報告

財団法人社会福祉振興・試験センター平成23年度人材養成・研修助成事業
課題別研修/精神保健福祉士による災害支援活動に関する研修を受講して

課題別研修/精神保健福祉士による災害支援活動に関する研修」は、2011年度3回開催しました。ここでは各会場の修了者の方から報告記事をお寄せ頂きましたので、ご報告します。


■福島会場

1月21日(土)、ホテルハマツ(福島県郡山市)において、第1回目の研修を開催し、40名の方が修了されました。

       
会場の様子 講義の様子 演習 代表者1名による修了証書授与

・ 災害支援活動に対する関わり方について

山形県支部 名和 幸輝

 2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方を中心に甚大な被害をもたらしました。その被害は、尊い人命や個人が築き上げた財産に加え、地域の精神保健に関する社会資源といった我々と密接に関連のある宝をも奪い去りました。このような痛ましい災害が二度と起きないことを祈るばかりですが、自然災害はいつどのような状況で再び私たちを危機的状況に陥れるか分かりません。私たちにできることは、平常時から被害を最小限に食い止めるような備えをしておくことや、有事の際には地域に対し精神保健福祉士の専門性を活かした支援を行っていくことであると思います。研修における講師の先生方のお話から、「普段できていることは災害時にもできるが、普段できないことは災害時にもできない=平常時の体制作りが重要」という事実を再認識し、『県支部災害対策計画』を早急に整備し有事に対する備えなければならないと痛感いたしました。

 今回の研修には東北各県をはじめ、日本全国の精神保健福祉士が参加されていらっしゃいました。演習でさまざまな地域の被災現地体験及び被災地・被災地外支援の実践報告をお聞きしたことで、『一口に「被災地支援」と言っても、その被害は地域によって地震、津波、放射能、風評など多岐にわたるがゆえ、その被害により精神保健福祉士の支援及びその方法や精神保健福祉士としての立ち位置を変えること〜被災地域・被害ごとの個別性〜が必要ではないか。』との思いを今更ながら強くした次第です。例えば、津波(水害)による被害が大きい地域であれば、まずは生活基盤の建て直しが必要であり、その支援は精神保健福祉士だけではなく、多機関多職種と連携したスピード感を持ったものである必要があるかもしれません。また、風評被害に悩む方への支援であれば、その方の思いに傾聴し、十分過ぎるほどの時間をかけたアセスメントの必要があるかもしれません。

 私見ではありますが、震災に関連したメンタルヘルスの諸問題については、すでに現在顕在化している問題と、被災から一定期間経過後に表面化してくる問題の両方があると考えます。それゆえ、今後長期にわたる精神保健福祉士による支援がますます必要になってくるのではないでしょうか。我々日本精神保健福祉士協会構成員が専門的視点を活かし、支援の継続性を担保していくことが被災地における復興の足がかりになると思います。皆さん力を合わせて頑張りましょう。

 末筆ではありますが、研修講師を務められた先生方、報道では語られない地域の被災・支援活動状況を語ってくださった研修員の皆様、このような研修を企画していただきました事務局の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。


■岩手会場

2月19日(日)、アイーナいわて県民情報交流センター(岩手県盛岡市)において、第2回の研修を開催。31名の方が修了されました。

       
会場の様子 講義 演習の様子 代表者1名による修了証書授与

・ 震災が変えた研修〜支援活動から学ぶべきこと

東八戸病院(青森県) 秋山 園美

 皆さんはお手元に日本精神保健福祉士協会発行の「災害支援ガイドライン」をお持ちでしょうか。またその冊子に目を通したことはあるでしょうか。
 2012年2月19日に岩手県盛岡市で開催された「精神保健福祉士による災害支援活動に関する研修」に参加し、改めてこの地味で小さな!?冊子から東日本大震災より一年に渡る支援のリレーが始まったことを実感しました。

 奇しくも昨年度の本研修、全国6カ所で開催途中の3.11に震災が発生。東京会場は中止になりました。そして2011年度、同じ研修名で3会場の実施となりました。震災前と後ではこの研修の内容は大きく変化したとのことでした。参加者の意識はさらに変わったことと思います。

 私は5月に東松島に支援活動に入り、その後他団体により2度石巻へ行きました。しかしどの支援活動でも「何もできなかった」不完全感は強く残ったため、自分が受け取り手渡したタスキの全体像を確認する意味での本研修参加でもありました。

