報告

「課題別研修/ソーシャルワーク研修2017・春〜知識や技術を高めよう〜」を受講して

2018年3月17日(土)、18日(日)、林野会館(東京都文京区)にて、「ソーシャルワーク研修2017・春」を開催しました。ここでは、ご寄稿いただいた修了者からの報告記事を掲載します。


・ テーマ1 働くことを支える〜産業精神保健福祉分野のPSW養成基礎講座〜

     
実践報告 演習 代表者による修了証書授与

■産業に携わる上で、PSWとして大切にしたい芯と視点

(医)新光会 不知火クリニック(福岡県)/経験年数5年 中間 智子

 私は、PSWの資格取得後、発達障害を抱える方々の就労支援や休職中の方向けのリワーク支援に携わり、現在はクリニックに所属して、リワーク業務やケース対応を行うと同時に、EAP業務も兼任しています。産業分野の研修に参加するのは今回が初めてで、緊張と不安が入り混じった気持ちで臨みました。実際に参加してみると、講師の皆さまのエネルギーの高さに驚きました。良い意味で、イメージしていた雰囲気と全く違い、気づけばあっという間に時間が過ぎ、終了後は心地良い疲労感でした。

 午前中は、産業精神保健の概要をきいた上で、様々なフィールドで働く方々の実践例をききました。企業では仕組みや枠組みが必須になる一方で、課題の多様化により、従来の枠組みでは対応が難しいケースも発生している現状があります。産業に携わるようになって、一番戸惑ったのがスピード感でした。気持ちが焦ることもありますが、支援者の主観や枠組みだけで動いていないか立ち止まって点検し、“その人が望む生活(働き方)は何か”を置き去りにしないように、PSWの芯を再確認できました。

 午後は、クライエントの理解と援助者自身のセルフケアに関する演習でした。対人援助は答えも終わりもないので、行き詰ったような感覚になることも多いですが、グループワークを通して、“話すこと”“相談すること”がいかに援助者側の整理につながるか、話して検討することでクライエントを置き去りにしていないかの確認にもなるのだと、チームで働く意義を実感したところです。また、アセスメントの仕方として、休復職ケースだと、本人への対応だけでなく、職場の上司や同僚にはどう映っていたのか、職場や家族が抱えている不安は何か、業務パフォーマンスはどうか、リワーク(集団)の中でのコミュニケーションはどうかといった、集団の中での本人の様子を拾うことも大切で、連携で活かせるPSWの強みだと感じました。 

最後のセルフケアの話の中にあった、「人を支えるPSWがいきいきと働けているか」の言葉は印象的でした。“働くこと”を支えるために、まずは自分自身のメンテナンスを見直し、丁寧に生活していきたいものだなと痛感し、援助者の生活の仕方が良い支援にもつながっていくように思いました。最後に、このような研修の機会をいただけたことに感謝し、自分の中に援助者としての芯をもって、丁寧な支援を続けていきたいと思います。ありがとうございました。


・ テーマ2 司法精神保健福祉領域におけるPSWの挑戦〜加害と被害をこえて〜

     
大岡講師による講義 全体会発表 代表者による修了証書授与

本テーマは、機関誌「精神保健福祉」通巻114号(2018年7月25日)の特集にて掲載します。


・ テーマ3 精神保健福祉士として歩んでいくために〜精神保健福祉士の醍醐味とは〜

     
講義 知名講師による講義 パネルディスカッション

■精神保健福祉士の成長とは

本協会埼玉県支部/経験年数5年 原ア 真人

 講義の中でまず印象的だったのは、先輩方が同じ年代にいるときには、悩み、葛藤が多くあり、泣くほどに悩んだ事、自分にこの仕事は向いているのだろうか。と真剣に悩んだ経験をお持ちであるということです。かかわりの中で悩みクライエントから教わるというお話を聞き、私も多くのことを教わり、多くの葛藤と悩みを感じますが、近ごろ悩み、ゆらぐ体験が少なくなり、日々のかかわりの中で悩む力が衰えていると感じました。それは「かかわりがあるから葛藤や困難も生じるが、かかわりがあるからこそ成長や喜びも感じられる」と話があり、決まった答えがあるわけでないのに、今出せる答えに自信を持とうとして悩みから逃れ、クライエントと協働することを避ける姿勢だと気づいたからです。今ある葛藤や悩みが何かを把握し、取り組むことによって、かかわりで得られる成長や喜びがあると知りました。今私が日々感じている悩み、葛藤はただ力がないというわけではない。出会いがありかかわりを始める為、日々悩み、考えられる力が専門職として必要であり、悩みを見過ごさずにクライエントとの協働に取り組むことが、成長できる力だと捉えなおそうと思いました。

