独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」助成事業

報告

課題別研修/2009年度 触法精神障害者支援に関する研修会

2009年11月9日(月)、10日(火)、京都テレサにて、「触法精神障害者支援に関する研修会」を開催しました。ここでは、修了者2人からの報告記事を掲載します。

       
会場の様子 法務省からの行政説明 演習の様子 受講者を代表して修了証書の授与

・ 触法精神障害者支援に関する研修会に参加して

鳥取医療センター(鳥取県)/経験年数5年 堤 豊治

 11月9、10日の2日間に渡って京都テルサで開催された触法精神障害者支援に関する研修会に参加しました。参加理由は、現在勤務先で開設準備が進められている医療観察法病棟の実務に生かすためでしたが、実際に研修に参加して感じたことは「触法精神障害者問題の領域の広さとその課題の多さ」でした。研修会の概要は以下の通りです。

 講義1「罪を犯した障害者の地域生活支援について」と題して山本譲司先生(NPO法人ライフサポートネットワーク)からは、「軽微な犯罪によって障害者・高齢者が更正施設に入所となっている場合があり、出所後にも地域の福祉に繋がることなく再犯に至る(刑務所の一部は福祉の代替施設となっている)という現状」について講義がありました。

 講義2各立場からの実践における現状と課題では、「社会復帰調整官による地域処遇の現状と課題について」と題してまず植松俊典先生(名古屋保護観察所)から、「社会復帰調整官が、医療観察法による通院処遇において精神障害者の社会復帰の中で果たしている役割とクライシスプラン」について講義がありました。続いて、梶原由美先生(播磨社会復帰促進センター)からは、「矯正施設におけるソーシャルワークの現状と課題」と題して、「PFI刑務所とそこでおこなわれている特化ユニットによる社会復帰支援の取り組み」について講義がありました。杉村多代先生(精神障害者生活訓練施設まち)からは、「触法精神障害者の地域移行支援の現状と課題」と題して、「医療観察法対象者の施設入所に関する実践報告」についての講義がありました。

 2日目は実践報告として、医療観察法指定入院医療機関から常増健二先生(国立病院機構菊池病院)、精神保健参与員から柏木一恵先生(浅香山病院)、触法障害者の弁護活動から辻川圭乃先生(辻川法律事務所)、それぞれの立場から触法障害者への支援についてお話がありました。

 講義3「高齢または障害により自立困難な刑務所出所者等の社会復帰支援について」と題して、三浦恵子先生(大津保護観察所)から「障害者の更生保護分野についての全般的な概観と地域定着支援事業等の新たな取り組み」について講義がありました。

 講義4では新川智之先生より、「医療観察制度の現状と地域処遇の充実・強化に向けた厚生労働省の新たな取り組み」について、講義がありました。また、2日間を通して事例を基にしたグループワーク演習がおこなわれました。私の参加したグループでは現役の保護観察官からの実践報告や地域で触法精神障害者の地域移行支援を地道におこなっている精神保健福祉士の話などを聞くことができて、とても有意義な情報交換をおこなうこともできました。

 研修では、触法障害者の司法精神医療から地域移行支援に至るまでの広い領域を網羅するような盛りだくさんの内容が扱われており、とても勉強になりました。また、制度の狭間で福祉の手が届かない障害者の現状という課題とその課題に対して公的機関からの新しい取り組みやNPO法人等の精神保健福祉士による地道な支援活動がおこなわれていることを知ることができ、とても有意義な研修であったと思います。


・ 触法精神障害者の研修会に参加して感じたこと、考えたこと

特定医療法人勇愛会 大島病院(佐賀県)経験年数11年/筒井亜以子

 所属している病院が指定通院医療機関になっていることから、勉強するにはよい機会と考え研修会に参加しました。

 研修会では、罪を犯した障害者の地域生活支援について、触法精神障害者が社会復帰する上で支援している立場からの現状と課題、そして指定医療機関、精神保健参与員、弁護士の立場からの実践報告がありました。ただ実践報告にあるような体制が整っていたり、関係施設が整っておりネットワークができてかつ、支援が十分に行えているところはよいですが、それが全国一律に行えているかといえばそうではないのが現状ではないかと感じました。

 また、グループワークで話題にあがった「地域生活定着支援センター」という機関のことですが、この施設の名前については今回はじめて耳にしました。福祉の支援を必要としている受刑者の方が利用できる機関であると聞き、佐賀県にもあるのだろうか?と疑問に思い、後で調べたらセンターを立ち上げるために県が動いていることを知りました。佐賀県にも女性刑務所がありその刑務所から当院へ受診される方がおられます。今後私がどういった形で支援に関わるか分かりませんが、支援を行っていく上で矯正や更生の立場及び福祉の立場の者が連携して受刑者の方の社会復帰援助がスムーズに行える体制づくりができるとよいと感じました。

 講演の中で印象に残っているのは、山本譲司先生よりお聞きした、刑務所内の現実でした。刑に服している方々が高齢化していることや障害者がいてもその障害や状況にあった生活や刑に服すシステムがないということでした。刑に服している高齢者・障害者は刑務所といえども刑に服している健常な方々と同じように理解し行動することは難しいと思われることから、処遇については今一度考えてほしいと、福祉の立場として聞いていて感じました。

 振り返りますと、研修の2日間は大変充実しており、2日間で学ぶには足りない課題ではないかと感じました。そしてこの研修会の参加をきっかけに私自身関心が深まりましたので改めて学習していきたいと考えています。また、今後触法精神障害者に関する研修会が企画された折には参加しようと思います。今回企画していただきどうもありがとうございました。


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