独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」助成事業

報告

2008年度第1回生活保護と精神障害支援を受講して

2008年8月30日(土)、31日(日)、きょうさいサロン(北海道札幌市)にて、「第1回生活保護と精神障害者支援」を開催し、182人の皆さんにお集まりいただきました。ここでは、修了者の中から精神保健福祉士、行政機関職員の立場で、お二人からの報告記事を掲載します。

       
増山講師による
講義1生活保護法の理念とソーシャルワーク
講義を聴く会場の様子 26班に分かれて行った
グループワークの様子
運営を担ってくださった
北海道精神保健福祉士協会の皆さん他

・ 自分の中の生活保護

医療法人 ときわ病院 小嶋 健二

 本研修は、テーマ通り生活保護に関する内容と精神障害者への支援に関する内容で構成されておりましたが、ここでは生活保護に関する事に絞って書かせていただきたいと思います。

 生活保護を受給されている精神障害もしくは精神疾患を抱えられた方々の支援をする際に多くのケースで福祉事務所と連絡・調整をすることとなりますが、そうした際には最低限生活保護手帳を読み込んでいなければ福祉事務所と対等に話し合えないこと、生活保護(福祉事務所のケースワーカーの業務)は経済的支援だけに終わるものではないということが強く印象に残りました。

 私の職場にも生活保護手帳があり、私自身も目にしていました。しかし、生活保護に携わる者の最低限の知識という認識(感覚)はなく、必要な時に最小限目を通すというものでした。今考えると、その背景には私自身が、「何が書かれているか知らない」「読み込む必要性を知らない」「読み方が分からない」といったことがあったように思われます。講師の先生方が口々に「保護手帳には生活保護の全てが書かれていて、この手帳を読み込む事が大切」と切々と語っておられたのを繰り返し耳にし、現在、新たに保護手帳に目を通しているところです。まさにこれは大事だと思える箇所があったのと同時に、まだ読み込めていない(理解できていない)自分を再認識している状況です。

 もうひとつの生活保護に対するイメージの変化も大きなものでした。生活保護は、経済的に困窮している方に対し経済的支援をするものというのが受講前のイメージでしたが、生活保護は経済的な支援のみを指すものではなく、あくまでも「最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長する」もので、その自立という言葉に関しても「自立=生活保護の廃止」ということではなく、被保護者が自分の力で生活できる面を少しでも増やしていくことを指していると学びました。そして、そのためには経済的な支援だけではなく、環境調整などのケースワークを福祉事務所のケースワーカーが担っていくということも同時に学びました。

 今までは経済的な視点で福祉事務所のケースワーカーと連絡・調整することがほとんどでしたが、今回学んだことを頭の片隅に更なる協力・連携をもって精神障害者の方々を支援していけたらと考えております。

 本研修では上記の他にも学べたことが多々ありましたが、大切なのはそれを支援に活かすという事だと思っています。研修に出て満足ではなく、研修で学んだことを実際に支援に活かすことができるように日々研鑽していきたいと思います。


・ 精神障害者の地域移行を支援するためには

福島県社会福祉課 蜿タ 早希

 この度、さる平成20年8月30日、31日に開催されました「課題別研修 第1回生活保護と精神障害者支援」研修に、私は行政機関職員(県本庁)の生活保護担当として参加させていただきました。

 始めに、わが福島県では、医療機関に入院している生活保護受給者のうち、病状が安定していて入院治療の必要性がなく、受入条件が整えば退院可能な者である、いわゆる社会的入院患者に対する退院阻害要因の解消及び地域生活への移行促進を図るための「福島県長期入院患者等退院促進事業」を実施しており、私は今年4月から当該事業の担当をしております。

 今回の2日間にわたる講義の中で、大学で社会福祉を教えている方、行政職員として福祉業務に従事している方、病院で患者を診ている方、さらに、地域生活支援センター等で事業を展開している方など、さまざまな角度から研修テーマである「精神障害者の退院支援」に関する講演をお聞きし、支援者を取り巻く社会環境についての理解を深めることができました。特に、社会資源を創出し活用することによって、多種多様な支援が可能であること、また、個々の団体が単一に活動するよりも各種団体が連携して支援していくことは、地域力の強化にも繋がると感じました。

 さらに、研修2日目のグループワークでは、医療機関で精神保健福祉士として働いている方、地域活動支援センターで働く方、さらには、NPO法人として活動されている方など、福祉事務所以外の現場で働く方々の業務内容や実情等を初めて伺うことができましたので、大変勉強になりました。

 終わりに、今回の研修で学んだことは、精神障害者の地域移行を支援するためには、さまざまな機関が相互に連携し、私たちが望むプランを一方的に推し進めるのではなく、まずは当事者である本人の意志や希望を確認し、尊重することが大切であるということです。また、退院した方が、地域で安定した生活が送れるような基盤づくりとして「住まい」と「生活の場」を提供すること、さらには、地域で孤独にならない継続的な支援を構築することが必要であることです。そのためにも、私は、今回の研修で学んだことを本県の事業に生かして、医療機関や地域で活動されている方々と連携し、多くの方が地域で安心した生活が送れるように、日々の仕事に励んでいきたいと思います。

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