新型コロナウイルス感染症対策下における認知症者への支援の現場を対象としたインタビュー調査報告書(2022年6月)

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 発行
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 分野別プロジェクト「認知症」 編集


■はじめに(報告書本文より抜粋)

 公益社団法人日本精神保健福祉士協会(以下、本協会)は、2012 年より「認知症」について取りあげ、これまでに「認知症の人への支援のあり方とその課題〜本人主体の支援を目指した連携 とは〜第1版」(2016 年3月発行)、同じタイトルで聞き取り調査を基にした第2版(2017 年 12 月発行)を報告している。いずれも「連携」が大きな主題であった。
 2018 年に始動した本協会分野別プロジェクト「認知症」(以下、本プロジェクト)は、その流れを汲みつつ、医療と介護の連携の要として期待される認知症疾患医療センターに焦点を当て、その実態と課題、特に連携の中心となる相談員の実情や問題意識を詳らにした「認知症疾患医療センターにおける専門医療相談に関するアンケート調査報告書」(2020年6月)を報告し、またソーシャルワーク研修において相談員の相談力向上を目指した研修を実施した。
 COVID-19は発生から数カ月でパンデミックの様相を呈し、社会的にも経済的にも世界中に大きな打撃を与えた。それは医療の世界にも波及し、医療現場は混乱し、病床の逼迫、人手不足が大きな問題となり医療従事者への関心も深まった。一方で感染拡大防止という名目の下に精神科病院のドアは完全に閉じられ、面会・外出は禁止され、多くの精神科病院は陸の孤島と化した。いい意味でも悪い意味でも医療が注目を集める中、地域で暮らす認知症の人や介護施設に入所している認知症の人たちは、コロナ禍でどう過ごしているのか、ソーシャルディスタンスは彼らにどう影響しているのか、医療現場ほどにはニュースにならない介護現場はどういう状況なのか、認知症の人に関わり、介護との連携を重要視する私たちはそれを知る必要があるのではないか。その実態を調査し、政策提言につなげる責任があるのではないか。それが今回のインタビュー調査に至った経過である。

 インタビューは支援者自身も感染予防に神経をとがらせ、認知症の人の暮らしを守るために奮闘されているさなかに行われた。貴重な時間を割いてインタビューにご協力いただいた皆様に、この場を借りて心より感謝を申しあげたい。

■インタビュー調査概要

1.背景と目的

 2019年12月、中国・武漢に端を発した新型コロナウイルス感染症拡大により、私たちの社会生活は大きな変容を余儀なくされた。コロナ禍における感染症対策やさまざまな活動自粛は、丸2年が経過した今もなお、認知症の人やその家族の生活のみならず、認知症の人への支援のあり方にも多大な影響を及ぼしている。そこで、本プロジェクトでは、新型コロナウイルス感染症対策が認知症の本人・家族・支援者にどのような影響をもたらしたのかを明らかにし、今後私たちが取り組むべき課題について整理検討し、政策提言につなげていくためにインタビュー調査を行なった。

2.方法

(1)調査対象施設および調査対象者
 本調査の対象施設は、本プロジェクトメンバーが居住する東京都・静岡県・石川県・兵庫県・大阪府の5つの地域にある地域包括支援センター・医療機関(認知症治療病棟など)・通所系施設(デイケア、デイサービス)・居宅介護支援事業所・訪問看護事業所・入所系施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、有料老人ホーム、グループホーム、小規模多機能施設)の6種の施設、計74施設である。調査対象者は、管理者あるいは責任者とした。

(2)調査方法および調査実施時期
 調査は対面またはオンラインでのインタビュー調査を原則としたが、一部電話やメールで実施した。期間は2021年10月〜2022年1月である。

(3)インタビュー内容

 下記のような内容でインタビュー調査を実施した。
 @感染症対策としてどのような制限をしたか
 A感染症対策による本人の心身の状態の変化について
  ・感染症対策を行うことについて利用者本人にはどのように説明したか
  ・コロナ感染症対策前と比べてADLの低下、筋力の低下など身体面の変調はなかったか
  ・認知機能の低下やうつ症状出現、不安の訴えが増えたなど精神面の変調はなかったか
 B家族への対応と家族の変化について
  ・感染症対策を行うにあたり、家族に対してどのように説明したか
  ・どのような配慮・工夫をしたか
  ・感染対策を行うことによって家族に変化があったか、あったならどのような変化がみられたか
 C支援者自身の心身の変化について
  ・感染症対策のために支援者のかかわり(支援内容や頻度など)に何か影響や変化はあったか
  ・仕事量の増減や労働時間の変化による疲弊など身体的負担はなかったか
  ・労務環境上の不安やストレスなど精神的負担はなかったか
 D国の施策や都道府県からの情報提供などについて
  ・不満や要望など何か思うところがあれば
  ・今後同じようなことが起こると想定した場合どういうことがあればいいと思うか

■報告書

報告書一括ダウンロード(PDF:605KB)

別冊:インタビュー調査回答全データ(PDF:1,153KB)

<目次>
T.はじめに
U.新型コロナウイルス感染症対策下における認知症者への支援の現場を対象としたインタビュー調査の概要
1.背景と目的
2.方法
(1)調査対象施設および調査対象者
(2)調査方法および調査実施時期
(3)インタビュー内容
(4)倫理的配慮
V.各領域におけるインタビュー調査結果
1.地域包括支援センター
2.医療機関
3.通所系施設
4.居宅介護支援事業所
5.訪問看護事業所
6.入所系施設
W.全体考察
X.おわりに
参考資料(インタビューガイド)


公益社団法人日本精神保健福祉士協会 分野別プロジェクト「認知症」(2020・2021年度)

リーダー 佐古 真紀 浅香山病院(大阪府支部)
チーム員 畠山  啓 東京都健康長寿医療センター(東京都支部)
チーム員 蔭西  操 南加賀認知症疾患医療センター(石川県支部)
チーム員 新田 怜小 サポートセンターほっと(静岡県支部)
チーム員 柏木 一惠 浅香山病院(大阪府支部)
チーム員 佃  正信 新生病院(兵庫県支部)
所管する理事(副会長) 水野 拓二 鷹岡病院(静岡県支部)


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