2009年11月26日(木)、27日(金)、横浜シンポジアにて、「触法精神障害者支援に関する研修会」を開催しました。ここでは、修了者2人からの報告記事を掲載します。
会場の様子 | 演習の様子 | 受講者を代表して修了証書の授与 |
社会福祉法人県央福祉会 横浜中部就労支援センター 西岡 秀樹
今回横浜での11月26日と27日両日、研修に参加させていただきました。
まず一番衝撃をうけたことは刑務所に収容されている障害者の多さです。田島先生のお話にもありましたが、私もついこの前まで、刑務所に収容されている障害者がこのような状況にあるとは全く知りませんでした。今まで「障害と貧困の関係」はよく論じられていましたが、さらに犯罪との関係も考慮しなくてはならないのではと感じています。
また、講義の中やまとめの部分にもありましたが、法律の網にかかる前に日常の場面で、私たちソーシャルワーカーがサインをキャッチしておけば、犯罪行為や累犯に至らず、地域生活を送ることができるのではないかと強く感じました。それは「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下、医療観察法という。)の対象となった方も同様で、お話の中で医療機関に繋がっていなかった、通院が中断してしまったことと犯罪に及んだことは重要な関係性があるとのことでした。私は犯罪を犯してしまった方々への支援ももちろん大切ですが、犯罪や累犯を予防するという観点からの施策や支援も必要であると感じています。
また、今回の研修では、司法関係の方からのお話もあり、普段はあまり聞けない刑務所や裁判所での様子などもお聞きすることができました。社会復帰調整官や矯正施設のPSWのお話もありましたが、現場で活躍されている方々の生の声を聞くことができ、大変意義のあることであったと思います。しかし少し残念だったのは講師の方々のお話はとても内容のあるすばらしいものだったのですが、全体の時間が限られており、一人々の時間が短かくなってしまいました。みなさんとても興味深いお話だっただけに残念でした。
そして、両日とも仮想のケースを話し合うグループワークが行われました。グループワークで私は進行役をやらせていただきました。それぞれ現場も経験値も違う構成でしたが、みなさんの熱いお話を聞いているうちにあっという間に時間が過ぎ、またどんどん意見が出てきて、仮想ケースではありましたが、最後は支援計画らしきものが出来上がりました。また同じグループに社会復帰調整官の方がいらっしゃって、現場での実践を交えて様々なお話が聞くことができました。
最後に、2日間を通して私が個人的に感じたことは、触法障害者や医療観察法の対象の方々への支援を行うには行政上のシステムでも福祉と司法の連携が大切ですが、現場にいる私たちも相互に連携するという意識を持って取り組んでいくことがとても大切であるということでした。最後に2日間とも穏やかな天候で、かつ会場からのすばらしい景色と、加えてグループワークではみなさんから熱いお話とパワーをもらい、とても充実した2日となりました。ありがとうございました。
横浜市立みなと赤十字病院/経験年数13年 金井 緑
2009年11月26日・27日の2日間にわたり触法精神障害者支援に関する研修会に参加させていただきました。
私は精神科病棟のある総合病院で仕事をさせていただいています。以前関わったケースで、精神疾患があり、刑務所から満期出所でぽんと放り出されて何とか横浜まで辿り着き、重篤な身体疾患に陥り当院に救急搬送されてきた方がいました。
家庭環境、生活能力、疾病受容、今後の行き先…抱える問題は山積みで、振り返る暇もなく関わってきましたが、よくよく考えれば、刑務所にいた間にこの方がどう支援されてきたか、という点には着目していませんでした。
今回の研修では医療観察法の分野にとどまらず、広く触法精神障害者を対象として講義が組み立てられており、上記のケースをもう一度自分の中で振り返るに良い機会だと思って参加しました。
1日目の「各立場からの実践における現状と課題」の講義では社会復帰調整官、刑務所に配属されたPSW、触法精神障害者を受け入れる生活訓練施設の方からと、多岐にわたる現場の方からの生の声が聞けました。医療観察制度が施行されて4年が経過して見えてきたもの、刑務所に配置されたPSWが限られた時間と枠組みの中で行うケースワーク、受け入れる施設の支援ネットワーク構築に関する苦労、なかなか普段の業務では知ることの出来ない状況を把握できたことも糧になりました。
2日目の実践報告では医療観察法指定医療機関のPSW、精神保健参与員、弁護士の方からの触法障害者の弁護の実際を語っていただきました。強制力のある医療における対象者の自己決定を支えること、参与員が合議体にまだ組み込まれていない現状、弁護士の方からは審判のその後を考えずにはおけない触法障害者について、また、「その方に寄り添い、(裁判での弁護のために)話を聞いていく」というまさにソーシャルワークの原点の言葉を耳にしました。
また、2日間にわたって事例検討したグループワームの中で印象に残ったことがあります。医療観察法、触法精神障害者と関わる、または受け入れをしたことがない機関の方からの「どう関わっていけばいいのか、戸惑う」という一言。まだまだ私たち支援者自身が対象者との関わりに戸惑いを感じているのです。法制度の縛りで情報が漏れ聞こえにくいところもある中ではありますが、それでもこういった研修を通して少しでも私たちが『知っていく』ことの大切さを感じました。自分のケースの振り返りだけでなく、いろいろな大きな収穫を得られた研修だと思っています。