「第13回基幹研修(・)」と「第6回更新研修」をヒルズサンピア山形(山形県)にて開催しました(開催案内)。日程は、基幹研修が2011年10月15日(土)、基幹研修および更新研修が2011年10月15日(土)、16日(日)でした。ここでは、それぞれの修了者から報告記事を掲載します。
<更新研修> | |
演習の様子1 | 演習の様子2 |
社会医療法人公徳会 佐藤病院(山形県)/経験年数17年 牧野 直樹
2011.3.11の東日本大震災で、東北では特に宮城・岩手・福島県が甚大な被害をうけ、現在も復興に向け大変な状況が続いており、今回の研修会では比較的被害の少ない山形県が研修の地に選定されましたが、「受講者は山形に来てくれるのだろうか…」「研修の最低募集人数を満たすのだろうか・・・」など、受講者でありながら不安でした。しかし、参加者名簿をみれば東北からはもちろん、北海道から島根県まで各地から、32名もの参加があり、“ほっと”し、プレッシャーが和らいだ瞬間でした。
私が勝手にほっとした中ではじまった更新研修でしたが、講師の先生方は経験談なども交え、短いと感じるくらいの講義内容で、睡魔と戦う必要がなく集中して、講義を受けることができました。
ここでは、各講義や演習で印象に残ったことを述べたいと思います。1日目の「精神保健福祉士の専門性」では、西澤先生から「穴に落ちた人をどのようにして救うか?」という問いに答えはひとつでない、方法はたくさんある。しかし、その人にとっての最善とは何か考えていくことでした。先生には講義以外でもアドバイスしていただきました。ありがとうございました。
「精神保健福祉制度・政策論」では、田村先生からの「新たな制度や施策はデメリットもある」ために精神保健福祉士として専門的視点に基づき法改正を見据えることでした。
2日目の「精神保健福祉士の実践論」では、小関先生からの「家族もクライエントであり、当事者と支援者の中間に家族を位置づけない」と実践に基づいた話で、同じ県内でご活躍は知っていますが、さらに実践の深味を見ることができました。
「演習」「事例検討」では、グループのメンバーと本題以外の話もしながら、充実した時間を共有することができました。同じメンバーの方から「Aさんは、どうしたいのでしょうか?」といった言葉は、今でも耳に残っています。自分でもわかっている言葉ではあるものの、当事者主体というものの、どこか薄れている感じがあり、既存の社会資源につなげて満足していた自分が少なからずあったと思います。
今後は、精神保健福祉士としての「価値」や「専門性」を言葉で言えるように、再確認しながら日々の実践を積んでいきたいと思います。また、日頃業務に追われ、理想と現実のせめぎ合いにちょっと疲弊していた心の癒しとなり、新たな気持ちで業務に打ち込めるような研修にしていただき、ありがとうございました。
「最後に、受講者・事務局の皆様には、被災地に近いということで不安があったとは思いますが山形にきていただいてありがとうございました。」
<基幹研修> | ||||
西澤講師による講義1 | 小関講師による講義3 | 演習の様子 | 代表者による修了証書授与 |
医療法人ノーブル ノーブルメディカルセンター(沖縄県)/経験年数8年 田野 浩伸
山形県のヒルズサンピア山形でおこなわれた基幹研修に参加させていただきました。
なぜ、はるばる沖縄から参加したか?と申しますと、「新幹線に乗ってみたい」という不純な動機からです。“旅を楽しみつつ研鑽できるなんてすばらしい計画だ!”と思っていたのですが、結局は移動にほとんどの時間をとられてしまい、旅を満喫することはできなかったのですが、濃密な研修を味わうことができました。
研修の2日間は気候も穏やかで、職場の同僚たちから脅されて持っていったダウンジャケットは、宅急便で送り返すことになってしまいました。むしろ講師の先生方の熱気に押され、汗ばむほどでした。
職能団体に属する者として、精神保健福祉士として研鑽をしていくことが大切であるとは分かっているのですが、日々の業務をこなしていくことで手一杯のなかで、なかなか周りに目が向いていなかったように思います。専門性も不明瞭なものになっていたのでは?と研修が終わった今はそう感じています。
事例検討では活発に意見交換がなされ、皆さんさすがに数々の実践を続けてこられており、勉強になることばかりでした。熱い心の中にも冷静な視点があり、これぞ精神保健福祉士だと強く感じることができました。
今回の研修で、精神保健福祉士としてのスタンスが見えてきたような気がします。まだまだ未熟なため、業務に追われるなかで、専門性を見失いがちになりますが、5年後は成長した姿で更新研修に臨めるように努めたいと思います。
最後になりますが、このたびの研修を企画運営してくださったスタッフの皆様、講師の先生方、そして刺激を与えてくださった参加者の皆様に心から感謝いたします。
そして、チバリヨ〜東日本!!!
