「精神障害者の退院支援における退院後生活環境相談員と地域援助事業者の現状と課題」調査報告(2017年度実施)

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 精神医療・権利擁護委員会 編集


報告書一括ダウンロード用データPDF:414KB)


■アンケート調査の概要

1 本調査の背景

 精神保健福祉法改正から3年が経過した2017年の現在において、前回の法改正によって退院後生活環境相談員は義務付けられましたが、本来の意図が達成されたとはいえない状況が垣間見られます。なぜなら、退院後生活環境相談員は、精神保健福祉士が担うべき業務でありながら、看護師などの専門職や専門職以外でも選任してもよいと規定されています。そのため実際に全体の1割が精神保健福祉士以外の職種が担当しており、うち300名ほどは無資格です。この現状では、精神障害者の人権擁護の視点はおろか、地域援助事業者との連携もままなりません。さらに、医療保護入院患者のための医療保護入院者退院支援委員会には、医療保護入院者本人の退院後の生活を考える委員会ですが、当事者が参加している会議も少なく、彼らの地域生活を支援するために任命されている地域援助事業者も呼ばれていない状況です。また退院後生活環境相談員の業務は書類作成が多く、それをこなすために本来の支援もできないという声も上がっています。そのような中では、精神障害者の人権を考えた退院支援は難しい状況です。

 このような状況の中で2018年の精神保健福祉法改正では、措置入院患者に対しても退院後生活環境相談員を付けていくべきだという話も出ています。そうなると、さらに精神障害者の人権等に配慮や退院支援が求められます。しかし、前回の法改正で義務付けられた退院後生活環境相談員は、3年経過しいろいろな問題点などは聞こえてきますが、その実態を調査したものがなく、この制度の現状や課題が明らかにされていない状況です。そのため、退院後生活環境相談員の実態を把握し、それらの課題に対しての改善が急務です。

2 本調査の目的

 退院後生活環境相談員と地域援助事業者の実態について調査し、精神障害者へ退院支援に求められている現状と課題を明らかにすることを目的とします。

3 調査概要

 本調査は、調査研究1(自記式質問紙調査)と調査研究2(フォーカスグループインタビュー)を併せた形で実施しています。詳細については調査報告を参照ください。
 なお、委員である行實志都子氏の所属である神奈川県立保健福祉大学と共同による調査としており、当該大学の倫理委員会の許可を得ています。


精神医療・権利擁護委員会(2016年度・2017年度)

担当副会長 田村 綾子 聖学院大学 埼玉県
担当部長 尾形 多佳士 さっぽろ香雪病院 北海道
委員長 岩尾 貴 石川県庁 石川県
委員 三溝 園子 昭和大学附属烏山病院 東京都
行實 志都子 神奈川県立保健福祉大学 神奈川県
鈴木 圭子  神奈川県精神保健福祉センター 神奈川県
岡安 努 やたの生活支援センター 石川県
中村 穣 南アルプス市障害者相談支援センター 山梨県
増田 喜信 三方原病院 静岡県
山本 めぐみ 浅香山病院 大阪府
中野 千世 地域活動支援センター櫻 和歌山県

前のページに戻る