『ソーシャルワーカーのための就労支援ハンドブック』及び「ソーシャルワーク視点による精神障害者のための就労支援研修」カリキュラム

2023年度日本財団助成事業「ソーシャルワーク視点による精神障害者のための就労支援ハンドブック及び人材育成プログラムの開発」

2024/4/15掲載


『ソーシャルワーカーのための就労支援ハンドブック』表紙画像

はじめに

「日頃、"報酬"や"出勤率"といった数値化されやすい部分(要はお金の部分)にフォーカスした支援をしていることに気づけてよかった」、「日常業務において私自身の(ソーシャルワーカーとしての)視点が揺らいでいることが確認できた」、「わかっているつもりでも普段抜け落ちてしまいやすい」、「耳が痛いところもあったが確認できて良かった」、「答えが欲しいと思ってしまうところだが、それを考えてこそだと思う」、「元気が出た」、「救われた」、「ソーシャルワークをもう一度頑張る気持ちになった」、「悩むことを辞めず、頑張る」、「参加して良かった。職場で内容を共有したい」、「またやってほしい」…これは、この度公開する『ソーシャルワーカーのための就労支援ハンドブック』を活用した研修のアンケートから抜粋した参加者の声です。

 私たち就労・雇用支援の在り方検討委員会は、「就労・雇用支援の現場では数値で示しやすい成果のみに焦点が当たり、ソーシャルワーク実践としての目標や成果とすり替えられてしまうような状況が生じていないか」、「働きたいと願うクライエントと共に歩むソーシャルワーク実践とは…」といった問題意識を携え、精神保健福祉士がソーシャルワーク視点を見失わず実践を続けるための議論を重ねてきました。その議論は委員会のメンバーだけにとどまらず、機関誌への記事掲載、アンケートや研修の実施、全国大会での発表などを通じて構成員との意見交換も行ってきました。そういった取り組みのなかで、「よくある就労支援のハウツー本ではなく、立ち止まって自らの実践を点検し、実践の軸となるソーシャルワーク視点について考えることができるようなハンドブックをつくろう」、「ハンドブックをつくるだけでなく、それをもとに研修ができないか」ということになり、日本財団の助成金を得て「ソーシャルワーク視点による精神障害者のための就労支援ハンドブック及び人材育成プログラムの開発」に取り組んできました。

 このハンドブックは、就労支援初心者向けの基本的なQ&Aを提示した後、経験を積んだ方に向けて「ソーシャルワーク視点をより深める」ためのさらなるQを示しています。みなさまにハンドブックを活用いただけるよう、補足のための動画も公開しております。そして、ハンドブックの公開に先立って実施した「ソーシャルワーク視点による精神障害者のための就労支援研修」をもとに、職場や都道府県協会等での研修に活用いただけるよう「研修カリキュラム(案)」もあわせて公開しています。

 就労・雇用支援の現場では、私たちが実践において軸としている「ソーシャルワーク視点」が通用しづらい場面、大切にされていない場面に遭遇することが少なくありません。そのため、ソーシャルワーカー自身がパワーレスな状態に陥ることも少なくないのではないでしょうか。このハンドブックが、働きたいと願うクライエントの最善の利益につながることはもちろん、ソーシャルワーカーであるみなさまのエンパワメントにつながることを願っています。

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 就労・雇用支援の在り方検討委員会


■ソーシャルワーカーのための就労支援ハンドブック

ハンドブックデータダウンロード(2.56MB/PDF形式) 2023年9月30日発行

目次

ハンドブック活用のための補足動画

動画収録内容(収録時間 56:35)

内容 講師 動画開始時間
@総論 ソーシャルワークの視点と就労・雇用支援 吉岡夏紀(社会福祉法人共友会) 01:20〜
A各論 ソーシャルワーカーのための就労支援ハンドブック 谷奥大地(公益財団法人浅香山病院 アンダンテ就労ステーション) 31:30〜
B各論 ソーシャルワーカーのための就労支援ハンドブック
一部解説:IPS援助付き雇用(伴走型就労支援)
中原さとみ(社会福祉法人桜ヶ丘社会事業協会 桜ヶ丘記念病院) 46:13〜

※この動画は、公益社団法人日本精神保健福祉士協会が2023年度日本財団助成事業にて作成した『ソーシャルワーカーのための就労支援ハンドブック』を活用いただく際に、より理解を深めていただくために公開しているものです。本動画は個人での学習用に配信するものであり、著作権者に無断での譲渡・貸与・転載・複製・公衆放送(有線・無線の放送を含む)・公開上映・インターネット上のネットワークなどへの配信等 (ブログ・SNS・動画サイト等を含む)をすることは、法律により禁止されています。十分ご注意ください。

■「ソーシャルワーク視点による精神障害者のための就労支援研修」の研修カリキュラム(例)

以下、「ハンドブック」=『ソーシャルワーカーのための就労支援ハンドブック』

カリキュラム ねらい、内容
総論

ねらい

実践の軸となるソーシャルワーク視点やディーセントワークを確認する。

内容

ソーシャルワーク視点である「生活者支援の視点」「人と状況の全体性」「クライエント自己決定の原理」「権利擁護」や、ディーセントワークについて説明する。

各論

ねらい

ハンドブックを実践や振り返りに活用するための方法を理解する。
ソーシャルワーク視点と自らの実践をつなげて考える力を養う。

内容

ハンドブックの内容を参照しながらその活用方法を説明し、ソーシャルワークの視点による考察をレクチャーする。

シンポジウム等

ねらい

研修を開催する地域における就労支援の課題や、就労支援に係るトピックについて多面的に考える。
演習に向けてモチベーションを高める。

内容

地域における就労支援の課題、就労支援に係るトピックについて複数名が意見を述べ合い、質疑応答を行う。

演習

ねらい

ソーシャルワーク視点と自らの実践をつなげて考え、語る機会をもつ。
日頃の実践や悩みを共有し、語り合える仲間をつくる。

内容

オリエンテーション
 ⇒個人ワーク
 ⇒自己紹介、アイスブレイク、役割分担
 ⇒わかちあい
  個人ワークで検討した内容について発表する。
 ⇒ハンドブックから、掘り下げたいQ(もしくはテーマ)を選び、Q2もしくはグループで協議したい内容について話し合う。
  「ソーシャルワーク視点」への気づきや実践上の課題を話し合いまとめる。
 ⇒発表
 ⇒総括

■プロジェクトメンバー一覧

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 就労・雇用支援の在り方検討委員会

委員長 森 克彦(アンダンテ就労ステーション/大阪府)
委員  吉岡夏紀(やたの生活支援センター/石川県)
    稲垣佳代(高知県立大学/高知県)
    太田隆康(相談室あめあがり/岐阜県)
    谷奥大地(アンダンテ就労ステーション/大阪府)
    中原さとみ(桜ヶ丘記念病院/東京都)
    松岡広樹(一般社団法人キャリカ/埼玉県)
    溝内義剛(まぐねっと25/鹿児島県)
助言者 岩瀬敏彦(出会いの家/滋賀県)
    廣江 仁(養和会/鳥取県)

公益社団法人日本精神保健福祉士協会

会長   田村綾子(聖学院大学/埼玉県)
担当部長 岡本秀行(川口市保健所/埼玉県)
担当理事 渡邉俊一(合同会社希づき/福岡県)


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