2009年11月14日(土)、15日(日)、味覚糖UHA館・東京(東京都港区)にて、「ソーシャルワーク研修2009」を開催しました。ここでは、4つのテーマの各修了者からの報告記事を掲載します。
講義会場の様子 | 佐々木講師による講義・演習 | 演習 | 修了証書の授与 |
東京海道病院(東京都)/経験年数18年 角田 節子
今回、日本精神保健福祉士協会における初めての認知症ソーシャルワークに関する研修ということでとても期待して参加させて頂きました。私自身のことを言えば、東京都の事業としての精神科病院おける認知症治療病棟を担当して8年になりますが、3ケ月という治療期間の中でのベットコントロールに追われる繰り返しの中、少々疲弊気味の毎日を過ごしているところでの研修参加でした。
そんな私にとって今回の研修は、認知症高齢者にソーシャルワーカーとしてかかわるスタンスについて再確認をすることができ、とてもパワーをもらえた研修であったと感じています。「その人の生活、人生を理解する」「認知症高齢者の世界(行動の意味)を理解する」「医学的な理解よりも人として理解する」などの言葉は、疲弊した心にすっと入ってくるものでした。また認知症高齢者を理解する上で大切なこととして、周辺症状といわれる行動の総てに意味があるという講義にも、とても共感しました。私自身、日々認知症高齢者にかかわるなかで、そうした周辺症状行動は本人が生きてきた生活や人生に直結するものであることを感じます。認知症高齢者を理解していくにはその人の生活や人生に目を向けてその人生を想像していくことが必須であること、そしてそれは一人一人の人生を大切にする視点であり、認知症に限らず総てのソーシャルワークの基本となることであると感じました。
東京都の認知症治療病棟にかかわるPSWは入退院の目まぐるしい動きの中その出し入れの調整に追われつつ、様々な葛藤や矛盾を抱え、認知症患者本人やその家族に向き合うことになります。本人の生活背景や人生に目を向ける視点で認知症高齢者にかかわるという立脚点こそが、そんなPSWを支えてくれる心強い味方であると今回研修を通して改めて感じました。佐々木先生の「本人ときちんと話していますか」という問いかけは、そんな立脚点に戻ってそれを支えに明日から頑張ろうという気持にさせてくれるものでした。
近年精神科病院における認知症に関する入院相談は増加し、入院件数も他の精神疾患に比べて格段に増えています。良くも悪くも今後精神科病院の認知症患者は確実に増えていくと考えられる現状の中、精神科病院が認知症高齢者に果たす役割は何なのか、そしてそこでのPSWの役割は何なのかについて改めて考えていく必要を感じています。
最後にこのような研修の機会を与えて頂いたことを、今回の研修を企画・運営して頂いたスタッフの方々、講師の先生方に大変感謝しております。
藤田講師による講義 | 講義会場 | 演習の様子 | 修了証書の授与 |
都立東大和療育センター(東京都) 宮武 薫
私は発達領域に関する心理士をしています。今回研修内容は私の現在のテーマであるため参加しました。
外来の利用者は知的や行動に困難さを抱える方々です。そのご家庭の多くは精神面での問題を抱えています。母親がアルコールに依存して、虐待やネグレクト状態に陥ってしまい、お子さんの発達に問題が生じるということがあります。お子さんの健康管理や安全が大切ですが、お子さんの生活が保証されると母親へのアプローチがなくなり、家族支援の計画が見えなくなります。このような家庭の子どものケアをしていますが、母に関係している機関からは「アルコールの怖さを本人が知らないと何もできない」と報告を受けます。「お子さんの安全が確保されてよかった」のみでご家族の精神的なケアもないため配慮不足を感じてきました。小児科や心理の外来にこどもを連れた父親が、誰かに自分の思いを聴いてもらい支えてほしい、とおっしゃいました。この言葉から父のみきていただく日を設けていますが、この仕事は私がしていてよいのだろうか?これから何をしていこうか?という迷いがあります。そんな事を思っていた矢先に届いた研修案内でした。
研修は3部構成でその間に演習が入ります。この研修では歴史的背景、概略、捉え方、介入のポイントを学びました。どれも広く深い内容で紙面では述べられないほどです。演習では事例検討では深く考える機会を与えられましたし、ロールプレイではメンバーがおこなった面接から学ぶことが多くありました。特に印象的なのは講義で出てきた「今までの援助法」の項目でした。これはよく耳にしており直面している問題です。この考えは“過去のもの”であり、新たな見解を示すことの必要さを感じました。研修を受けて少し自信がつきました。これまで裏付けが無く心細かったので、強い見方を得た気持ちです。ご家族支援の大切さも確認ができました。講義を聴きながら、接しているアルコール依存の方やご家族の顔が浮かび、利用者さんやご家族にお目にかかるのが楽しみになりました。
今後、もっと世の中がアルコール関連に理解を示していただきたいと思っています。そのためにも、まず私たちが正しい知識と関わり方を広めなくてはいけませんね。
