厚生労働省「令和4年度依存症民間団体支援事業」(補助金事業)

関係団体等との連携と協働による福祉系大学生等を対象とした啓発イベント「アディクション・オープンゼミナール2022」事業 ~これからの福祉を担う大学生等が「依存症とその支援を正しく理解する」ことを共通認識とするために~の開催及び関係団体と協働した「より相談しやすい体制づくりへ向けた検討会」の実施報告書(2023年3月)

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 依存症及び関連問題対策委員会 編集


報告書作成にあたって

 2020年から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、新型コロナウイルス)との戦いは、2023年5月に感染症法上の位置づけが「5類」に移行する予定となり、ひとつの区切りを迎えようとしています。この約3年にわたる時間の経過のなかで、私たちの生活や価値観は大きく変わりました。人との接触や集うことが避けられ、その代替手段として通信手段が飛躍的に発展し、オンラインによる交流が想像できないくらいの速度で人々の生活に浸透していきました。その結果、在宅ワークやオンラインを活用した学習など、人々が一同に介することなく、個人で社会生活を営むことができるようになりました。このように、新型コロナウイルスがもたらした影響は、個人の価値観に合わせた多様な生活様式が社会に受け入れられる契機となったと思います。

 一方で、生活のなかで人とのつながりを実感することや、困りごとを抱えた際に人を頼ることが難しくなり、人々が孤独や孤立を感じやすい社会に陥っているともいえるのではないでしょうか。依存症は「孤独の病」ともいわれています。新型コロナウイルスとの生活のなかで、依存症に関する課題は今まで以上に社会的に大きなものになっていると思われます。今後は依存症に関する基礎知識や対応方法について、専門職のみならず、すべての人々が学び、備えておくことが必要であると思います。

 本協会では2016年度より、依存症関連問題に対応するためのチームを立ち上げ、2018年度より厚生労働省の依存症民間団体支援事業を継続して受託し、主に依存症対策を推進するソーシャルワーカーの人材育成及び普及啓発に関する事業に取り組んでまいりました。新型コロナウイルスが変異と感染拡大を繰り返し、さまざまな制約があるなか、今年度もオンライン等を活用し、教育プログラムの開発と研修の実施等の人材育成及び調査研究等の事業を実施しました。

 具体的な取り組みとしては、今後の精神保健医療福祉を担うソーシャルワーカーの養成教育現場にある学生等が、「依存症とその支援を正しく理解する」ことを共通認識とするために、教育プログラムを企画・開発し、「アディクション・オープンゼミナール2022」を実施しました。あわせて、令和3年度厚労省依存症民間団体支援事業において作成した依存症支援啓発ポスターの効果測定及び波及効果を検討するために、関係団体等に対しアンケート調査による意見集約を行い、回答結果について課題分析等を行いました。

 本協会では、アルコール健康障害対策基本法、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律、ギャンブル等依存症対策基本法等の法制度の施行に伴う依存症関連問題へ高まる関心を背景に、精神保健福祉士はもとより、すべての領域のソーシャルワーカーにとって依存症支援があたりまえのものとなることを目指し、今後も各種の事業及び活動を継続してまいります。

 最後になりましたが、本事業の取り組みに際しまして、「アディクション・オープンゼミナール2022」の開催にご協力いただきました皆様、アンケート調査にご協力いただいた関係団体の皆様、令和4年度依存症民間団体支援事業の実施において、格別のご配慮を賜りました厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長様及び社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課依存症対策推進室の皆様に、心からの御礼を申しあげます。

令和5(2023)年3月
公益社団法人日本精神保健福祉士協会


■報告書

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報告書作成にあたって(岡本秀行)

第1部 令和4年度依存症民間団体支援事業の概要
関係団体等との連携と協働による福祉系大学生等を対象とした啓発イベント「アディクション・オープンゼミナール2022」事業
~これからの福祉を担う大学生等が「依存症とその支援を正しく理解する」ことを共通認識とするために~の開催及び関係団体と協働した「より相談しやすい体制づくりへ向けた検討会」の実施の概要
(小関清之)

