2014年8月2日(土)から4日(月)の期間に、東京八重洲ホール(東京都中央区)にて、「第10回認定スーパーバイザー養成研修・基礎編」「第9回認定スーパーバイザー養成研修・応用編」「第8回認定スーパーバイザー更新研修」を開催しました。ここでは、修了者から各研修の報告を掲載します。
荒田講師による講座2 | 会場の様子 | 演習の様子 | 全体会 |
かまだメンタルクリニック(香川県)/経験年数15年 齋中 康人
(第10回認定スーパーバイザー養成研修・基礎編)
去る2014年8月2日〜4日、私は、第10回認定スーパーバイザー(以下、SVR)養成研修の基礎編を受講しました。普段の多忙な業務から離れ、3日間集中して研修を受けられることは、私にとって、日頃の実践を振り返る貴重な機会でした。基礎編のメンバーは、聴講者を含めて13名と少人数でした。しかし、内容はかなり充実したものでした。研修は、著名な講師陣が2時間講義し、4、5名によるグループワークで振り返るという形式で、グループワークは、講師陣によるサポーティブな雰囲気の中で行われました。どの講師陣も受容的に接してくださり、講師陣の姿勢から、SVRとしての基本的な態度を学ぶと同時に、講師陣のスーパービジョン(以下、SV)を受けたい気持ちにもなりました。
私が所属する香川県の実情で言えば、SVが浸透しているとは決して言えません。しかし、今回の研修から、私たち精神保健福祉士にとって、SVは欠かすことのできないものだと改めて感じました。SVで取り上げられるのは、私たちの専門性である「かかわり」です。日常業務の中では、かかわりに疑問や違和感を感じても、改めて振り返ることは難しいと思います。かかわりの振り返りは、決して一人でできることではなく、誰かに話し、一緒に考える中で初めて可能になることだと思います。さらに、中堅以降になると、SVR体験を通して、自らの実践を振り返ることに繋がると思います。
今、SVが重視されている背景としては、精神保健福祉士の横のつながりの重要性が問われなくなっていることが挙げられると思います。講師陣は、職域や県を超えて親しそうに自らの実践の話をされていました。その様子から、先輩精神保健福祉士は、所属機関外の横のつながりの中で、ピアSVをしてこられたのだと気づきました。PSWが国家資格化され、業務が定型化し、所属機関に複数名の精神保健福祉士が在籍していることが珍しくなくなった現在において、横のつながりの中で実践を振り返ることすらしなくなっているのだと思います。今回の研修では、少人数、3日間、グループワークが多いということもあり、県を超えた素晴らしい仲間と親しくなれる機会にもなりました。
精神保健福祉士の職域は、多様化してきています。今私たちに問われているのは、それぞれの質の担保と同時にアイデンティティの深化だと思います。だからこそ、SVは欠かすことができないはずです。今後の課題としては、今回感じたSVの必要性をどう香川県に普及していくかです。でも、その前に、まずは実践編、応用編をクリアして、香川県第1号の認定SVRになれるよう頑張ります。ぜひ、みなさん、この研修を受けた方が良いですよ。お勧めします。
開講式 | 演習の様子 | 演習の様子 |
別府大学(大分県)/経験年数20年 尾口 昌康
(第9回認定スーパーバイザー養成研修・応用編)
今回、8月3日に東京で行われた「第9回 認定スーパーバイザー養成研修・応用編」を受講いたしました。思い返すと認定スーパーバイザー(以下SVR)を目指したのは今から6年前で、2008年の第4回基礎編を受講したのが始まりです。その後実践編の中間レポートまでの提出は終えたのですが、その後の最終レポートを提出できずに一度断念した経緯があります。
それから5年。教育機関で仕事をする中で、新人ワーカーが仕事上での悩みを抱え、誰にも相談できず短期間で退職をする場面を何度も見てきました。そこで、思い切って認定SVR取得に向けて再チャレンジすることを決心し、聴講制度を利用して第9回の基礎編を再度受講したあと、実践編へと進ませていただきました。
しかし、「今度こそは!」と固く決心したものの、私にとって今回の受講は険しい道となりました。その中でも最もきつい思いをしたのは中間レポートの提出と、講師の先生方から戻って来た手厳しいコメントです。それにしても、自分自身の至らない部分と向き合わなければならないのは、ここまで辛いことなのかと改めて感じました。
