報告

「課題別研修/ソーシャルワーク研修2014〜知識や技術を高めよう〜」を受講して

2014年11月1日(土)、2日(日)、タイム24(東京都江東区)にて、「ソーシャルワーク研修2014」を開催しました。ここでは、ご寄稿いただいた修了者からの報告記事を掲載します。


・ テーマ1 業務指針の意義と実践的活用に向けて

      
分野別業務指針を講義をする赤畑講師 会場の様子 演習の様子 代表者による修了証書授与

■業務指針の活用に向けて

医療法人財団明理会 埼玉セントラル病院(埼玉県)/経験年数8年 阿久津 梨奈

 今回私が研修に参加させていただいた理由の一つとして、PSWの専門性について向き合う機会を作りたいという想いがありました。特にここ数年は後輩を指導するようになりましたが、そういった中で直面したのはいかにして専門性を伝えていくかという課題です。言葉ではなかなか説明しづらい業務であるため、新人のソーシャルワーカーは実践的な基本姿勢や専門性に迷い葛藤し、行き詰ることが多くありました。また、指導する側である自分自身も分かりやすく言語化できず、もどかしい思いをすることがありました。そこで体系化された業務指針を学ぶことで、根拠に基いた厚みのある丁寧な指導をしたいと思ったのです。

 そのような気持ちで臨んだ研修でしたが、特に印象に残った点がいくつかあります。まずは、精神保健福祉士の「業務」そのものの定義を明確にすることの困難さです。そのことは、「精神保健福祉士 業務指針及び業務分類 第2版」を作成するに当たり、「精神保健福祉士業務指針」作成委員会の中でも言葉の一つひとつの見解が異なったということに良く表れているように感じました。可視化しづらいことを甘えに「何となくこうだろう」でやっていては、個々の専門性の確立は困難であるということを改めて学びました。

 後半のグループワークでは、それぞれの方の置かれている状況や日常的な業務への取り組み方にふれながら、業務指針をどのように活用したら良いか話し合いました。成果や効率化ばかりを求められPSWとしての自己の立ち位置が分からなくなっているという話や、他職種との協働の中で本来PSWが行うべき業務なのか分からず、専門性をいかにして発揮したら良いのか迷うことがあるという意見がありました。そういった時にこそ一度立ち止まり、業務指針を活用しながら視点や価値、理念と向き合えるようにしたいと話し合いました。

 最後に、研修を終えて改めて感じたのは、重要なのは枠組みにきれいに収めることではなく、PSWが関わったことでどのような効果や意義を持たせられるかだということです。 PSWの業務は、個人を取り巻く環境や支援する場によって状況が大きく異なるため、一つとして同じケースはありません。今後も様々な場面で迷い、悩むことがあると思います。そういった時に漫然とただこなすだけの業務をするのではなく、業務指針と照らし合わせながらきちんと意味付けし、足りない部分を補えるようにしたいと思います。


・ テーマ2 支援の姿勢と面接技法を学ぼう〜明日から生かせるかかわりを考える〜

       
面接の基本を学ぼうを講義する西銘講師 コミュニケーション演習の様子 グループの様子 代表者による修了証書授与

■テーマ-2 支援の姿勢と面接技法を学ぼう〜明日から生かせるかかわりを考える〜を受講して

千葉県支部構成員/経験年数2年 土田 卓也

 今回の研修を受講した動機は、精神保健福祉士として実務経験が浅い私が、支援業務をするなかで、特にクライエントとの面談の方法や自身の話し方などについて悩みを抱いたところに今回の研修の案内が来たことがきっかけとなりました。
 今回の研修でに参加し、結論から申し上げると、面接の技法や支援への姿勢を考えるだけではなく、私の人の接し方、かかわり方を再考するきっかけになったと思います。

