就労継続支援A型事業所の閉鎖等の問題に関する緊急調査(まとめ)

はじめに

 本協会は、就労継続支援A型事業所の閉鎖に伴う障害者の大量解雇等の問題が各地で発生したことを受けて、2017年12月に就労支援系の事業所に属する構成員を対象とした緊急のアンケート調査を実施しました。
 このほど、分野別プロジェクト「就労支援」において、調査結果を取りまとめましたので報告いたします。
 アンケートにご協力くださった構成員の皆様には誠にありがとうございました。
 いただいたご意見を踏まえまして、今後も精神障害者の就労支援のあり方等について提言をしてまいります。

まとめ

アンケート概要

配布数(就労系事業所勤務構成員)795人 有効回答数209人 回答率26.3%
回答期間 2017年12月13日〜21日

問1 勤務先の自治体

42都道府県

問2 勤務先開設主体

社会福祉法人が37%、NPO法人が35%と大半を占め、営利法人は11%、医療法人9%と続いた。

問3 勤務先事業所の種別

B型 54%
移行 22%
A型 12%
自立訓練(生活訓練) 7%
生活介護 5%

問1 周辺でA型事業の問題が起こっているか?

ある 50%
ない 26%
知らない 24% 

問2 ある

1.看板の付け替えがあった 7(5%)
2.B型事業への変更 37(27%)
3.多くの利用者について最賃除外申請 18(13%)
4.その他 73(54%)
その他の内訳 72⇒

問3 周辺で閉鎖したA型はあるか

1.ある 53(26%) 
2.ない 83(41%) 
3.わからない 67(33%)

問4-1 問3で「ある」⇒閉鎖したA型の設立主体は?

1.営利法人 39(70%) 
2.NPO法人 10(18%) 
3.社会福祉法人 7(13%)

問4-2 閉鎖は厚生労働省通知(2017年3月)の影響と思うか?

1.思う 33(56%) 
2.思わない 3(5%) 
3.わからない 23(39%)

問5 問3である回答者に「解雇者への支援策実施の有無」

1.実施 11(21%) 
2.実施なし 16(30%) 
3.わからない 26(49%)

実施⇒支援策の内容

 またA型事業所に対するコンサルタントの派遣による授産事業の工賃改善

問6 A型事業について自治体からの指導、調査、聞き取りの有無

1.有(予定含む) 25(12%) 
2.無 153(73%) 
3.わからない 31(15%)

問7 A型について厚労省が指導する「生産活動の収益のみで最低賃金を支払うこと」と適時適切な「利用者への個別支援」が現行制度で両立可能か

1.そう思う 22(11%) 
2.そう思わない 126(60%) 
3.どちらでもない 61(29%)

問8 A型事業の課題130

1.事業運営の困難さ   2.支援面での専門性の欠如 3.制度設計の問題 4.行政の指導・監査 

 A型事業に求められている「生産活動の収入のみで利用者に最低賃金以上を支払う」という要件は、「一般就労が困難な障害者」を対象としながらも一定の生産性を保たなければならない、ということを意味する。そのためには事業の商才だけでなく、生産性の維持・向上のために利用者一人一人への指導・支援が欠かせない。しかし、生産性を追い求めるあまり、一般就労も可能であるような利用者を手放せなくなったり、本来の姿である「支援事業」としての側面が不十分になったり、という事態が各地で起こっている。自立支援給付が賃金に割り当てられることが禁じられた今、多くの事業所の運営が困難になっており、閉鎖が相次ぐ事態となっている。

 アンケート結果からは、A型事業の存在意義は認めつつも、福祉サービスであるにも関わらず十分な支援が行き届かない、あるいは支援は十分でも生産性が追いつかない、という偏った事業所が多数存在していることが浮かび上がってきた。このことから、障害者総合支援法の制度設計に問題があることは明白だが、そのことに現在まで手を打ってこなかった行政の不作為が問題を大きくしたと言わざるを得ない。

 現在改定が行われている障害福祉サービス報酬においては、A型事業は労働時間によって報酬単価が規定される見込みだが、利用者への必要な個別支援が適切に行われていることには評価がなく、労働時間のみが本体報酬とされている。事業所閉鎖大量解雇問題で明らかになった制度が抱える課題への本質的な解決策は講じられていない。精神障害者がニーズに基づいて安心して就労支援事業を利用できるよう、福祉サービス制度設計の問題や事業の抱える課題について注視し、次期法改正、報酬改定の際に根拠とともに提言できるよう検討を続けることが必要である。



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