2012年度は「精神障害者の地域生活移行支援に関する研修」を、東京会場、鳥取会場、鹿児島会場の3地域で開催しました。ここでは、修了者からの報告記事を掲載します。
<鹿児島会場> | |||
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講義2を話す田村講師 | 会場の様子 | 全体発表演習の様子 | 代表者による修了証書授与 |
医療法人和敬会 平和台病院(鹿児島県)/経験年数4年 中山 暢
10月31日、11月1日。桜島が目の前に広がる鹿児島県市町村自治会館にて研修が行われました。総勢66名。大半は県内からの参加でしたが、県外では、遠くは北海道から参加されており、関心の高さを感じました。
鹿児島県は全国でも在院日数が長いことで知られていますが、当院にも社会的入院の方がいらっしゃり、今よりさらに地域での生活につなげたいという思いで私は研修に参加しました。
実際、2日間の研修を終えた感想としては、気づかされる点が多く、期待以上に充実した研修でありました。社会的入院の問題を再確認し、自分なりにどう考えているのか問うことができたことは、普段から社会的入院はあってはならないものと思いながらも、日常の業務に追われ、結局は目を背けている自分がいることに改めて気づかされました。また、現行の地域移行支援の流れや個別支援計画について学ぶことで、制度をうまく活用できれば、長期入院の患者が地域で生活することの可能性が広がることも知りました。当地では、運用されておらず、実際どのようにして運用されているのかが不鮮明でした。しかし、講師の先生方の実践に基づく話が聞け、イメージがとてもしやすく、理解できました。また、講師の先生より「病院だけが地域移行をやることで、地域の人たちがわからなくなる。地域が働かなくなる」というお話があったことは、自分達がしなければならないと気負っているところがあり、それが逆効果になっていると反省させられました。今後は、自立支援協議会等を通じて、県や市町村、地域住民に働きかけようと思います。そして、講師の先生方をはじめ、受講者の方の社会的入院患者への熱意を聞くことができたことは自分への励みとなりました。また、他者の面接を見ることや自分の面接を見られる機会はとても刺激的でした。懇親会では、芋焼酎を片手に講師の先生方とも話ができ、日頃の業務で困っていることなどにアドバイスを頂きました。
今回の研修で社会的入院の解消に向け、多くのヒントを頂きました。病院だけでなく、地域の人々や行政と一緒になって実践していくことで、解消できる日が近いのではないかと感じました。
最後に、鹿児島で研修を企画し、運営して頂いた委員の皆様、本当にありがとうございました。今後も本協会の研修が鹿児島で実施されるのを楽しみに待っています。よろしくお願いします。
<鳥取会場> | |||
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講義3を話す冨田講師 | 会場の様子 | 演習の様子 | 代表者による修了証書授与 |
米子病院(鳥取県)/経験年数10年 前澤 由梨
「鳥取県で全国規模の研修が受けられるなんて!」スタートラインを見た時は本当に驚きました。鳥取県で本協会の研修が行われるのは初めてです。関東や東海地方から参加の方は「こんな機会でないと米子には来ることがないので。」とおっしゃっていました。日本一小さい鳥取県での開催、ありがとうございます!何もないことが取り柄の鳥取県を満喫していただけたでしょうか。
さて研修ですが、定員100人のところ参加者は36名でした。地方開催ならではのゆるりとした雰囲気でしたが受講者の熱意は熱かったですね。期待した通り講師陣も充実していました。講師の先生方は新潟や長野、東京からはるばるお越しいただき貴重なお話をうかがうことができました。
今年4月から地域移行支援事業が個別給付化となり、実務上どうしたらよいのか不透明な部分が多い現状でした。今回の研修を受けて、国の補助金と個別給付の関係性という大きい所から、個別のケースを事業につなげる方法といった小さい所まで学ぶことができました。
地域移行コーディネーターの役割や自立支援協議会との絡み、はたして本県ではどうなっているのか・・・と課題を持ちかえることができました。各都道府県で取り組みに差があるものの、自分たちの地域はどうなのか、これからどうしていくのがよいのか、いま自分ができることは何なのか・・・。「地域移行は地域づくり」という言葉を改めて考えさせられました。
私自身、本協会の地域生活移行研修を受けるのは今回が2回目でした。前回は2009年1月の「地域生活移行支援研修(東京開催)」を受けました。飛行機が雪で遅れ、遅刻して参加したことを覚えています。制度改正などもあり、内容が今回とはずいぶん違うものだったと記憶しています。そのときも受講者の方々の熱意と想いに刺激を受け、たくさんの事を得て帰りました。
最後にお世話をして下さった本協会のスタッフの方々、委員の皆様、本当にお疲れさまでした。本協会の研修がまた鳥取県で開催される事を願っています!
