2010年12月2日(木)から5日(土)の4日間、サンシャインシティ・文化会館(東京都豊島区)にて、「課題別研修/第3回成年後見に関する研修」「養成研修/第3回認定成年後見人養成研修」「第2回クローバー登録者継続研修」を開催し、課題別研修21人、養成研修14人、継続研修42人の皆さんが修了されました。ここでは、各研修の様子につきまして、それぞれの修了者の方からの報告記事を掲載します。
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社会福祉法人桂 カリタス21居宅介護支援事業所(静岡県)/経験年数19年 飯塚 哲男
○講義講師からのスーパービジョンにて
4日間の研修では、日々、自らが学び、気づき、描く、変わる機会となりとても充実した研修を受けることができたと感謝しています。
まず、基本となる福祉、介護サービスに従事している福祉専門職と成年後見人等の立場、権限、役割が整理できた部分が理解できた点でした。
例えば、私は、介護支援専門員の仕事をしています。立場は、居宅介護支援事業所に所属し、医療、介護、福祉サービスと提供者の間で、公正、中立なケアマネジメントの仕事をしています。権限は、あくまでも本人からの「意志」や委任に基づく諸手続きの代行やケアプランの作成、担当者会議の開催、フォーマルサービスやインフォーマルサービスの調整等です。
一方、成年後見人は本人の法的な代理人として、本人の「意思」に立つ法的な代弁者です。権限に基づく行為は、家庭裁判所の審判による代理権、同意権・取消権、不服申立、サービス内容の確認等です。役割は、身上監護及び財産管理です。
この研修で、介護支援専門員としての『代行』の立場と後見人に付与された範囲での『代理』の立場の違いやそれぞれの立場での利益相反関係について改めて問い直す機会となりました。
成年後見人の権限は、あくまでも限られた範囲内のものであり、権限の及ばないこと(医療に関する同意、身元保証人及び身元引受人になることは不適切等の無権代理行為)や、法律行為に付随する事実行為(訪問して面接する等)においては後見人のみの活動では限界があり、必ず関係機関の方等との協働が不可欠となります。
だからこそ、精神保健福祉士としての専門性を活かした本人への支援ネットワークを構築することによって成年後見人の活動が有益となることや具体的な本人のストレングスを支援することの大切さをイメージすることができました。よって、本人の生活を支えるためには、付与された代理権の範囲で、アレンジしながら専門的な関係機関との連携及び協働が不可欠となるのです。
そして、本人の状況では、それぞれの専門性を活かした、財産管理や身上監護を図るために『例えば、精神保健福祉士と弁護士、精神保健福祉士と司法書士等』といった専門職後見人の組み合わせや親族等と専門職後見人が複数後見を行うこと、個人での成年後見活動での限界や法人後見についての必要性について学ぶことができました。
○グループワークの中のスーパービジョンにて
グループワークでは、受講生同士が事前課題(後見計画書を2例)をグループで話し合い、グループスーパービジョンを受けることができました。その中で精神保健福祉士であり、後見人活動されている経験豊かなスーパーバイザーの方より、『精神保健福祉士としての価値と倫理に基づいた後見活動の視点』について助言があり、実際の後見人としての自己決定の尊重、エンパワメントの活用、ノーマライゼーション等について見つめ直す機会を得ました。
そして、グループワークメンバー同士での話し合いの中から、本人と後見人との信頼関係の構築や本人の推定意思を判断できるまでには、相当の時間を要することではあるが、それでも本人にとって後見人が行う判断によっては、『権利擁護』と『権利侵害』が紙一重である部分も否めない責任の重さと課題等に気づかせていただくことができました。
研修の中では終始、医療、保健、そして福祉にまたがる領域で活躍する精神保健福祉士としての後見人活動は、本人の意志の最善の利益を体現する身上配慮と倫理性が要求されるとともに人的な社会資源としての役割と必要性を痛感しました。
今後は、精神保健福祉士の視点や普段の業務、成年後見活動を活かし「クローバー」に登録させていただき、受任の有無にかかわらず、クローバー登録者研修に参加させていただきたいと考えています。そして、機会に恵まれれば会員の皆様と共に成年後見人としての活動をさせていただければ幸いです。
研修の準備をしていただいたスタッフの皆様、講師の皆様、ありがとうございます。そして、受講された皆様、本当にお疲れ様でした。今後とも何卒宜しくお願い致します。
東大阪市福祉事務所(大阪府)経験年数半年 大西 光雄