 ソーシャルワークの基本の確認、西銘先生が、「自分で相談が無理だと感じたときに顔や表情、態度に出ていないか?」のお話に私自身が業務の忙しさにかまけて支援をするクライエントの理解や相談に至った生活の困難とそれ自体に対する不安を考えて面接していなかったのではないかと思いました。私は何をする人なのか?自分の言葉で専門性を語れるか?といったことが私自身の足元の確認が不十分であったと再認識しました。「頭はクールでハートは熱く」自分の行動を振り返り、ニュートラルな気持ちで聞く準備をすることの大切さを講義、演習を通じて再確認、自分の面接の仕方の癖について気づきを得ました。

 また、講義の中で紹介された奥川幸子先生の言葉で「サポート(援助)の事を手当てと呼ぶ」といったお話は、私にとって大変感銘を受けた言葉でした。手当てという言葉は私が本などで学んだサポートするといった言葉よりもっと奥深く、援助の技術や基本は学んだつもりではあっても、その実践課程において面接の出口(目安と方向性)にばかりを考えてしまってはいないかと私自身の援助技法について自己点検の必要性を強く感じました。

 講義の中で、「どんなに未熟でも役に立ちたい」という気持ちが私の目標、私の目的になってはないか?といったお話は、クライエントと協同しアセスメントに基づいた支援をするといった基本姿勢について、私自身が支援者として未熟であることに逃げ場を求めていたのではないかと感じた瞬間でもありました。

 面接の基本と具体的なスキルの取得の演習の中で、実践的に支援者やクライエント役をしてフィードバックを他の受講者の方から私の面接の癖、特に身振り手振りが相手に対してどの様な印象を与えているのかを客観性を持って教えて頂いた事は、私の自己点検を行う上で今後、とても役に立つと思っています。

 観察するといった視点は目の前にいる人に対してきちんと向き合う、経験でもなく知識でもなく姿勢。足元を見つめる棚卸、立ち止まって自分の行動や関わりを振り返ることが質の高い支援に繋がる事を演習と講義を通じても学ぶことができました。

 このことは、クライエントへの支援の姿勢、面接技法ということだけではなく、私自身の人との関わり方について、再考するきっかけを与えて頂いたと思います。
 今回の研修を設けて頂いた講義頂いた西銘先生、鈴木先生本当にありがとうございました。今回の研修の資料は私が支援業務にあたる上で、面接の前に見返す貴重なバイブルになっています。本当にありがとうございました。


・ テーマ3 精神保健福祉士による災害支援活動

       
セッション1を講義する鴻巣講師 会場の様子 演習の様子 代表者への修了証書授与

■精神保健福祉士が行う「支援者支援」

成田市社会福祉協議会(千葉県)/経験年数13年 松田 裕児

 小職が課題別研修の中で本テーマを選んだ理由につきましては、正直なところこの頃の災害対策や復興支援に対する低下した想いを鼓舞させるためでした。

 先ず受講の感想として、派遣型の災害支援に関わる上で土台となる「支援者支援」への再確認をし、改めてその重要性を認識できたことが収穫でした。参加者については、北は青森、南は佐賀、宮崎、熊本と全国各地から来られていました。15名でしたがグループワーク型の配慮された講義により人数が少なかった分、お互いの復興支援における経験談の共有もできました。ある県の取り組みでは、DPAT(災害派遣精神医療チーム)の体制整備を積極的に推進しているということで各地の情報も得られ有意義な研修会でした。

 具体的な講義では、やはり「支援者支援」について再考する機会となりました。発災からの期間の違いや単独派遣か或いは他職種チームの一員としての従事なのかなど、我々が直面する状況は様々ですが、通常とは異なる地へ一時的に赴くことを考えますと、目前の凄惨な状態だけに捉われるのではなく、現地支援者の魂が込められたこれまでの支援や将来再構築される支援とを同時に意識することの大切さを思いました。被災地に赴く我々も地域住民に対し直接かかわりを持ちますが、その瞬間に現地支援者の姿がなくとも常にその存在を意識しているかどうかにより、現地での支援のバトンの受け取り方や渡し方が大きく変わるものだと思いました。

