「精神医療審査会に関するアンケート調査」報告書(2022年3月)

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 発行
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 精神医療・権利擁護委員会 編集


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■はじめに(報告書本文より抜粋)

 精神医療審査会(以下、「審査会」という。)は、わが国の精神科医療における「権利擁護の礎」とも言われ、精神障害者の人権に配慮しつつその適正な医療及び保護を確保するための機関であり、その審査の専門性及び独立性が保たれるように十分配慮し、精神障害者の人権擁護のために最大限の努力を払うことが求められている。平成26(2014)年4月1日に施行された改正精神保健福祉法では、審査会の見直しが行われ、審査会の委員の構成については、従来の精神科医、法律家に加え、その他の「学識経験を有する者」に代えて、「精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者(以下、「保健福祉委員」という。)」が新たに定められ、退院支援の視点も含めた審査を行うことになった。しかし、退院等の請求に係る審査や医療保護入院者定期病状報告書等の書類審査の形骸化が指摘されている現状がみられる。

 そこで、公益社団法人日本精神保健福祉士協会(以下、「本協会」という。)では法改正後の審査会の全国的な変化や精神保健福祉士の参画状況を把握するために、平成30(2018)年2〜3月、各都道府県支部に対するプレ調査としてアンケート調査を実施した(公益社団法人日本精神保健福祉士協会,2018) 。プレ調査の結果として、厚生労働省が定める「精神医療審査会運営マニュアル(以下、「マニュアル」という。)」が存在するが、実際には各都道府県並びに政令指定都市が運営する審査会の業務内容や運営方法、合議体や委員数に自治体間での格差がみられることが確認された。さらに、精神保健福祉士の参画状況もばらつきがあり、保健福祉委員のための研修会等は、32%の実施率であり、保健福祉委員の質の担保に課題がある状況が明らかになった。審査会のマニュアルはあっても業務内容や役割等が、全国的にばらつきがみられる現状は、精神障害者の人権に配慮しつつ、その適正な医療および保護を確保するための機関である審査会の機能や質が保たれていないということへの危機感を覚える結果でもある。

 このような状況をふまえ、全国精神医療審査会連絡協議会、および、全国精神保健福祉センターによる協力のもとで、全国の審査会に対する調査を実施した。本調査研究は、審査会の実情や可能性の詳細を明らかにするとともに、審査会における精神保健福祉士の役割や意義を明らかにし、その資質の向上に役立てるための基礎資料とすることを目的とする。

■調査概要

調査対象、調査方法、回収状況等の概要は、以下のとおりである。

調査対象   全国都道府県並びに政令指定都市の精神保健福祉センターの審査会事務局67ヶ所(都道府県47ヶ所、政令市20ヶ所)
依頼・調査方法 質問紙を郵送配布し、郵送または回答用Webフォームにて回収
回答期間 令和3(2021)年2月12日から2月26日まで
回収状況 62自治体より調査協力を得た(回収率:92.5%)

精神医療・権利擁護委員会(2020・2021年度)

担当副会長 水野 拓二 鷹岡病院 静岡県
担当部長 尾形 多佳士 さっぽろ香雪病院 北海道
委員長 山本 めぐみ 浅香山病院 大阪府
副委員長 増田 喜信 西部健康福祉センター 静岡県
委員 阿部 祐太 国立病院機構花巻病院 岩手県
大山 和宏 一般社団法人えのき舎 福岡県
岡安 努 やたの生活支援センター 石川県
木本 達男 岡山市こころの健康センター 岡山県
三溝 園子 烏山病院 東京都
鈴木 圭子  神奈川県精神保健福祉センター 神奈川県
種田 綾乃 神奈川県立保健福祉大学 神奈川県
中野 千世 地域活動支援センター櫻 和歌山県

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