2012年9月22日(土)、23日(日)、昭和女子大学(東京都世田谷区)にて、「ソーシャルワーク研修2012」を開催しました。ここでは、3つのテーマの各修了者からの報告記事を掲載します。
夏目講師による講義1 | 柏木講師による講義4 | 演習の様子 | 代表者による修了証書授与 |
横浜丘の上病院(神奈川)/経験年数2年目 中本 菜月
テーマ1の“「医療」と「地域」の有機的な連携とは?”に、医療機関に勤めるPSWとして参加させていただきました。権利擁護、家族支援、法律。どれも身近であるこの言葉たちに、なんとなく苦手意識を持ってしまっていた自分がいました。その克服のためにもいろいろなお話を伺い、考えていきたいと思い臨みました。
権利擁護についての講義では、身近に潜む権利侵害に焦点があてられていました。「権利擁護」という言葉に、どうしても堅く難しいイメージを持っていたところがありましたが、講義では具体的な日常業務の例が用いられておりイメージしやすく、とても身近なところに権利侵害の可能性があることに気付かされました。何気ない患者さんとのやりとりであっても少し立ち止まって、自分がどの立場で、なぜそういった関わりをしていくのかをきちんと明確化していく習慣や、「気付き」が必要なのだと改めて気付かされるものでした。
私自身日々の業務の中で一番悩むことの多いテーマであった家族支援についての講義では、「家族は『家族』という重荷を下ろすことはできない」という言葉がとても印象的でした。家族には家族自身の生活がある中で、家族からの支援が当たり前のことと思ってしまっているところがないか、考えさせられるものでした。一番近くで本人を見てきて、多くの体験をされてきているご家族と一緒に悩むというプロセスを、もっと大切にしていきたいと思いました。
地域の法制度ということで、障害者自立支援法の最近の改正によって変わった点についても学びました。サービス計画案の作成のためにサービス利用開始までに時間がかかる、といった課題があげられていましたが、実際に今、計画案の作成に時間がかかっているケースがあり、この課題に直面しているところです。「法律」と聞いただけで苦手意識があった分野ではありましたが、とてもわかりやすく身近に感じられ、今回の講義で理解を深めることができました。
長期入院と共に高齢化しつつある精神障害者の実際の講義では、高齢のために生活することの不自由さや、自らのこれからの生活を選択できない状態に長く置かれてきた患者さんにとって、どのようにPSWとして関わっていくのか考えなければならない問題であると感じました。
各日とも演習がありましたが、全国のPSWの皆さんから地域によって異なる資源や、機関によって異なる役割についてもお話を伺うことができて、とても勉強になりました。また、支援者側の考える支援になってしまわないように、本人のニーズを汲み取っていくことをじっくりと大切に行っていかなければならないと、改めて気付かされるものになりました。
初めての課題別研修の参加でしたが、2日間じっくりと今の自分自身の課題についても考えを深めることのできる有意義な時間を過ごすことができました。苦手意識からも抜け出せたように感じます。所属に持ち帰り、地域や関係者との連携に実際に取り込んでいきたいと思いました。またこうした研修を自己研鑽の場として積極的に参加させていただきたいと思います。ありがとうございました。
東講師による講義1 | 会場の様子 | 三溝講師による講義2 | 演習の様子 |
曽我病院(神奈川県)/経験年数3年 相原 元
私は神奈川県小田原市にある精神科病院で急性期病棟を担当しています。当院では認知症の患者様は認知症病棟だけではなく、急性期病棟にも入院することがあります。3ヶ月の期間の中でどのようにすれば地域で本人らしく生活できるのかを悩みながら関わっていました。今回の研修に参加する目的として、「退院支援・地域連携パス」を活用することのメリットについて知りたいという思いと、もし活用しなくても認知症の人の退院支援について勉強することができればという思いあがり 、参加することに決めました。
研修の内容は、講義と事例を通したグループ演習を中心としたものでした。まず、「認知症の人の理解と生活のとらえ方について」と、「退院支援・地域連携パスの活用方法について」の講義を受けました。次にある事例をもとに「退院支援・地域連携パス」活用して演習 を行いました。
