精神保健福祉士の災害時の対応における役割の明確化と支援体制に関する調査研究

厚生労働省 令和2年度障害者総合福祉推進事業


はじめに

 公益社団法人日本精神保健福祉士協会(以下、「本協会」)による組織的な災害支援活動は、本協会の前身である日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会時代、1995年の阪神・淡路大震災からでした。その後も全国各地で相次ぐ地震、風水雪被害などの災害現場に赴いて災害支援を実践するなか、2007年10月に組織内で災害支援検討委員会(現、災害支援体制整備委員会)を設置し、2010年には「社団法人日本精神保健福祉士協会災害支援ガイドライン」を作成しました。2011年には災害支援ガイドラインの普及と災害支援体制の整備を目指し、全国各ブロックを対象に災害支援活動に関する研修などを実施してきました。その矢先に東日本大震災が発災し、本協会では基本的にガイドラインに沿った活動を展開しました。主な支援活動としては、被災自治体への精神保健福祉士の単独派遣が中心でした。これまでの本協会による災害支援活動から得られた知見、教訓、課題等を検証し、災害支援における体制の整備、知識の普及、精神保健福祉士の役割、有効性を整理し、2016年6月に公益社団法人日本精神保健福祉士協会災害支援ガイドラインVer.2(ガイドラインは本協会のウェブサイト上で公開しています)を発行しています。

 この間、国、都道府県では災害に備えて災害時の医療支援、福祉支援の体制整備に取り組み、厚生労働省が2013年度に災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領を定め(2017年5月改正)、都道府県等で体制整備が進められ、2018年5月には「災害時の福祉支援体制の整備について」にて「災害時の福祉支援体制に向けたガイドライン」が公表されました。このことにより災害時の福祉支援におけるネットワーク構築に取り組む都道府県が増加し、災害福祉支援に関する災害派遣福祉チーム(DWAT)の組織が編成され、その活動の多くに社会福祉士や介護福祉士が参画し、災害福祉支援現場での活動を展開しています。しかしその一方で、精神保健福祉士は災害福祉支援現場での活動実績があるにも関わらず、ネットワーク、派遣チームへの参画が遅れている実態がありました。

 本協会では令和2年度障害者総合福祉推進事業として「精神保健福祉士の災害時の対応における役割の明確化と支援体制に関する調査研究」というテーマで、精神保健福祉士が精神保健医療福祉における専門職として、災害時の対応や都道府県が組成する災害派遣福祉チーム(DWAT)、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の災害時における精神保健福祉士の活動実態や役割を整理し、災害福祉支援ネットワークへの参加が遅れている実態と要因等を明らかにすることを通して、本協会が作成したガイドラインと照らし合わせ、精神保健福祉士の災害時における対応強化のための具体的な方策を提示することを目的として本事業に取り組みました。

 本事業では、都道府県を対象とした「災害福祉支援ネットワーク」の構築状況及びネットワークへの精神保健福祉士の参加状況等の把握を目的として都道府県主管部局を対象に、アンケート調査を実施しました。また、精神保健福祉士の災害時の対応における課題、役割、有効性等を明確にするため、今後の支援体制構築の方策を提言していくことを目的とし、災害派遣福祉チーム(DWAT)、災害派遣精神医療チーム(DPAT)で派遣活動に参加した経験を有する精神保健福祉士及び精神保健福祉士と共に活動した他職種等を対象にヒアリング調査を実施いたしました。

 アンケート調査、ヒアリング調査の分析から得られた災害福祉支援における精神保健福祉士の役割、有効性について、今後都道府県における災害福祉支援ネットワーク、災害派遣福祉チーム(DWAT)、災害派遣精神医療チーム(DPAT)などの支援体制構築に際し、精神保健福祉士の災害支援活動時等の役割、有効性の理解の促進が進み、参画する一助になればと考えます。

 本調査におきましては、新型コロナウイルス感染症対策等でご多忙な中、ご協力いただきました都道府県のご担当者様、公益社団法人日本精神科病院協会DPAT事務局、公益社団法人日本社会福祉士会及び公益社団法人日本介護福祉士会、特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク、全国及び都道府県社会福祉協議会事務局のご担当者様はじめ、ヒアリング調査にご協力いただきました皆様方に深く感謝申しあげます。