 例えば、派遣される身の我々が退院支援に従事することになった場合、ついつい普段の視点を用いたその地には存在しないかもしれない社会資源ありきで関わり方などを志向してしまうことの危惧についても講義の中で説明がありました。支援者支援ということを踏まえることは、被災地から求められている役割に対して余計なことや過剰介入の回避ができると認識しました。支援となるとややもすると直接的かつ積極的に被災された方へのかかわりを希求しがちな自分がおりますので、被災者でもある現地支援者の継続性を保つためにも何をすべきかについて学ぶことができました。支援者支援の在り方については、障がいがある当事者が自分で自分を主体的に助けていけるように普段我々が支援者として持つ弁えに通ずるものがあると思いました。まさに平時から確固としたかかわりができていなければ被災地においても役立つことはできないということを認識した1日でした。


・ テーマ4 PSWの成長を支える力〜失敗からの学びとOJT、SVの活用〜

       
「それでもPSWやってます」の講義の様子 シンポジスト 演習の様子 代表者への修了証書授与

■専門性が磨かれるスーパービジョン

世田谷区社会福祉協議会(東京都)/PSW経験年数1年 及川 祥子

 ソーシャルワーカーの活躍の現場は、医療機関だけではなく広い分野で求められている中、他職種の人達と同じ職場で自分のもつ専門性との違いがわからなく、日頃から浮かびあがる違和感を解決できずに業務をこなしていることに疑問を感じていました。

 そこで職場で行なわれているOJTだけではなく、スーパービジョンによる効果や意味について理解ができていなかったため、研修を受講してみました。

 新人・初任者の私には、10年以上の経験をもつ先輩方の失敗体験談は、たいへん衝撃的な内容でありました。言葉にうまく表せない出来事について本音で当時の思いを振り返り、言語化することで行動を顕在化して何が原因であったのか、どうすれば良かったのかを考察していることに驚きました。失敗を次の糧にすることでその専門性が磨かれていくことがわかりました。また、実際に私の身近に起きた事例をもとに7名のグループでスーパービジョンを体験することができました。それぞれ所属機関・経験年数・年齢が異なりましたが、各人とも同じような課題があり、共通する悩みでもあることに気づき「どう解決していけばよいのか」を考え一生懸命に問い直す姿勢を共感する中で、共に成長できPSWという同じ専門性を持つ仲間として理解できる時間を持ちました。

 スーパーバイザー(SVR)による同じ事についての繰り返しの質問には、自分一人で解決策が見つけ出せない不安、焦り、孤独感を感じるところがありました。しかし、思いを受け止めながらも、誘導や強制ではなく静かに見守りながら待っていてもらえる環境は、しだいに自分の中の深い部分に光を当て、無意識に生じていた違和感や引っ掛かりの思いを再確認しはじめ、自分の可能性を自ら見つけ出すことで何か大きな壁を乗り越えたような感覚がありました。

 日頃からOJTやSVを十分に受けることができずに悩んでいる方も多く、孤立化しやすい状況にあります。今回の研修からSVRとSVEが互いにその専門的力量を向上させることができ、共有する「ソーシャルワーカー魂」に接近することがわかりました。

 生きている中で悩みを持つことや自分の失敗を失敗と認めることにマイナスなイメージを持っていましたが、新しい自分へと向上させるチャンスであると思い直せる機会を得ることができました。


・ テーマ5 改正精神保健福祉法と本人中心の支援〜退院後生活環境相談員と相談支援専門員〜

       
「本人中心の支援とPSWへの期待」を
講義する門屋講師
会場の様子1 会場の様子2 代表者への修了証書授与

■二日間を振り返って

加賀こころの病院(石川県)/経験年数2年 嵒 彩乃

 今回、初めて日本協会の研修を受けました。この二日間で特に印象的だったのは各講義後に行われるグループでの演習でした。研修が始まる前は「演習ばかりでどうしよう。上手くできるかな。」と不安に思っていましたが、ファシリテーターの方達が演習を盛り上げてくれたので私の不安もすぐに消えました。各講義後に演習が組み込まれていたので、講義を聴いて印象に残った言葉や実践に取り入れてみたいことなどアウトプットすることができ、ただ聴きっぱなしの講義ではなく自分自身の立場や実践に引き付けて考えることができたのではないかと思います。

