社団法人日本精神保健福祉士協会 精神保健福祉部 権利擁護委員会 編著
2009(平成21)年12月8日の閣議決定により、「障がい者制度改革推進本部」が内閣に設置されました。また、同年12月15日には、障害のある人を主たる構成員とした「障がい者制度改革推進会議」が開催されることが決定され、2010(平成22)年1月12日の第1回を皮切りに、第2回以降は概ね月2回のペースで開催されています。
障害者基本法の改正や障害者を権利主体と位置付ける法律、障害者差別禁止法、障害者虐待防止法の制定、障害者自立支援法の改廃と障害者総合福祉法の制定など、障害のある人の権利保障に照らしたさまざまな課題が検討事項となっています。障害者制度改革の実現には、法的根拠や財源確保を必要とすることが多いため、しっかりとしたロードマップの作成、プロセスの進捗管理等、相当なエネルギーを要するものと考えます。
同時に、精神障害のある人の権利を擁護する専門職を自任する精神保健福祉士は、大局的な政策動向に注目しながら、我が国における精神障害のある人々が、権利主体として真に豊かな暮らしを獲得し、自己実現が可能となるように、自らの実践を検証しながら、現実の課題や状況を改善することに努めなければなりません。
本ハンドブックが、「障害者の権利条約」の目的に謳われた「障害のあるすべての人によるすべての人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し及び確保すること、並びに障害のある人の固有の尊厳の尊重を促進すること」の実現の一助になることを願っています。
なお、本ハンドブックの作成過程において「障がい者制度改革推進会議」の検討課題のひとつにも示されている「障害」の表記に関しては、編著を担当した権利擁護委員会より「障がい」の使用提案を受けました。しかしながら、本協会として十分な検討がなされていないことから「障害」の表記とすることとし、これを機会に、本協会としての方針を早々に検討することを確認しています。
最後になりましたが、本事業にご助成をいただきました社会福祉法人社会福祉事業研究開発基金に心より感謝を申しあげます。
社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中 秀彦
■一括ダウンロード用データ(135頁//4.6MB) ※データ容量が非常に大きいのでダウンロード時ご注意ください
序
発刊にあたって
第一部 障害のある人の人権に係る取り組み状況と「障害者の権利条約」
障害のある人の権利をめぐる状況
「障害者の権利条約」と精神障害
日本の障害者関係団体、当事者団体の取り組み
日本の自治体の取り組み
諸外国の現状
(1) アメリカ
(2) イギリス
(3) カナダ
(4) 韓国
第二部 精神障害のある人への生活支援と「障害者の権利条約」
精神科の強制的医療と「障害者の権利条約」
医療観察法と「障害者の権利条約」
精神科病棟における行動制限
(1) 人員配置と「管理」
(2) 通信・面会の自由
(3) 任意入院の閉鎖処遇
精神科以外の受診
社会的入院・地域移行
当事者の声
精神障害のある人の退院後の地域でのくらしに関する聴き取り調査報告より
地域の福祉サービス利用と「障害者の権利条約」
(1) 地域の福祉サービス(施設編)
(2) 地域の福祉サービス(在宅編)
(3) 障害者自立支援法とのかかわり
住宅の確保~好きなところに住もう~
働くことを考える
サービスにおける苦情申立
アクセシビリティ
日本の成年後見制度と「障害者の権利条約」
ハンドブック作成を終えて
参考文献
委員名簿