第14回認定スーパーバイザー養成研修等(2018年度)

2018年8月4日(土)から6日(月)の期間に、大橋会館(東京都渋谷区)にて、「第14回認定スーパーバイザー養成研修・基礎編」「第13回認定スーパーバイザー養成研修・応用編」「第12回認定スーパーバイザー更新研修」を開催しました。ここでは、受講者及び修了者から各研修の報告を掲載します。

基礎編(第14回)

        
講義 演習 閉講式 

 実践編のスタートラインに立って ―自分は「PSW魂」が十分に宿っているか?―

日本医科大学付属病院(東京都)/経験年数11年 大高 靖史

 研修をふり返り、まず印象に残っているのは講師陣の豪華さで、初日会場に入るなり、圧倒されました。研修会場には、日ごろ研修や様々なところでお顔とお名前を拝見するベテランの先生方が、それも受講生とほぼ同じくらいの人数でいらっしゃいました。私は、これだけ講師陣を充実させているのは「本協会がこの研修を重要視し、注力されているのだ」と考えました。私は「今回の受講機会に恵まれた自分はとても幸運だなぁ」と思うと同時に、その重みも感じました。
講義では、日ごろの業務の整理が出来たこと、精神保健福祉士の業務について改めて確認できたことが私にとって大きな収穫でした。またグループワークでは、同期の受講生のするどいコメントに何度も膝を打ち、「さすがベテランの方々だなぁ」と刺激を受けることが多くありました。受講生の専門とする活動領域は様々でしたが、ベテランの受講生が多かったことも、本研修ならではと思います。

 また、講師陣の先生からの珠玉のコメントはとても刺激になりました。講師の先生がご自身のご経験として語っておられた、「(過去にこの研修を受講されて、)自分に“PSW魂”は宿っているかを問い直した」という言葉に私は深く頷きました。精神保健福祉士の重視する価値や、倫理について、私自身は「床の間の掛け軸としてではなく、茶の間の地図として」、馴れ親しんでいたか。精神保健福祉士の専門性については、自分がそれを深く理解し、それを日々の実践で使いこなせていたか。自分が精神保健福祉士のスーパーバイザーとして向き合う前に、改めて問い直し、実践を振り返る必要性を強く感じました。

 講師の先生が仰っておられたことですが、スーパービジョンがもっと盛んに行われ、より良いかかわり各地で広がっていけば、結果として社会全体の社会的復権も進むのではないかと思います。その意味で、スーパービジョンは精神保健福祉士にとっての重要な「業務」の一つであると感じます。

 閉講式では、3日間の濃密な講義、グループワークを終え、私は心地良い疲労感と共にこれから始まる長い長い1年の実践編の研修に思いを馳せていました。改めて「自分に出来るのか?」、「最後までこの課程を終えられるだろうか?」という不安と、「これまでの自分の実践の集大成としたい」、「早く(スーパー)バイジーと出会いたい!」というワクワクが入り混じった気持ちでおりました。講義の中で紹介されていた「ちょっと元気になれるスーパービジョン」という言葉の響きが印象的でした。私も、バイジーとお互いが「ちょっと元気になれるスーパービジョン」をしていきたい、そんなことを目標に据えて、実践編に取り組んでいきたいと思います。講師の先生方、本当にありがとうございました。今後のご指導どうぞよろしくお願い申し上げます。

応用編(第13回)

        
演習 演習  閉講式 

 スタートライン

鷹岡病院(静岡県)/経験20年 山口 雅弘

 思い返せば1年前、まわりからのススメ(強制?)で3日間の基礎編に参加しました。受講前は「自分なんかにスーパーバイザー(以下SVR)が務まるわけがない」という不安でいっぱいでした。しかし、研修を受けるなかでスーパービジョン(以下SV)を求めているバイジー希望者にとって私の不安は関係がないことを思い知り、「とにかく今の自分ができることをやろう」と考えるようになりました。