<東京会場> | |||
講義1を話す岡部講師 | 演習の様子 | 会場の様子 | 各班の報告を行った全体会 |
社会医療法人公徳会 佐藤病院(山形県)/経験年数5年 淀野 智史
さまざまな地域性の違いにより、役割や展開しているサービス、支援、課題は異なりますが、私の実践する現場では、長期入院者の退院促進、社会的入院の削減、地域生活移行の推進をこれまでも重要な課題として捉えてきました。また法改正に伴う個別給付化の流れもあり、地域生活移行支援・地域定着支援は病院だけが抱える課題ではないと感じ、今回の研修で全国の地域移行支援、地域定着支援の実践や現状を知り、他機関の方々との情報・意見交換を通じ、今後の退院支援に活かしたいと思い参加しました。
研修当日は法改正に伴う相談支援事業について、また各地の地域移行、地域定着支援の実践報告など、終始充実した内容で「参加して本当に良かった」と深く感じるものでした。
そんな中、研修を通じ私が印象深く感じた言葉が、「困難事例なんてない!?」という講師の金川先生の言葉です。言葉の捉え方はさまざまですが、私には「“困難事例”はいつしか私たち、支援者側によって作り出されているのでは・・・。」という意味にも捉えられました。
「長期入院者の退院、地域移行は大変だ、厳しい」というイメージや固定概念が私の中に無意識にあり、それが困難事例を勝手に生んでいると感じたのかもしれません。これまでの業務を振り返る良い機会となり、新たな気づきを得られ、自己覚知につながったと思います。
それに加え、「一体、何が困難であるのか、何がそう思わせる要因なのか、地域で生活するとはどういうことなのか…」という点も今回、初心に戻り考察する機会を得られたことは非常に有意義なことでした。また研修を通じ、立場、機関、役割の違う同職種間においても共有、共感できる部分は数多くありました。例えば病院と地域のスタッフであっても気持ちや想いは一緒であること、互いに風通しの良い、垣根を越えた有機的で密接な関係を構築していくことで新たな資源の創出やニーズの充足につながっていくことと、多様な可能性を感じました。改めて精神保健福祉士という職種の魅力と活躍の場の広がり、重要性を体験できたような気がします。
多数の参加者の方との交流を通じ、研修で得た知識や技術だけではない、これまで以上のやる気と情熱といったプラスαも得られた気がします。
“かかわり”続けることの必要性と、支援者のみならず、さまざまな資源、人が支えあいながら手と手をつながりあわせることの重要性を感じ、今後も地域移行に関わる精神保健福祉士として、病院から地域へ、人から人へ、かかわりの架け橋となっていければと感じました。今回は参加させていただき、ありがとうございました。
救護施設ナザレ園(茨城県)/経験年数2年 菊池 譲
私は、現在、通信教育で精神保健福祉士の資格取得をめざす学生として、貴協会の学生会員に登録しています。救護施設に勤務し、精神障害者の地域生活移行支援の仕事に関わっていることから、本研修に興味を持ち参加させて頂きました。
今回の研修を通して、全国各地から来られたPSWの方々とお会いし、たくさんの刺激を受けることができました。演習や、昼食、夜の懇親会の際に、PSWの皆様が、それぞれの職場で日々取り組んでいることや、その大変さや面白さ等、いろいろなお話を聴くことができ、とても貴重な2日間でした。
講義では、最新の制度説明、対人援助技術、実践報告と、違った切り口から「地域移行」を取り巻く現状を知ることができました。演習においては、事例検討や、自らの実践内容や課題について話し合う時間もありました。
特に印象深かったのが、面接のロールプレイ演習でした。社会福祉士の勉強をした時以来の久しぶりのロールプレイでしたが、救護施設の利用者との面接を仕事の中で日々行っている自分に何が学べるか疑問を持っていました。ロールプレイは、精神科病院に社会的入院をしている患者と病院のPSWが面接を行い、退院の意思について確認をするという設定でした。そして、実際に患者役をやってみた時に、私にとっての気付きがありました。それは、「患者の気持ち」でした。ちょっと意地悪なキャラクターを演じてみましたが、意固地になっている時の気持ち、素直に自分の気持ちを言い出せない感覚、退院して自由を満喫したいのと同時に自信がないが故の不安、それを受け止めようとするPSWの声かけの仕方や間の取り方で、感情が揺れ動いたり、安心したりと、患者の心の動きをリアルに体験することができました。もちろん、この体験ができたのは、プログラムを作り指導して下さった先生や同じグループのメンバーに依るところが大きかったと思います。
PSWの職場としては未だあまり知られていない救護施設は、全国に188施設存在し、17,000人の利用者が生活している生活保護法に基づく施設です。入所に際し障害の種別は問いませんが、私が勤務する救護施設ナザレ園の利用者の約8割が精神科系の薬を飲んでいる現状があり、長期間入所している利用者が多い救護施設は、精神科病院を彷彿とさせます。そのような中、ナザレ園において、昨年7月より「居宅生活訓練」という一人暮らしの体験プログラムを開始し、この訓練を通して1年間で5名が退所しました。貴協会において、今後、救護施設にも光を当てて頂き、精神科病院や障害者関連法の事業所で培われてきたノウハウを救護施設に入所している精神に障害のある方々への支援に活かすための研修を企画して頂ければ幸いです。
研修を企画・運営されたスタッフの皆様に感謝の意を表すとともに、私も精神保健福祉士の資格がとれた際には、是非とも貴協会の会員となり、積極的に研修に参加していきたいと思います。研修では、大変お世話になり、有り難うございました。