No | タイトル | 執筆者(敬称略) | 掲載日 | |
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0 | はじめに インクルーシブな雇用の好事例を募集します! | 谷奥 大地 | 就労・雇用支援の在り方検討委員会 委員 (公財)浅香山病院 アンダンテ就労ステーション(大阪府) |
2023年8月10日 |
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※執筆者所属は、掲載日当時のもの
谷奥 大地
就労・雇用支援の在り方検討委員会/(公財)浅香山病院 アンダンテ就労ステーション(大阪府)
障害者雇用を巡る状況は目まぐるしく変化しています。厚生労働省によると民間企業で働く障害者の人数はこの10年で1.6倍(平成24年:38万人→令和4年:61万人)増加し、とりわけ精神障害者の数は6.4倍(平成24年:1.7万人→令和4年:11万人)と飛躍的な伸びを見せています。(令和4年「障害者雇用状況の集計結果」:厚生労働省)
法定雇用率もこの10年で0.5%上昇し、令和5年4月現在、民間企業においては2.3%、令和6年からは2.5%となる予定です。
こうした法整備の背景には「障害者の権利条約」を日本が批准したことが大きく影響しています。ご存知のように、令和4年には国連による初の日本審査が行われました。この審査の結果、特に強い勧告を受けたのは精神科における長期入院の問題やインクルーシブ教育についてでした。
さて本コラムのタイトルにもある「インクルーシブ」という言葉ですが、教育分野だけでなく、持続可能な開発目標、いわゆるSDGsの中でも「インクルーシブな社会を目指す」ということが繰り返し出てきます。
そこで、本コラム「インクルーシブ雇用について語ろう」を始めるにあたり、まずは「インクルーシブ」とは何かについて考えてみたいと思います。
インクルーシブとは何か、を考える上で、反する、あるいは類似する概念との比較を行ってみます。下図はそれらの概念を示したものです。
「インクルーシブふくおか」のHPより転載(引用元Webページ)
といった意味合いになります。
先の国連勧告では日本のインクルーシブ教育に関して特別支援学校や特別支援学級は「分離教育」にあたると指摘されました。雇用に関しては、障害者雇用促進法により法定雇用義務の対象が精神障害者に拡大し合理的配慮の規定を義務付けたことは肯定的側面として評価されていますが、労働及び雇用(第27条)において以下のような勧告がなされました。
労働及び雇用(第27条)
57.委員会は、以下を懸念する。
(a) 低賃金で、開かれた労働市場への移行機会が限定的な作業所及び雇用に関連した福祉サービスにおける、障害者、特に知的障害者及び精神障害者の分離。
(b) 利用しにくい職場、公的及び民間の両部門における不十分な支援や個別の配慮、限定的な移動支援及び雇用者への障害者の能力に関する情報提供等、障害者が直面する雇用における障壁。
(c) 障害者の雇用の促進等に関する法律に規定される、障害者の雇用率制度に関する地方政府間及び民間部門間の格差、及び実施を確保するための透明性のある効果的な監視の仕組みの欠如。
(d) 職場でより多くの支援を必要とする者への個別の支援サービスの利用に関する制限。
(a)は雇用における「分離」について、特に知的障害者や精神障害者が一般就労に移行できないまま低賃金の作業所で働いている状態に対する指摘です。(b)や(d)では働く上での合理的配慮が不十分である点を指摘されています。こうした合理的配慮の不足は、言い換えれば「統合」は達成できていたとしても、インクルーシブではない、といえます。
この勧告からもわかるように、日本における障害者雇用はまだ十分にインクルーシブであるとは言い難いのが現実です。昨今、障害者雇用代行ビジネスなど雇用形態も多様化し、その妥当性については論議にもなっています。
しかし一方ではそれが叶えられている、あるいは限りなくそれに近い職場もまた存在するはずです。そこで私たち「就労・雇用支援の在り方検討委員会」では「インクルーシブ雇用」かどうかの指標として以下のようなポイントがあると考えました。
これら全てを満たすことは難しいかもしれませんが、いくつか該当するとか、その実現を目指している現場はあるのではないでしょうか。
こうした議論を経て、本委員会ではこうした「インクルーシブ雇用」をもっと広めるために、コラムの連載を開始し、みなさまからも障害者雇用の「グッドプラクティス」を募集します。
あなたの支援されている方の職場、あるいはあなた自身の職場でのインクルーシブ雇用のための実践について是非お話をお聞かせください。
精神障害者の就労支援に関わっている構成員の皆様、インクルーシブ雇用の実践について、ぜひ投稿お願いいたします。詳しくは投稿フォームへ↓
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