 実践報告では(1)被災地(2)被災地支援(3)被災地外それぞれの立場からのPSWが今震災において「行った活動」を中心にお話しされました。場所や時期は違っても自分から家族・自宅・職場・地域・被災地へとあらゆるつながりを活用して安否確認をされたとのことで、誰もが必死だったことが伺えました。

 演習では支援経験者のグループに入り、前半とは180度方向転換「できなかったこと」や「どうすればよかったのか」等の意見が多く出ました。そこから自分たちの活動は支援活動の一部分であり、それらを統合することで「ガイドライン」を肉付けし、より実践に近いものに改定していくことが望ましいと思いました。

 また、Drカルテなどと異なりPSWには共通ツールがないことも問題化しました。これは支援活動の引継ぎでの場面、自身の職場を空ける際に自分の代わりになる存在、どちらにも共通した見えない壁となります。

 これら基本となるハード面と、やはり地域性と時系列を重んじた柔軟な対応(支援)とのバランスはとても大切です。
 また会場では、さまざまな方にお声掛けいただき「災害支援活動時の孤独感」は否めないけれど「災害支援活動者の後方支援者」は想像以上にたくさんいたのだと思いました。その方々のおかげで初めて支援活動ができたことを改めて感謝しました。
 これら所感は皆さんからの意見を聞くことにより導き出されたものです。

 このように聴講するだけが研修ではありません。共通ツールを持たず、日頃見えない壁と戦っているPSWにこそ研修参加を推進します。大きくネットワークが拡がり、そして何より職場内では打破できない何かを気付かせてくれる仲間がそこにはいるのですから。


■東京会場

2月25日(土)、大正大学(東京都豊島区)において、第3回の研修を開催し、65名の方が修了されました。全3会場で136名の方が修了されたことになりました。

       
講義 会場の様子 演習の様子 代表者1名による修了証書授与

・ これから私たちにできることとは?

式場隆三郎記念クリニック(千葉県) 古岡 ひろみ

 東日本大震災から1年が経とうとしていた2月25日、東京都内で行われた「精神保健福祉士による災害支援活動に関する研修」に参加しました。精神保健福祉士の専門性を生かした支援とはどのようなものか、実際のお話をうかがいたいということが主な参加動機でしたが、私自身いまだ被災地に支援に行っていないという幾ばくかの後ろめたさもあり、「これからでも私にできることはあるのか?」を模索するきっかけになればという思いもありました。

 震災当日は関東も大きな揺れに襲われ、デイケアの利用者さんとともに私自身も帰宅困難者となり、利用者さんと毛布を分け合ってデイケアで一晩を過ごしました。幸い翌日には全員帰宅することができましたが、その後の物資不足、計画停電への準備、調子を崩した利用者さんへの対応などに追われることとなりました。被災地の方々の被害には比べるべくもありませんが、都市部の方々がどのようにその日を過ごされたのか、その後どのように日常業務に戻られたのかが、私の大きな関心事でもありました。

 演習では少人数のグループに分かれ、私たちのグループは当日の避難の様子を分かち合うことに時間を費やしました。シミュレーションの課題は与えられていましたが、自分たちの実際の行動を話し出すと、グループの皆さんの口から次々と言葉が出てきて、多くの経験を分かち合うことができました。グループには、東京、千葉、埼玉、神奈川、茨城の関東各県の方々がそろい、それぞれ各地の状況を聞くことができましたし、都市部特有の問題について語り合うこともできました。避難するなかでどんなことが大変だったのか、改善するべき点はなにかなど具体的な意見が聞かれ、やはり平常時からの業務整理、迅速な情報収集が重要だということを、全員で再確認しました。

 被災地で支援された方々の経験からは、これから起こると言われている大地震への備えに多くの示唆を与えていただきました。職場のデイケアでは月に1度の避難訓練を実施することになり、複数の避難経路を使って広域避難場所へ避難する計画を立てています。精神保健福祉士として、医療従事者として、また個人として、実際に今後どのように行動していけばいいのかを考えるきっかけとなった、とても有意義な研修でした。貴重な経験を話してくださった講師の皆様、協会員の皆様に感謝申し上げます。


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