報告

公益財団法人社会福祉振興・試験センター2016年度福祉人材養成・研修助成事業
課題別研修/「精神保健福祉士業務指針」講師養成研修〜業務におけるソーシャルワークの専門性を伝承する〜

 2016年度は、「課題別研修/「精神保健福祉士業務指針」講師養成研修」、京都府会場、東京都会場の2地域で開催します。ここでは、各会場が終了するごとに修了者からの報告記事を掲載していきます。


<京都府会場/YIC貸し教室、2016年12月17日(土)>
     
デモンストレーションを行った演習1 全体会の様子 代表者による修了証書授与

・ 精神保健福祉士の実践の可能性を広げる業務指針

佛教大学福祉教育開発センター(京都府)/経験年数30年 泉 洋一

 それは誠に見事なデモンストレーションでした。12月17日に京都で開催された「精神保健福祉士業務指針」講師養成研修での演習の一コマ。岩本操先生を始めとするPSW5名によるロールプレイは、ソーシャルワーカーとしての経験と蓄積が自然と滲み出てくるような演技だと感じました。これまで数々のロールプレイを拝見してきましたが、録画されていなかったことが悔やまれるほどの名場面の連続でした。

 養成研修では、午前中の岩本先生の講義では、業務指針の意義と概要が紹介され、参加者自身が実際に講師を担うときの伝達のポイントや、研修の進め方を具体的に学ぶことができました。それは「業務」という言語イメージの捉え方を皮切りに、業務指針の必要性を歴史的な必然性と社会的責任、そして時代の要請から紐解くとともに、精神保健福祉士の実践の枠組みと道すじをその専門性から可視化する作業であったように思います。

 また、午後からは業務指針の活用法をワークショップ形式で行う演習へと場面転換し、前半の演習デモンストレーションで本研修の醍醐味を体感、そして後半のグループワークでは参加者相互の意見交流をもとに、私たちができることや今後の課題を考える貴重な時間となりました。

 私自身は精神保健福祉士の養成教育に携わって15年になりますが、精神保健福祉士の包括的な実践と専門性を伝達することに涙と苦労の連続でした。このようなとき「業務指針第2版」に巡り会い、2015年3月大阪での業務指針研修会に参加して、自分自身の専門職としての視点やアイデンティティが広がった感覚を得ました。その後、実習教育の中で業務指針を用いる試みを続けています。

 今回の養成研修の受講を通じて、業務指針が私たちの実践を型にはめるものではなく、実践の可能性を広げるツールであることを再確認することができました。また、業務指針を用いることにより、精神保健福祉士の価値や理念をその業務特性や業務内容から捉え直す過程が専門職のアイデンティティの強化につながることを確信した一日となりました。


東京都会場/東京文具共和会館、2017年2月5日(日)
     
岩本講師による講義1 全体会の様子 代表者による修了証書授与

・ 「業務指針の伝え方」を学んで

日本医科大学付属病院(東京都)/経験年数10年 大 靖史

 私は精神科医療機関に勤務するソーシャルワーカーです。自身の現場では、倫理綱領や精神保健福祉士の理念、価値を傍らに置きつつも、自己流で仕事をこなす自分の実践に不安を感じていました。そのような状況に加え、実習生や後輩の指導に今ひとつ自信が持てず、業務指針を活かして自身の指導に役立てたい、ということが私の受講動機でした。
 お恥ずかしい話、私は協会から製本された『精神保健福祉士業務指針及び業務分類(第2版)』(以下、「本」と標記します)が自宅に届いてから、今回の受講を決めるまでほとんど読んだことがありませんでした。研修の前後に本は熟読しましたが、実践家の先輩方の知見を編集委員の方が見事にまとめ上げてくださっており、その工夫を随所に感じました。今、求められている精神保健福祉士の実践について、その枠組みと道筋を、精神保健福祉士の専門性を基盤にまとめられたものと感じました。

 研修に参加して率直に思うのは「非常に良い学びの機会になった」ということです。まずは、本についての理解がより深まり、実践と職業的価値や規範をつないでくれる貴重な羅針盤であることを実感しました。倫理綱領よりも少し現場に近く、業務マニュアルよりもやや自分の理想に近い、自分の行動規範としてかなり役立てられるのではないか、と感じています。また、わたし自身、専門職としてのアイデンティティが受講前より少し明確化したように感じました。
 当日の研修で特に印象に残ったのが、演習として行われた「業務指針研修のグループワーク場面」についてのロールプレイでした。岩本先生はじめ数名のスタッフにより展開されたロールプレイでしたが、演者それぞれの現場でのご経験と知識に裏打ちされた素晴らしい内容でした。ただ反面、わたし自身が研修等で教える立場になった場合を想定すると、周到な準備と伝える練習が必要になると思いました。
 おわりに、グループワークで出ていた意見でとても印象に残っているものを紹介いたします。私たち精神保健福祉士の実践のたとえでよく使われる「実のなるリンゴの木」の例では、個別援助技術や具体的介入技法、方法論は木の「葉」や「実」に当たり、職業的価値や理念は、木の「幹」や「根」に当たるのではないか、という意見が聞かれました。(花鳥風月を愛でる日本人という国民性を超えて、)私はとかく目先のきれいな花や実に目が行きがちで、心もそちらにとらわれてしまうことが多いですが、精神保健福祉士の専門性や役割は、その幹や根を成す職業的価値や理念であると思います。現場の実践に迷ったときにも、業務指針を「専門性の根幹に立ち戻れる羅針盤」として、今後自身の実践の傍らに置きたいと思います。
 業務指針を今後さらに読み解き、新しい世代に伝えたいと思います。


※ご報告いただいた方のご所属名と経験年数は、研修受講時の情報で掲載しています。


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