報告

第10回基幹研修23&第3回更新研修

「第10回基幹研修(23)」と「第3回更新研修」を長崎純心大学(長崎県長崎市)にて開催しました(開催案内)。日程は、基幹研修2が2011年8月27日(土)、基幹研修3および更新研修が2011年8月27日(土)、28日(日)でした。ここでは、それぞれの修了者から報告記事を掲載します。


<更新研修>
柏木講師による講義1 演習の様子

・ 原点回帰 〜新たな迷いを抱えながら〜

医療法人協治会 杠葉病院(長崎県)/経験年数14年 森 真貴子

 更新研修の受講決定通知書が届いてから、何となくそわそわした毎日が続いていました。PSWとして働き始めて10数年、これまで日々の業務に追われながらもその間に、国家資格化や障害者自立支援法の成立・施行など大きな出来事が次々に起こり、近くの仲間同士で自然と「国家資格ってなに?PSWの存在価値ってどこにあるの?」等の論議に熱が入ったこともありました。しかし、ここ数年は中間管理職として院内外での業務管理・整理・調整等が私自身の主業務となり、クライエントとの直接的な関わりから遠ざかっていることで「今の私はソーシャルワーカーではないのではないか。私は一体何を目指したらいいのだろう」という新たな迷いが生まれていました。「ソーシャルワーカーではない私が更新研修を受けるなんて・・・」そわそわして落ち着かない気持ちの原因はそこにありました。

 この時期にしては珍しく暑さが和らぎ、早くも秋の気配を感じた8月27日(土)・28日(日)の両日、長崎市内で行われた研修には全国から多くの方がいらっしゃいました。初日の講義1では柏木先生の講義があり、大変貴重な話を聴くことができました。その中でも、ソーシャルワークでいう“かかわり”とは、クライエントとソーシャルワーカーとの『協働』であり、その『協働』の相棒はクライエントであるということ、またその協働の中で、ソーシャルワーカーが自分の思いや手の内を相手に見せて「自己開示」をしていくことが大事であること、そして、ソーシャルワークの中に「トポス思想」を導入した柏木先生オリジナルのお話はとても印象的でした。講義の中では、いくつかの文献も紹介され、これからの業務に一層深みを増してしていくための宝のヒントを頂いたようでした。そして、講義2と講義3では、地元長崎の大先輩である、お2人の小森さんのこれまでの実践に沿ったお話と、これからPSWが見据えていかなければならない課題の話はとても身近に感じ、穏やかな口調の中に愛情のこもった『渇!』を入れられたようにも感じ、背筋がピンと伸びる思いでした。続いて、演習3においては「精神保健福祉士の専門性」について、グループでそれぞれの考え・思いを語り合い、所属する組織によって「専門性」についての悩み方も違ってくるものだということを考えさせられました。その後の事例検討ではこれまでの講義1・2・3や演習3で話し合った内容を反映させた充実した話し合いが繰り広げられました。

 私自身のそわそわした気持ちの行方は、研修を受けていく過程の中で自然と消えていっていました。スッキリと解消されたという感じとはまた違いますが、この研修に参加することで、この「『新たな迷い』の抱え方」を考え始め出したと表現したほうがより近いかもしれません。この迷いが5年後にはどうなっているのか・・・今から考えると楽しみでもありますが、「迷った時、戸惑った時にいつでも帰ることができる場所がある」そう思えた二日間の研修だったように思います。


<基幹研修3
小森講師による講義2 会場の様子 修了証書授与

・ 更なるステップアップを目指して

医療法人杏和会 阪南病院(大阪府)/経験年数19年 川井 邦浩

 8月27日28日の2日間、長崎で開催されました基幹研修3に参加させていただきました。

 初日は精神保健福祉士の専門性と政策論についての講義を受講し、2日目は精神保健福祉士の実践論についての講義と演習に参加させていただきました。
 2日間の研修は、自分の実践を見つめ直すことに非常に有意義な時間とすることができました。その中で強く印象に残ったことが2つありました。