 悩めることは成長につながっていくと感じましたが、かかわりの話はクライエントだけではなく、他職種や上司、関係機関など多岐にわたっていました。「伝書鳩のようになっていないか?」と言う話が特に印象に残っています。私は他職種の言いなりにならないとか、精神保健福祉士として専門性のあることをやってみようと思い、チームや組織のバランスを崩すことがあります。役割や立場の違いを理解して行動をしたいのですが相互理解の不足を感じ、悩みや葛藤を共有せず自分の意見を押し付け、不健康に自信をもって話そうとしていました。けれど「自分の立場や役割を意識しどのような行動をとるのか?今のチームのバランスはどうなっているのか、ほかの人の考えを理解しようと意識することが必要。バランスを崩すと結果としてクライエントに不利益が回る事がある」とお話があり、今の自分は理解する姿勢に欠け、今後の実践では改善していく必要があると感じました。

 気づくことが多く貴重な体験をさせていただいた研修でありました。新たに考える視点を得たことで悩みが増え、今までの私の支援や行動について疑問を感じ反省の思いが多々あります。しかし精神保健福祉士として成長するきっかけをいただいたように思います。

 同じ研修を受けグループワークを通じて、今の葛藤を話し合った仲間ができたことも大切にし、これからの出会いを無駄にせず、成長していこうと思います。
 貴重な機会を頂き、またこのような形で感想を書かせていただく機会を頂きましてありがとうございました。


・ テーマ4 共生社会の実現に向けて、今こそ地域に目を向けよう!〜高齢精神障害者の途切れない生活のために〜

     
佐々木講師による講義 実践報告 代表者による修了証書授与

■ソーシャルワーク実践における「価値」の再確認

やたの生活支援センター(石川県)/経験年数20年 吉岡 夏紀

 私は、現在、相談支援事業所で相談支援専門員として働いています。相談支援事業所の利用者は65歳以上の方も年々増え、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所と一緒に支援を行うことも多くなってきました。しかし、実際に連携しようとすると、互いの制度に関する理解不足や支援についての考え方の違い等から連携しづらいと感じることがよくあります。今後、さらに増加するであろう高齢精神障害者にとって必要な支援や連携ができるよう、介護保険の制度や支援の在り方についてあらためて学びたいと考え研修に参加しました。

 午前中は、地域包括ケアや地域共生社会の意義、介護保険の動向や現場でのケアの在り方について座学で学びを深め、午後は実践報告、小グループに分かれての演習等、盛りだくさんの内容で、高齢精神障害者の支援の在り方についてさまざまな視点から学ぶことができました。研修に参加し感じたことの一つ目は、私自身が、地域にある社会資源を「障害者分野」「高齢者分野」等と分けて考え、限定的な活用しかできていないのではないかということ、二つ目は、支援者側が問題や課題を解決するために福祉サービスを活用することにとらわれ、ご本人が持っている力や社会資源を活かせていない場合が多いのではないかということです。

 研修のなかでは「ソーシャルワークの概念が重要」であると繰り返し述べられていました。ソーシャルワーカーは、分野等にとらわれず社会資源を広く把握し活用していくと同時に、単にサービスを繋ぐのではなく、ご本人の暮らしを繋ぐような支援が必要であると感じました。人の暮らしには連続性があり、暮らしの中にはご本人にとって支えとなっている有形無形の社会資源があります。高齢者であっても障害者であっても、互いにかかわりあいながら生活者としてのご本人や、ご本人を取り巻く環境を理解し、自己実現にむけ協働していかなければならないことに何ら変わりはないとあらためて確認することができました。今回の研修では、どのような現場にいても変わらない「PSWの価値」について再確認できました。今回の研修で学んだことを今後も大切に現場実践をしていきたいと思います。


・ テーマ5 ケースワーカーからソーシャルワーカーへ〜個別支援で完結せず、地域ニーズに向き合い地域福祉の向上を目指す〜

     
吉澤委員による演習 演習 代表者による修了証書授与

■ケースワーカーとソーシャルワーカーの違いって何だろう?

