厚生労働省「令和3年度依存症民間団体支援事業」(補助金事業)

第2期アルコール健康障害対策推進基本計画をはじめとする依存症対策の推進に掛かるソーシャルワーカーの視点に基づく人材養成及び普及啓発事業~「オンラインによる依存症ソーシャルワーク基礎講座」と「あらゆる領域のソーシャルワーカーにとっての汎用性の高い依存症支援の標準モデルを目指すソーシャルワーカー関係団体の協働による成果物作成」~(2022年3月)

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 依存症及び関連問題対策委員会 編集


報告書作成にあたって

 「依存」という言葉が持つ意味を辞書で調べてみると、「他の物や人を頼り生きることや存在すること」という趣旨で示されています。人は誰もが一人で生きていけないことは自明の理であり、私たちの生活は人や物に「依存」しながら成立していると言えます。しかしながら、過剰な「依存」は依存症として私たち自身に健康被害を与え、生活全般にわたり大きな影響を与えることにつながります。私たちの生活に不可欠なものでありながら、過不足なく自身がコントロールできる範囲で収めなければならないことは、とても難しい生活スキルであり、少しのきっかけから誰もが依存症になり得るものと言えると思います。

 コロナ禍の生活はすでに2年が経過し、私たちの生活様式や社会生活に大きな影響を与えました。人との交流が遠ざけられ、これまでのように私たちは人に頼ることができなくなり、孤立や孤独を感じるようになりました。さらに、見えない先行きのなかで不安やストレスが高まり心身ともに疲弊していきました。その結果、最近ではアルコールやゲーム・ネット等の物質や行為に今まで以上に頼る人々が見られ、依存症の課題が社会的に高まっています。この課題を乗り越えるためには、人々のつながりを取り戻し、誰もが孤立せず安心して生活することができる社会を実現させることが重要になると思います。ソーシャルワーカーは人々のあらゆる生活課題に対し包括的な支援を行うことや、社会全体に対する働きかけを生業としていることから、今こそ私たちが連帯し、この難局に立ち向かう必要があると思われます。その一歩として、すべてのソーシャルワーカーが依存症に関する知識や基本的対応を標準装備として備え、一人ひとりが必要な方に適切な支援を届ける取り組みが必要です。

 本協会では2016年度より、依存症関連問題に対応するためのチームを立ち上げ、2018年度より継続して厚生労働省依存症民間団体支援事業を受託し、依存症支援に関するソーシャルワーク人材養成及び普及啓発に関する事業、地域ネットワーク構築にむけた調査研究に取り組んでまいりました。長引くコロナ禍によるさまざまな制約があるなか、オンライン等を活用し、今年度も引き続き、研修等の人材育成及び関係団体との意見交換等を実施しました。

 そして、2019年より開始された一般社団法人日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会、公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会、公益社団法人日本社会福祉士会、特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会、そして本協会が一堂に会した「ソーシャルワーカー関係団体による意見交換会」は今年度で3年目を迎えました。依存症に関する課題は一人の疾患や健康問題だけでなく、さまざまな生活的課題に深く関連することから、ソーシャルワーカー関係団体が協働し取り組むべきであることを共通認識とし、依存症支援に関する普及啓発の一環として協働し、ポスター制作に取り組みました。

 最後になりましたが、本事業の取り組みに際しまして、研修の講師をお引き受けいただいた回復者や家族の皆さま、意見交換会ご参集いただき、一緒にポスター制作に取り組んでいただいた関係団体の皆さま、令和3年度依存症民間団体支援事業の実施において、格別のご配慮を賜りました厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長及び社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課依存症対策推進室の皆さまには、心からの御礼を申しあげます。

令和4(2022)年3月
公益社団法人 日本精神保健福祉士協会


■ポスター(広く一般市民にソーシャルワーカーの存在を周知するポスター)

 
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■報告書

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報告書作成にあたって (岡本秀行)

