報告

第9回基幹研修23&第2回更新研修

「第9回基幹研修(23)」と「第2回更新研修」を県立広島大学(広島県三原市)にて開催しました(開催案内)。日程は、基幹研修2が2011年7月9日(土)、基幹研修3および更新研修が2011年7月9日(土)、10日(日)でした。ここでは、それぞれの修了者から報告記事を掲載します。


<更新研修>
演習の様子 全体会での各班発表1 全体会での各班発表 修了証書授与

・ 更新研修を終えて〜自分自身と向きあう機会に〜

医療法人 比治山病院 地域生活支援センターふれあい(広島県)/経験年数17年 原田 葉子

 5年に一度は研修を受けて更新しないといけないよねー、地元で開催される今年受講しておこうかなーとの安易な気持ちで臨んだ研修でしたが、見事に私の気持ちを打ち砕き、目を覚まさせてくれるような価値ある2日間となりました。

 普段目の前のことに追われて、PSWの存在意義や専門性などじっくりと振り返ることができないままでいるなかで、それらのことを同じように現場にいるPSWの方々と率直な意見を交わしながら再考する機会になりました。

 研修は荒田さんの話から始まり、そこではソーシャルワークの課題や支援者の役割の話などがなされ、専門職としての自覚を持って常に業務を行えているか、と問われたように思います。自分自身と自分の周りのPSWの実践を振り返りながら、耳が痛い話もあり反省しきりでしたが、自分の職場に学んだことを持ち帰り後輩たちにも伝え、ソーシャルワークの実践者であることを忘れないで目の前の方々と向きあっていこうと思いました。中でも「援助を受ける感情に関心を持つ」との言葉が胸に突き刺さり、改めてPSWは誰のために何のために存在するのかを考えさせられました。

 後半のグループワークでは、それぞれ現場は違えど実践の中で同じような課題があることが分かり、PSWの専門性を考えていく上でのポイントになりました。本人主体、権利擁護、自己決定、かかわりなど聴き慣れた言葉が次々と出てきました。これらが専門性を表す言葉ではあるけど、でもこれだけでPSWが何をする人なのか周りは判るのかなーとの疑問が浮上し、自分たちに今必要なのは専門性を言語化してゆくこと、一般化してゆくこと、裏を返すとエビデンスが弱いのかなとの結果に至りました。

 小学生が将来なりたい仕事って聞かれたときにPSWと答えるような、分かりやすい専門職であるために、周りに分かりやすい説明が必要だと感じました。
 PSWが多様化している今だからこそ、専門性を見つめ直す必要があるのでしょうし、「精神保健福祉士=PSW」に近づくよう、この生涯研修制度を一人でも多くの精神保健福祉士が受講され、共に専門職としての自覚を持ち質の向上をめざす仲間が増えることを願っています。

 最後に今回の研修で思いがけず嬉しい出会いがありました。この方の話を聞いていなければ私はこの仕事をしてなかったといえる、私にとってPSWになるきっかけとなった京都の方です。20年ほど前に、この方がまだ新人でありPSWとしての苦悩を等身大の言葉で話されているのを聞き、私は強烈な魅力を感じPSWをめざすことになりました。直接お話をするのは初めてで緊張しましたが、20年ぶりのお礼をお伝えすると同時に、未だに悩みながら実践されているとの話に、自分を振り返り向き合い続ける姿勢に感銘を受けました。こんな出会いがあり、つながりあい、明日からの活力を得られることも研修の醍醐味です。また5年後の更新研修を楽しみにしています。


<基幹研修3
開講式 会場の様子 梶元講師による講義3 修了証書授与

・ 見つめ直しと自己点検

医療法人福仁会 福仁会病院(福井県)/経験年数4年 精神保健福祉士 土井 麻美

 2008年から導入された生涯研修制度に基づき、本研修は精神保健福祉士の倫理や精神保健福祉関連法・制度の理解を深めるものとして、2日間の講義に内容が凝縮されていました。