さて、前置きが非常に長くなってしまいましたが、中間レポートの加筆修正と再提出を経て、なんとか応用編に進むことができました。会場でも厳しい指導を受けることを覚悟しつつ重い足取りで向かったのですが、その思いとは裏腹に、受講を終える頃には本当に晴れ晴れとした気持ちに変わったのです。
確かに中間レポートは厳しいコメントが中心でした。でも講師の先生方とお会いして、直接指導を受けると不思議と全てが受け容れられるのです。そして受け取った時は「なるべく見たくない」と思っていたコメントの数々も、「自分の悪い癖を正すことができる」「自分では気づけないが、油断するとそのような状態に陥る恐れがある」「迷ったとき、行き詰まった時に読み返すと良いかも知れない」という捉え方に変わってきたのです。
もし念願が叶って認定SVRになれたとしても、今度は5年以内に受講する「更新研修」しか指導を受けられる機会が無いのだと思うと少し不安になります。でも、もう独り立ちしなければならない時が来たのです。
今回の研修ではお忙しい中、講義やレポートの査読を担当してくださった講師の先生方、そして何より私の拙いスーパービジョンを受けて下さったSVEに心より感謝しつつ、応用編の審査結果を待ちたいと思っている今日この頃です。
開講式 | 佐々木講師による講義 | 演習の様子 | 修了証書授与 |
NPO法人夕なぎ(千葉県)/経験年数14年 山本 師子
(第8回認定スーパーバイザー更新研修)
早いもので、スーパーバイザーとしての認定をいただいてから5年を迎えます。この間、依頼を受けて何人かの方にスーパービジョン(以下SV)を実施しましたが、バイジーの満足度とは異なり、自己嫌悪に陥ることが多々ありました。今回の更新研修は、自己嫌悪に陥る要因を探りたい気持ちも持ちながら参加しました。
事前課題提出の際、バイジーへ連絡しレポートして提出したいことを伝えると「協会の先生たちが見ますよね?もっとカッコいいこと話せばよかった」と笑っていました。過去の自分の行き詰った状況を笑えるくらいに逞しくなっていることに私自身が励まされました。そして「私も『独り言』をよく使わせて貰っています」と言われ嬉しくも思いました。『独り言』とは私のSVのイメージです。
SVと聞くと、さも処刑を受けるような気持ちになってしまうバイジーが多いように思います。未熟な知識やスキルを指摘されるのではないかという恐怖です。私はそのような気持ちではなく、自らの実践の振り返りを自らの力でしていくためのサポートとしてSVを受けて貰いたいと考えています。そのため自分の中で描いているイメージとして「あなたの独り言に最後まで付き合います」と伝えています。自分の気持ちに向き合い、独り言のように自問自答する。その作業は苦しいものになりますが、そこに寄り添い、実践の軌跡を専門性に沿って辿れるよう支える協働作業がSVなのでは、と思います。
そのような寄り添う気持ちで認定SVの実践を積みましたが、いざ研修を目前とすると私自身のなかに「これでよかったのだろうか」という迷いや不安が大きくなります。しかし、そのような気持ちは同じ受講生の実践報告を聞き「皆、迷いがあるんだ」と思う一方で、専門性を高めていくことを怠ってはいけない、とも感じました。
佐々木先生の講義では『専門性の危機』の話に、はっとさせられる内容が多く、ソーシャルワークを業としている間には忘れてはいけない、と心に刻みました。
そして、今回の研修で一番、印象に残ったのは『継承』ということです。『言葉が共通言語としてわかったつもりで使われていないか』という台詞に私たちSVに課せられている課題を感じました。私自身、「言葉」の持つ意味を大切にしていきているつもりです。ですが、正しい意味、その背景を理解して使うことができているでしょうか。自らに問いかけたとき、疑問を抱きます。
「この齢になってから歴史の大切さを感じます」。これは、養成研修の時に講師の先生に伝えた言葉です。佐々木先生の講義を聞きながら鮮明に思い出しました。いまあらためて、継承の大切さ、伝える力の大切さを実感しています。
最後に。今回を最後にSV研修の一線からご引退される先生方の紹介がありました。それを聞いたときに、悲しくもあり、その諸先生方から直接ご指導いただけたことに誇らしさも感じました。先生方から学んだことも糧に、これからも実践を積んでいきたいと思います。