 1つ目は、1日目の柏木先生の講義の中で紹介された地域生活支援にまつわる重要な視点として「生活者として捉える」ということに加え、4つの場が必要であるという内容でした。その中に「存在根拠としての場(帰属感)」が重要であると話されていました。最近、私が相談を受ける中で利用者さんから「私の居場所がなくなった」という内容の相談をよく耳にすることもあり、地域で生活を送るにあたって、気兼ねなく集まることができる場所の重要性を再認識することができました。

 2つ目は、演習で意見交換ができたことです。自分自身、日頃の実践の中で持つ問題意識についてこの研修をきっかけに演習のレポートとして、研修に参加されている同じ精神保健福祉士のさまざまな視点からアドバイスをいただき、実践のヒントを得ることができました。また、さまざまな分野で活躍されている精神保健福祉士の実践活動の実際をじっくり聞くことができたことは非常に有意義でありました。

 今後も更新研修を含め、自分自身、精神保健福祉士としての関わりを見つめ直すきっかけとして、積極的に研修に参加したいと考えております。

 最後に、私は自分自身の今後の活動の可能性を模索するにあたり、2011年の1年間で研修認定精神保健福祉士になることを目標としてきました。その結果、今年2月11日に大阪で基幹研修1、7月9日に広島で基幹研修2を受講し、今回、長崎で基幹研修3を受講し、無事に目標を達成できたことを非常に嬉しく思っています。ただ、今後も自分自身の更なる研鑽を重ね、次の目標に向かって邁進していきたいと考えています。


<基幹研修2
今村講師による講義2 演習 修了証書授与

・ 日々、模索し続けることが、自分自身の成長につながると信じて

医療法人聖ルチア会 聖ルチア病院(福岡県)/経験年数11年 中嶋 真道

 2008年度に経験年数8年で受講した基幹研修1から3年。長崎県で開催された基幹研修2を受講いたしました。この経験年数になりますと、「なぜまだ2なんですか?」と言われることもありますが、ただただ年数が経っていっただけでして…。今回の研修も基幹研修Tに続き、新たな気付きをたくさんいただきました。

 今回の研修で最も印象に残ったのは、「精神保健福祉士にとっての道具は『自分自身』であり、磨いたりメンテナンスしたりすることが必要」というフレーズでした。自己覚知のところで出てきたフレーズでしたが、思わずテキストにメモしている自分がいました。面接を駆使するのも、人生をかけて相談に来て下さった方に対応するのも、自分の限界を知り支援のネットワークをつなげるのも、制度・施策の利用をコーディネートするのも、すべて「自分」であり、自分に出会ったことがその方の利益となるように、精一杯自分自身を高めていかなければならないという想いが心を貫きました。テキストにもあった「あなたは私に何をしてくれるのですか」という問いを、絶えず自分に投げかけていこうと思います。

 グループワークにおいては、支援をするに当たっての自分自身のスタンスについて考えさせられました。医療機関に勤めているからなのかもしれませんが、「疾患理解は必要だから、疾患の勉強もしなければならない」という思いと、「診断名に関係なく、今目の前にいるこの方が何に困っているかが重要なんだ」という矛盾とも思える感情を抱き、グループワークの時間の中ではまったく昇華できませんでした。共存できる思いなんだと思いたいのですが、その答えを見つけるのはまだまだ先になりそうです。そのためにも、自己研鑽を続けていきたいと、改めて思いました。

 経験年数だけは着実に増えていきますが、その中にあって基幹研修2を受講できたことにありがたさを感じました。何年経っても自分を振り返るということは必要ですね。私にとってこの生涯研修制度は、自分自身の点検をするにはもってこいの研修です。また新たなモチベーションをいただきました。基幹研修3が待ち遠しいです。ありがとうございました。

 また、この研修で多くの方々と出会うことができました。懇親会も研修に参加する大きな楽しみのひとつです。懇親会の後に特急電車で帰宅の途につきましたが、楽しいお酒を飲みすぎて、乗車時間100分以上であるにもかかわらず、眠っていて降りるべき駅を乗り越してしまったことを最後に付け加えさせていただきます。いろいろな意味で実りある研修でした。


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