 基礎編終了後、SV実践に取り組み、それをレポートにまとめて提出しました。査読をしてくださった講師の皆さまには、拙いレポートでご迷惑をおかけしたことと思います。ただ、拙い表現の中でも多くのことを想像して読み取っていただき、私に足りない部分、課題となる部分についてコメントやアドバイスをいただきました。それを自分の中で振り返りレポートを再度作成する過程で、枠組み設定が苦手な自分の傾向や、「何とかしたい」という私の思いでSVを進めてしまっていたことなどに気がつくことができました。終わった今振り返ると、レポートを何度もやりとりすることで、私が講師の皆さまのSVを受けることができたようで、とても貴重な時間だったと感じます。

 応用編では同じ受講生の仲間と再会し、それぞれの実践を語り合いました。演習では、多くの仲間から自信のなさが語られ、不安を感じていたのは自分だけではないと知りました。また、自分の中に「SVRは優秀な人間」「SVはSVRが“教え育て、導く場”」といった“偏見”があったことに気がつきました。

 1年の実践と応用編を終えた今では、SVとはバイジーとバイザーが相互に“育ちあう場”であると考えるようになりました。背伸びをして「優秀なSVR」を目指すのではなく、今の未熟な自分を認めて向き合うことから始めなければいけないと気がつき、肩の力が抜けた気がします。

 未熟な自分を受け入れたことで、SVRとしてようやくスタートラインに立つことができたように感じます。自分だけではこのスタートラインにすら辿り着くことはできませんでした。

 多くの気づきをくれた同じ受講生の仲間、未熟な私たちに寄り添い見守ってくれた講師の皆さま、そして、何よりも私のSVを受けたいと希望してくれたバイジー、すべての方々に心より感謝し、ここから一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。

認定スーパーバイザ―更新研修(第12回)

        
開講式 実践報告  演習 

 「コミュニティ・スーパービジョンを目指す」

ソーシャルワーカー事務所 長楽庵(神奈川県)/経験年数21年 淺沼 尚子

 平成30年8月4日開催の第12回更新研修を受講しました。21名の参加者から各地域の様々なスーパービジョン(以下SV)実践を伺い大変刺激になりました。

 研修は、私が今見ている景色より高い地点から、ずっと遠く(未来)を見渡す課題提起のお話で、視界が拡がっていく感覚を覚えました。頭が追いついていないけれど視界が広がる感覚は、SVを受けた時の感覚と同じです。

 さて、認定を頂き4年が過ぎました。この間、SVに取り組んで思うのは、果たしてSVは今のPSW達に求められているのだろうか?ということです。 管理職的な立場の人はSVの必要性を説きます。しかし、職場外SVを企画すると、なかなか自発的に人は集まりません。同様に「研修も人が集まらない」という話も聞きます。本研修でも多くの嘆きの声を聞きました。PSWが自己研鑽の場に集まらない状況は、今回の講義テーマの一つ「危機」に通じる話です。

 石川先生の講義では「SVをどのように位置付けていくのか」という問いかけがありました。普段私が感じている“集まらなさ”は、ソーシャルワークの学びを深めるプロセスが共有されていない表れなのだと思いました。成長への道筋の中にSVを位置付けていく手がかりとして「ソーシャルワーク学修過程の構造化」の図が示されました。学生も若手もベテランも共通認識が出来たら、職能団体や一個人は何をするのか、養成校は、現場は、地域はどこに重点をおけばいいのか、連続した仕組みを構築できると思いました。

 一方、身のまわりを見るとPSWは様々な機関で活動し、多様な役割が求められています。この状況へのパラダイム転換として、分野を超えたコミュニティでのスーパービジョンが提起されました。今まで個対個の自己研鑽(SV)を考えていた私の頭の中に、地域に散らばったパズルのピースを集めていく絵が浮かびました。

 コミュニティの中で存在を認められるソーシャルワーカーでありたいと願う人は多いと思います。コミュニティの中で働く自分の力を高める手段としてSVをとらえるよう発信していくのはどうだろう。まずは職域(医療、就労、地域活動……)を横断して展開されるSVのイメージを持ってもらう。次にコミュニティで求められる力量を共有する仕かけをつくる。私の地域でも始められることがあると考えています。


※ご報告いただいた方のご所属名と経験年数は、研修受講時の情報で掲載しています。