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 副会長 水野 拓二

■報告書データの一部修正について(お詫び)<2021年6月15日>

本報告書において、アンケート調査の一部回答が反映されていなかったことが判明いたしました。本件につき多大なご迷惑をおかけした群馬県のご担当者様及び災害福祉支援ネットワークご担当者様・関係各位には深くお詫び申しあげます。

 つきましては、誤りにつきまして以下報告させていただきますとともに、本ページにて公開しているデータは正しいものへ差し替えております。誠に申し訳ございませんでした。

主だった修正箇所

下記に伴い、文中の説明文章の数字も修正しております。

P.16 Q2-5. 災害福祉支援ネットワークの構成員 @災害福祉支援ネットワークへの都道府県精神保健福祉士協会の参加の有無

(誤)

参加あり:21青森県/岩手県/山形県/福島県/茨城県/栃木県/埼玉県/千葉県/東京都/新潟県/長野県/岐阜県/三重県/滋賀県/奈良県/島根県/徳島県/香川県/愛媛県/高知県/宮崎県
参加なし:21北海道/宮城県/秋田県/群馬県/神奈川県/富山県/石川県/静岡県/愛知県/京都府/大阪府/兵庫県/鳥取県/岡山県/山口県/福岡県/佐賀県/長崎県/熊本県/鹿児島県/沖縄県

ネットワークの構成員として、都道府県精神保健福祉士協会の参加が「ある」ところと「ない」ところはともに21件であり、検討中は3件であった。

(正)

参加あり:22青森県/岩手県/山形県/福島県/茨城県/栃木県/群馬県/埼玉県/千葉県/東京都/新潟県/長野県/岐阜県/三重県/滋賀県/奈良県/島根県/徳島県/香川県/愛媛県/高知県/宮崎県
参加なし:20北海道/宮城県/秋田県/群馬県/神奈川県/富山県/石川県/静岡県/愛知県/京都府/大阪府/兵庫県/鳥取県/岡山県/山口県/福岡県/佐賀県/長崎県/熊本県/鹿児島県/沖縄県

ネットワークの構成員として、都道府県精神保健福祉士協会の参加が「あり」は22 件、「なし」は20 件、検討中は3件であった。

P.16 Q2-5. 災害福祉支援ネットワークの構成員 A災害福祉支援ネットワークの主な構成員
職能団体  (誤) (正)
件数 件数
社会福祉士会 35 36
介護福祉士会 34 35
精神保健福祉士協会 21 22
介護支援専門員協会 21 22
医療ソーシャルワーカー協会 11 12
理学療法士会 8 8
相談支援専門員協会 5 5
民生委員児童委員協議会(連盟) 5 5
医師会 4 4
看護協会 4 4
歯科医師会 3 3
作業療法士会 3 3
福祉団体 (誤) (正)
件数 件数
社会福祉協議会 37 38
知的障害(がい)者福祉協会 21 22
保育協議会 16 17
地域包括・在宅介護支援センター協議会 10 11
社会就労センター協議会 9 10
身体障害者福祉協会 4 4
精神保健福祉協会 3 3
施設系団体 (誤) (正)
件数 件数
経営者協議会 31 32
老人福祉施設協議会 30 31
老人保健施設協会 21 21
身体障害(児)者施設協議会 16 17
児童養護施設協議会 10 11
救護施設協議会 7 8
日本認知症グループホーム協会支部 7 7

■報告書

一括ダウンロードPDF16.8 MB ※210615修正済

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表紙
はじめに
目次

表紙〜目次 2.32 MB

第1部 事業目的等

1.本調査研究事業の背景
2.本調査研究事業の目的
3.本調査研究事業の実施内容

P.1〜8 1.11 MB

第2部 都道府県における災害福祉支援ネットワークの構築及び精神保健福祉士の参加等の状況に関するアンケート調査の結果及び考察

1.調査概要
2.調査結果
3.考察

P.9〜32 10.5 MB
(210615修正済)

第3部 災害派遣対応の経験がある精神保健福祉士及び他職種へのヒアリングの結果及び考察

1.調査概要
2.調査結果
3.考察

P.33〜84 1.52 MB

第4部 精神保健福祉士の災害時における対応強化のための具体的な方策

1.災害時における精神保健福祉士の役割の明確化
2.災害福祉支援ネットワークへの精神保健福祉士の参加促進のための方策

P.85〜94 1.21 MB
(210615修正済)

資料編

1.アンケート調査 調査票
2.質的調査 インタビューガイド

P.95〜奥付 4.15 MB

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