1.本事業の目的と取り組み
2.本事業の実施体制
3.本事業の概要
4.事業責任者等の選任
表紙~P9 676KB

第2部  福祉系大学生等を対象とした啓発イベント「アディクション・オープンゼミナール2022」

1. ソーシャルワーカー物語〈導入編〉
「依存症を学ぶメリット~依存症支援スキルがチートすぎる件~」(中島宗幸)
2. ソーシャルワーカー物語〈ケースワーク編〉
「依存症を抱えるクライエント~出会い、かかわりからの学び~」(菰口陽明)
3. ソーシャルワーカー物語〈グループワーク編〉
「依存症支援のおもしろさ~仲間との出会い~」(岡村真紀)
4. ソーシャルワーカー物語〈家族支援編〉
「依存症と家族~人が人らしく人と共に生きる暮らしを支えたい~」(小関清之)
5. ソーシャルワーカー物語〈自助グループ編〉
「依存症者との私の一つの出会い~私の成長を支え続けてくれたもの~」(関口暁雄)
P11~45 3.60MB
6. 講義「アルコール依存症とソーシャルワーク~教科書に出てこない依存症の知識と実際~」(山本由紀) P46~58 5.21MB
7. 講師による「とっておきのもう一言」(白田幸輝)
8. 参加大学生等とのグループワーク(柏木一惠)
9. 効果検証のアンケートから(中島宗幸)
P59~70 461KB

第3部  関係団体等との連携と協働による「より相談しやすい体制づくりへ向けた検討会」
令和3年度依存症民間団体支援事業において作成したポスターの効果測定及び波及効果を検討するための関係団体等による意見集約と課題分析
(白田幸輝)

第4部 おわりに

事業のまとめと提言(関口暁雄)

P71~奥付
914KB

■アディクション・オープンゼミナール2022「必見!ソーシャルワーカー物語-学校では教えない依存症支援-」

【Zoomによるオンライン開催】
2023年2月25日(土)10:00~14:30

【プログラム】(敬称略)

09:40 受付開始
10:00 開会・オリエンテーション

1.オンライン講義「ソーシャルワーカー物語」(約10分×5本)
 <導入編>「依存症を学ぶメリット~依存症支援スキルがチートすぎる件~」
 講師:中島 宗幸(堺市 精神保健課)
 <ケースワーク編>「依存症を抱えるクライエント~出会い、かかわりからの学び~」
 講師:菰口 陽明(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター)
 <グループワーク編>「依存症支援のおもしろさ~仲間との出会い~」
 講師:岡村 真紀(医療法人信和会 高嶺病院)
 <家族支援編>「依存症と家族~人が人らしく人と共に生きる暮らしを支えたい~」
 講師:小関 清之(医療法人斗南会 秋野病院)
 <自助グループ編>「依存症者との私の一つの出会い ~私の成長を支え続けてくれたもの~」
 講師:関口 暁雄(埼玉県済生会 鴻巣医療福祉センター)

2.オンライン講義「アルコール依存症とソーシャルワーク~教科書には出てこない依存症の知識と実際~」(33分)
 講師:山本 由紀(国際医療福祉大学、遠藤嗜癖問題相談室)
11:30 休憩
12:30 講師らによる講義内容のまとめとディスカッション
 「とっておきのもう一言」
座長 : 柏木 一惠(公益財団法人浅香山病院)
13:20 参加大学生等とのグループワーク
14:30 閉会

依存症及び関連問題対策委員会(2022年度)

担当部長 岡本 秀行 川口市保健所 埼玉県
担当理事 関口 暁雄 埼玉県済生会 鴻巣医療福祉センター 埼玉県
委員長 小関 清之 秋野病院 山形県
委員 白田 幸輝 若宮病院 山形県
山本 由紀 国際医療福祉大学 栃木県
柏木 一惠 浅香山病院 大阪府
中島 宗幸 堺市役所 大阪府
菰口 陽明 国立病院機構 呉医療センター 広島県
岡村 真紀 高嶺病院 山口県

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