竹島講師による講義1 | 山口講師による講義2 | 演習の様子 | 修了証書の授与 |
内野クリニック(東京都)/経験年数7年目 星 由起子
自殺予防対策や支援に関して、その必要性を感じながらも具体的にどのような取り組みをすれば良いのか、現在はどのような状況なのかということを学びたく、今回の研修に参加させていただきました。
「自殺予防対策」・「自死遺族支援」・「自殺未遂者支援」・「実践報告」と多岐に渡る講義で、非常に盛り沢山の内容でした。その一つ一つが、自殺予防対策には不可欠なことであり、PSWも重要な役割を担っているということを感じました。
自殺を考える方々の多くは、精神疾患に罹患しているといわれています。どこにも相談できずに自殺に至ってしまう人もいらっしゃいます。精神科に受診歴があり治療中の人でも自殺に至ってしまう人もいらっしゃいます。精神科に関わる者として、自殺予防ができなかったことは、非常に悔しく思います。そう思う一方で、私は自殺未遂者や自殺企図者に出会ったときに、どのような関わりや支援ができるのかということに自信がありませんでした。今回の研修で、直面化することの必要性や対応のポイント等を学び、PSWとして出来ることがあり、それをしていかなくてはいけないと改めて考えました。
自殺される方の中には、アルコール問題を抱えた方が多いということが講義の中でありました。精神科に受診し「うつ病」と診断され治療している裏にアルコール問題があるにも関わらず、うつが優先されてしまうということでした。診療所では、多くの場合はご本人だけからしかお話を伺うことがなく、実際の生活状況の詳細を把握することは難しいことです。しかし、「難しいこと」と決めず、生活課題への介入はPSWだからこそできることでもあり、目の前にあることだけでなく、その背景や状況も考え関わることの重要性を再確認しました。また、処方薬による過量服薬等、医療機関が負の循環に手を貸していること、医療機関としての責任について、考えながら日々の業務をおこなわなければならないと思いました。
これまで、自殺予防対策や支援は、別枠で実施される特別なものという感覚がありました。しかし、今回の研修を受け、決して特別なものではなく、日常的な通常業務の中にあるものであると考えることができるようになりました。自殺予防対策は社会的な取り組みと共に一人一人の取り組みも大切となります。今回、学んだ事を活かし、業務の中で実践していきたいと思います。ありがとうございました。
中住講師の講義1 | 会場の様子 | シンポジウム | 修了証書の授与 |
千葉県/経験年数14年 福田 祐子
2009年11月15日。11月とは思えないポカポカ陽気。ソーシャルワーク研修2009〜知識や技術を高めよう〜オムニバス研修に出かけました。協会の構成員となり早○年。研修会に参加したのは数えるほどというていたらくぶり。お気楽PSWとして日々過ごしている私が、今回の研修への参加を決めたのは、研修のテーマ「精神保健福祉士の魅力」に強く惹かれたからです。
私は昨年4月より、うつ病等で会社を休職している方を対象とした復職支援に携わっています。それまでは社会復帰施設のPSWとして働いていました。地域では同僚も連携していくのもPSWが多く、ケース検討も議論するのもPSWのいる場がほとんど、という今思えば大変恵まれた環境でした。
悩んだり落ち込んだり、躓いたり困ったり。そんなときは常に先輩PSW、時には後輩PSWの力を借りて自分の考えを整理、確認しながら今日まで歩いてきました。でも今の職場にはPSWはほとんどいません。一緒に働いているのは他の専門職ばかりです。PSWとしての意見を求められることも度々あります。PSW同士なら「なんとなく」伝わる思いも他職種が相手だとどうも上手く伝わらない。そんな経験を重ねるたびに、自分なりにきちんと伝えられるPSWの思い、基本となる立ち位置を固めなければと強く感じていました。
今回の研修の講師の皆さまは私にとってもちろん大先輩です。皆さまの経験や実践を聞くことで私自身の今までの業務、考え方を振り返り整理していきました。また自分自身なりのPSWとしての命題を見つけ出し、それに向かって日々迷わずに過ごせるようにと思い臨みました。
最大の収穫は「大先輩も私と同じ」と思えたことでしょうか(おこがましいのは重々承知です)。PSWにとって大切なのは「悩み続けること」と「成長し続けること」。白石先生の「これからどんな成長ができるのか、楽しみ」という言葉は強く印象に残っています。何年経っても、いつになっても進化し続けるPSWでありたい。利用者の喜びに立ち会えた時は、私も心から喜びたい。そう思えました。また私は目的、命題を探すことにこだわり続けていたのかもしれません。「命題」は1度決めたら変えられないくらいに考えていました。もちろんそうコロコロは変わってもいけませんが、頭の中をニュートラルにしてみようと思います。命題を探し続け、悩み成長を続けながら、私はPSWとしての人生を歩いて行くのです。
研修に参加して本当に良かった。この文章を書くにもまたまた勉強。機会を与えて下さった皆さまに感謝します。