 保護者制度・成年後見制度の見直しの必要性が、世相のキーワードとして盛り込まれていたようにも思います。またインターネットのニュース(共同通信7月7日)からの参照ですが、厚生労働省は地域医療の基本方針となる医療計画に盛り込むべき疾病に精神疾患を加え、五大疾病とする方針を決めました。私はまだ5年目の精神保健福祉士ですが、年月の経過とともに精神保健福祉へのニーズや課題が変わることをあらためて実感しました。

 2日間の研修はとても有意義でしたが、その中でも強く印象に残ったのは、講義1:荒田寛先生の「一人ひとりの人生、命にどうかかわるか?」という言葉でした。医学モデルの批判と反省から本人不在の支援とならないように、また権利擁護と代理行為を混同せず、診断名ではなく人を理解するということに、ソーシャルワークの歴史と基本姿勢を再確認することができました。
 金子努先生の講義2・梶元紗代先生の講義3では、日常的な実践の課題を制度・政策に照らして考察すること、さらに精神保健福祉士の価値に基づく批判的な視点からの考察をソーシャルアクションにつなげていくことの必要性について意識しました。調べ、知ることを怠らず、クライエントとのかかわりにも活かせる知識や体験を身につけていきたいと思います。
 演習や事例検討では他県での取組みを知り、自分の業務や所属機関を見つめ直す機会が得られました。本研修に参加して得たものを、今後に活かしていけるよう努めたいと思います。

 また東日本大震災から早4ヶ月が経ち、被災地では復興がいそしまれる中のことと存じます。想像を超える現状があり、多くの方が大変な思いをしていらっしゃることをお察しいたします。この場をお借りしまして、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
 最後になりますが、このたびの研修を企画・運営してくださったスタッフの皆様、講師の先生方、貴重な時間を過ごすことのできた参加者の皆様に心から感謝いたします。


<基幹研修2
上田講師による講義1 金子講師による講義2 演習 修了証書授与

・ 研修認定精神保健福祉士をめざして

河田病院(岡山県)/経験年数3年 松本 美幸

 さる7月9日に広島で行われた基幹研修2に参加させていただきました。
 今回の研修を通して良かった点が三点あります。

 まず一点目に、クライエントとの関わりの中で「なぜ〜だろうか?」「(自身の支援は)果たしてこれで良いのか?」と疑問に思うことの大切さですが、経験を何年積んでも疑問をもちケースを振り返る中で成長があること、疑問を持つ自分自身の傾向について自己覚知ができていることの重要性を再確認できました。

 二点目に、クライエントの希望実現を共に考えていく際、その人のライフスタイルや役割、生き甲斐の保持と保障をするために共に考えられているか、支援者側の考えを押し付けたり、説得したりしていないだろうかと振り返ること、また、その人が望む自己決定ができるように支援していくためにその人のもつ能力を個別に焦点を当てアセスメントすることの重要性についても再確認できたと思います。
 また、医師や看護師は医療的な部分に目を向けがちですが、チームで支援していく中でクライエントの今までのライフスタイルや役割、生き甲斐などを伝えていくことが精神保健福祉士の大切な役割であるため、必要に応じてきちんとクライエントの代弁ができるようになることが今後の課題であると感じました。

 三点目にグループワークにおいて、「精神保健福祉士に必要な“ソーシャルな視点”とは?」「精神保健福祉士の専門性とは?」の二つのテーマのうち、両者は決して切り離せるものではないとグループ内の話で出ましたが、私たちは後者について話をしました。話の中で“私が精神保健福祉士として業務を行うなかでこだわっているところ”について意見を出し合い、“本人の思いを大切に聞くこと”“私たちは決して指導する立場でなく対等な関係を築いていくことが大切”というまとめになりました。メンバーは所属機関や経験年数も異なりましたが、精神保健福祉士として大切なことや専門性は同じであることを再確認することができました。

 今回の研修を通じて日々の業務の振り返りを行うきっかけ、今後も精神保健福祉士として頑張っていくためのエネルギーをいただけたように思います。今後もクライエントとの一つひとつの関わりを大切にしていけたらと思います。また、精神保健福祉士としての自己研鑽のため基幹研修2に続いて基幹研修3の受講をし、研修認定精神保健福祉士取得をめざして頑張っていきたいと思います。


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