第1部 令和3年度依存症民間団体支援事業

第2期アルコール健康障害対策推進基本計画をはじめとする依存症対策の推進に掛かるソーシャルワーカーの視点に基づく人材養成及び普及啓発事業~「オンラインによる依存症ソーシャルワーク基礎講座」と「あらゆる領域のソーシャルワーカーにとっての汎用性の高い依存症支援の標準モデルを目指すソーシャルワーカー関係団体の協働による成果物作成」~の概要 (神田知正)

1.本事業の目的
2.本事業の実施体制
3.本事業の取り組み
4.事業責任者の選任

表紙~P7 1.23MB

第2部 オンラインによる依存症ソーシャルワーク基礎講座

1.講義1 依存症と回復支援 生きづらさから探る依存症(引土絵未)
2.講義2 関連問題を抱えるクライエント家族への支援~女性と子ども家庭への視点 (山本由紀)
3.体験談に耳を傾ける(本人・配偶者・子どもの立場)(稗田幸則)
4.事例検討型グループワーク(齊藤健輔)
5.効果検証のためのアンケート結果から(引土絵未、池戸悦子)

P9~55 3.51MB

第3部 あらゆる領域のソーシャルワーカーにとっての汎用性の高い依存症支援の標準モデルを目指すソーシャルワーカー関係団体の協働による成果物作成

1.依存症及び関連問題にかかわるソーシャルワーカー関係団体による意見交換会 (柏木一惠)
2.ソーシャルワーカー関係団体の協働による成果物-「広く一般市民にソーシャルワーカーの存在を周知するポスター」制作- (佐古惠利子)

P57~65 895KB

第4部 おわりに~事業のまとめと提言~ (小関清之)

第5部 資料

資料1. ICD-10 DSM-5 2つの診断基準
資料2. 行動の変化を望まない人へ面接―動機づけ面接のエッセンス
資料3. ファミリー・ベースト・サービス ソリューションフォーカストアプローチ
資料4. 援助を求めないクライエントへのアプローチ:向社会的アプローチ
資料5. オンラインによる依存症ソーシャルワーク基礎講座 グループワークシート
資料6. オンラインによる依存症ソーシャルワーク基礎講座 アンケート

P67~奥付 4.27MB

■オンラインによる依存症ソーシャルワーク基礎講座

【研修日時】
2022年2月11日(金・祝)10:00~16:50

【研修方法】
オンライン(Zoomミーティング)

【プログラム】(敬称略)

9:40 受付開始
10:00  開講式・オリエンテーション
 司会:稗田 幸則(西脇病院)
 挨拶:岡本 秀行(川口市保健所)
10:10 講義1「依存症と回復支援 生きづらさから探る依存症」
 講師:引土 絵未(日本女子大学 人間社会学部 社会福祉学科)

講義2「関連問題を抱えるクライエント家族への支援~女性と子ども家庭への視点」
 講師:山本 由紀(国際医療福祉大学 医療福祉学部 医療福祉・マネジメント学科)
12:10 休憩
13:10 体験談に耳を傾ける(本人・配偶者・子どもの立場)
14:10 休憩
14:30 事例検討型グループワーク
16:00 全体共有・講義も含めてQ&A
16:45 閉講式・アンケート
 挨拶:小関 清之(秋野病院)

依存症及び関連問題対策委員会(2020年度・2021年度)

担当副会長 水野 拓二 鷹岡病院 静岡県
担当部長 岡本 秀行 川口市保健所 埼玉県
委員長 小関 清之 秋野病院 山形県
副委員長 稗田 幸則 西脇病院 長崎県
委員 齊藤 健輔 東北会病院 宮城県
山本 由紀 国際医療福祉大学 栃木県
引土 絵未 日本女子大学 東京都
神田 知正 井之頭病院 東京都
池戸 悦子 桶狭間病院 藤田こころケアセンター  愛知県
柏木 一惠 浅香山病院 大阪府
佐古 惠利子 リカバリハウス いちご 大阪府
岡村 真紀 高嶺病院 山口県



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