講義を受けて、今までのアセスメントでは本人のサービス利用状況や家族状況(経済状況、仕事内容や本人との関係性など)を中心とする情報収集と、本人よりも家族の希望が強く影響した退院先を目標とする退院支援になる時もあったので、振り返る良い機会になりました。具体的には認知症の人の世界観、行動の意味を理解することが必要であることを学び、本人は何ができ、何ができないのかを見極めることの大切さを学びました。
演習では時間の関係上、ケア会議までに病院と地域がすべきこととその目的、ケア会議で何を検討すべきなのかを中心に学びました。「退院支援・地域連携パス」のメリットとして、シートに書くことで目に見える形で残すことになり、何について検討しなければならないのかを本人・家族含め、関係機関内で共有しやすいと思いました。記入上の留意点で、本人=「私」の言い方を統一し、「本人の希望」と「関わる関係者と家族の希望」と を明確に区別することが書かれており、関わりの中で本人を意識する大切さを再認識できました。また、地域でどんな生活を送っていたのかなどの情報を地域関係者からもらうことで、病院内では分からない本人の一面を知ることができるので、入院した後も地域と病院間で関係が完全に途切れてしまわないよう繋げていく役割も必要だと思いました。
今回の研修で、普段の業務の中では中々できなかった「関わりの振り返り」をする貴重な機会を頂きました。また、演習でのグループのメンバーさんからの積極的な意見を聞くことができたり、グループの中には意欲的な大学生もいたりとグループにも恵まれました。最後に魅力的な研修をいつも企画して頂きまして有難うございました。
開講式 | 講師の藤田先生 | 会場の様子 | 代表者への修了証書授与 |
グループホーム サン・ビレッジ(熊本県)/経験年数5年 村田なつみ
相談面接は業務として日常的に行ないますが、「自分のやり方で大丈夫なのかな?」という不安を感じていました。今回、藤田さかえ先生の講義の中で、「先輩ワーカーの面接に同席し学ぶ機会はあっても、理論、技法として学ぶ機会は少ない。」とあったように、自分の面接を他の人に見てもらいフィードバックしてもらう機会は滅多にありません。自分の面接を「知る」ために、今回の研修に参加させていただきました。
研修の内容は、「インテークに関連して」「面接の基本的・具体的なスキルを学ぶ」と大きく二つに分かれており、講義と演習を交互に繰り返す形式でした。講義の中で特に印象に残ったのは、「クライエントがすっきりして終わるのが必ずしも良い面接とは限らない」というお話でした。その方の問題意識や不安がエネルギーにつながる、つまり面接で何かしらのひっかかりが残ることがその方の中にある解決能力を引き出すことにつながるということです。これまでそのことを意識して面接を行なったことがなかったので、大きな発見でした。
演習では、四人のグループでクライエント、面接者、観察者を順番に回し、面接で気づいたことを忌憚なく話し合っていきました。クライエントをしてみると、「患者さんって実はこんなことで困っているのかな?」「この言葉ってどんな思いで言っているのだろう?」等、一つ一つの言葉を丁寧に吟味し、思いを馳せている自分に気がつきました。面接者をしてみると、自分の苦手な部分、できていない部分がよくわかり、少し落ち込みました。観察者をしてみると、面接者の方が大事にしているところ、非言語的な部分でのその人らしさを感じられ、温かい気持ちになりました。それぞれの役割を経験することで、気づきの幅が広がったように思います。
今回の研修を通して、今後の課題を二つ挙げました。まず、研修での学びを自分が行う面接に生かしていくことです。私は感情の反射が苦手で、問題解決を急ぎすぎてしまう癖があるとわかりました。その方が感じていることをさりげない言葉で代弁し、主訴に寄り添う技術を身につけていきたいです。二つ目は、職場内でも面接技法を学べる機会を持ちたいです。第三者のコンサルテーションや逐語録などの方法があると伺いましたので、職場内の勉強会でも取り入れていけたらと思います。自分の面接を人に見てもらうのは少し照れくさい気持ちもありましたが、それ以上に得るものが多い研修になりました。