「コロナ禍における多文化共生に関するアンケート」 報告書(2022年6月)

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 発行
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 分野別プロジェクト「多文化共生ソーシャルワーク」 編集


■報告書

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■はじめに(報告書本文より抜粋)

 2021年初頭から全世界で始まった新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによって、世界規模で鎖国状態が進み、国際的な人流が抑制されている。コロナ禍以前は、東京オリンピック開催ムードも伴ってインバウンド需要だけでなく、多くの外国人技能実習生も来日した。滞日外国人は250万人とされており、特別永住外国人30万人(中国、韓国等)を除き、多くの新規外国人がビジネスや結婚を契機として新たに日本で生活を始めている。

 滞日外国人の滞在期間が長期化することで、子育てや教育、医療、経済問題など、様々な生活課題が新たに生まれ、同時に社会・文化への不適応から生じるメンタルヘルスの課題も発生することが考えられる。

 これまでのわが国のソーシャルワークは、同じ日本語を使い、同じ文化圏で育った“日本人”を対象として実践してきた。人権と社会正義をソーシャルワークの中核にしつつも、寄り添い方で保健医療福祉サービスや地域・関係機関の連携を前提としたミクロ・メゾレベルでの支援が中心となってきた。そのため、今日、ソーシャルワーク実践のグローバルスタンダードである、貧困の撲滅や移住問題、気候変動などへのアプローチや、マクロレベルのソーシャルアクションには、消極的な傾向がみられた。

 近年の多文化ソーシャルワークに関する先行研究は、人間の多様性を尊重し、援助する理論的枠組みとして“文化的コンピテンシー(Cultural Competence)”または“多文化間コンピテンシー”という概念が盛んに用いられるようになった。即ち、文化的コンピテンシーとは、異文化接触の際に必要な側面として(1)気づき(2)知識(3)スキル、の三領域をソーシャルワーク実践に位置づけ、ソーシャルワーカーは自らの思考や態度とその価値に気づくことで、多文化的な状況下で効果的な行動をとることが出来るための技術、とされている。これは、例えば全米ソーシャルワーカー協会及び全米ソーシャルワーク委員会では、すでに“文化的コンピテンス”という用語を用いて倫理項目に定めている。文化的コンピテンシーに基づくソーシャルワーク実践は、現実にはミクロレベルの実践だけでは不十分であり、例えば、滞日外国人が暮らすコミュニティでの偏見や差別、制度や法律による制限など、生活上の多様な生活課題を抱える本人、家族、それらが所属する地域社会など、多様な社会構造に働きかけるメゾレベルの実践のための技能が同時に必要とされている。

 そこで本調査の目的は、現在、精神保健福祉士が、在留外国人の相談援助にどの程度関わっているかを明らかにすることであり、今後、文化的コンピテンシーを高めるためには、どの様な知識や技術を身に付けることが必要であるかについて明らかにしていくことである。

■Webアンケート調査概要

1.はじめに

◆調査の背景及び目的
 コロナ禍における、精神保健福祉士による滞日外国人のメンタルヘルス支援の現状を把握し、相談現場で活用できる「ガイドブック」を作成することを目標に、 医療機関、相談窓口、施設、自治体等での滞日外国人の相談状況とその支援及び支援体制について調べた。

※ここで使用する「滞日外国人」とは3ケ月以内の短期滞在者も含む、現在、日本に定住生活している外国生まれの方を指します。

2.調査対象

  本協会構成員  約12,000人

3.調査方法

  インターネット調査:本協会Webサイト掲載のWebフォームによる任意のアンケート

4.調査期間

  2021年10月7日(木)〜11月7日(日)

5.調査結果の回収状況

  回収数:105件、うち有効回答数:103件、 有効回答率:98%

6 倫理的配慮

 今回の調査にあたっては、調査実施について本協会理事会で審議し、事前に承認を得ている。また、アンケート調査結果については、回答者個人が特定されないように個人情報に関する記述で配慮を求めるとともに、公表にあたっては、回答者を含む個人を特定できないように配慮した。また、実施アンケート用紙上で本調査の目的を説明し回答をもって調査への同意も取っている。


公益社団法人日本精神保健福祉士協会 分野別プロジェクト「多文化共生ソーシャルワーク」(2020・2021年度)

リーダー 大橋 雅啓 東日本国際大学(福島県支部)
チーム員 瑞慶覧 紗希 国立国際医療研究センター国府台病院(千葉県支部)
チーム員 諸井 一郎 川崎市役所(神奈川県支部)
チーム員 木村 真理子 日本女子大学 名誉教授(神奈川県支部)
所管する理事 岡本 秀行 川口市保健所(埼玉県支部)


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