私が、今回の研修を受けようと思ったきっかけは、成年後見制度が精神障害者・知的障害者・認知症の人たちに対しての権利擁護の制度としてできた施策であり、まさに精神保健福祉士が中心となって勧めていくべきものであると思ったことからでした。
しかし、今まで協会としてはそれほどの重点を置いて取り組んでこられてはいなかったように思われ、それはなぜなのかということを知りたかったことも一つの要因となりました。講義を受ける中で、今後に役立つ点として、
1) 同じ福祉士である社会福祉士の講師の方から、福祉専門職として権利擁護の視点として持つべき点として、通常の業務の中で、(1)本人の障害等を正しく理解して、(2)本人の理解できる言葉で、(3)本人へ適切な説明、(4)最善のサービス(支援)の提供の4点を挙げておられました。今後の活動にあたって指針とすべきことだと思いました。
2) ドイツのドイツ世話法との比較の講義がありましたが、私はドイツと日本との障害に対する考えが制度の違いに現れているように思いました。障害を社会の問題として捉えているドイツと個人の問題として自己責任として(精神に障害を持ち、事理弁識が出来なくなったことを自己責任として捉えているように思われる)日本との違いが制度構成の違いに現れているように思いました。環境と個人の接点に立つ精神保健福祉士として今後のソーシャルワークの必要性を感じました。
3) 成年後見人としての倫理の中で、「権利擁護者でありながらも、権利侵害者となる可能性」があることを話されました。事例を挙げながら、他の専門職が後見活動をしている中で、「権利侵害者となる可能性」が現実となったことが話されました。その要因として、本来対等な立場にある後見人と被後見人が個人対個人という環境の中で専門家という権威が気づかないうちに現れることによって対等な立場でなくなっていく危険性をはらんでいることがわかりました。常に自己覚知を行いながら活動していく必要性を痛感しました。そのために(1)専門性の担保、(2)社会的な貢献、(3)自律性と社会的責務を心掛けていく必要があると思いました。
今回の研修を受けて、後見受任後の事については、詳しく講義されていて大変勉強になりましたが、精神保健福祉士として申し立てをしていかなければならない場合に出会うことが考えられますので、家庭裁判所に対して後見の申立を行う作業についての講義を入れてもらえればより一層精神保健福祉士が成年後見に携わっていけるのではないかと思いました。
2日間、とても勉強になる時間を過ごすとともに、精神保健福祉士としても常に心がけていかなければならないことも勉強になりました。
札幌市/経験年数約30年 算用子 里美
2010年12月5日、クローバー登録者継続研修が開催されました。午前中にはソーシャルワーカーの立ち位置の再確認というテーマでシンポジストより、各々が所属する立場からの発言がありました。『ソーシャルワーカーと成年後見人とでは業務性に共通点(本人の意思の尊重など)も多いが、立場性に違いがあり、立場の違いを理解した上で専門性を生かして後見業務に関わることが求められる』と、東京国際大学の齋藤敏靖教授より発言があり、その時は自身も「そうだと思う」と、頷いていたのですが、いざ午後からの事例研究となると、30年来の精神保健福祉士としての考え方で、被後見人をコーディネートしようとしていたり、精神保健福祉士として関わっている自分がいました。いかに地域のそれぞれの分野のスタッフを利用して関わってもらうという視点が少ないかということに、班の中で話し合っている中で気づきました。「そう、私は後見人なのだから本人だったらどうするのだろうか?私は本人の代理として何ができるだろうか?」という視点に立ち位置を戻して、何とか事例を終えましたが、立ち位置の難しさを痛感しました。
継続研修は2回目ということで、午後からの事例検討では班分けがされるのですが、先回より顔なじみの皆さんにお会いし、ホッとしたと同時に、皆さんはこの1年間に後見人業務に携わったのだろうか?と率直なところ近況を伺いたかったです。しかしながら、班の中には受任された方はいませんでした。
現在、クローバーでは受任ケース10件ということでした。自分には今、主な所属機関に属していないために動きやすいメリットがあるのも事実ですが、自分に依頼がきたら本当にやっていけるのだろうか?という不安があるというのが本音かもしれません。自分が法人格で行うことは当面ないであろうし、個人でやることになると思われます。まずはやらないことには何も進まないであろう、分からないことは既に受任している方やクローバーに聞けばよいかな?と思ったりしています。何よりも、クローバーという組織があることが本当に心強いです。
来年の継続研修で、自分は受任しましたと言えるように、知り合いの方に後見人に関しての声をかけており、この研修や保険が無駄ではなかったと思えるようにしていきたいと思います。