公益社団法人日本精神保健福祉士協会
会長 田村 綾子
第57回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第21回日本精神保健福祉士学会学術集会の開催にあたり主催者を代表してご挨拶申しあげます。
2022年5月現在、厚生労働省では「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」が開かれており、精神医療制度のあり方について、改正精神保健福祉法(平成26年度施行)以前から継続する課題の検討が行われています。特に、精神科病院での虐待事件の発覚や、隔離・身体拘束時の事故発生などと相俟って、非自発的入院における精神障害者の人権擁護の強化が必要視されています。また、今年度より、診療報酬改定によって精神保健福祉士の機能が評価される療養生活継続支援加算の新設や、障害者総合支援法では昨年度から計画相談支援における入院時情報連携加算が新設され、精神障害者の地域生活における包括的支援マネジメントの充実がいっそう強く求められています。古くて新しい課題ともいえる「医療と福祉の連携」は、精神保健福祉士の中核的な機能であるとともに、本質的にはPSW(精神科ソーシャルワーカー)が無資格の時代から精神障害者の権利擁護と併せて担ってきた役割です。全国大会では、このような政策動向をふまえ、精神障害者の社会的復権を掲げて専門的・社会的活動を展開する精神保健福祉士として、いかなる職場にあってもこの役割と責任を再認識し、実践の点検ができればと思います。
第57回全国大会・第21回学術集会運営委員会によって掲げられたテーマ「七っ転び、八起き~自分らしさを発揮できる社会を目指して~」は、本協会が昨年秋に策定した精神保健医療福祉の将来ビジョンと呼応して、精神疾患や障害の有無にかかわらず、誰もが自分らしく「コノ邦ニ生キル幸セ」を感じられる社会を共創する動的な様を想起させてくれます。このビジョンが公開された昨年の北海道大会では、全面オンライン開催のなかで現地の仲間が知恵の限りを尽くし、精神保健福祉士の一体感を届けてくれました。そして、北海道からバトンを受け取った群馬県の運営委員会は、できる限りの準備をして全国からの参加者の歓迎に向けた準備を行っています。
コロナ禍は2年半に及び、急な変化を余儀なくされた新たな生活様式にもすでに慣れ始めているかもしれません。ただ、その過程で人と人が立体的に五感をフル稼働して出会うことの貴さを認識しつつもすれ違い、置き忘れてきたものはないでしょうか。本協会では、全国の精神保健福祉士をはじめとするソーシャルワーカーが共通理念のもと、実践知を集積して相互研鑽やソーシャルアクションに励むうえで、学び合い触発し合うこと、そして豊かに懇親することのできる機会として、年に1度の全国大会を大切に重ねてきました。2019年度の愛知大会以来、実に3年ぶりとなる全国レベルでの参集の機会が用意されています。日常業務の場を離れてみて、自らの実践や環境を俯瞰し、精神保健福祉士としての視点の再確認や知識・技術のアップデートのために、また専門性を共有する仲間と交流し英気を養うために、ぜひとも全国から群馬県高崎市にご参集くださいますようお願いいたします。
第57回全国大会・第21回学術集会
全国大会・学術集会長 林 次郎
第57回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第21回日本精神保健福祉士学会学術集会(群馬大会)を開催するにあたり歓迎のご挨拶を申しあげます。
2020年初頭から新型コロナウイルスが世界規模で蔓延し、私たちの社会や生活に多大な影響を及ぼしています。そして全国大会もその影響は免れず、with-corona時代における大会開催のあり方が問われる転機となりました。昨年度は、北海道支部の皆様方に格段のご尽力をいただき全国大会・学術集会全般が初のオンライン開催となるなか、非常に有意義なものとなりました。
本大会は、2020年に高崎市に誕生した大型コンベンションセンター「Gメッセ群馬」での現地開催とWebを併用したハイブリッド形式にて開催予定です。初のハイブリッド形式での全国大会開催、そして皆様にお集まりいただく機会としては3年ぶりとなりますが、安心・安全に開催すべく準備を進めています。また、ハイブリッド形式の利点を活かし、一人でも多くの皆様にご参加いただき、自由な時間でじっくりと最新の知見やソーシャルワーク実践に触れていただきたいと思います。
現在、地域社会にはメンタルヘルスに直結する課題が山積しております。長期化するコロナ禍で、沈滞した社会経済による解雇や雇い止め、若年層や女性の自殺者の増加、虐待、DV事例の急増、あらゆる形態の差別、人権侵害、更に頻発する災害、貧困の拡大と世代間連鎖、社会保障制度の劣化、それらが日本社会の閉塞状況を一層加速させ、さまざまなメンタルヘルスの問題に直結し、社会的弱者は更なる苦境に立たされています。
殊に、新型コロナウイルス感染症やその影響の克服に向けて歩みを進めている矢先のロシアによるウクライナ侵攻。この戦争は混迷を極め、遠く離れた我が国にも新たな難民支援の課題はじめ、物流・経済の停滞から国民生活にも影響をもたらし、社会不安を招きかねない状況です。
厳しい社会状況においても、私たち精神保健福祉士が精神障害者の権利と人権を守る責務を担っていることに変わりはありません。いつの時代も常に前向きに生きていこうというメッセージを込め、大会のテーマを「七っ転び、八起き~自分らしさを発揮できる社会を目指して~」としました。
地域社会の変容を受け、私たち精神保健福祉士を取り巻く環境も大きく変わりつつあります。全ての精神保健福祉士の能力及び機能の向上を図ると共に、今一度、国家資格化された経緯とその歴史的使命に立ち返りながら、Mental Health Social Workerとして、新たな時代のニーズに応えられるようなソーシャルワーク実践に取り組む必要があります。
本大会では選りすぐりのプレ企画、精神保健福祉士のアイデンティティを見つめ直す基調講演、「地域作りにおける多職種連携の在り方と精神保健福祉士に対する期待」について福祉・医療・行政の各視点から議論を交わす記念企画。これらを通し、メインテーマに迫ります。懇親会では『グンマを知らない』参加者の皆様に群馬のおもてなしを。市民公開講座では伝説のロックヴォーカリストが登場します。
上州群馬は「からっ風と雷」「義理人情」「かかあ天下」が名物。また、多くの温泉地や源泉を保有する屈指の温泉大国です。是非ご来県いただき、人情あふれる群馬の風情を体感し日常の喧騒から離れて全国大会と群馬を全集中でお楽しみください。
群馬大会がご参加いただく皆様にとってより一層の研鑽の場となるよう、また、なによりも北海道に集結できなかった精神保健福祉士が、ふたたび笑顔で出会えるよう、北海道支部から受け継いだ熱いSW魂をそのままに、群馬県支部一同、万全の準備を進めてまいりますので、多数のご参加を心よりお待ち申しあげます。
最後に、構成員の皆様とともに、精神障害者の福祉の向上や私たち精神保健福祉士の未来への飛躍と感動、勇気、覚悟を共有する、そんな「ぐんま 2022」を思い描いています。
合言葉は、七っ転び、八起き‼