山梨県立北病院(山梨県)/ 経験年数4年 久保木智洸

 大学を出て4年、病院のワーカーになって3年が経ちました。3年間スーパー救急病棟を担当しています。そのため医療保護入院の患者さんと初めて出会う時、僕は「退院後環境生活相談員」と自分を紹介します。医師や看護師からは「ワーカーさん」と呼ばれます。そして、任意入院や措置入院の患者さんに対しては「ソーシャルワーカーの久保木です」と挨拶をします。患者さんのご家族からは「ケースワーカーさん」と呼ばれる事もあります。家族や友人からどんな仕事をしているのか聞かれると、分かりやすいように「病院の相談員だよ」とも答えます。

 一体自分は何という名前の職業なのだろう? そもそもこの言葉の違いは何だろう?
 そんな疑問を漠然と持っていました。そんな時、今回の研修に参加させて頂く機会がありました。

 午前中は僕が病院で担当したケースを元に野中式事例検討を行いました。そして他の参加者の方々からの質問に答えていく内に、自分が見えていなかった(あるいは考える余裕の持てていなかった)情報や視点がある事に気がつきました。入院しているご本人のみならず、家族を支える支援者も必要なのではないか、それは誰がするのか、その人に繋ぐのは誰か、という視点です。ケース検討を通して、自分の支援を客観的に見るという体験ができました。

 午後は午前中の検討を元に、ミクロ(個人、所属機関)、メゾ(市町村)、マクロ(国)の課題を取り出し、そこから主にメゾの課題の解決方法を検討しました。このケースの課題は市町村にこういった機能があれば解決出来るのではないか、という視点です。これは、ただ日々のケースワークに追われてルーティーンで仕事をしていると、考えることを忘れがちな視点だと思います。ケースを通して、その裏側にある家族、支援者の出来ること、支援機関の役割、機能を常に意識していないといけないからです。何となく日々の業務をこなしていたらただの「ケースワーカー」になってしまうのだという危機感を持ちました。

 この研修を通して、大学の授業で習った「虫の目と鳥の目」という言葉の意味がやっと感覚的にわかりました。虫の目はケースワーカーとしての目線、鳥の目がソーシャルワーカーとしての目線なのだと思います。そして、その目線を自由に行き来できるようになる事が、僕たちワーカーに必要なのだと学んだ研修会でした。


・ テーマ6 実習指導者フォローアップ研修〜実習指導の質を高めよう〜

     
山田講師による講義 岡本講師による講義 代表者による修了証書授与

■実習指導研修で学んだこと

川口市役所障害福祉課(埼玉県)/経験年数11年 佐野 美貴

 2018年3月18日にソーシャルワーク研修2017・春「実習指導者フォローアップ研修〜実習指導の質を高めよう〜」に参加しました。私は今まで精神科病院で勤務しており、病院では実習指導をおこなっていました。病院での実習指導は、病棟やデイケアなど機能が分かれていることもあり、実習の目的やその場その場で経験してもらいたいことなど、比較的病院で決められた実習プログラムに沿って実習指導をおこなっていたように思います。職場が変わり、現在行政の精神保健福祉士として勤務しているなかで、行政での実習指導はどのようにすすめていけばよいのか、そもそもこれまでの実習指導はきちんとできていたのかと不安に感じ、そのような時にこの研修のことを知り受講を決めました。

 研修は主に講義で、まずは実習の状況や課題、スーパービジョンについて学びました。そこでは、実習指導者講習会受講前・受講後の声や実習指導の課題について、スーパービジョンの機能などを学びました。また、事例をとおして実習生にどのようなスーパービジョンを行うか、具体的な「問いかけ」や「問いかけの意図」を話し合いました。
 その後は、実習計画を立てる上でのプロセスや実習記録を用いた実習指導、最後に実習評価についてのポイントについての講義でした。1日の研修をとおして、実習指導の事前準備から評価まで一連の流れのなかでのポイントを学ぶことができました。これまでの実習指導では、前述のとおりあらかじめ病院の方で決められた実習プログラムに沿っておこなっていたので、振り返ってみると事前準備は事務連絡の場だったように思います。岡本さんの講義の中で「実習指導のプロセスはクライエントの支援のプロセスと同様である」とのお話がありました。実習生がどのようなことを学びたいのか、どのような目的を持って実習に望むのかということを、しっかりとオリエンテーションから話あうことが大切だと感じました。また、実習記録の活用によって実習生が気持ちを振り返ることができたり、実習生と指導者のコミュニケーションを図ることができ、より実習が深まるということを学びました。実習記録の返却は、通常業務に取り組む中でついつい遅れがちだったように思います。早く返すことで、翌日の実習に繋がる振り返りができるのだと感じました。

 実習指導は未来の私たちの仲間と関わる大切なものなのだと改めて感じました。実習指導者は実習生が始めて出会う精神保健福祉士であることも多く、その人のモデルともなるものと思います。そして実習指導をとおして、実習生との関わりの中で指導者自身の成長も得られるものだと思います。今年実習指導に携わる予定なので、今回の研修で学んだことを活かし質の高い実習指導を行えるようにしたいと思います。研修の機会を頂きありがとうございました。


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