精神障害者の成年後見制度ハンドブック(2016年3月発行)
(2015年度社会福祉法人社会福祉事業研究開発基金助成事業)


発刊にあたって

 成年後見制度が導入されて17年、成年後見人等の担い手の不足、親族のみならず専門職後見人による財産の着服などの不祥事、家庭裁判所の監督の不十分さなど、精神障害者をはじめとして判断能力が衰えた人々の権利を擁護し、生活を支援する仕組みであるはずの成年後見制度はその負の部分ばかりが強調されているように感じます。

 しかしながら高齢社会の到来、地域社会 ・ 家族基盤の脆弱化等社会状況の変化に加え、地域包括ケアの推進、病院 ・ 施設からの地域移行などの政策の変革にとって成年後見制度はそれを支える重要な社会資源と言えます。殊に精神科医療の変革を受け、長期に入院していた患者さんたちの地域移行 ・ 地域定着を支える資源の一つとして、また長く親の庇護下にあったものの親の高齢化や死亡により急きょ単身生活をせざるを得なくなった精神障害者の暮らしを支える資源としても、大きな役割を果たすことを期待されています。

 一方精神保健福祉士はいつも、精神障害者の自己決定の尊重と、やむを得ず権利を制限せざるを得ない状況のはざまで葛藤しています。成年後見制度はその葛藤がもっとも見えやすい枠組みの中にあると言えます。しかし自己決定の尊重を存在の根拠としてきた精神保健福祉士には、意思決定能力がないことを前提とする後見類型を含む現行の成年後見制度の課題に向き合い、 自己決定支援に向けて最大限の努力を払う義務があります。このガイドブックはそのプロセスを支える道標となるでしょう。

 精神保健福祉士は成年後見人としての社会的要請ばかりでなく、成年後見に携わる家族や他の専門職種からもその専門性に基づく知識や技術の提供を求められています。この小冊子が成年後見制度に関わるすべての人にとって座右の書となることを確信しています。

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠


■ハンドブック   一括データ(50頁/PDF/1.53MB)

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