡がる研修でした

堺市生活援護管理課 八木 一夫

 「長い入院生活で失うものは多かったけど、得るものは何もなかった」。当事者の心の底からの声です。ある研修会でこの事業を利用して地域生活を送っている当事者の声を聞く機会がありました。この言葉がずーっと心に残っています。社会的入院は大きな人権問題なのです。

 今回の研修に参加して、思ったことは「研修の組み立て方」がとってもよく考えられていることです。

 まず講義1「生活保護法の理念とソーシャルワーク」で精神障害者の生活の基礎となる経済的基盤を支えるものは生活保護という事実。また一般市民が生活保護行政に期待している「命を守るセーフティネットとしての役割」、しかし行政は、この役割をどれだけ果たせているのか?またこの役割をどれだけ認識しているのか?講師の口から問いかけが発信されます。そして、講義3「社会的入院の背景」を精神医療制度の歴史から見ると、患者を社会から排除してきた経過が明確になり、そこから講義4「地域生活移行支援」が自然な流れで理解できました。また、それでは具体的に社会資源が少ない中どうしようか?講義6「社会資源の活用と創出」のなかで工夫をすれば使える制度があり、生活保護のセクションから考えても、ケースワーカーが一人抱え込まないで精神保健分野との協同が、社会資源を創出していくことになっていくことも理解できるようになっています。

 最後のグループワークでは、具体的事例を題材に、相談員・病院のワーカー・介護施設職員・生活保護ワーカーが検討をしました。制度から入る生活保護ワーカー、本人の病状を見る病院ワーカー、生活を見る地域相談員。職種がちがうとこんなに見方が違うのか。視点が拡がりました。

 人員が足らない、予算がない、こういった少ない社会資源の中で苦労している生活保護行政に携わるものとしては耳の痛いことが多かったですが、工夫や連携・ネットワークで利用できる枠が広がり、お互いに楽で効率よく仕事ができます。施策は縦割りでするのではなく、利用者のためにある、こういった基本的理念を行政は持ち続けなくてはならないと感じました。

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