※チバリヨ:がんばれ
<基幹研修> | ||||
森谷講師による講義2 | 山田講師による講義3 | 演習の様子 | 代表者による修了証書授与 |
村山教育事務所(山形県)/経験年数7年 金子 貴弘
各地で被災されたすべての方にお見舞い申しあげます。
2011年10月15日(土)、ヒルズサンピア山形にて第13回基幹研修が開催されました。昨年度の「課題別研修2010年度第1回生活保護と精神障害者支援」に引き続いての東北地方、地元開催となりました。
私自身、学校臨床現場にて相談業務に携わらせていただいて、7年目となりました。
いじめ、不登校、暴力行為、発達障害、児童虐待、精神疾患の出現等について、学校‐家庭‐地域‐他機関との連携・協働、チーム援助を要する対応に、日々、自分自身の立ち位置を確認しながら、自分自身ができることを模索しながら取り組んでいる状態です。学校システムの中での一員として生徒はもとより教職員、保護者、関係機関等との関係性を育んでいく上で新たに視点を広げていけたら、という思いで研修に参加しました。さまざまな職域にてご活躍されている先生方、精神保健福祉士の方々のお話を伺える貴重な機会となりました。
西澤先生による「精神保健福祉士の専門性」では、「専門性とは、技術的なところに求めようとしているが、時代を背景に援助の核、原理・原則、人間の尊厳、理念をおさえた上で援助が展開された事例を積み重ね一定の仮説的なところを検証していくことである」との言葉は重みがあり、「よってたつ専門性とは」、「専門性にこだわりもつこと、大切にしているものとは何であるか」を再度考えさせられる機会となりました。
森谷先生による「精神保健福祉制度・政策論」では、法制度において我々も「状況の中の人」であることを自覚しながら、諦めず希望を持ち続けることの重要性を伝達していく担い手として、制度・政策に関する知識を深め、政策動向に関心を払っていく専門職としての姿勢についてお話いただきました。地域に向け心の相談活動に精力的に取り組まれたお話もお聞きし、他機関(行政機関)との連携・協働の有効性、難しさについても改めて感じました。
山田先生による「精神保健福祉士の実践論」では、専門職としてのたゆまぬ自己研鑽を積むことは誇り、自分の言動に対して「なぜ」と振り返り悩む力を身につけることの必要性をお話いただきました(方言"あずましい(≒comfortable)"、忘れられません!)。
演習では、「精神保健福祉士としての専門性」について、他職種との連携・協働について、個々の職域の中で感じられている思いや葛藤なさっている点が話し合われました。「専門的な意味合いを考える機会となった」、「県が違えども、病院の歴史があればあるほど、いろいろあるのだと感じた。同じような思いを抱いて日々対応している話を聞きほっとした」、「疑問や葛藤を話せる場となりありがたい」、「日ごろ良かれと思って対応していること(社会資源活用も含め)は、果たしてどうなのか。基本は誰のためのものか、再度振り返る機会となった」、「所属機関に縛られず、積極的に地域に根ざしたアウトリーチを充実させていきたい」等の意見が印象的でした。
日々行っている多忙な業務の中であっても、目の前にいるクライエントに対し、真摯に対応され、心の揺れ、動きを感じながら過ごされているみなさんのお話には深みがあり、奮闘されながらも進まれている状況を垣間見ることができました。
今なお、自分自身の判断や行動について悩みは尽きません。しかし、自分が悩んでいることを自覚し、向かい合い、一歩ずつ歩んでいくことが自分の成長につながり、人との関係性に活かされていくのだと、自分を振り返る日々が続いています。
いつも自分の行っていること、言動をどこか疑いながら、自分がこれでいいという確信を持っていることよりも、自分の不安や悩みなどの心の揺れを感じていることも、人と人との関係性を丁寧に構築していくことにつながり、人として、福祉の専門職として成長していくためには必要であることを改めて感じたところです。
研修後、演習で参加者の方に助言いただいたSST普及協会にも入会し、また、お誘いいただいた11月3日開催の「福島医学会シンポジウム 精神科医療21世紀シンポジウムin福島2011」にも参加することとなりました。隣県の精神保健福祉士の方々とも交流でき新たなネットワークも得ることができました。今後、学校臨床現場から精神保健福祉士の視点だからこその気づき、見えてくるもの、強みをつながったネットワークを糧に、チームアプローチやフットワークを大切にしながら進んでいきたいと思っています。