 私は現在、医療機関の精神保健福祉士として働いています。日々の仕事の中で医療機関と地域との間で支援に対する考え方の違いや求めていることの違いを感じることがあります。お互いの専門性は同じであるのにどうして伝わらないのだろうと悩むこともありました。グループワークでも同じようなことを医療機関の方も地域の方も話しておられ、お互いが“わかっているだろう”“伝わっているだろう”と思い込み、お互いの歩み寄りが足りながかったのだと気づくことができました。丁寧にお互いの事情をすり合わせることで、気持ちよく支援できるのではないかと思いました。

 グループワークの中で、定期的に他機関との交流を行っている方や多職種の勉強会に参加されている人もいました。他職種や他機関との連携が大切と言われていますが、仕事上だけの付き合いだけでなく、お互いに顔の見える関係を作っておくこともソーシャルワーカーの力量になるのではないかと思いました。毎日忙しい中、業務以外の交流会や勉強会に参加することは億劫に感じることもありますが、相談しやすい仲間を作ることでネットワークが広がり、支援の幅も広がりソーシャルワーカーとしての力量が増すのではないかと思いました。また、そのような仲間が増えることでこれからの地域作りにつながっていくのだと思いました。

 私自身今は目の前の仕事で手一杯になっている状況ですが、今回の研修で学んだことを参考に、支援の幅を広げられるようご本人さんとのかかわりはもちろん連携する他機関、他職種の方達との連携を丁寧に行い、今後のご本人さんへの支援につなげていきたいと思いました。貴重な二日間をありがとうございました。

■本人中心の支援について学んだこと

特定医療法人共和会 特定相談支援事業所みらい/経験年数11年 白井 暢子

 11月1日2日、東京都で行なわれたソーシャルワーク研修2014に参加させていただきました。

 研修は、講義の後にグループワークで自分たちの現状や課題を挙げて話し合い、振り返るという形で行なわれ、精神保健医療福祉の動向を踏まえ、本人中心の支援とは何かを考え、それをしていくための連携・地域づくりの仕方について考えていくという、内容の濃い研修でした。

 講義やグループワークを終えて、これまでの支援を振り返ると、本人の希望していることが、今の生活から考えるととてもできるとは思えず、危なさを感じた時には、失敗を恐れて「本人の安全のため」と思い支援をしてしまうこともあったように思います。しかし、講義の中では、本人に情報を伝え、コミュニケーションをとりながら本人の希望に寄り添うこと、保護ではなく見守りが必要であること、失敗から当事者も支援者も学ぶことも多く、環境を整え支援していくことが、私たちにできることであると学びました。

 これまでを振り返ると、日々の業務に追われ、連携づくり・地域づくりは当事者支援をしていく中で自然にできていくものと思っていましたが、もっと自分の地域に関心を持ち、地域の課題を自分の課題として意識して、地域の課題を声に出していくことが、当事者のよりよい支援に結び付くのだと再認識しました。

 私は相談支援専門員として働き始めて1年が経ち、日々の業務の中での迷いや不安などを整理したい思いで今回研修に参加させていただいたのですが、門屋先生の講義の中で、本人不在でされてきた精神障がい者への処遇や法制度に対する怒りが門屋先生の原点で、原点に戻る・振り返るということの大切さや、「自分たちの目標・目的を忘れないように、自分たちは期待されているという実感を持ってほしい」という力強い言葉をいただき、とても励みになりました。

 今回の研修を通して、様々な地域で意欲的に活動されている講師の方々や、グループワークで医療・福祉・行政と様々な立場の方々の話を聞く機会になり、たくさんの気づきがありました。貴重な研修の機会を与えて頂き、ありがとうございました。


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